親族間売買の適正価格・みなし贈与とされないためのポイントは?

不動産の価格

親族間売買についてインターネットで調べていると、しばしば目にするのが「適正価格」というワードです。不動産には、定価や小売価格などという決まった価格は存在せず、日々相場が変動しています。それなのに、なぜ親族間売買では適正価格で売買することが求められるのでしょうか。

この記事では、親族間売買における適正価格、親族間売買がみなし贈与とみなされる理由などについて詳しく解説します。

1.親族間売買の適正価格とは

まずは、親族間売買で適正価格が重要とされる理由や、適正価格の目安について説明します。

(1)親族間売買で適正価格が重要な理由

実は親族間売買に限らず、不動産の取引では価格の設定は自由です。極端な例を挙げると、1,000円や100円といった超安価でも売買は成立します。

しかし、不動産売買の詳細は管轄の税務署に把握されています。親族間売買で、相場より大幅に安く売買した場合、その売買は「みなし贈与」とみなされて贈与税の課税対象となります。結果として、相場で取引した方が安く済むケースも多いため、適正価格での売買が重要となるのです。

(2)適正価格の目安は路線価相当額(時価の8割)

親族間売買で適正価格といえる金額の目安は、おおむね路線価相当額(時価の8割程度)とされています。不動産の適正価格に関しては、過去に買主と税務署が争った判例があり、その結果から、路線価がおおむねの目安とされています。

路線価は、国税庁のWEBサイトで公開されていて、誰でも無料で確認できます。

▼千代田区永田町、国会議事堂周辺の路線価図

国会議事堂周辺の路線価図

画像引用:令和3年分 財産評価基準書 15024 – 路線価図|国税庁

参考URL:

路線価図の掲載サイト:財産評価基準書|国税庁

路線価図の見方:路線価図の説明|国税庁

(3)判断が難しいケースは個別に相談が必要

路線価図を閲覧すれば適正価格がわかるかというと、そう簡単にはいかないケースも多いです。

そもそも、路線価は土地に対して設定されるものであり、建物の価格は計算に入っていないため、別途査定が必要となります。また、地方の土地は路線価が設定されていないことも珍しくないため、この場合も自分で時価を調査する必要があります。

土地が不定形地の場合や、路線価での価格算出が相応しくないタワーマンションなどの場合も、自分で計算するのは難しいでしょう。このような場合、専門家に相談して正しい価格を把握する必要があります。

2.親族間売買がみなし贈与とみなされる理由

親族間売買は、通常の売買と比べて税務署に不正を厳しくチェックされます。当事者が親族とはいえ、きちんと代金を払っているのに、なぜ税務署から厳しいチェックを受けるのでしょうか。

(1)「売買」は親族間の不動産譲渡としてはイレギュラー

一つ目の理由は、売買という形態は親族間の不動産譲渡の方法としてはイレギュラーだからです。

通常、親や親族から不動産を譲り受ける際は、相続や贈与という形が一般的です。そのため、敢えて売買という形をとることで、「何か裏があるのではないか」と疑われてしまいます。

実際は「争族防止のために生前に希望者に自宅を譲る」「親のローンを肩代わりして実家を守りたい」など、さまざまな理由から親族間で不動産売買を行う方がいらっしゃいます。しかし、残念ながら親族間売買は税務署から一律に厳重チェックを受けるのが通例です。

(2)贈与税逃れの取引ではないかと税務署に怪しまれる

「贈与税逃れの取引ではないか」と怪しまれることも、税務署から厳しいチェックを受ける理由の一つです。

親族間売買は、取引に義理や情が絡むことから、相場より安い金額が設定されることは少なくありません。意図せず適正価格より安い金額で売買し、結果として脱税行為となってしまうこともあるのです。

例えば、相場が3,000万円の不動産を1,000万円で売買した場合、相場より2,000万円低く売買しているため、2,000万円の贈与があったとみなされてしますのです。

意図しているか否かに関わらず、低額譲渡が発生しやすい取引のため、チェックは慎重に行われます。

(3)税務署にマークされやすい「親族」の範囲は?

では、親族間売買で税務署からマークされやすくなる「親族」とはどこまでを指すのでしょうか。

この点について、税務署は特に方針を明らかにしていませんが、相続税の課税対象となる親族が該当するという考え方が一般的です。つまり、民法で規定されている「配偶者」「六親等以内の血族」「三親等以内の姻族」の間での取引が、親族間売買に該当すると考えられます。

参考:民法第七百二十五条|e-GOV法令検索

低額譲渡による贈与税は、親族間売買かどうかに関係なく課税されますが、親族の場合は特に厳しくチェックされるため注意が必要です。

3.親族間売買の適正価格を正しく知る方法

親族間売買の適正価格を知るには、前述した路線価をチェックするという方法もありますが、自分で正しい金額を算定するのは難しいケースも多いでしょう。その場合、どのように調べればよいのでしょうか。

(1)不動産鑑定を利用する

不動産の価値を正確に知る方法の一つが、不動産鑑定士による鑑定です。国家資格保有者による鑑定のため信頼性が高く、税務署など第三者に価格の信ぴょう性を明示したいときには特に有効です。

ただし、不動産鑑定事務所に鑑定を依頼すると、価格を調べるだけで数十万円の費用が発生します。費用を節約したい場合は決して安い金額ではないため、おすすめできません。

(2)不動産会社に相談して査定を受ける

不動産会社の査定は、不動産会社に売却を依頼する際に利用できるサービスの一つです。無料で家の価値を知ることができるため、特段の事情がなければこちらをおすすめします。

自宅の売買金額にもよりますが、売却時に仲介手数料を支払っても、鑑定士に依頼するより安く済むケースが多いです。

ただし、「仲介依頼を取り付けたい」など、不動産会社の思惑が少なからず査定価格に反映される可能性があるという点には注意が必要です。可能であれば、複数社に依頼して価格を比較すると確実です。

4.親族間売買で不動産会社に仲介を依頼するメリット

親族間売買では、仲介手数料を節約するために、不動産会社を通さずに取引したいという方もいらっしゃるかもしれませんが、当事者間だけで取引することはおすすめできません。親族間売買で不動産会社に仲介を依頼すると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。

(1)「正当な売買である」と税務署に証明できる

大きなメリットの一つとして、正当な売買であることを税務署に証明しやすくなることが挙げられます。

不動産会社が仲介する取引では、必ず不動産会社の名称が記載された重要事項説明書と売買契約書を作成・交付されます。そのため、万一、税務署からの問い合わせを受けた場合も、書面を提示して、正当な売買であることを説明できます。

また、適正価格で売買したい旨を不動産会社に伝えておけば、金額設定の相談に応じてもらえるため、税務署から脱税の疑いをかけられるリスクを抑えることができます。

(2)購入者がローンを組みやすくなる

住宅ローンを利用して家を購入したい場合、不動産会社のサポートなしで住宅ローン審査に通るのはほぼ不可能に近いです。

①住宅ローン審査には重要事項説明書が必須

住宅ローン審査では、売買に際して宅地建物取引士が発行する「重要事項説明書」の提出が必須です。この書類がなければ、金融機関は物件の担保価値を正しく評価できず、審査ができないため、個人間取引で住宅ローンを組めないのです。

②個人間取引は不正利用を疑われる

住宅ローンは、金利の低さから不正な目的で利用されることがあります。例えば、住宅購入資金と偽って事業や投資用の資金に流用されるというケースがあります。

特に、親族間売買は気心の知れた身内の間での取引のため、やろうと思えば架空の売買契約書を作ることも可能です。そのため、金融機関からは警戒されるのが常なのです。

③親族間売買に融資する金融機関が少ない

親族間売買に融資してくれる金融機関は、かなり少ないのが実情です。前述した通り、金融機関側にさまざまなリスクがあるためです。

メガバンクや地方銀行の多くは、親族間売買に対しては審査さえしません。そのため、融資を受けられる可能性がある金融機関を知り、絞り込んだ上で審査を申し込むと効率的です。親族間売買の実績を豊富に持つ不動産会社は、金融機関と提携していることもあります。

(3)親族間売買を不動産会社に依頼したときの費用

不動産の売買で、不動産会社が受け取れる仲介手数料は、法律で以下のように上限が設けられています。

【売買における仲介手数料の法定上限(消費税込)】

200万円までの部分 売却価格(税抜)の5.5%
200万円超から400万円までの部分 売却価格(税抜)の4.4%
400万円超の部分 売却価格(税抜)の3.3%

参考:宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額|国土交通省

仮に売買価格1,000万円の物件であれば、200万円までの部分・400万円までの部分・400万円超の部分、と分けて計算し、その後合算することで仲介手数料を算出します。

5.まとめ

親族間での不動産売買では「安くしてあげたい」という思いから、適正価格を下回る価格で取引される方もいらっしゃいます。しかし、相場を大幅に逸脱した価格で売買した場合、贈与税の課税リスクが発生するため、注意が必要です。

売買を検討する際は、親族間売買の実績を豊富に持つ不動産会社に相談することをおすすめします。

当社は、数多くの親族間売買を成功させた実績を持つ住宅ローン滞納問題を専門的に扱う不動産会社です。豊富な経験と専門的なノウハウにより、贈与税の対象とならない適正価格の提示や、住宅ローンを借り入れられる提携金融機関の紹介など、ご希望に応じて丁寧にサポートさせていただきますので、お気軽にご相談ください。

寺島 達哉
寺島 達哉

クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉

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