役職定年後に住宅ローンが払えない場合のリスクや対処法を解説

近年、部長や課長などの役職に就いていた人が一定の年齢を超えると役職から外される「役職定年制度」を導入する企業が増えています。役職定年後、多くの人が直面する問題が収入の減少です。住宅ローンが残っている場合、収入が減ることにより、毎月の返済が重荷になります。一般的に、役職定年は60歳前後で迎えることが多く、その後は役職定年前と比べて収入が大幅に下がるケースも少なくありません。

今回は、役職定年を迎えて住宅ローンの支払いが困難になった場合のリスクと対処法などについて解説します。

1.住宅ローンの滞納を続けた場合のリスク

役職定年後に収入が減って住宅ローンを支払うのが困難になり、返済を滞納してしまった場合、どのような事が起きるのでしょうか。

(1)自宅を競売で売却される

長期間に渡り住宅ローンを滞納した場合、最終的には自宅が競売で売却されてしまいます。これは、住宅ローンの契約時に、金融機関が自宅に抵当権を設定しているからです。住宅ローンの滞納が続くと、債権者は、担保である自宅を売却することにより、ローン残額の回収を図ります。

競売は、通常の不動産売却と比べ、所有者にとって経済的・精神的ダメージの大きな売却方法なので、競売にかけられる前に対処することが大切です。

(2)信用情報に遅延情報が記録される

住宅ローンの滞納が続くと、信用情報に遅延情報が記録されます。

信用情報とは、金融機関やクレジットカード会社が登録・閲覧できる個人の金融に関する信用情報のデータベースのことです。

事故情報が掲載されると、新たにローンを組む場合やクレジットカードの新規作成の際に、審査に通らなくなります。俗に言う「ブラックリスト入り」という状態になってしまうのです。

(3)連帯保証人に請求が届く

返済を滞納した場合、ローン契約時に設定した連帯保証人に請求が届きます。滞納から2~3か月しか経過していない初期の状態でも、連帯保証人に連絡されることがあるため注意が必要です。

「連帯保証人には迷惑をかけたくない」と思われる場合は早期に対策を打つ必要があります。

2.役職定年後に住宅ローンの支払いが難しい場合の対処法

役職定年後に住宅ローンの支払いが難しくなった場合、早い段階で返済プランを見直すとよいでしょう。具体的な見直しの手順について説明します。

(1)毎月の収支を把握する

まずは、毎月の収支を正確に把握しましょう。役職定年後の毎月の収入と、住宅ローンを含む毎月の支出をリストアップして、まとめましょう。光熱費など変動があるものは、季節など変動の要因を加味し、できる限り現実に近い数値を把握しましょう。

毎月の収入と支出をリストアップできたら、毎月の収支がマイナスかプラスかを確認します。プラスの場合、マイナスに転じる可能性がなければ、今までどおり住宅ローンの返済を続けていけるでしょう。

(2)住宅ローンの返済プランを見直す

毎月の収支がマイナスの場合は、貯金を切り崩して住宅ローンを支払うことになります。貯金が十分にあれば問題ないかもしれませんが、貯金を切り崩すことで、老後の資金が減るという点にも注意が必要です。

貯金を切り崩して住宅ローンの支払いを続けるのが難しい場合は、住宅ローンの返済プランを見直すとよいでしょう。住宅ローンの借り入れをしている金融機関に相談し、役職定年を迎えて収入が減少しても無理なく返済を続けられる計画に変更してもらうとよいでしょう。

(3)住宅ローンの借り換えを検討する

住宅ローンの借り換えが有効な手段となることもあります。借り換えによって、金利が低いローンに変更できれば、毎月の返済額を減らすことが可能です。ただし、借り換えには手数料や諸費用がかかるため、事前にしっかりと手数料を確認する必要があります。

また、借り換えによって返済期間が延びることもあります。金融機関によって返済プランや手数料が異なるため、複数の金融機関の情報を比較検討することが大切です。

3.住宅ローンの支払いを続けるために収入を増やす方法

役職定年後に住宅ローンの支払いを無理なく続けるために、収入源を増やすことを検討してもよいでしょう。具体的な方法について説明します。

(1)副業で収入を得る

役職定年後、減った分の収入を補うために副業を始める方もいらっしゃいます。例えば、今までの仕事の中で培ったスキルや経験を活かしたフリーランスの仕事や、在宅でできるライティング業務などが挙げられます。また、趣味を生かした写真販売やハンドメイド商品のオンライン販売も人気があります。時間や場所に縛られず、自分のペースで働ける仕事も多いので、会社に在籍しながら無理なく取り組めるでしょう。

アルバイトの仕事を探したい場合は、シニア層向けの職業紹介所を利用してもよいでしょう。パートタイムで働ける企業も増えてきており、柔軟な働き方を選択することが可能です。

新たな資格を取得して、副業を始めるという方法もあります。最近はシニア世代が、教育訓練給付制度を活用してリスキリングをして資格取得を目指すケースも増えています。

自分に合った副業を見つけ、計画的に取り組むことで、毎月の収入を確保でき、住宅ローンの支払いも無理なく続けられるでしょう。副業を始めることは、老後の資金を十分に確保して、充実したセカンドライフを送ることにもつながります。

(2)年金の繰り上げ受給を検討する

体力的に副業をするのは難しいという場合は、年金の繰り上げ受給を検討してもよいでしょう。老齢基礎・厚生年金は、原則として65歳から受け取ることができますが、希望すれば60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて受け取ることが可能です。年金を受給することにより住宅ローンの支払いを無理なく続けられる可能性が高くなるでしょう。

ただし、繰上げ受給の請求をした時点に応じて年金が減額され、その減額率は一生変わらないという点には注意が必要です。高齢になってから後悔する可能性もあるので、慎重にシミュレーションをしたうえで判断しましょう。

参考:年金の繰上げ受給(日本年金機構公式サイト)

(2)退職金の前払い制度を利用する

在籍している企業で、退職金の前払い制度を利用できる場合は、利用を検討してもよいでしょう。本来、退職金は従業員が退職する際に支払われますが、従業員の希望に応じて在職中に前払いをする制度を設けている会社もあります。

退職金を前払いすることで収入を増やし、住宅ローンの返済に充てることができるでしょう。ただし、前払いされた分、退職時に受け取る退職金が減るという点は認識しておきましょう

4.住宅ローンの支払いを続けるために支出を減らす方法

役職定年後に住宅ローンの支払いを無理なく続けるためには、収入源を増やすことだけではなく、支出を減らすことも有効です。支出を減らすためにできることを紹介します。

(1)食費を減らす

役職定年後に収入が減っても、住宅ローンの支払いを無理なく続けるためには、日常生活でできる節約術を身につけることも重要です。まずは食費を見直しましょう。一週間単位で献立を考え、近所のスーパーの特売日などを狙ってまとめ買いすることで、食費を抑えることが可能です。外食の頻度が多い場合は、外食の頻度を減らすだけでも食費の節約になるでしょう。

(2)毎月かかる支出を見直す

保険料や通信費など、固定費の見直しも効果的です。特に、スマートフォンのプランは定期的に見直しを行い、無駄なオプションサービスは削除しましょう。水道光熱費については、節水シャワーヘッドの導入やLED照明への変更などの工夫が節約につながります。また、通信費は格安SIMや家計に合ったプランに見直すことで削減可能です。

一つひとつの支出に目を向け、安く抑える方法がないか丁寧に検討することが大切です。

(3)趣味や娯楽にかかる支出を見直す

趣味や娯楽などにかかる費用も見直してみましょう。AmazonプライムビデオやNetflixなどのサブスクリプションサービスを利用している場合は、不要なサービスを解約することで節約できるでしょう。

また、休日のレジャーは、公園でのピクニックやハイキング、図書館の利用などにすることで、出費を抑えながら楽しい時間を過ごすことができます。

このような小さな工夫を積み重ねることで、毎月の支出を減らし、住宅ローンの支払いを無理なく続けられるようになる可能性もあるでしょう。

5.住宅ローンの支払いが困難になったら専門家に相談

役職定年後に住宅ローンの支払いが困難になった場合、ファイナンシャルプランナー(FP)などの専門家に相談すれば、住宅ローンの返済計画を再構築するための具体的な方法を提案してもらえるかもしれません。自分では思いつかなかった方法を教えてもらえる場合もあるでしょう。

早期に相談すれば、問題が深刻化する前に対処できる可能性も高まります。FPは定年後も安定した生活を送るための長期的な金融計画に関するアドバイスも提供しています。資産管理を明確にして、手持ちの貯蓄を投資信託などに分散投資をして、資産を増やす方法なども教えてもらえるでしょう。

まとめ

今回は、役職定年を迎えて住宅ローンの支払いが困難になった場合のリスクと対処法などについて解説しました。

役職定年後に収入が大幅に減少して住宅ローンが困難になった場合、現在の返済計画を見直しましょう。退職金の前払いや年金を活用する方法もありますが、その場合は老後の生活費も考慮に入れた上で検討することが大切です。さまざまな方法を検討しても住宅ローンの支払いを続けることが難しい場合は、自宅の売却を検討してもよいでしょう。

当社は、住宅ローン滞納問題を専門的に扱う不動産会社です。ご相談者様の状況やご希望を丁寧にお伺いした上で、最適な解決方法をご提案します。

「競売だけはなんとか回避したい」「住宅ローンの支払いが難しいけれど、今の家に住み続けたい」など、さまざまなご相談に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

こちらでは、当社での相談から解決までの流れを紹介していますので、参考にしていただければと思います。

寺島 達哉
寺島 達哉

クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉

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