老後に住宅ローンが払えない場合の対処法・住み続ける方法も解説

「定年後の年金が想像以上に少なかった」「嘱託(再雇用)で働いているけれど、現役時代に比べて収入が大幅に減った」等で老後の住宅ローンの支払いに悩まれている方も多くいらっしゃると思います。

この記事では、老後の収入減により住宅ローンの支払いが困難になった方が取れる手段・対処法について解説いたします。

1.実は珍しくない老後住宅ローン破綻

当社のご相談者様の中には「年を取ってから住宅ローンで破綻するなんて情けない」などとおっしゃる方も多いのですが、実は老後の生活の変化によって住宅ローンを払えなくなる人は決して少なくありません。では、なぜこのような事態が起きるのでしょうか。よくある要因について説明します。

(1)退職金が想定より少ない

日本経済全体の不景気に伴う企業の業績悪化により、退職金が想定より大幅に少なかったというケースは増えています。特に、バブル経済特有の「働けば働くほど豊かになる」という価値観のまま定年まで過ごすと、見込みより大幅に少ない退職金に愕然とすることもあるでしょう。

退職金に期待して貯金をあまりしていない場合、老後の生活の大きな足かせとなることも多いのです。

(2)子供の教育費がかさむ

高齢出産の世帯では、親が定年間近まで子供の教育費を払い続けているケースがあります。この場合、子供の教育費が老後の生活や住宅ローン返済に及ぼす影響はより大きくなります。

例えば、40歳で子供が生まれた場合、大学の学費を払い終えるのは60歳を過ぎた頃になります。親の貯金から学費の全額を支払っている場合、老後を目前に資産が大きく減少することになります。また、教育費を親名義の教育ローンで賄っているケースでは、住宅ローンと教育ローンを二重に支払っている場合もあります。

(3)医療や介護に費用が発生

自分や親世代の医療費・介護費がかさみ、経済状況が悪化することもあります。特に、入院を伴う長期の治療や、介護施設へ入居している場合は、経済的負担が大きくなります。

現在は、日本人の3人に1人ががんにかかる時代といわれています。がんの治療や入院にかかる医療費の自己負担額は、入院が長引くと100万円を超えることも多く、非常に大きな経済的負担がかかります。

年を取ると介護や医療が必要になる機会は増えるため、その分支出が多くなることも考慮しておかなければなりません。

(4)定年後に収入が減少して返せない

定年後、年金だけでは生活が安定しない場合、再雇用制度を利用して働き続けることになります。しかし、多くの企業では、同じ仕事をしていても定年後に給与が下がるケースが多いです。

給与が下がると当然のことながら定年前と同じ生活はできないことが多く、住宅ローンの返済にも支障をきたす原因となります。

2.定年後の収入減で住宅ローンが支払えないとどうなる?

定年後に減少した収入をカバーできず、住宅ローンが支払えない場合はどうなるのでしょうか。支払いを滞納した場合に起きることを説明します。

(1)住宅ローンの一括返済を求められる

住宅ローンの滞納を続け、督促に対応しないまま放置していると、一括返済を請求されます。

住宅ローンを分割払いする権利は、滞りなく払い続けることで保障されるものなので、滞納が続くとその権利を失うことになります。分割払いの権利を失うと「期限の利益の喪失通知」という書面によって通知されます。

これ以降、返済スケジュールの変更などには対応してもらえなくなり、次の競売の準備が粛々と進むことになります。また、連帯保証人を立てている場合は、連帯保証人にも督促の連絡が届くことになります。

(2)滞納を続けると「競売」になる

その後も借入先に何の連絡もせず、住宅ローンの滞納を数か月(3ヶ月~6ヶ月)続けると、最終的には「競売」を申立てられます。

競売とは、裁判所が行う公的なオークションのことで、強制的に自宅が売却されてしまいます。

競売の流れについて、詳しくは「住宅ローンの滞納で競売に!差押を回避する方法は?」で解説しておりますのでご参照ください。

(3)一般売却や任意売却を検討する

①一般売却(オーバーローンではない場合)

住宅ローンの支払いが困難な場合、滞納を続け、放置しておくと競売によって市場より安価(6割~7割程度)で売却されてしまいます。

安価で売却される前に自宅を売却してローンの返済を検討しなくてはいけません。

しかし、住宅ローン組んでいる大半の自宅が、売却可能価格よりも残ローンのほうが多く残っている状態(オーバーローン)となっています。

特に顕著なのが郊外の新築戸建をフルローンで購入された方で、大半はオーバーローン状態となっています。

マンションの場合は汎用性が高く、立地が良ければ残ローンを上回る価格で売却も可能な場合もありますが、こちらもオーバーローンになっている可能性は十分にあります。

まずは、ローン残高がどれくらいあるのかを正確に把握する必要があります。

② 任意売却(オーバーローンの場合)

売却可能額よりも残ローンが多い場合、金融機関の抵当権が付いているため、通常は追い金(追加でお金を出すこと)
をしなくては不動産の売却はできません。

抵当権とは、ローンを組んで不動産を購入した際に、土地と建物を担保として金融機関が設定する権利になります。

したがって、ローンを全額返済しない限り、この抵当権の抹消ができないため、残ローン以下で勝手に売却ができないのです。

例:売却可能額2,000万円、残ローン3,000万円の場合

1,000万円の追い金(現金)をしないと売却ができません。

住宅ローンの滞納をしていて、売却するにも追い金ができない場合でも、一定の要件がありますが、「任意売却」という方法で不動産の売却が可能です。

「任意売却」とは、上記例のような状態でも残ローン以下で不動産の売却ができる方法です。

上記の例では、残ローン3,000万円に対し、2,000万円で売却しているため、残債を大きく減らすことができます。

ただし、任意売却を成功させるためには、実績が豊富な不動産会社を慎重に選ぶ必要があります。

3.老後に収入が低下・不安定になった場合も自宅に住み続ける方法

住宅ローンの支払いが困難になると自宅の売却を余儀なくされますが、一定の要件をクリアにすれば、自宅に住み続けることができる可能性があります。以下では住み続ける方法について解説していきます。

(1)リスケジューリングで住宅ローンの返済を見直す

住宅ローンを借りている銀行にリスケジューリングの申出をしてみましょう。

リスケジューリングと返済計画の見直しで、例えば当初は30年ローンを組んでいたけれども、返済期間を35年に延長してもらうことによって毎月の支出を抑えることができます。

場合によっては、当分の間は利息の支払いのみで応諾してくる金融機関もあります。

ただ、支払い期間が延びている分、利息が上乗せされるため、総支払金額は増加します。

また、収入の回復の見込みがあり、一時的な収入減であればリスケジューリングは得策といえますが、今後収入の回復の見込みがない場合、徒労に終わる可能性もあります。

(2)個人再生で住宅ローン以外の債務を整理

個人再生とは、裁判所の許可を受けて借金を大幅に減額してもらう制度です。

個人再生の場合、住宅ローン特則が認められれば、住宅ローンはそのままで他の債務を5分1程度に圧縮することが可能です。

住宅ローン以外の債務(カードローン等)の支払いが厳しい方には、個人再生は得策と言える場合があります。しかし、住宅ローン以外の債務が無い方には適していません。

(3)リースバックで売却後に賃貸として住む

リースバックとは、投資家や不動産会社に自宅を売却すると同時に賃貸借契約を結ぶことをいいます。

所有権は移転しますが、賃貸物件として住み続けることが可能です。

一般的にリースバックの買取額は市場価格よりも低額(7割~8割)となるため、残ローンを上回るほどの買取額が見込めないことも多くあります。

詳しくは「リースバックと賃貸の違いは?判断基準と利用時の注意点」にて解説しております。

(4)親族間売買で家族・親戚に売却

親族間売買」とは、その名の通り親族間で売買をすることを指します。

また、親子間で売買することを「親子間売買」といいます。

売却する相手が、親族になるため、交渉次第では、低額な家賃や無償で住ませてもらえる可能性があります。

ただ、親族間売買・親子間売買の場合、現金で売買するのであれば問題ありませんが、購入者がローンを借りて購入を検討するとなるとハードルが高くなります。

詳しくは、「親族間売買で住宅ローンの利用が難しい理由・審査に通らない際の対処法は?」で解説してます。

(5)リバースモーゲージ型住宅ローンに借り換える

リバースモーゲージ」とは、自宅を担保にしてまとまった資金を借入れする方法です。

リバースモーゲージは、どちらかというと資産価値の高い不動産の場合には利用できますが、郊外の戸建やマンションの場合、利用できないことがよくあります。

また、借入後は毎月金利の支払いが必要になり、最終的には契約者が死亡すると担保にした不動産の、リバースモーゲージ会社(金融機関)に移転するため、事前に相続人とよく話あうことが必要です。

4.老後に収入が低下・不安定になった場合の生活再建

再就職するのも現実的ではなく、今後の収入回復が見込めない場合、法律の専門家(弁護士・司法書士)や行政機関に相談が必要になります。 

(1)まずは生活費を見直す

基本的なことですが、日々の生活の支出のなかに、無駄が発生していないか見直してみましょう。

ほとんど乗らない車や、保障の重複した保険、必要以上に高額なプランに設定されている携帯電話などは解約や変更を行っても生活に支障が出ないことも多いです。食品や新聞などの定期購入も、無駄があるようなら見直してみることをおすすめします。まずは家計を適切な形に再編成し、その上でいくら不足しているのか計算してみましょう。

(2)生活保護を受ける

生活保護とは、何らかの事情により収入を得ることが困難な方に対して行政がおこなっている支援制度になります。

生活保護を受給するためには、様々な条件がありますが、お住まいの自治体の福祉事務所で相談が必要です。

生活保護制度:厚生労働省HP

(2)借金がある場合は債務整理をする

①任意整理

任意整理とは、一般的には法律家(弁護士・司法書士)に依頼をして、借金の利息をカットしてもらう方法です。

あくまでも元本は据え置きで、利息を免除されるだけのため、利息の高いカードローンの任意整理であれば有効かもしれませんが、抜本的な解決策とはいえません。

自己破産

自己破産とは、基本的には抱えている債務をすべて免責される制度です。

収入に対して借金の返済額が多く、生活が立ちいかない場合、返済しても利息が高く、返済しきれない場合に生活の再建を図る方法です。

詳しくは、「住宅ローンの滞納が続くと自己破産しかない?住み続けたい場合の対処法は?」で解説しています。

5.定年後の収入減を補う高年齢雇用継続給付

60歳以上65歳未満の方はまず、以下に該当するか確認してみてください。

60歳以上65歳未満の方はまず、以下に該当するか確認してみてください。

(1)高年齢雇用継続給付の概要

「高年齢雇用継続給付」とは、60歳時点の賃金よりも、60歳以後の賃金が75%未満になる場合、最大で賃金の15%が支給される制度です。

平たく言うと、60歳以降に給料が少なくなった場合に、一部を補填する制度です。

「高年齢雇用継続給付」には、以下の通り、「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の2種類あります。

①高年齢雇用継続基本給付金

「高年齢雇用継続基本給付金」は、60歳以降に失業保険を受け取らず、引き続き勤務した場合に受給できる給付金になります。

そのため、一度退職して失業保険を受給し、再就職した場合は対象外となります。

その他の受給要件は次の2点となります。

  • 60歳以上65歳未満であること
  • 被保険者であった期間が5年以上であること

②高年齢再就職給付金

「高年齢再就職給付金」とは、退職後に失業手当受給履歴のある60歳以上65歳未満の方が、再就職した際に支給される給付金となります。

その他の受給要件は次の通りとなります。

  • 60歳以上で失業保険を受給中に再就職したこと
  • 失業保険の支給残日数が100日以上あること
  • 再就職先で1年以上の継続雇用が確実なこと
  • 雇用保険を5年以上払っていた期間があること

厚生労働省のHPでQ&Aが公開されているので、詳しくはこちらをご参照ください。

(2)手続きについて

受給手続きについては、原則として勤め先(事業主)を経由して行う必要がありますが、本人が希望する場合には、ハローワークで申請手続きが可能です。

(3)給付開始日

支給開始決定から約1週間で指定口座に振込みがされます。

必要な書類を提出して支給開始決定まで時間を要するため、余裕を持たせた資金計画が必要となります。

6.まとめ

「老後に住宅ローンが支払えなくなった場合にとるべき手段・解決方法」について解説しましたが、ご所有の不動産の価値や今後の収入見込み等によって取れる方策は変わります。

弊社の初回相談では、現状と今後のご希望をお伺いし、これから取れる手段を提案させていただき、問題解決の最後までサポートいたします。

ご相談いただいた方に「今後の流れと、今やるべきことが明確になりました。」「一人でどうしようか悩んでいたけれど、話を聞いて安心しました。」というお声をよくいただきます。

相談は無料となっておりますのでお気軽にお問い合わせください。

寺島 達哉
寺島 達哉

クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉

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