老後の住み替えはいつすべき?住み替えるメリット・デメリットや資金調達方法を解説
結婚した当初は、子供の育児環境なども考えて、郊外に一軒家を購入したいと考える方が多いでしょう。しかし、年齢を重ねて身体機能が低下したり、同居家族の人数が減ったりしたときに、今の自分に合う住居に住み替えることを希望される方は少なくありません。住
この記事では、老後に住み替えるメリットとデメリット、資金調達方法、住み替えを成功させるためのポイントなどについて解説します。
目次
1.老後に住み替えを考える理由
50代・60代になると老後に向けて住み替えるべきかどうか、そのまま今の家で暮らすべきかと悩む方が増えます。
老後に住み替えを考えるようになる理由としては主に以下のようなものが挙げられます。
(1)子供が独立して家が広く感じられる
子供が成長するまでは家族の人数が多いため、「広い家に住みたい」という理由で一軒家を購入する方も多いです。しかし、子供が独立して家を出た後は、夫婦二人で暮らすことになり、一軒家は広く感じられるでしょう。
二人暮らしに適したサイズのマンションなら、使わない部屋などの無駄な空間がなく、家事も楽になります。
(2)家の老朽化
何十年も家族で住み続けた家は、経年劣化による老朽化が進行しています。このまま住み続けるには、大規模なリフォームや建て替えが必要になるケースもあるでしょう。
しかし、リフォームや建て替えには多額の資金が必要です。家が広いほど費用は高額になりますし、使用していない部屋や階段などもリフォームが必要になることもあります。
場合によってはリフォームに建て替えと同じ程度の高額な費用がかかることもあるでしょう。
そのため、リフォームや建て替えの費用を住み替え費用に充て、二人暮らしに適したサイズの家に住み替えたいと考える方も多いようです。
(3)老後の生活の利便性を考えている
加齢とともに身体機能が低下し、生活に不安を感じたことで住み替えを検討し始める方も多いです
広い一軒家を掃除することや、家事のために家中を何往復もすることは非常に大変です。階段の昇り降りも辛くなりますし、転倒など事故につながる恐れもあります。そのようなことから、一軒家では生活が不便だと考え、コンパクトで住みやすいマンションや、バリアフリー仕様の住宅、階段の昇降がない平屋などへの住み替えを考える人も多いです。
また、若い頃は郊外で駅から離れた場所でも車や自転車で日常の買い物などの用事を済ませられますが、年を取れば車や自転車には乗れなくなります。そのため、徒歩圏内にスーパーや病院など生活に必要な施設の揃う環境へ引っ越したいと考えるようになる方もいらっしゃいます。
(4)終活のために
終活を始めて、自分の死後に自宅の処分を家族に任せることに不安を感じたことが、住み替えを検討するきっかけとなることがあります。
特に、家の相続に対する懸念から、住み替えを検討される方は多いようです。自分の死後に相続人が家を巡って争うことが心配な場合、自宅を分割しやすい現金に換えておき、賃貸住宅を終の棲家とすることも選択肢の一つとなります。
2.老後に一軒家へ住み続けるメリット・デメリット
老後に一軒家へ住み続けることには、メリットもデメリットもあります。
住み替えに悩んでいる場合、まずは一軒者に住み続けるメリットとデメリットについて考えてみましょう。
(1)メリット
一軒家に住み続けることには、以下のようなメリットがあります。
①自由度が高い
一軒家の大きなメリットは、自由に使える広い空間があり、音を気にする必要がないため、自由度が高いという点です。
ペットを自由に飼うことや、家庭菜園やガーデニングを楽しむことができます。また、趣味の部屋を作るなどもできるでしょう。
空間が広いため、孫が遊びに来た時も自由に庭や家の中で遊ばせることが可能です。
②ご近所付き合いを継続できる
長年住んでいた場所へ継続して住むということは、ご近所付き合いもそのまま継続できるということです。
特に老後一人になった場合、付き合いの長い友人や知人が近所にいればお互いに助け合えるという安心感と心強さがあります。
③土地を残せる
一軒家を購入している場合、土地を資産として子供や孫に残せるというメリットがあります。家が古くなったとしても、子供が家を建て替えて同じ場所に住むことができます。
建築費用だけで土地代はかからないため、子供世代が活用しやすいといえるでしょう。
ただし、立地によっては土地を残していても子供が住まないケースや活用が難しいケースもあるため、慎重に検討すべきです。
(2)デメリット
老後に一軒家で住み続けることにはメリットだけではなく、デメリットもあります。
デメリットも考慮し、住み替えるかどうか検討しましょう。
①維持費
戸建てはマンションよりも維持費が高くなってしまうことがデメリットといえます。
内装だけではなく、外にさらされている外壁や門などのエクステリアは経年劣化が起きやすいため、修繕やリフォームが必要になります。こうした修繕やリフォームは、戸建の場合は広さもあるので費用が高くなる傾向にあります。
老後は年金だけの生活になるなど収入が減る可能性が高いため、維持費を支払うことができるのか把握しておかなければなりません。
②日頃の手入れが大変
一軒家はマンションに比べると敷地が広く、日頃の手入れが大変です。毎日の家の掃除は階段の昇り降りが必要ですし、家の前まで掃除しなければなりません。庭がある場合は、庭の手入れも必要です。このような日頃の手入れは、年を取るほど負担に感じられるようになるでしょう。
③高齢になるほど住みにくさがある
購入当初は快適に生活していた一軒家でも、高齢になれば住みにくさを感じるようになります。バリアフリー設計にしていなければ段差が多いですし、平屋でない限りは階段があります。
マンションとは異なり敷地が広いため、階段など場所によっては空調が効きにくく、夏は暑くて冬は寒いなど温度差が辛いと感じることもあるでしょう。
また、郊外や駅から離れた場所に一軒家を購入している場合、家の周辺にスーパーや病院がないため、高齢になるほど生活に不便さが生じるようになります。
3.老後の住み替えの選択肢
住み替えを検討する際、重要な問題となるのが「どこに引っ越すか」です。これにより、必要な費用や手続きの手間なども変わってきます。老後の住み替え先にはそれぞれ異なる特徴があるので、特徴を理解した上で自分に適した住宅を選ぶことが大切です。
(1)よりコンパクトな住宅に買い換える
一つ目の選択肢となるのが、今の家よりコンパクトな家を購入することです。
現在暮らしている自宅がファミリー向けの間取りになっている場合、老後の夫婦二人の生活や一人暮らしには広すぎると感じる方も多いです。家が広すぎると掃除などの負担も大きくなるため、家をサイズダウンすることは理にかなっているといえます。
ただし、新たに家を所有することになるため、ご自身の死後の家の処分について考えておく必要があります。
(2)賃貸のマンションやアパートに引っ越す
持ち家を処分し、賃貸物件に引っ越すことも選択肢の一つです。
持ち家とは違い毎月の賃料がかかりますが、家を所有することによる税金や家の修繕に対する費用はかかりません。住環境に問題が発生したときや、経済状況に変化があったときは随時引っ越すことができることも賃貸住宅のメリットです。
ただし、賃貸住宅のオーナーの方針によっては、高齢者の入居に難色を示されることもあります。
(3)高齢者向け住宅に引っ越す
身体機能の衰えに不安を感じている場合、高齢者向け住宅への住み替えも選択肢の一つです。
高齢者向け住宅とは、高齢者に配慮した賃貸住宅のことです。バリアフリー仕様の住宅や、見守りや生活相談・軽度の介護支援などのサービス付きの住宅もあります。老人ホームとは違い、一般的な賃貸住宅のように賃貸借契約を結んで入居します。
検討する際は、複数の住居の立地や付帯サービスの内容を確認し、比較するとよいでしょう。
(4)今の家をリフォームして住み続ける
住み替えではなく、今の家をより住みやすい形にリフォームすることも選択肢の一つです。
例えば、家の中の移動が楽になるようにバリアフリー仕様に改装する、広い家を子世帯と同居できるよう二世帯住宅化するなどの方法があります。
家をリフォームする場合、自治体が用意している各種補助金を利用できることもあります。
4.老後にマンションへ住み替えるメリット・デメリット
老後の住み替え先について紹介しましたが、老後は一軒家からマンションへ住み替える方が多い傾向にあります。
老後にマンションへ住み替えることには、以下のようなメリットとデメリットがあります。
(1)メリット
①セキュリティ面が安心
マンションは一軒家よりもセキュリティがしっかりしていることが多いです。
一軒家では自分で警備会社と契約するなどしてセキュリティを強化しなければなりません。しかし、管理人の常駐やオートロック、あちこちに監視カメラが設置されているなど、マンションごとに何らかのセキュリティ対策が取られていることが多いです。
老後はセキュリティ面でより安心して暮らしたいと考えている場合はマンションが向いているといえます。
②周辺環境に恵まれている
マンションは戸建てよりも立地面での条件が良いケースが多いです。
駅地の近くや都心部に近い場所では、交通の便が良くなります。商業施設や病院なども近くにあることが多いため、暮らしやすくなります。
特に高齢になると自動車の免許返納などで移動手段が減るため、周辺環境に恵まれているかどうかは重要なポイントとなります。
③高齢者に住みやすい作りになっている
マンションはエレベーターが付いていることや、バリアフリー設計になっていることもあり、高齢者にとって住みやすい作りになっていることが多いです。
室内も段差が少ないため、部屋の間の移動の負担も少ないでしょう。
(2)デメリット
①スペースが限られている
マンションは一軒家に比べるとスペースが限られているため、空間の自由度は低いといえます。
ガーデニングや家庭菜園などはベランダの小さな一角でしかできませんし、収納スペースも減ってしまいます。広くスペースを使いたいと考える方にとってはデメリットといえるでしょう。
②防音性に劣る
マンションは集合住宅なので、隣や上下階に住む人が大きな音を出せば聞こえてしまいます。また、こちらが大きな音を出せば近隣住民から苦情が来る可能性があるため、楽器の演奏などをしたい場合は注意が必要です。
5.老後の住み替えを考えた際にすべきこと
老後の住み替えを考える場合、無理のない範囲内での予算計画を立てなければなりません。
そのためには、現実的に住み替えを検討していく必要があります。
老後の住み替えを検討する場合には、以下の順で進めていきましょう。
(1)今後のライフプランについて家族と話し合う
まずは今後のライフプランについて夫婦で話し合い、住まいについて考えることから始めます。
定年後は再就職をした場合でも収入が減少する可能性があるので、これまでの貯蓄と老後必要な資金なども踏まえて資金計画を立てる必要があります。
また、住み替えを検討し始めた時点で、子供や兄弟姉妹などの家族にも相談しておくことが大切です。
現在住んでいる自宅をどうするのか、住み替え先は家族が気軽に会いに行ける立地なのか、保証人を頼む必要があるのかなど、住み替え先を決める際は、家族の協力や了承を得る必要があるからです。リバースモーゲージを利用する場合は、推定相続人の承諾が必要となることもあります。
現在住んでいる自宅が子どもたちの実家である場合、相続を希望する子どもがいる可能性もあるでしょう。勝手に売却してしまうとトラブルの元になるため、あらかじめ話を通しておくことが大切です。
(2)住宅ローンの残債を調べる
住み替えを検討する場合、現在住んでいる一軒家のローンの残債を把握することも大切です。
住み替えで家を売却するのであれば、住宅ローンの残債を全て完済しなければなりません。
家の売却代金を返済に充てることや預貯金で補うことも可能ですが、不足する場合には住み替えローンや任意売却などを検討する必要があります。
(3)家の売却価格の相場を調べる
住宅ローンの残債を確認した後は、家の売却価格の相場を調べます。住んでいる家の売却価格の相場が分かれば、住宅ローンの残債から手元に残せる資金を計算することができるため、今後の方針について決めやすくなります。
家の売却価格の相場を調べる際には、複数社の不動産会社へ依頼して見積もりを出してもらうことをおすすめします。
(4)住み替えるマンションの予算を考える
最後に、住み替えるマンションの予算を具体的に検討していきます。無理のない範囲の自己資金に加え、不足する場合は住宅ローンの借入が必要になります。
老後に高額な住宅ローンの返済は難しいため、生活を圧迫しないような範囲内の借入額を想定するとよいでしょう。
毎月の住居費をどの程度負担できるかによって、住み替え先の選択肢は変わってきます。自宅の住宅ローンを既に払い終えており、家にかかるお金がほとんどないという場合、住み替えにより住宅ローンや家賃の支払いで住居費が増す可能性があります。
一般的に、毎月の収入に対する住居費の割合は30%程度が目安であり、25%以下なら安全圏といわれています。現在の収入を考慮し、どの程度であれば無理なく支払えるかを考えてみましょう。
6.老後に一軒家からマンションへの住み替えを成功させるためのポイント
老後の一軒家からマンションへの住み替えを成功させるには、老後の生活のイメージと資金計画をしっかり立てることが大切です。
老後の住み替えを成功させるためのポイントについてまとめました。
(1)賃貸よりも購入
老後の住み替え先を、賃貸にするか購入するか迷う方も多いでしょう。資金に余裕があり、長期間住む場合は、賃貸よりも購入した方がお得になることが多いです。
賃貸の場合、長く住むと家賃の支払いが大きな負担になるにも関わらず、自分の資産にはなりません。購入した場合、長期間経てば毎月のコストは下がり、住宅ローンの返済後は出費も減らせるようになります。
(2)無理のないローンを組む
住宅ローンは70歳まで組むことが可能です。ただし、高齢になってからも長期間返済を続ける契約は審査が厳しくなるため、審査に通らない可能性があります。
また、審査に通っても、年金だけでの支払いが厳しくなり、生活を圧迫する可能性も考えられます。老後に向けて住宅ローンを組む場合、無理のない範囲内で余裕を持ったローン返済の計画を立てましょう。
(3)無理のない範囲内で資金調達をする
家の住み替えには、少なからず費用が発生します。貯金にあまり余裕がなく、費用を支払えるか心配だという方もいらっしゃるかもしれません。
そのような場合に利用できる可能性のある資金調達手段について説明します。
①現在の自宅を売却して資金を得る
現在住んでいる自宅の売却が可能な場合、自宅を売却すれば、住み替えのための資金を確保できます。
自宅を売却する際に注意したいのが、「新居の確保が先か、自宅の売却が先か」という問題です。売却してから予算に合わせた新居を探す場合、新居が見つかるまでの間に住むためのつなぎの住宅が必要となります。一方、新居への引っ越しを先にする場合、新居にかかる費用を別途工面しなければなりません。
経済状況や売却時期などを考慮して、売却と引っ越しのどちらを先にするか慎重に決めましょう。
②リバースモーゲージを活用する
リバースモーゲージを活用して新居を確保するという方法もあります。
リバースモーゲージは不動産担保ローンの一種で、シニア層を対象とした商品です。死後に不動産を売却して元金を一括返済することを条件に、存命中は金利のみの返済で資金の借り入れが可能です。
資金使途を住宅の購入やリフォームなどに限定した「リバースモーゲージ型住宅ローン」という商品もあります。
③親族間売買で子供に家を譲る
子供や親戚など親族の中に、自宅を引き継ぎたいと希望する人がいる場合、その人に自宅を売却し、新居のための資金調達をすることも可能です。思い入れのある自宅を親族に譲って残すことができるため、老後の住み替えのために利用されることも多い方法です。
ただし、親族間売買は、購入する側が住宅ローンを利用することが難しいというデメリットもあります。また、みなし贈与と判定されて贈与税が課される可能性があるので、売却価格の設定にも注意が必要です。
まとめ
老後に一軒家からマンションへ住み替えると、快適な生活を送れる可能性が高いでしょう。リフォームや修繕などの費用面から考えてもメリットがあるといえます。
住宅ローンの残債が残っているからという理由で住み替えを諦める方もいらっしゃるようですが、現在住んでいる家を任意売却すれば、住宅ローンが残っている状態でも売却が可能です。
当社は、数多くの任意売却の実績を持つ不動産会社です。ご相談者様のご希望や状況を丁寧にお伺いした上で、最適な解決方法をご提案します。老後の住み替えに関するご相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
当社での相談から解決までの流れはこちらで紹介していますので、参考にしてください。
寺島 達哉
クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉