競売を回避する方法は?競売を止めて自宅に住み続けるための対処法も解説

ストップ

住宅ローンを滞納したまま放置すると、いずれは競売にかけられて売却されてしまいます。自宅に競売開始決定通知が届くと、「ついに家を売られてしまう」と悲観される方も少なくありません。

しかし、実際には競売開始決定通知が届いた後でも、早めに対処すれば競売を止められる可能性があります。

この記事では、競売を回避する方法、自宅に住み続けたい場合の対処法などについて解説します。

1.競売は手続き開始後でも止められるのか?

競売は、手続きが開始された後でも止めることが可能です。競売を回避する方法、回避できる期限について説明します。

(1)競売は申立人(債権者)の意思で取り下げられる

競売を止めるにはいくつか方法がありますが、そのうちの一つが、競売の申立人(債権者)の意思による取り下げです。つまり、債権者を説得して、競売の取り下げの手続きを取ってもらうことができれば、競売を中止することが可能です。

ただし、単純に「競売を取り下げてください」などと債権者にお願いしても、まず取り下げてもらうことはできません。取り下げの手続きを取ってもらうためには、債権者に、なんらかの方法で債務を返済することを約束して、説得しなければなりません。債務を返済する方法については後述します。

(2)競売の取り下げ期限

債権者の手続きによる競売の取り下げ期限は、競売の開札日(結果発表の日)の前日です。制度上は買受人の同意があればこれ以降も取り下げは可能ですが、実際にはかなり厳しいでしょう。

そのため、競売を止めたい場合はできる限り早めに対処することが大切です。

2.合法的に競売を回避する4つの方法

競売の手続きを合法的に停止させる方法として、以下の4つの方法があります。

(1)住宅ローンを一括で返済する

一つは、住宅ローンを一括で返済することです。返済ができれば、競売の根拠となっている抵当権も効力を失うため、競売で家を売られることありません。

しかし、住宅ローンを一括で返済することが可能な経済状況であれば、そもそも住宅ローンの滞納が続いて自宅が競売にかけられることはありません。そのため、住宅ローンを一括で返済することにより競売を中止させることは現実的には厳しいでしょう。

(2)自己破産をする

自己破産は、裁判所を介して債務を整理する手続きの一つです。破産者の財産と債務を清算し、借金をゼロにすることができます。

自己破産の手続きが始まると、破産者の財産は破産管財人がまとめて管理し、債権者に分配されます。不動産も清算する財産に含まれるため、抵当権に基づき競売手続きを取っていた場合でも売却は中断されます。

免責決定が出ると債務が消滅するため、生活を再建する大きな助けとなります。ただし、競売を回避できたとしても家は手放さなければなりません。

(3)競売ではなく任意売却で売却する

競売手続きが始まった後でも、債権者を説得して一般市場で売却できれば、競売は止められます。この方法を任意売却といいます。

開札日の前日までに売却を完了するというタイムリミットはありますが、競売より高く売却できる可能性が高いなど、売主にとってメリットが多い方法です。状況によっては売却後も自宅に住み続けられることもあります。

(4)個人再生の住宅ローン特則を利用する

個人再生は、自己破産と同様に裁判所を介して債務を整理する手続きの一つです。

個人再生には、住宅資金特別条項(通称:住宅ローン特則)という制度があります。住宅ローン特則は、持ち家を維持したまま、住宅ローン以外の債務を整理して経済的な再生を図るための制度です。

民事再生法第197条には以下のように定められています。

”第百九十七条 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の見込みがあると認めるときは、再生債務者の申立てにより、相当の期間を定めて、住宅又は再生債務者が有する住宅の敷地に設定されている前条第三号に規定する抵当権の実行手続の中止を命ずることができる。

引用:民事再生法|e-GOV法令検索

住宅ローン特則を利用するには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 保証会社の代位弁済の6カ月以内に個人再生の申立てをすること
  • 個人再生の申立人が所有し、居住している建物であること
  • 家を他の借入れの担保にしていないこと

上記の要件を満たしていれば住宅ローン特則の利用が認められ、競売の手続き開始後でも競売の中止命令が出される可能性があるのです。

3.競売開始から売却までの流れ

不動産の競売の手続き開始から売却までの平均的な期間は、半年から9か月程度です。

「あとどのくらい時間が残されているのか」を把握するために、競売開始から売却までの流れを把握しておきましょう。

(1)競売開始決定通知の到着

債権者による競売の申し立てが受理され、競売の開始決定が出ると、債務者(家の所有者)に競売の手続きが開始されたことを知らせる「競売開始決定通知」という書面が郵送で届きます。

(2)現況調査の実施

競売開始決定通知が届いてから数週間~1か月程度で、現況調査が入ります。現況調査とは、裁判所の執行官が自宅を訪問し、家の状況や価値を確認する査定のようなものです。

現況調査の日付は、あらかじめ書面で通知され、原則として日付の変更はできません。

(3)売却基準価格の決定、競売の期間入札通知の到着

現況調査後には、物件の売却価格を決定するための評価書が作成され、裁判所へ提出されます。その後、売却基準価格が決定すれば、競売の期間入札の通知が裁判所より送付されます。

この書面には入札期間や開札日、売却基準価格が記載されており、記載されている開札日までに競売の取り下げが行われなければ、競売が予定通り実行されます。

(4)期間入札の公告

入札期間の2~3週間前になると、競売の参加者を募集するためにインターネットの競売専用サイト(BIT)などに自宅の情報が掲載されます。
自宅の住所や外観などの写真が掲載されるため、周囲に自宅が競売にかかっていることを知られる可能性があります。
また、入札を検討している業者などが下見に訪問してくるようなケースもあるでしょう。

(5)入札の開始

入札が開始されると、購入希望者が入札を行います。
不動産の競売では期間内で各希望者が一度だけ入札する「期間入札」という方法が採用されています。
入札期間は8日間が一般的です。物件の所有者など、直接の利害関係者が入札することはできません。

(6)開札

入札期間が終了すると、開札(結果発表)が行われます。入札期間内に、最も高い金額で入札した人が買受人となります。裁判所から売却許可決定が出され、買受人が代金を納付すると、正式に所有権が移転します。
開札日の2日前までが競売中止を申請できるタイムリミットになるため、開札日を迎えれば競売は回避できなくなります。

(7)売却許可決定、代金の振込

開札日から1週間ほどで裁判所から売却許可決定が下されます。この売却許可決定から1週間以内であれば債務者は不服申し立てが可能です。
ただし、正当な理由が無ければ不服申し立ては認められないため、実務的に不服申し立てで競売を回避することは難しいといえます。
売却決定から1カ月以内に買受人は代金の振込を行い、代金が支払われると自宅の所有権が買受人に移ります。

(8)明け渡し・退去

買受人に所有権が移転した後は、元の所有者は物件を不法占拠している状態となります。そのまま住み続けていると立ち退きの強制執行手続きが始まってしまうため、早めに退去する必要があります。

4.競売にかけられた家に住み続けたい場合の対処法

「競売の手続きが始まってしまったけれど、できれば住み慣れた自宅にこのまま住み続けたい」というご希望をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。住宅ローンを返せず自宅を競売にかけられた場合でも、状況によっては現在お住まいの家に住み続けられることもあります。

競売にかけられた家に住み続けたい場合の具体的な対処法について説明します。

(1)個人再生の住宅ローン特則を利用する

競売にかけられた家に住み続けるための対処法の一つは、前述した個人再生の住宅ローン特則を利用するという方法です。

住宅ローン特則を利用した場合、住宅ローンはそのまま残るため引き続き返済が必要ですが、自宅を手放すことなく住宅ローン以外の債務を大幅に圧縮できます。

住宅ローン以外の債務のせいで毎月の返済が苦しい場合などに有効な方法です。ただし、毎月の支払いが増額されて、短期的な負担が大きくなることもあります。

そのため、住宅ローンの支払額は変わらず、他の債務(カードローン等)を圧縮する方法のため、住宅ローンしか借入がないという場合は、有効ではありません。

家を残せる反面、結局支払えなくなる場合もあるため、利用するかどうかは慎重に判断する必要があります。

(2)任意売却で住み続ける

債権者の同意を得て、物件を競売以外の方法で売却する任意売却を利用して、今の家に住み続けられることもあります。

具体的には、親族に売却する「親族間売買」と、投資家に売却する「リースバック」という二種類の方法があります。

①親族間売買で売却先を親族にする

親族間売買は、その名の通り親族に不動産を売却することです。売却後は所有者の同意を得た上で、無償または家賃を支払って住み続けられます。親子間で売買するケースが多く、親子で「実家を残したい」という目的が一致している場合などに適した方法です。

親族間売買では、購入者側の住宅ローンの契約が問題となることが多いです。親族間売買について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしていただければと思います。

②リースバックで投資家に売る

リースバックは、不動産賃貸経営を行っている投資家等に家を売却し、新たな所有者と賃貸借契約を締結して、今の家に住み続ける方法です。

今の家に住み続けられるというメリットがある一方、賃料が高くなりやすいなどの問題点もあります。

5.任意売却により競売を回避した場合の注意点

任意売却や個人再生により競売を回避をする上での注意点は、いずれの場合も自己破産のように債務が消滅するわけではなく、住宅ローンの残債が残ることです。個人再生の住宅ローン特則を利用した場合、住宅ローンは減額されません。また、任意売却の場合、売却代金を支払っても不足する分は、引き続き返済が必要です。

ただし、任意売却を仲介会社に依頼した場合は、残債の分割払いについて債権者と交渉してもらえる可能性があります。交渉が成立すれば、月額5,000円~1万円程度など、無理のないペースで支払いを調整できるため、債務を返済しながら生活を再建することが可能です。

6.実際に競売回避できた事例

「本当に競売を回避できるのだろうか」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
ここでは、当社にご相談いただき実際に競売を回避できた事例をご紹介します。

(1)競売の現況調査が行われた後でも任意売却ができた事例

最初にご紹介するのは、勤務先の業績不振によってリストラされた50代男性の事例です。
リストラ後は就活しながらアルバイトをしていたものの生活費を稼ぐことが精一杯で、住宅ローンを滞納し、競売開始決定通知が自宅に届いたそうです。この時点で当社へご相談いただきました。
競売手続きの現況調査まで行われた後でしたが、任意売却を開始して3カ月で自宅の売却を実現できました。

(2)競売の現況調査親族間売買で住み続けることができた事例

次にご紹介するのは、競売の現況調査に関する書面が届いたタイミングで「なんとか住み続けることができないか」とご相談いただいた事例です。住宅ローンの支払いは夫が管理していたため、奥様は競売の現況調査に関する書面が届くまで住宅ローンが滞納されていることを知らなかったそうです。
競売の通知が届いてからも自宅に住み続ける方法として当社が提案したのが、親族間売買もしくはリースバックです。こちらのケースでは、娘婿様がローンを組んで購入するという形で親族間売買を実現することができました。

(3)競売の現況調査後リースバックで自宅に住み続けることができた事例

最後に紹介するのは、退職金でローンの残債を支払う予定だったけれど、不況で退職金が出なかったことや離婚などが重なって住宅ローンの支払いが困難になってしまった事例です。
滞納10カ月で裁判所から現況調査の通知が届いた後でしたが、住み慣れた自宅に住み続けたいというご意向でした。
家族には負担をかけたくないとのことでしたので、リースバックで任意売却をする方向に決定すると、リースバックができる提携会社が何社も見つかりました。こちらの事例では住宅ローンの残債が少なかったことでリースバックできる会社が見つかりやすかったといえます。
3社ほど見積もりを取り、最も条件の良い会社を選択してもらい、今まで通り自宅に住み続けられています。

5.まとめ

任意売却や、裁判所を介した債務整理の手続きにより、競売を回避することが可能な場合もあります。ただし、いずれも期限があるため、早めに対処することが大切です。

競売を止めたい場合は、住宅ローン滞納問題に詳しい不動産会社に相談することをおすすめします。

当社は、住宅ローン滞納問題を専門的に扱い、数多くの任意売却の実績を持つ不動産会社です。任意売却や個人再生など、さまざまな方法の中から、ご相談者様の状況やご希望に合う解決方法をご提案しております。「競売を回避したい」「住宅ローンの支払いが困難な状況だけれど今の家に住み続けたい」など、さまざまなご相談に対応しておりますので、お気軽にご連絡いただければと思います。

こちらでは当社での相談から解決までの流れを紹介していますので、参考にしていただければと思います。

寺島 達哉
寺島 達哉

クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉

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