親族間売買・親子間売買で「税金」がかかるのか?

親族間売買・親子間売買をする際に税金がかかるのか?税金がかかるとすればどのくらいの税金がかかるのか?疑問に思っている方が多いのではないかと思います。
この記事では、親子間売買・親族間売買でかかってくる可能性のある「税金」について解説していきます。
1.親族間売買・親子間売買とは?
親族との間で不動産を売買することを「親族間売買」、親子間で不動産を売買することを「親子間売買」と呼びます。
特に「親子間売買」の場合は、子は親が亡くなったときに、基本的には不動産を相続できるので、特別な事情がない限り売買することはないため、一般の不動産の売買 に比べると稀になります。
(1)ローンを組むことができるのか?
まず、親族間売買・親子間売買ローンを組むことは可能ですが、一般的な住宅ローンを組むよりもハードルは高くなります。
ハードルが高くなる理由としては、融資をする銀行が、売買ではなく、贈与という認識になるため、そもそも融資をしてくれる銀行が少ないのです。上記に述べた通りいずれ相続できる不動産をなぜ売買するのか、相続税逃れのための売買ではないかと疑われるため、大手の銀行は、まず融資をしてくれません。窓口で断られてしまうでしょう。限られた金融機関のみが、親族間売買・親子間売買の融資をしてくれます。
弊社では、この限られた金融機関と取引があるため、他社で断られた案件でも融資を受けることができ、無事に親族間売買・親子間売買ができたという事例が多くあります。
次に、融資をしてくれる銀行が見つかったとしても、思うような融資額を受けることができないことがあげられます。
例えば、2,000万円のローンを組んで、2,000万円で不動産を売買しようと検討していたが、提示された融資可能額は1,500万円であった等。
ローンを完済していれば、1,500万円で売買をすることをできますが、残債が2,000万円残っているとなると差額の500万円を用意しないと売買をすることはできません。
市場性があるエリアであれば、希望の融資額を借入することができるかもしれませんが、不動産の売買自体が活発ではないエリアとなると融資自体が難しいこともあります。
(2)親族間売買・親子間売買の注意点
相続人が複数いる場合は、注意が必要です。例えば、実家を長男が相続で取得するつもりだったが、次男が長男に何の相談もせずに親子間売買をしてしまう等、後々のトラブルになることもあります。
また、子がローンを組んだその後、独立して他の不動産(戸建やマンション)を購入するときに既にローンを組んでしまっているために、ローンが通りづらいということもあるので家族間で良く話し合うことが必要です。
参考記事:親族間売買の相談先の選び方・選定基準と注意点を解説
2.親族間売買・親子間売買で「税金」がかかるのか?
不動産の売買では、様々な税金がかかります(不動産取得税・登録免許税・印紙税・譲渡所得税等)。
こちらでは3パターンに分けて解説していきます。
(1)親子間売買・親族間売買で「高い価格」で売買した場合
この場合、売主が不動産を売却することによって、キャピタルゲイン(売買差益)が出た場合、譲渡をしたことによって利益を得ているため、売主は「譲渡所得税」がかかります
買主は、利益の出る高い金額で購入しているため、贈与税はかかりません。
(2)親子間売買・親族間売買で「通常の価格」で売買した場合
不動産を売却して利益がない場合、譲渡所得税はかかりません。また利益がでたとしても自己居住用の不動産の場合、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」が利用できるため、譲渡所得税はかかりません。
買主も、通常の価格で購入しているため、贈与税はかかりません。
(3)親子間売買・親族間売買で「著しく低い価格」で売買した場合
売主は低額で売却して利益が出ない場合、譲渡所得税はかかりません。
買主は、市場価格よりも安い金額で買い受けているため、「贈与税」が課されます。
3.なぜ、贈与税がかかるのか?
不当に安い金額で売買(低廉売買)した場合、売買ではなく、贈与と判断されてしまうと贈与税がかかってきます。
例えば、相場が2,000万円の不動産を1,000万円で子供に売却したとすると確かに1,000万円で売却はしているのですが、1,000万円市場価格より安く売買しているため、1,000万円の贈与があったものと見なされてしまうのです。
(1)贈与税がかかるとすれば、いくらかかるのか?
国税庁が贈与税の早見表を公開しています。
上記例と同じく、相場2,000万円の不動産を1,000万円で子供に売却して1,000万円の贈与とみなされた場合、早見表を基に計算すると一般贈与財産と特別贈与財産によって税率は異なります が、一般贈与財産の場合231万円、特別贈与財産の場合177万円の税金がかかってきます。
特別贈与財産とは、親や祖父母から20歳以上の子供や孫へ贈与のことをいい 、一般贈与財産より税率が低く設定されています。一般贈与財産とは、特別贈与財産以外の贈与財産のことをいいます。
「親子間売買」の場合は、特別贈与財産となるので177万円の贈与税がかかります。
(2) 税金がからない方法は
① 適正価格で売買
贈与税がかからない方法は、市場価格に近い金額で売却するほかありません。目安としては、固定資産税の評価証明書や戸建であれば路線価、公示価格が参考資料として有効になります。ただ、 いくらで売買すれば低廉売買に当たらない等の指針がないため、売買金額をいくらに設定するかは一般の人には難しい判断となります。
② 相続時精算課税制度
親族間売買で贈与税がかかるのを回避するために、相続時精算課税制度を利用できるのではないかと思われる方もいらっしゃるようです。
相続時精算課税制度とは 、60歳以上の親や祖父母が20歳以上の子供や孫に財産を贈与する際に、2,500万円までは贈与税を非課税にするという制度です。しかし、相続時精算課税制度とは、贈与をするときは非課税になるが、相続時には、非課税にした分もまとめて相続税を課税されるため、課税を回避するのではなく、先送りするだけとなる点に注意が必要です 。
相続時精算課税制度については、「相続時精算課税制度とは?親族間売買でも利用できる?」にて詳しく解説しておりますのでご参照ください。
4.まとめ
親子間売買・親族間売買でかかる可能性のある税金と税金がかからないようにする方法について解説しましたが、不動産売買に当たって税金は付き物です。
ですが、親子間・親族間で低廉売買をして余分な税金がかかってしまうのはあまりにも勿体ないことです。
親子間売買・親族間売買でいくらで売買をすれば良いのかわからない、融資を受けることが可能か等、ご不明な点がございましたら、 お気軽にご相談いただけばと思います。
当社の初回相談では、まず相談時点での状況とご希望について確認させていただきます。その上で、3,000件以上の実績から得た経験をもとに、相談者様にとって最善の結果となるような解決策を提案させていただきます。事前に用意していただく書類もなく、相談料やコンサルタントフィー等もかかりませんのでお気軽にご相談ください。

寺島 達哉
クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉