親族間売買の相談先の選び方・選定基準と注意点を解説

相談先のチェックポイント

親族間売買を検討する際、最初の壁となるのが「どこに相談すればよいのか」という問題です。親族間売買の特殊性から、どこに相談・依頼すればいいのかわからないという方は多いかと思います。

結論からいうと、親族間売買の相談先は、親族間売買の実績を豊富に持つ不動産会社がおすすめです。この記事では、親族間売買の相談先の選び方や選定基準、優良な相談先を厳選する方法や注意点について解説します。

1.親族間売買とは

親族間売買についてまだよく理解できていないという方もいらっしゃるかと思います。
まずは、親族間売買の概要について簡単に説明します。

(1)親族間で不動産を売買すること

親族間売買とは、家族や親戚など、親族の間での不動産売買のことをいいます。何らかの事情で家を売却しなければならないが、他者の手に渡すのは忍びないという場合に行われることが多いです。

(2)相続対策や住宅ローン滞納の解決策として検討される

親族間売買を検討する方にはさまざまな事情・背景がありますが、件数として多いのは、住宅ローンの滞納問題と相続対策です。

例えば、住宅ローンを滞納しており、家を売却して債務を返済しなければならない場合を考えてみましょう。このようなケースで「家に住み続けたい」「他人に売りたくない」という希望がある場合、親族への売却が選択肢の一つとなります。債権者の同意は必要ですが、購入者が資金を用意できれば成功する可能性はあります。

その他、住宅を所有している高齢の方が、自分の死後に不動産を巡って家族が争うことを懸念して、生前に希望者に売却するケースもあります。

(3)親族間売買の問題点

メリットの多い親族間売買ですが、売却までは一筋縄ではいきません。

基本的に、親族間売買は、親族の間での不動産の譲渡方法としてはイレギュラーなものです。贈与や相続による所有者の変更が一般的なため、「何かあるのではないか」と税務署からマークされる、住宅ローン審査で銀行から警戒されるといった壁があります。

このような問題を解決するためには、親族間売買に関する知識と実績を豊富に持つ相談先に間に入ってもらい、取引の信ぴょう性を高めることが重要です。

2.親族間売買を個人で行うことはできる?

親族間売買は、売買の当事者が親戚のため「わざわざ業者を挟まなくても」と考える方は多いです。また、個人間であれば不動産会社に払う手数料は必要ありません。では、個人で親族間売買は可能なのでしょうか。

(1)不動産の売買そのものは自分でもできる

不動産の売買自体は、個人でも可能です。「不動産売買では必ず不動産会社を通す」といったルールはどこにも存在しないためです。

契約書の作成や代金の受け渡し、名義の変更など、越えなければならないハードルはいくつかありますが、それをクリアできて不備がなければ個人間売買も認められます。実際に、通常の売買であれば、業者を通さず司法書士に依頼する方もいらっしゃいます。

ただし、親族間売買の場合は少々事情が異なります。以下で説明する理由から、実質的には親族間売買を個人で行うことはできません。

(2)個人間売買では住宅ローンを組めない

親族間売買では、物件を購入する人が住宅ローンを組むことが一般的です。

前提として、銀行を始めとした金融機関は、個人間売買には住宅ローンの貸付を行いません。というのも、金融機関の審査を受けるにあたり、宅地建物取引士による「重要事項説明」が必須なためです。

これは、売買や建物の状況・内容について購入者に説明するもので、重要事項説明書によってその内容を証明できます。重要事項説明書がなければ、金融機関はどのようなリスクのある物件なのか把握できないため、審査を通せません。

さらに、詳細は後述しますが、金融機関の多くは、さまざまなリスクから親族間売買への融資に消極的です。金融機関が安心して融資できる状況を作るという意味でも、不動産会社のサポートが必要です。

(3)住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の対象とならない

前述した通り、親族間売買を仲介会社に依頼せず個人で行った場合、住宅ローンを組むことができません。住宅ローンが組めない場合、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の税制優遇を受けられない点に注意してください。

この制度は、ローンを組んで住宅を購入した人に対し、毎年のローン残高の一定割合を毎年の税額から控除する制度です。年間数十万円の節税効果が見込め、住宅の購入を強力に後押ししています。

住宅ローン控除は借入金で家を購入した人が対象となるため、住宅ローンを組めない個人の親族間売買は対象外となります。

参考URL:No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁

(4)税務署からの贈与税課税リスク

個人間売買のもう一つの問題点として、贈与税課税リスクが挙げられます。不動産売買の価格が相場より大幅に安い場合、差額分は贈与と認定され、贈与税を課税されるリスクがあります。

不動産の個人間売買は、脱税の隠れミノにされることがあるため、税務署も相応に警戒してチェックします。相場を逸脱していれば、贈与税の対象となる可能性は高いです。

そのため、相場を正しく把握している不動産会社のサポートを受け、適正価格で売買する必要があります。

3.親族間売買はどこに相談すればいい?

親族間売買を検討した際、どこに相談するべきか迷われる方も多いかと思います。具体的な候補を挙げながら、適した相談先について説明します。

(1)司法書士への相談は不向き

親族間売買に関する相談先の候補として司法書士を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。たしかに、個人間での不動産売買では、不動産会社を通さず、司法書士に依頼して、契約書の作成や物件の名義変更を行うことがあります。しかし、親族間売買の相談先としては向きません。ほとんどの親族間売買は、代金のやりとりと名義変更ができれば完了というシンプルなものではないからです。

前述した通り、親族間売買では住宅ローン審査が一つの壁となります。メガバンクや地方銀行のほとんどは審査を通しません。貸し付けを受けられる金融機関を見つけるためには、見込みのあるところに絞って申し込む必要があります。

司法書士は法律の専門家ですが、親族間売買のサポートに特化しているわけではなく、住宅ローンをどこに申し込むべきか知らない可能性が高いです。そのため「司法書士に依頼すれば安心」とはいかないのが現実です。

(2)大手や近所の不動産会社への相談はリスクが高い

では、地元密着や大手など、一般的な不動産会社はどうでしょうか。結論からいうと、こちらもおすすめできません。

これらの不動産会社は、一般的な物件の売買や集合住宅の管理が主な業務なので、親族間売買などイレギュラーな案件に対するノウハウを保有していない場合がほとんどです。

住宅ローンをどこに申し込むべきか知らない可能性も高く、うっかりメガバンクや地方銀行にローンを申し込み、審査に落ちると、その事実が信用情報に掲載されてしまいます。普通でも通りにくい審査の難度がさらに上がるため、非常に高いリスクを伴います

また、オーバーローン状態の物件を売却する場合、債権者の許可取りや利害関係者との調整業務も発生します。親族間売買の経験や知識が不足した不動産会社に依頼すると、スムーズに進まない可能性が高いため、避けた方がよいでしょう。

(3)相談先として適しているのは親族間売買に詳しい不動産会社

親族間売買の相談先として適しているのは、任意売却や親族間売買などの実績を豊富に持つ不動産会社です。

実績が豊富な会社を相談先に選ぶことで、手続きの難度が大幅に下がります。査定から売却完了、売却後も住宅ローンの残債がある場合、その処理までサポートしてくれます。

このような不動産会社は、目立つところに店舗を出していることは少ないため、主にインターネットで探すことになります。

4.手数料を払ってでも相談先に不動産会社を選ぶメリット

「親族間での売買なのに、仲介手数料を払って不動産会社に相談する必要はあるのか」と疑問を感じる方もいるのではないでしょうか。親族間売買では売却先を見つけるための営業活動は必要ないため、そう思われるのも当然のことでしょう。

しかし、親族間売買は、一般的な売買とは別の面から、不動産会社のサポートが必要となります。不動産会社のサポートが必要な理由とサポートを受けるメリットについて説明します。

(1)住宅ローンを各段に組みやすくなる

親族間売買では、購入者側が住宅ローンを組んで資金を工面することが一般的です。前述した通り、親族間売買は多くの金融機関が敬遠するため、住宅ローン審査に通りにくい売買形式です。しかし、不動産会社を通すと、以下の理由から個人で手配する場合と比較してローンが各段に組みやすくなります。

【ローン審査で不動産会社を通すメリット】

  • 親族間売買でも融資可能な金融機関を知っている
  • 提携する金融機関で有利にローンが組めることがある
  • 不動産会社が入ることで売買の実態を担保でき信用が増す

資金を調達できなければ、売買そのものが失敗しかねません。この点で、不動産会社を通すことで大きなアドバンテージを得られるといえます。

(2)適正価格での売買ができる

次に、不動産会社を通すことで適正価格での売買ができるようになります。先ほど少し触れたように、相場を逸脱した価格での親族間売買は「相続税逃れの取引ではないか」と税務署にマークされるリスクがあります。

仮に相場の半額で購入した場合、税務署は差額である半分を贈与と認定する可能性が高いです。税務署に贈与と認定されると贈与税の課税対象となってしまいます。

このような事態を回避するためには、相場を熟知した専門会社による査定が重要です。ほとんどの会社が無料で査定を行っているため、不動産鑑定士などに依頼する場合と比べて費用を抑えられます。

(3)任意売却と組み合わせることも可能

親族間売買は、「住宅ローンを滞納しており、このままでは競売になってしまう」という状況の解決策として検討されることも多いです。このようなケースでは任意売却と組み合わせる必要があります。

任意売却とは、滞納しているローンの担保となっている、オーバーローン状態の住宅を、債権者の同意を得て競売以外の手段で売却する方法です。所有者に「家に住み続けたい」という希望がある場合、一般市場での売却ではなく、家族や親族に買い取りを頼むことがあります。

任意売却は競売と同時進行することから、競売の期日までに債権者の同意を取り付け、売却を完了させなければなりません。一般的な不動産会社や法律の専門家では対応しきれない可能性が高いため、任意売却に関する知識と経験を豊富に持つ不動産会社に相談することが大切です。

(4)各種手続きや書類作成を自分で行わずに済む

不動産会社に仲介を依頼する大きなメリットの一つが、各種手続きや書類の作成を自分で行わずに済むことです。

不動産の売買には、契約書や付帯設備表、マンションの管理規約など、さまざまな書類の作成・準備が必要となります。また、名義の変更など法務局での手続きも必要です。これらの作業を全て自力で行うと手間と時間がかかります。

苦労して自分で手続きしても、後から不備が発覚したりトラブルに発展したりなどのリスクを伴います。リスクを最小限に抑えるためには、不動産取引に関する専門知識を持つプロに任せることは賢い選択といえます。

料金も仲介手数料の範囲内に含まれているため、別途手数料などを支払う必要はありません。

5.相談先の不動産会社を選ぶ基準

インターネットや広告などには、任意売却や親族間売買の専門会社を自称する会社が多く見られます。この中から自分に合った相談先を選ぶには、どのような基準で選べばよいのでしょうか。

(1)親族間売買の実績の有無

相談先の選定基準として特に重要なのは、親族間売買の実績があるかという点です。親族間売買を成功させるために必要なノウハウは実務経験に依存する部分が大きいため、実績の多さは実力を判定する重要な基準といえます。

実績を手軽に確認できるのが会社の公式サイトです。会社にとってはセールスポイントの一つとなるので、ある程度の実績があれば具体な成功事例を紹介している可能性が高いです。

当社の親族間売買の解決事例はこちら

(2)金融機関と提携しているかどうか

提携している金融機関の有無もチェックしましょう。金融機関との提携の有無が重要なのは、金融機関から信用を得ている不動産会社かどうかを判断する指標となるからです。

金融機関からすると、信頼できる提携先からの紹介であれば、トラブルに巻き込まれるリスクは低くなります。その分が、審査の通りやすさ、金利の低さという面に反映されることがあるのです。

より有利な条件で確実に資金調達をするためにも、金融機関の提携の有無は必ずチェックしておきたいポイントです。

(3)不動産会社の専門性を見極める方法

ここまで相談先を選ぶ基準について説明しましたが、残念ながら表面的な情報だけでは、確実に優良な会社を選べないのも事実です。そのため、依頼の可否を最終的に決定するのは、電話や初回面談で直接話した後にすることをおすすめします。

その際、専門性を見極めるために以下のような質問をしてみてください。

①ローンを組みたいがどこに申し込むのが良いか教えてほしい

この質問に対して、メガバンクなど大手銀行を勧めてくる場合、知識・経験が不足している可能性が高いです。

②家族に売るのでなるべく安く価格を設定したい

この質問に対して、贈与税の課税リスクを説明しない会社は経験不足の可能性があります。

これらの専門的な質問に対して適切な対応ができない場合、依頼先の候補として相応しくないと判断した方がよいでしょう。

6.親族間売買に関するよくある質問と回答

親族間売買に関して、多くのご相談者様から寄せられる質問に回答していきたいと思います。

(1)不動産会社に依頼した場合の費用はいくら?

親族間売買の場合も、不動産会社に支払う報酬は、通常の売買と同じです。宅地建物取引業法で上限が決まっており、最大で「売却価格の3%に6万円をプラスした金額」が成功報酬として発生します。

仮に売却価格が1,500万円であれば「1,500万円×0.03+6万円=51万円」が報酬の上限となります。

参考:宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額|国土交通省

(2)親族間売買が成功しやすい条件は?

親族間売買の成功率は状況によって異なりますが、成功しやすいのは「不動産の価値が高い」かつ「ローンの残債が少ない」場合です。

親族間売買では、買主が用意できる購入資金が、残債を超えていなければなりません。物件の価値が高いほど借り入れられる金額が増加し、残債を上回る可能性が上がるためです。

(3)競売中の家でも親族間売買はできる?

親族間売買は、任意売却と組み合わせることができます。そのため、競売中の物件であっても、債権者の同意が取れるのであれば親族間売買で売却可能です。この場合、競売の売却価格以上の金額で購入ができるのであれば、債権者を説得できる余地があります。

ただし、一部の債権者は、購入者が親族なのだから、競売の売却価格ではなく「残債を全額返済できる金額」でなければ親族間売買に同意しないと主張することもあります。いわば足元を見られているため、経験豊富な不動産会社による交渉が必要となります。

7.当社でお手伝いした親族間売買の事例

当社は、これまでに多くの方から親族間売買のご相談を受けています。その中から一部の事例をご紹介します。

(1)老後の住宅確保のために親族間売買をした例

最初にご紹介するのは、自営業を営む50代のA様の事例です。寝屋川市に戸建てを所有されていましたが、老後は関東への移住計画を立てていたそうです。理想の物件に巡り会い住宅ローンの申し込みをされましたが、寝屋川の戸建てにローンの残債があり、断られたとのこと。

幸い息子さんから寝屋川の自宅を購入したいと申し出があったのですが、親子間売買に当たるため金融機関から融資を断られ、当社にご相談いただきました。

電話でご連絡をいただいた後、金融機関に問い合わせたところ融資可能との返答がありました。A様にお伝えして各種条件にも同意をいただいたので、無事に住宅ローン契約を締結することができました。

(2)母が住まなくなった家を購入した例

次にご紹介するのは、30代の公務員H様の事例です。H様からはお母様のお宅を購入できないかとご相談をいただきました。

お母様は、お祖母様の介護のためにご自宅にはほぼ不在という状況で、「もう住まないので売ろうと思っている」とH様にご連絡があったとのことです。いずれは実家に戻ろうと思っていたH様が実家の売却を申し出たところ、お母様からは、ローン残債が1,500万円あるので、それ以上の金額なら売却してもかまわないと言われたたそうです。そこで、H様は住宅ローンを組むために金融機関を探しましたが、親族間売買に該当するため断られてしまい、当社にご相談をいただきました。

当社が取引のある金融機関に問い合わせをしたところ、3社から融資可能との回答が得られました。H様にその中から条件の良いところをお選びいただき、無事に売買を完了させることができました。

(3)親族間売買で老後資金を確保した例

最後にご紹介するのは、自営業を営むT様の事例です。T様からは、老後資金確保のために親族間売買ができないかとご相談をいただきました。

もともとはリバースモーゲージを検討されていたそうですが、「いずれ相続する息子に売却したい」との思いから、親族間売買を検討されるようになったそうです。しかし、親族間売買であることから金融機関から断られてしまい、当社にご連絡いただきました。

当社が取引のある金融機関に問い合わせをしたところ、2社より融資可能との回答が得られました。無事、息子さんが住宅ローンを組むことができ、T様は1,500万円の老後資金を確保することができたそうです。

8.まとめ

親族間売買の相談先は、任意売却や親族間売買の実績を豊富に持つ会社から選ぶことをおすすめします。ただし、専門知識が不足している自称専門会社も存在しますので、今回紹介した基準で絞り込み、複数の会社を比較して選ぶことをおすすめします。

当社も、住宅ローンの滞納問題でお困りの方を数多くサポートしてきた専門会社です。親族間売買やリースバックなど、さまざまな選択肢からご相談者様の状況やご希望に合った解決策を提案させていただきます。ぜひお気軽にご相談いただければと思います。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一

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