住宅ローン滞納で期限の利益喪失通知が!通知の意味と対処法を解説

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住宅ローンの支払いを滞納していると、「期限の利益喪失通知」という書類が送られてきます。法律や契約に関する専門知識を持たない一般の方にとって「期限の利益喪失」という言葉は馴染みがないため、どのような意味を持つ書類なのかわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、期限の利益喪失通知の意味とその内容、支払いが難しい場合の対処法などについて解説します。

1.住宅ローン滞納時の「期限の利益喪失通知」とは

期限の利益喪失通知は、読んで字のごとく「期限の利益」の喪失を債務者に知らせるものですが、「期限の利益」とはどのような利益で、喪失するとどのような事が起きるのでしょうか。

(1)そもそも「期限の利益」とは?

期限の利益は、民法に規定されている債務者の利益の一つです。義務の遂行に期限を設けた場合、期日まで待ってもらうことができる権利を指します。住宅ローン契約など、お金の貸し借りにおいては、期日まで返済を待ってもらえる利益を意味します。

期限の利益がどのような場合に喪失するかは、民法で以下のように定められています。

第百三十七条 次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。

一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。

三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。

 

引用元:民法|e-Gov法令検索

金銭消費貸借契約では、上記の規定のほか「支払いを遅延したとき」にも期限の利益を喪失する旨を定めた条項が設けられるのが一般的です。

つまり、期限の利益喪失通知は「支払いが遅延したため、もう予定の返済期日まで待ちません。一括払いをお願いします」という趣旨の通告です。

(2)期限の利益喪失後の分割返済はできない

期限の利益の喪失は、期日まで支払いを待ってもらえなくなることを意味します。すなわち、これ以降、分割返済が認められず、一括返済を求められることになります。

期限の利益喪失前であれば、住宅ローンの借入れをしている金融機関に相談することで、毎月の返済額の変更等に対応してもらえることもあります。しかし、期限の利益喪失後は既に手遅れとなり、相談に応じてもらえない可能性が高いです。そのため、住宅の返済が難しい状況に陥った場合は、遅くとも滞納開始から2か月頃までに金融機関に相談することが大切です。

(3)期限の利益喪失後は代位弁済に

期限の利益を喪失すると、その後、代位弁済が行われます。代位弁済とは、ローン契約の際に保証を依頼した保証会社が、債務者に代わって残債務の一括返済をすることです。

保証会社は、金融機関に返済することでローンの債権を取得し、これ以降は債務者に対して、肩代わりした分を一括で支払うよう求めます。

代位弁済以降は、法的手続きの準備が進められます。放置すると裁判所からの書類が届くことになるため、その前に早めに対処することが大切です。

2.期限の利益喪失通知が届くまでにできること

住宅ローンの滞納が長期化すると、いずれは期限の利益を喪失することになります。期限の利益を喪失通知が届く前に行うべき対策について具体的に説明します。

(1)住宅ローン契約中の金融機関に相談する

まずは、住宅ローンを契約している金融機関に、毎月の支払いが難しい状況に陥っていることを正直に伝えて相談しましょう。新型コロナウィルスの影響を受けて、ローンを返せなくなる人は急増しているため、多くの金融機関が支払いの相談に対して柔軟に対応しています。

例えば、以下のようなリスケジュールプランが用意されていることがあります。

  • 返済期間を延ばして毎月の支払い額を減額する
  • ボーナス返済を見直す
  • 一定期間支払いを減額する

(2)家の売却を検討する

将来的にも経済状況が回復する見込みがない場合、家を売却することも選択肢の一つです。滞納が長期化すると、最終的には家が競売にかけられて安い価格で売られてしまうため、競売にかけられる前に、より高く負担の少ない売却ができる一般市場での売却を検討するとよいでしょう。

住み馴れたマイホームを手放すことに抵抗のある人も多いかと思いますが、賃貸住宅に引っ越して月の支出を軽くできれば、経済状況を回復できる可能性が高くなります。余裕のあるうちに現実的なプランを練ってみましょう。

(3)多重債務の場合は整理を検討する

住宅ローン以外にも複数の借入れがある多重債務の場合は、住宅ローンより先に他の債務を整理したほうがよいこともあります。

例えば、クレジットカードの未払いや消費者金融からの借り入れもある場合、それらの方が遥かに高い利率を設定されており、債務が増えるスピードも早いです。

債務を減額・整理する場合、弁護士に相談してご自身に合う方法を検討してみましょう。毎月の支払い額が減少すれば、住宅ローンを支払い続けられることもあります。

3.期限の利益喪失後も放置するといずれは競売に

期限の利益が喪失した後も、状況を放置すると、いずれは競売で家が売却されます。では、競売まではどのような流れで進行するのでしょうか。

(1)住宅ローン滞納から競売までの流れ

住宅ローンを滞納してから、競売までの流れは基本的に以下のとおりです。

  1. 督促状の送付や電話での請求(数回)
  2. 催告書の到着
  3. 期限の利益の喪失
  4. 代位弁済通知の到着
  5. 競売開始決定通知の到着
  6. 現況調査(下見および査定)の実施
  7. 競売の期間入札通知の到着
  8. 期間入札の公告(外部への情報公開)
  9. 入札開始
  10. 開札
  11. 売却と明け渡し

上記の流れが、12か月から18か月程度で完了します。意外と猶予があるように思えるかもしれませんが、競売を避けるためには、実質的な期限は1年もないことが多いです。

(2)滞納状態の放置は厳禁

「どうせ家を手放すことになるのであれば、競売にかかるまで放置してもいいのでは」などと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、競売は売却価格が安いうえ、債務者の事情が一切考慮されず手続きが進むなど、負担の大きい売却方法です。

競売のデメリットは複数ありますが、所有者にとって特にダメージが大きいのは以下のような点です。

  • 売却価格が市場の5割から7割程度
  • 明け渡しや現況調査などのスケジュール調整ができない
  • インターネットに家の情報が公開されるため外部に知られる
  • 代金は返済に充てられるため手元にお金が残らない

4.期限の利益喪失後に競売を回避するには

「期限の利益を喪失したが、競売だけは回避したい」という場合、どのような対策を取ればよいのでしょうか。考えられる対策について具体的に説明します。

(1)任意売却を検討する

競売を回避するために自宅を売却しようとしても、住宅ローン残高が家の売却価格を上回るオーバーローン状態の場合、不足分を手元の資金から捻出できなければ、一般的には売却ができません。このような場合、競売を避けるために行われるのが任意売却です。

任意売却は、債権者と交渉して、債権者の許可を得た上で売却することをいいます。通常は一般市場で売却することになるため、競売よりも高額で売却できる可能性が高いです。また、競売と違い、ある程度、スケジュールの調整も可能です。

また、「今の家に住み続けたい」というご希望をお持ちの場合、任意売却であれば、ご希望を叶えられる可能性もあります。

ただし、任意売却にはタイムリミットがあるため、確実に成功させるためには、実績が豊富な不動産会社を慎重に選ぶことが大切です。

(2)個人再生で再起を図る

住宅ローンの返済だけなら続けられそうだけれど、多重債務状態に陥っていて生活が圧迫されているという場合、個人再生を検討してもよいでしょう。

個人再生は、債務を大幅に減額できる裁判所の手続きの一つです。最大で債務額の7割から8割ほどの減額が可能で、残りの債務を原則3年から5年で返済できるよう計画を立てます。

個人再生の手続きには、自宅と住宅ローンはそのまま残して、他の債務を圧縮する「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」という制度があります。利用するには要件を満たす必要がありますが、家を残して債務を大幅に減額できる可能性があります。

(3)自己破産を検討する

債務の額が大きく、返済できる目処が全くたたない場合は、自己破産を検討してもよいでしょう。免責決定が下りると、債務の支払い義務がなくなるため、経済的な負担は大きく減少します。

自己破産の手続きは、財産の有無などの事情により、以下の2つの種類に分かれます。

  • 管財事件
  • 同時廃止

管財事件の場合、予納金(手数料)が高額になる場合があるため、任意売却を利用して財産を処分してから自己破産を行った方が、経済的負担が少ないこともあります。

個人再生や自己破産を検討している場合は、専門家に相談しながら自分の状況に適した方法を慎重に選ぶようにしましょう。

5.まとめ

住宅ローンを滞納して、期限の利益の喪失通知が届くと、以降は分割払いができなくなります。残高を一括返済できなければ競売の手続きが始まるため、できる限り早めに専門家に相談することをおすすめします。

当社は、住宅ローン滞納問題を専門的に扱う不動産会社です。ご相談者様のご希望や状況を丁寧にお伺いした上で、最適な解決方法をご提案します。「裁判所から通知が届いたけれど、どのように対処すればよいかわからない」「住宅ローンを払えないけれど、今の家に住み続けたい」など、さまざまなご相談に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

こちらでは、当社での相談から解決までの流れを紹介していますので、参考にしていただければと思います。

寺島 達哉
寺島 達哉

クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉

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