競売とは?滞納から売却までの流れ、競売の回避策を解説

競売

「借金を滞納していたら、裁判所から家を競売にかけるという内容の手紙が届いた」

「競売になると強制執行で家を追い出されてしまう」

裁判所の競売手続きについて、このような話を聞いたことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。このような話は、おおむね間違いではないのですが、少々恐ろしいイメージが先行し過ぎているきらいがあります。

そこで今回は、住宅ローン滞納時に行われる競売とはどのような手続きなのか、どのような場合に強制執行になるのかなどについて解説します。

1.競売とは

まず、競売とはそもそも何なのか、どのような場合に始まる手続きなのか説明します。

(1)担保となっている物件を裁判所の手続きにより売却

競売とは、何らかの債務の担保となっている物件を、債権者が現金化する手段の一つです。債権者とはいえ、担保は所有者のものですので、勝手に売却することはできません。そこで必要となるのが、裁判所で行う公的なオークション手続きです。

競売は、通常の売買とは違い、債権者の申し立て手続きを経て、裁判所が執り行います。物件の売却は、指定期間内の入札によって行われ、最も高値を付けた人が買受人となります。

(2)競売の対象となるのは債務の返済が滞っている場合

担保物件が競売の対象となるのは、債務の返済が大幅に滞り、かつ債務者の自主的な返済が難しいと認められる場合のみです。具体的には、4か月から6か月程度返済を滞納し、「期限の利益の喪失」その後、2~3カ月かけて競売の「差し押さえ」を経て、競売の準備が始まります。1~2か月程度の返済の遅れだけで、競売にかけられることはありません。

(3)競売では債権者の権利が最優先される

競売の手続きにおいては、申立人である債権者の権利が最優先されるため、債務者(=所有者)の都合はほとんど考慮してもらえません

例えば、競売では、現況調査、入札期間、明け渡し日などの日付を裁判所が決定し、原則として、それに従わなければなりません。これらをいつ行うか決める際、家の所有者の事情は一切考慮されません。家の所有者が現況調査や明け渡しに協力しない場合には、裁判所の執行官は、鍵を破壊して立ち入ることや、強制執行手続きによる荷物の運び出しを行うことが認められています。

2.滞納から競売までの流れ(住宅ローンの場合)

次に、滞納から競売の入札が始まるまでの、一般的なスケジュールについて説明します。(詳細なスケジュールは金融機関によって異なります。)
今回は住宅ローンを滞納した場合を例に挙げますので、税金の滞納による差し押さえなどの場合は、細かいスケジュールが異なる場合があります。

(1)催告状・督促状の送付(滞納から5か月まで)

住宅ローンを滞納しているケースでは、金融機関から催告状や督促状等の支払いを促す書面が送付されます。滞納からおおむね5か月程度は、書面や電話、訪問による返済の督促があるでしょう。今まで通りの返済が難しい場合、この時点で金融機関に相談し、月の返済額を調整してもらうなど対策が必要となります。

(2)期限の利益の喪失(滞納から半年程度)

半年程度滞納が続くと、期限の利益の喪失を通知する書面が送られてきます。期限の利益とは、簡単にいうと分割払いをする権利のことです。この書類が意味するのは「滞納により分割払いの権利を失ったため、一括で返済してください」ということです。滞納時の期限の利益の喪失に関しては、ローンの契約書に記載されています。

(3)代位弁済通知・差押通知の送付(滞納から7~8か月程度)

滞納から7か月から8か月程度経過すると、代位弁済通知とその後の差押通知が届きます。

代位弁済通知とは、「ローン契約時に保証契約を結んだ保証会社が、住宅ローンの残債を金融機関に建て替えて支払ったため、払った分を債務者に求償請求する」という内容が記載された書面です。以降は保証会社が主たる債権者となります。

差押通知は、債権者となった保証会社が、裁判所に申し立てて不動産を差し押さえたことを知らせる書面です。差し押さえとは、所有者が財産を処分できないようにする手続きのことで、不動産の場合は売却したり譲渡したりできなくなります。差押処分は、主に競売の前段階として、財産を確保するために行われます

(4)競売の開始決定通知の送付(滞納から9か月程度)

差押え通知の約1か月後、競売の開始決定通知が送付されます。これは、裁判所の手続きにより、競売で財産を処分することが決定した、という旨を通知する書面です。この段階から、本格的に競売の準備が始まります。

(5)裁判所職員による現況調査(滞納から10か月程度)

競売の開始決定通知の送付の後、裁判所の職員による現況調査が入ります。現況調査とは、簡単にいうと競売物件の下見のことです。建物や土地の状況はどうか、どの程度の価値があるかなど、競売を実施するにあたり必要な情報を確認するために行われます。執行官、不動産鑑定士、補助者の3人で自宅にやってくることが多いです。

現況調査には協力することが望ましいです。現況調査を拒否する権限はありません。所有者の方の中には、自宅に職員が踏み入ることに抵抗を感じ、訪問を無視してしまう方もいらっしゃいます。しかし、この場合も、執行官は鍵を破壊して立ち入ることが許されているため、実力行使による現況調査が行われます。

(6)競売の期間入札通知の送付・BITへの情報公開(滞納から13か月程度)

現況調査完了後、競売の期間入札通知が届き、BITへの情報公開が行なわれます。競売の期間入札通知は、物件に対する入札の開始期間と終了期間を知らせるもので、BIT(競売物件情報サイト)は、期間中に物件の情報を公開するWebサイトを指します。これ以降、外から「競売物件である」とわかる状況になるため、知人や近隣住人に競売の事実を知られる可能性もあります。

(7)入札開始

競売の入札は、競売の期間入札通知に記載されているスケジュールで行なわれます。期間は1週間から1か月の間であり、この期間内に最高値で入札した人が買受人となります。

(8)買受人の決定・引渡し

買受人が決定し、物件の代金を納めると、家の引き渡しが行われます。家の所有権が新たな買受人に移って以降は、元の所有者は家を不法占拠している状態です。明け渡しに協力せず、裁判所の引き渡し命令を無視すると、買受人は裁判所に強制執行を申し立てることが可能となります。

強制執行の申し立てが受理されると、現に人が住んでいる状況でも、荷物の運び出しと強制的な退去が行なわれます。引越し先がまだ決まっていない等の元所有者の事情は考慮されません。

3.競売を回避する方法

滞納を放置し、競売によって自宅が処分されることは、債務者にとって大きなダメージとなります。この事態を回避するためには、ローンの返済が困難になって滞納した場合に、滞納している状態のまま放置しないことが非常に重要です。具体的な対処法について説明します。

(1)金融機関に返済が難しい旨を相談する

まず、滞納が始まった早い段階や、滞納の見込みが大きい段階で、金融機関に返済の相談をしましょう。方針は金融機関によってさまざまですが、事前に「返済したいけれど、今のままでは経済的に厳しい」と相談した債務者に対しては、返済計画の変更など柔軟に対応してもらえる場合も多いです。

「滞納中なのに、金融機関に連絡するのは気まずい」と躊躇してしまう方も多くいらっしゃいますが、前述した通り、滞納している状態を放置することは非常に危険です。取返しの付かない事態になる前に、一度相談してみましょう。

(2)任意売却を検討する

毎月の返済額の変更等の対策を講じてもやはり返済が難しいという場合、いずれは一括返済を求められ、物件が競売にかけられる可能性が高いといえます。このような場合に競売を回避するため手段の一つとして、任意売却という方法があります。任意売却に関して、次項で詳しく説明します。

4.任意売却とは?

債務者にとって精神的ダメージが大きい競売ですが、先んじて任意売却を行うことにより、回避することが可能です。任意売却とはどのような手続きなのでしょうか。

(1)債権者の承諾のもと一般市場で物件を売却すること

任意売却とは、オーバーローン状態の場合に、債権者の承諾のもと、担保となっている物件を一般市場で売却することです。売却方法は通常の不動産売買とほぼ同じですが、債権者の同意を得て、物件の抵当権を解除してもらう点に違いがあります。

(2)任意売却のメリット

任意売却は、競売と比較して、債権者と所有者双方にとってメリットが大きい売却方法です。

【任意売却のメリット(一例)】

  •  競売と異なり、内見や引き渡しのスケジュールを調整できる
  •  売却価格が競売より高い(1割~3割程度高くなる)
  •  引っ越し費用や滞納中の税金を代金から持ち出せることがある

競売に比べて有利な売却が可能であり、任意売却後の残債にも大きく差が出るため、当社では競売より任意売却をおすすめしています。

(3)任意売却は専門の不動産会社に相談する

非常にメリットの大きな任意売却ですが、実行する場合はさまざまな専門知識が必要となります。そのため、任意売却を専門にしている不動産会社でなければ、成功に導くのは難しいといえます。

【任意売却で発生するイレギュラーな作業(一例)】

  • 売却代金の債権者ごとの返済割合を示す配分案の作成
  • 売却代金からの引越し費用や税金の持ち出し許可の獲得
  • 開札期日の前日までの売買の完了

このような特殊な業務を円滑に進行する手腕が必須となるため、任意売却の経験が浅い不動産会社では失敗する可能性が高いです。「任意売却の実績が豊富か」「任意売却を専門にしているか」は必ず確認するようにしましょう。

5.まとめ

債務の返済を放置すると、債権者はいずれ競売によって家を現金化し、貸付金などの債権を回収しようとします。競売は精神的なダメージが大きく、売却価格も安いなどデメリットが多いため、できる限り回避することをおすすめします。

競売を回避し、より有利に売却する方法として、任意売却が選択肢の一つとなります。家をより高く、自分のスケジュールに合わせて売却できるため、メリットの大きい方法です。

任意売却を検討する際は、滞納が長期化する前に、専門の不動産会社に相談することをおすすめします。当社は、任意売却の実績を豊富に持つプロフェッショナル集団です。住宅ローンの滞納でお困りの方は、ぜひ当社の無料相談をご利用ください。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一

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