リバースモーゲージの利用条件となる年齢制限は?50代でも利用できる?

悩む人

近年、老後資金の調達方法として注目を浴びているのが、リバースモーゲージです。ご高齢で不動産を所有されている方の中には、検討される方も多いのではないでしょうか。

リバースモーゲージはシニア向けのローン商品のため、利用条件として年齢制限が設けられています。この記事では、リバースモーゲージの年齢制限や、その他の注意点などについて解説します。

1.リバースモーゲージとは

リバースモーゲージは、住宅を担保とした貸付の一種であり、主にシニア層の資金調達を目的としたものです。まずは、リバースモーゲージの特徴、メリットとデメリットについて、説明します。

(1)リバースモーゲージの特徴

リバースモーゲージには以下のような特徴があります。

  • 借入金は死後に不動産を売却して一括返済
  • 毎月の返済は利息のみ
  • 年金形式で毎月貸付金を受け取れる
  • 資金使途が幅広い商品が多い

老後の生活をより豊かにしたい、介護施設への入居費用に充てたい、住居をバリアフリー化したいなど、シニア層のさまざまなニーズに対応しています。

(2)リバースモーゲージの種類

リバースモーゲージには、大きく分けて以下の2つの種類があります。

  • リコース型:契約者の死後に不動産を売却して返済した際に残債が残った場合に、相続人が残債の返済義務を負うタイプ
  • ノンリコース型:残債が残っても、相続人が残債の返済義務を負わないタイプ

ノンリコース型には、相続人に迷惑をかける心配がないというメリットがありますが、一方で金利は高めに設定されていることもあります。

(3)住宅ローンとの違い

住宅ローンとリバースモーゲージは住宅を担保にするという点が共通していますが、リバースモーゲージと住宅ローンは利用目的が異なります。

住宅ローンは、住宅を購入するという目的で購入代金を一括で借り、毎月ローンを長期に渡って返済していきます。一方で、リバースモーゲージは主に老後の資金調達を目的として利用されています。

(4)リースバックとの違い

リバースモーゲージと似ている仕組みとして、よく比較されるのがリースバックです。リースバックとリバースモーゲージの違いは、自宅の所有者と契約の種類です。リースバックは、自宅を売却し、買主と賃貸契約を締結して居住するため、所有者は買主になります。買主とリース契約を締結し、毎月リース料を支払います。
また、リバースモーゲージには一般的に年齢制限がありますが、リースバックには年齢制限がないという違いもあります。

2.リバースモーゲージのメリットとデメリット

リバースモーゲージにはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。主なメリットとデメリットを紹介します。

(1)リバースモーゲージのメリット

リバースモーゲージには、以下のようなメリットがあります。

①家に住み続けながら資金を調達できる

リバースモーゲージの大きなメリットの一つは、家に住み続けながら資金調達ができる点です。家を売却して資金を確保する場合、通常、住み続けることは難しいです。住み慣れた我が家を離れなければならないことから、抵抗を感じる方も少なくありません。

また、家を売却して賃貸住宅に引っ越す場合、毎月の家賃負担が発生します。そのため、既に住宅ローンを完済した家に住んでいた場合は急激に毎月の住居費負担が増加します。シニア層の場合は、賃貸の入居審査に通りにくいという点も無視できません。老後の賃貸住宅への引っ越しは、このように越えなければならないハードルが多くなります。

リバースモーゲージは、あくまで住宅を担保にした貸付なので、存命中は家に住み続けることができ、家を手放す必要もありません。

②年金感覚で利用できる

リバースモーゲージでは、借入元本の返済は死後に一括で行います。存命中の支払いは金利のみであり、自宅にも住み続けられることから「借金をしている」という感覚にはなりにくいという特徴があります。年金感覚で借り入れることもできるため、生活費や娯楽費用としても使いやすいといえます。

(2)リバースモーゲージのデメリット

ただし、リバースモーゲージは必ずしも万能とはいえません。以下のように、注意すべきデメリットもあります。

①融資限度額が下がる

リバースモーゲージの中には、担保評価が定期的に見直され、融資限度額が下がる商品が多いです。建物より、経年で価値が下がりにくい土地の評価に重きを置くため、急激に下落する可能性は低いですが、徐々に限度額が下がることは否定できません。

融資限度額が下がると、当初の予定より貸付を受けられる金額が少なくなります。契約時の限度額ギリギリまで借り入れていると、借入金額が限度額を超過するリスクもあります。

借入金額が限度額を超過すると、存命中でも残金の一括返済を求められることがあるため、借入は余裕を持った金額で行うことが大切です。

②毎月の支払が増える場合がある

前述した通り、リバースモーゲージでは毎月の支払いは金利のみの商品が多く、月の負担は賃貸の家賃と比べて低いことが多いです。ただし、この金利は変動金利なので、金利の上昇によって高くなる可能性があります。

リバースモーゲージを検討する際は、金利の上昇リスクを見越し、無理のない支払いが可能か、あらかじめシミュレーションすることをおすすめします。

③借り入れできるお金には上限がある

リバースモーゲージは、担保に入れた自宅の評価額に応じて借り入れの上限額が決められています。無制限に借り入れできるわけではないという点には注意が必要です。長生きをすると、上限に達する可能性があるので、長生きした場合を想定して十分な生活資金を確保しておくことが大切です。

3.リバースモーゲージの利用条件となる年齢制限

リバースモーゲージは、シニア向けのローン商品のため、契約可能年齢に下限が設けられています。リバースモーゲージの利用条件となる年齢制限について説明します。

(1)民間の金融機関の場合下限は50歳から60歳

銀行を始めとした民間の金融機関の場合、リバースモーゲージの契約が可能な年齢の下限制限は、おおむね50歳から60歳程度であることが多いです。

リバースモーゲージを提供している銀行を調べると、60歳を下限とすることが主流ですが、50歳から契約できる商品もしばしば見受けられます。50歳が下限のローンとしては、中京銀行の一部商品や、りそな銀行のリバースモーゲージなどが代表的です。

下限だけでなく、契約年齢に上限を設けている商品も存在します。上限がある場合、おおむね80歳から84歳とされていることが多いです。

ちなみに、ネット銀行ではリバースモーゲージの取り扱いはほとんどなく、2023年10月時点では、楽天銀行のみが50歳下限の商品を提供しています。

(2)社会福祉協議会の貸付は65歳が下限

各都道府県の社会福祉協議会でも、リバースモーゲージの提供を行っています。こちらは厳密にはローン商品ではなく、収入の少ない高齢世帯向けの自立支援制度として誕生したものです。

社会福祉協議会の貸付では、65歳を下限とする年齢制限が設けられています。民間の商品とは異なり、年齢制限に上限はありません。

(3)同居家族の年齢に制限があることも

契約者本人だけではなく、同居家族の年齢にも制限が設けられていることがあります。社会福祉協議会の貸付は、世帯の構成員全員の年齢が65歳以上でなければなりません。民間のリバースモーゲージでも、みずほ銀行の商品は配偶者の年齢を60歳以上と制限しています。

家族の年齢に対する条件がある場合、二世帯住宅や子供と同居しているケースには不向きといえます。

4.年齢によって審査の難度は変わる?

通常、ローン商品といえば「年齢が上がるほど不利」というイメージがあります。シニア向けのリバースモーゲージの場合、年齢によって審査の難度に影響が出ることはあるのでしょうか。

(1)契約者や家族の年齢で融資額が制限されるケース

自分と同居家族の年齢によっては、融資額が制限されることがあります。

例えば、りそな銀行のリバースモーゲージ型住宅ローン「あんしん革命」は、50歳から契約可能な商品です。ただし、自分か連帯債務者の年齢が60歳未満の場合、融資限度額が担保評価額の30%になります。

このような商品も存在するので、年齢に応じて借入できる金額が制限されることがないか確認することが大切です。

(2)審査に条件が追加されるケース

年齢が上がることにより、審査に条件が追加されるケースもあります。

例えば、三菱UFJ銀行の「リバースモーゲージ型住宅関連ローン」は60歳から80歳まで契約可能ですが、契約時の年齢が75歳を超えている場合は法定相続人の代表者が面談に同席する必要があります。

相続発生時のトラブルを防止する観点から、推定相続人の同席が必要なケースは多いため、この点もあらかじめ確認しておきましょう。

5.リバースモーゲージの年齢以外の利用条件

では、年齢以外にはどのような利用条件や制限が設けられているのでしょうか。一般的なリバースモーゲージの例を見てみましょう。

(1)マンションは対象外の場合が多い

リバースモーゲージでは、マンションを担保とした借り入れは不可能な場合が多いです。これは、審査の際に土地の価値に重きを置いて担保評価を行うためです。

仮にマンションを担保に貸付を受けられる場合であっても、戸建てと比べて限度額が制限されることも少なくありません。商品によっては戸建ての半分程度の限度額に設定されていることもあります。

(2)対象となる土地の評価額は1,500万円が目安

担保となる土地の評価額にも一定の制限があります。社会福祉協議会の貸付では、おおむね1,500万円以上の価値があるかが目安となります。土地の価値が低い場合や、そもそも土地が自分の所有物ではない場合は利用できません。

ただし、この1,500万円という価格については、ある程度融通が利きます。貸付金額が少なくてもよい場合は、土地の評価額が1,000万円程度でも審査の対象となることがあります。

(3)資金使途の制限

リバースモーゲージの資金使途については、ローン商品としては比較的自由度が高いといえます。一般的に、住宅ローン型は、家の取得や建築関連の費用に活用可能です。通常型の場合、旅行などの娯楽費や介護関連費用、生活費などに幅広く利用できます。

ただし、この資金使途には例外があり、事業用資金としての利用は認められていない場合が多いです。「用途は原則自由」としている金融機関でも、事業用資金としては利用できないことがあるため注意が必要です。禁止されている使途に利用すると、発覚時点で残高の一括返済を要求されることがあります。また、「リバースモーゲージ型住宅ローン」として契約した場合は、住宅ローンの借り換えやリフォーム費用など、住宅に関することにしか使えない場合もあります。契約締結の際には資金使途の制限について必ず確認しましょう。

(4)不動産の立地や地目に関する制限

不動産の立地や地目が制限されることもあります。まず、大前提としてリバースモーゲージの対象となるのは住宅用地のみです。畑(農業用地)や山林などは担保にすることはできません。

また、都道府県の中心街の立地など、条件がよく価値が高い場合に限定されることもあります。郊外の物件の場合、審査の対象とはなっても、前述した「評価額1,500万円の壁」をクリアできず、結果的にリバースモーゲージを利用できないこともあります。

(5)抵当権の順位に関する制限

リバースモーゲージは不動産を担保とするローン商品なので、借入中に金融機関が抵当権を設定します。審査の時点で、既に他の債権者が抵当権を設定している(第一順位の抵当権を設定できない)場合、リバースモーゲージは利用できません

抵当権は、設定順に債権回収の優先順位があり、担保を売却した際に順位が高いほど回収できる金額が多くなります。二番以降の順位では貸付金を全額回収できない可能性があるため、審査には通りません。住宅ローンを完済していない場合などは注意してください。

(6)同居家族に関する制限

リバースモーゲージは、一般的にシニア世代の単身者か2人暮らしの夫婦を対象としています。そのため、ほとんどの場合、子どもとの同居は認められません。
子どもと同居していたり、将来子どもと同居を考えている場合には不向きだといえます。

6.リバースモーゲージはどのような人に向いているのか

リバースモーゲージの利用条件を満たす方の中で、以下に該当する方はリバースモーゲージに向いているといえるでしょう。

(1)住宅ローンの返済が負担になっている

定年退職後にも住宅ローンの返済が残っており、返済が負担になっているという場合には、リバースモーゲージを利用して借り換えすることが可能です。

住宅ローンは元金と利息を支払わなければならないため、負担が大きいです。

一方で、リバースモーゲージは利息のみの支払いになるため、月々の返済負担が軽減されます。

(2)老後の生活を充実させたい

リバースモーゲージは多目的に利用できるので、老後の生活を充実させたいけれど年金が不足しているという場合にも利用できます。

リバースモーゲージを利用すれば、経済的な余裕が生まれて、自由にお金を使えるお金が増えます。そのため、趣味やスポーツを楽しんだり、親しい人と旅行に出かけたりなど、充実した生活を送ることができます。また、病気や介護に備えて貯蓄することも可能です。

7リバースモーゲージ利用前に注意したいポイント

ここまで説明してきたようにリバースモーゲージにはメリットだけではなくデメリットもあるため、利用前には注意点について理解しておく必要があります。

リバースモーゲージの利用前に注意したいポイントについて説明します。

1無理な借り入れはしない

リバースモーゲージを利用すれば、毎月の返済額は利息のみで済みます。

そのため、多少は無理な借り入れをしても返済できると考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、年金暮らしの家計から毎月返済をすることは容易でありません。

そのため、無理な借り入れはせずに、返済できる範囲内で借り入れすることが大切です。

家計が苦しくならないように毎月の返済シミュレーションを事前に行うようにしましょう。

2融資額が下がるリスク

リバースモーゲージで借り入れできる金額は不動産評価額の50%~70%であり、50%前後に設定されているケースが多いです。

不動産の価値によっては予定していたよりも融資額が下がってしまうケースもあります。

そうすると、借り入れをしても理想とする使い道や生活ができないまま借入金額だけが積み重なってしまいます。

目的や理想に必要な金額を融資してくれる金融機関をじっくり探すことが大切です。

また、担保に入れた不動産の評価額は定期的に見直しが行われるため、契約時よりも評価額が下がれば借入金額の上限も下がります。そのため、評価額が下落するリスクも念頭に置いて検討すべきです。

3)金利が上がるリスク

リバースモーゲージでは、変動金利が採用されることが一般的です。契約期間中に金利が上昇すれば、支払う利息が増えて返済負担が重くなります。

金利の上昇は予想できるものではありませんが、金利が上がっても返済できるように余裕を持って返済プランをシミュレーションしておくとよいでしょう。

(4)長生きのリスク

リバースモーゲージは担保にした不動産の評価額に応じた金額で借入れの上限を決められるため、あらかじめ契約期間が定められていることがあります。

長生きした場合、借入残高が融資の限度額を超える可能性や、契約期間が終了する可能性があります。そうなった場合、存命中に売却しなければならないかもしれません。

(5)推定相続人の同意が必要

リバースモーゲージを検討する際は相続人への影響を考慮する必要があります。リバースモーゲージの契約者が亡くなった場合、不動産を売却した資金で返済するため、相続人は不動産を相続することができません。また前述した通り、リコース型を選ぶと相続人が残債の返済義務を負う可能性があります。

そのため、リバースモーゲージを利用する際は、事前に推定相続人(配偶者や子供など)に相談して同意を得ることが大切です。

8.リバースモーゲージの条件に該当しない場合の対処法

リバースモーゲージを利用したいと考えても、利用条件に該当しない場合もあるでしょう。

そのような場合、前述したリースバックという方法を検討するとよいでしょう。リースバックは、自宅を売却して現金化した後に買主へ家賃を毎月支払うことで自宅に住み続けることができます。

自宅に住みながら現金を手に入れられるという点ではリバースモーゲージと同じですが、リースバックは売却するため将来の返済リスクがないというメリットがあります。

ただし、売却しているので所有者が変わるという点があり、名義人の権利は失われます。

それぞれのメリットとデメリットを比較して、ご自身に合った方法で資金調達を行いましょう。

9.まとめ

リバースモーゲージは、年齢をはじめとしたさまざまな条件が設定されており、誰もが広く利用できるとはいえません。特に「自分や同居家族の年齢」「戸建てかどうか」「担保評価の金額」などが壁になる方は多いでしょう。

リバースモーゲージを検討する際は、あらかじめ定められている条件を確認し、審査に通る可能性の高い商品をピックアップしてみましょう。その中で、自分の希望にあった資金使途や返済方法で利用できるものを検討してみてください。

寺島 達哉
寺島 達哉

クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉

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