親族間売買で住宅ローンの利用が難しい理由・審査に通らない際の対処法は?

親族間売買を検討する上で、問題となるのが住宅ローンの契約です。現金一括で購入するのではない限り、いずれかの金融機関で住宅ローンを利用するのが前提となるからです。
しかし、親族間売買では、住宅ローンの審査に通りにくく、利用が難しいという現実があります。なぜ住宅ローンの審査に通りにくいのでしょうか。この記事では、親族間売買での住宅ローンの契約が難しい理由と、審査に通らない場合の対処法を紹介します。
1.親族間売買とは
親族間売買とは、読んで字のごとく親族間での不動産の売買のことです。通常、親子の間で売買することが多いため、親子間売買とも呼ばれます。親族間売買は、売買相手が気心の知れた家族や親族ということもあり、売り手・買い手の双方にメリットの多い売買方法です。
(1)親族間売買のメリット
親族間売買のメリットはいくつか存在しますが、そのなかでも代表的なのは以下の3点です。
①実質的に親の住宅ローンを肩代わりできる
親子間売買では、親の住宅ローンに残債があり経済的に困窮している場合、売買を行うことで、家の代金でローンを完済できることがあります。実質的にローンを肩代わりすることになり、親の負担を減らすことができます。
②将来的な「争族」の発生を予防できる
不動産は遺産となってしまうと分割の難しい財産です。金銭と違って簡単に分割できないため、相続人が複数存在する場合は家をめぐって争いに発展することもあります。このような場合に「売買」という形できちんと代金を払って相続人の一人が引き継ぐことで、相続発生時のトラブルを回避できます。
③住み慣れた家が他者の手に渡らない
経済的に困窮しており、家の売却を検討する段階まできていても「大切な家が他人の手に渡ることに抵抗がある」という方もいらっしゃいます。親族間売買では、売却するのは子供や親戚などよく知る相手です。そのため心理的抵抗も少ないのではないでしょうか。また、子供に売却する場合は名義のみ変更した状態に近く、売却後も住み続けられるケースが多いです。
2.親族間売買で住宅ローンは利用できる?
相手が親族や親とはいえ、家は市場価格にのっとった適正価格で売買する必要があります。すなわち多くのケースで住宅ローンの契約が必要となるのですが、これには多くの壁が存在します。
(1)多くの銀行は親族間売買の資金を融資しない
第一に、多くの銀行は、親族間売買には住宅ローンの貸し付けを行いません。理由は後程解説しますが、「親族間売買をしたい」と伝えると審査さえしてもらえないことも珍しくありません。
都市銀行(メガバンク)や住宅金融支援機構ではまず融資を受けられませんし、地方銀行や信用金庫でも断られることが多いです。
(2)親族間売買に融資してくれる金融機関は?
実は、親族間売買で融資を利用できる金融機関は皆無ではありません。地方銀行や信用金庫のごく一部や、ノンバンクなどの住宅ローンを利用できることがあります。
とはいえ、銀行の住宅ローンと比べると利息が高いなど、不利な条件での融資となるのが一般的です。
3.親族間売買で住宅ローンを利用しにくい理由
そもそも、親族間売買に対する金融機関の姿勢が厳しいのはなぜなのでしょうか。原因はいくつか存在しますが、主な理由について説明します。
(1)売買ではなく贈与と認識される
親族間売買は、適切な売買ではなく、売買を隠れみのにした贈与ではないかと疑われることがあります。
通常、親子や祖父母などから家を譲渡する場合、売買ではなく相続や贈与という形になるのが一般的です。あえて売買という形をとることで、相続税や贈与税を脱税しているのではないかと懸念されるのです。
税制上の不正を直接取り締まるのは税務署の役目ですが、金融機関としても脱税の片棒を担ぐわけにはいきません。「全ての親族間売買が贈与であるとは限らない」ということは金融機関も認識しているのですが、リスク軽減の観点から敬遠されやすいのです。
(2)借入金の使途を疑われる
もう一点の問題が、借入金の使途そのものを疑われることです。そもそも金融機関のローンの多くは、一部の多目的ローンを除き、貸付金の使途が指定されています。住宅ローンも、住宅購入資金に充てることを条件として、低金利で貸し付けを行っているのです。
親族間売買は、金融機関にとって、貸付金を他の用途に流用されるリスクがある取引です。買主・売主が親族なので、架空の売買を理由に融資を申し込むこともできてしまいます。事実、住宅購入資金として貸し付けた資金が、事業用資金として利用されていたケースは多く見られます。このような背景から、金融機関は親族間売買には消極的なのです。
(3)物件の評価額が安くなりやすい
物件の評価額が安くなりやすいのも、親族間売買が敬遠される理由の一つです。親族間売買で担保となる住宅は、親や祖父母・親族の代から立っている古い住宅も多いです。なかには築50年以上の住宅もあります。
新しい家ほど担保評価が高くなる日本では、古い住宅には高価格が付きにくいのです。特に戸建てで適切にメンテナンスされていない築古住宅は、不動産市場でほとんど価値がつかず、担保にならないこともあります。担保に価値がなければ、万一の際に貸付金を回収できません。この点も、親族間売買に対して金融機関が消極的な理由です。
4.親族間売買で金融機関から貸し付けを受けるには
ここまで、親子間売買での住宅ローン審査の厳しさについて説明しました。この点を踏まえた上で、住宅購入用の資金を調達するために、どうすればよいか説明します。
(1)ノンバンクのローンを利用する
解決策の一つとなるのが、ノンバンクのローンを利用することです。ノンバンクとは、消費者金融やクレジットカード会社など、銀行以外で貸金業法の業許可を持っている金融機関のことです。
一般的に、ノンバンクは銀行と比較して審査がゆるいと言われており、事実、親族間売買への貸し付けを積極的に行っている会社も存在します。ただし、審査に通りやすい分、金利が高いことがネックとなります。銀行の倍ほどの金利を設定していることも珍しくありません。
(2)親族間売買で融資を行っている銀行を探す
数は少ないですが、親族間売買に融資している、一部の地方銀行や信用金庫を探すのも手段の一つです。ただし、インターネットなどを駆使して探しても「親族間売買OK」と公言している銀行は少ないため、探し出すのはかなり骨が折れるかと思います。
しかし、不動産会社を通すことで、住宅ローンを組める金融機関を簡単に探し出せることがあります。詳しくは後程紹介します。
5.経験豊富な専門家に相談するメリット
住宅ローン審査に通ることができず、親族間売買が難航しているのであれば、親族間売買の実績が豊富な不動産会社に相談することが光明となる場合があります。「不動産会社に相談することと住宅ローンに通ることに何の関係があるの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんので、その理由を説明します。
(1)金融機関と提携している場合がある
親族間売買の実績が豊富で、多くの成功事例がある不動産会社は、金融機関と提携していることがあります。不動産会社から金融機関の紹介を受けることができるため、融資元が各段に見つけやすくなるのです。
当社でも、複数の金融機関と提携し、ご依頼者様のご希望に応じてご紹介しております。
(2)個人で融資を申し込むより格段に審査に通りやすい
不動産会社に相談することで、融資の審査自体も各段に通りやすくなります。これは、金融機関から見て、取引の信用が増すためです。
個人で審査を申し込むと、金融機関は本当に売買なのか、実は贈与なのか判断できません。リスクを考慮した結果、審査に落とされる、そもそも審査しないという回答になることもあります。この点、不動産会社には、過去の紹介実績によって担保される「金融機関からの信用」があります。金融機関から見ても、不動産会社経由での申し込みは安心感が違うのです。
このような事情から、不動産会社を経由して融資に申し込んだ方が、審査に通る確率は高くなります。
(3)金利を抑えることができる
単に審査に通りやすいだけでなく、不動産会社を通して申し込むと金利が低くなることがあります。
親族間売買の紹介で金融機関と付き合いのある不動産会社は、その分、金利を下げる交渉のノウハウを持っています。また、融資における金利の高さは、金融機関にとってリスクに対する安全装置としての側面があります。信用のある不動産会社からの申し込みであればリスクは低いため、金利を下げる余地があるのです。
融資に通る確率を上げ、より有利な条件で借り入れを行うためにも、不動産会社を通じて金融機関を探すことが重要となります。
6.まとめ
親族間売買は、貸付金の不正利用や贈与を疑われるといった理由から、金融機関が積極的に貸し付けを行わないのが一般的です。自力で審査に漕ぎつけられた場合でも、希望を大幅に下回る融資額になる、金利が高くなるなど、希望と異なる結果になることも少なくありません。
親族間売買で住宅ローンをより有利に契約するには、実績の豊富な不動産会社に相談することが近道です。過去の取引実績から金融機関の信用があるため、より審査に通りやすく、低金利での貸し付けを受けることができます。
当社には、さまざまな事情で住宅ローンを払えなくなった方が相談にいらっしゃいます。「家を手放すなら子どもや親族に売りたい」と希望される方も多く、解決策の一つとして親族間売買をご提案しています。
私達は、積み上げた実績と信用を武器に、依頼者様が少しでも有利に融資を受けられるよう、全力でサポート致します。ご希望がございましたら、提携先の銀行をご紹介することも可能です。相談は無料ですので、お気軽にご連絡いただければと思います。

井上 悠一
クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社・株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一