住宅ローン破綻の原因とは?破綻を回避する方法も解説

住宅ローン破綻の原因とは?破綻を回避する方法も解説

新型コロナ感染症の影響や現在の円安で、住宅ローンを検討している方の中には、住宅ローン契約後、順調に返済していけるのかどうか不安を感じる人も多いことでしょう。

また、既に住宅ローンを組んでいる方の中には、住宅ローン破綻が自分や家族の生活にどのような影響を及ぼすか知りたいという方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、住宅ローン破綻の現状や破綻の原因、住宅ローン破綻を回避するポイントなどについて解説します。

1.住宅ローン破綻の割合

住宅ローン破綻はどの程度の割合で発生しているのでしょうか。

住宅ローンの2010年〜2024年までの住宅ローン破綻(リスク管理債権:住宅ローン契約の通りに回収できなくなった債権)の割合は下の表のとおりです。

年度 住宅ローン破綻(リスク管理債権)
2010年度 8.48%
2013年度 6.67%
2016年度 4.52%
2019年度 3.20%
2022年度 3.05%

住宅金融支援機構「統合報告書 2023 資料編」を基に作表

2010年度の8.48%と比較すると、2022年度は3.05%と、住宅ローン破綻の割合は低下しています。ただし、この割合だけをみて「住宅ローンを払えない人は現状100人のうち3人しかいないのだから、自分には関係ないだろう」などと考えるのは非常に危険です。

最近では円安が進み、住宅ローンの金利(特に変動金利)が上昇するなどの影響もあり、返済の負担がさらに大きくなる可能性もあるでしょう。

2.住宅ローン破綻の3つの原因

住宅ローンが破綻してしまう原因として、主に以下の3つが挙げられます。

  • 多額の借入れをした
  • 返済計画のたて方が甘かった
  • 完済予定時の年齢が65歳を超えている

それぞれの原因について説明します。

(1)多額の借入れをした

住宅ローン契約者の生活に支障が出てしまうような多額の借入れをしたケースが該当します。

多くの金融機関では、多額の借入れを抑制するため、返済額の割合(返済負担率)を年収の35%と設定しています。例えば、年収1,000万円の人は350万円まで借入れが可能です。しかし、350万円はあくまで借入れの上限であり、自分が無理なく返せる金額と一致するわけではありません。

年収1,000万円の人でも子供の教育費、家族の治療費など、他に負担しなければならない費用があれば、350万円の借入れが原因となり生活に支障が生じる可能性もあります。

「返済負担率=無理なく返せる金額」ではないことを認識しておくことが大切です。

(2)返済計画のたて方が甘かった

将来の収支状況を考慮せず、現在の自分の給与だけを基準として、返済計画をたててしまったケースが該当します。

現在の給与を基準として返済計画をたてた場合、家族構成や仕事などの状況の変化により、返済に支障が出る可能性があります。住宅ローンの返済は長期間に及ぶことがほとんどなので、将来を見越して余裕を持った返済計画を立てることが大切です。

(3)完済予定時の年齢が65歳を超えている

住宅ローンの完済予定時の年齢が65歳を超えているケースが該当します。

例えば、35歳で住宅ローンを組み、35年後の70歳で完済する計画を立てた場合などです。日本では高齢化が急速に進む中、70歳まで就業機会を確保できるよう法整備が進んでいますが、現状は70歳まで安定して働き続けることは難しいでしょう。65歳で定年退職をした後、再雇用されるケースもありますが、定年退職前よりも年収が低下することが多いです。

3.住宅ローン破綻の2つの影響

住宅ローン破綻した場合、契約者本人のみならず家族にも深刻な影響が及びます。想定される2つの影響について説明します。

(1)住宅を手放すことになる

①競売により住宅を失う可能性がある

住宅ローンを返済できない状況が続けば、最終的には自宅が競売にかけられてしまいます

競売とは、多くの希望者から入札を募り、最も高い金額を提示した希望者(落札者)に売却する債権回収方法です。競売にかけられて自宅が落札者の手に渡った場合、早期に退去する必要があります。

住宅ローンを1~2か月滞納しただけで競売手続きに移行するわけではありませんが、滞納が6か月以上継続すると、住宅ローン契約者が滞納している債権は金融機関から保証会社に移り、競売手続きが開始されます。

②売却しても返済元金が残るリスク

自宅が競売にかけられて落札者が決まったとしても、住宅ローンの残債を全額回収できるとは限りません。住宅購入後、数年が経つと資産価値が大きく下がることも多く、住宅ローンの残高が多い場合、残債が残る可能性があります。

また、返済を滞納すると、ペナルティとして遅延損害金も支払わなければなりません。住宅ローンの遅延損害金は、毎月の返済額に対し年14%〜14.6%と設定されている場合がほとんどです。

以下のような事例で遅延損害金を計算してみましょう。

  • 住宅ローン残高:2,100万円
  • 遅延損害金:6%
  • 期限の利益を喪失~物件売却まで6か月間滞納
  • 競売による売却価格:1,800万円

1年を365日とし、日割り計算で算定します。

2,000万円×14.6%÷365日=0.84

0.84×遅延日数30日=25.2万円

6か月間滞納しているので、遅延損害金151.2万円(25.2万円×6か月)となります。

競売による売却価格が1,800万円の場合、以下の計算式により、451.2万円の残債が残ることになります。

売却価格1,800万円-(住宅ローン残高2,100万円+遅延損害金151.2万円)=-451.2

(2)自己破産をした場合の注意点

住宅ローンの返済が難しい場合は自己破産という方法もあります。自己破産とは、裁判所に申し立てを行い、裁判所から許可を受けた場合は債務が免除されるという債務整理の方法です。

自己破産が認められれば、住宅ローンの支払いは不要となります。ただし、以下のような点には注意が必要です。

  • 住宅ローン契約者が所有する住宅、金融資産、自動車などは基本的に没収される
  • 住宅ローン契約者のクレジットカードは使用不可となり、一定期間、新規契約も不可能
  • 官報に手続内容や破産者の名前・住所等が掲載される
  • 破産手続中に制限される職業や資格がある

基本的に住宅ローン契約者が所有する99万円以内の現金、差押禁止財産(生活するため最低限必要な家具・家電・衣類)等を除き、住宅ローン契約者の所有財産は没収されます。

このように、自己破産が認められても、住宅ローン契約者本人と家族には厳しい現実が待ち受けているので、自己破産を選択する前に慎重な検討が必要です。

4.住宅ローン破綻を回避する3つポイント

住宅ローン破綻を回避するために重要なポイントとして主に以下の3つのことが挙げられます。

  • 楽観的な返済計画はたてない
  • ボーナス返済や退職金を頼りにしない
  • 家族の収入をあてにしない

それぞれのポイントについて説明します。

(1)楽観的な返済計画をたてない

返済計画をたてる場合、現在の収入だけではなく将来のライフステージや家族構成の変化なども考慮しましょう。

例えば以下のようなライフステージの変化が想定されます。

  • 結婚して夫婦世帯となる
  • 第1子・第2子が誕生し、生活費・教育費の負担が増大する
  • 転職する、個人経営者として独立する、起業する

将来の状況の変化で、どのように収支が変化するのかを想定しながら、借入金額・毎月の返済額・返済期間を決定しましょう。

まず、自分と家族のライフプランニングシートの作成を行い、それを基に返済計画が策定するとよいでしょう。ライフプランニングシートとは、自分・家族の将来(数十年くらい)の収入・支出の変化を可視化した表です。表を参考にすれば、無理のない返済額・返済期間を設定した返済計画を作成することが可能です。

参考:人生後半戦の経済面を含めたライフプランニングシート(厚生労働省)

(2)ボーナス返済や退職金を頼りにしない

給与所得者であっても、ボーナスや退職金を頼りにすることはできる限り避けましょう。ボーナスや退職金による返済のメリットとデメリットを下の表にまとめました。

返済方法 メリット デメリット
ボーナス返済 一回でまとまった金額を返済できる 勤め先の業績不振でボーナスが大幅にカットされた場合、返済が困難になる
退職金による返済 退職金で住宅ローン残債を全て完済できる可能性がある ●   退職金が支払われない企業もある

●   退職金で返済すると、老後の生活に困窮する可能性がある

退職金による返済を考えるなら、就業規則等に退職金の支給が明記されているか、よく確認しましょう。退職金制度は法的に義務付けられておらず、支給するかどうかは企業の裁量に任せられている可能性があるからです。

(3)家族の収入をあてにしない

共働き夫婦であっても、妻の収入・ボーナスをあてにしない方がよいでしょう。

例えば、第1子・第2子等の誕生を望む場合、以下のような可能性があります。

  • 妊娠や出産・子育てのために、妻が退職する
  • 出産後に妻が育児のため時短勤務をすることになり、収入が以前より減少する

妻の収入やボーナスも含めて返済計画を策定した場合、少なくとも出産・育児の期間は夫だけの収入で住宅ローンを返済しなければならず、計画通り返済が進まなくなる可能性があります。返済が滞るリスクもあるので、注意が必要です。

まとめ

今回は、住宅ローン破綻の現状や破綻の原因、住宅ローン破綻を回避するポイントなどについて解説しました。

現在、円安の進行等、日本国内では厳しい状況となっています。先の読めない状況下で、住宅ローンを組む際はスムーズに返済していけるのか、しっかり検討する必要があるでしょう。

既に住宅ローンを組み、住宅ローン破綻予備軍になりそうだという場合は、まずは住宅ローンを組んでいる金融機関に相談しましょう。また、住宅ローンの滞納を続けて、自宅を競売にかけられそうだという場合は、任意売却で競売を回避できる可能性があるので、早急に任意売却の実績を豊富に持つ不動産会社に相談することをおすすめします。

当社は、数多くの任意売却を手掛けてきた不動産会社です。ご相談者様の状況やご希望を丁寧にお伺いした上で、最適な方法をご提案します。「住宅ローンの支払いが難しい状況だけど、今の家に住み続けたい」などというご相談にも対応しています。

こちらでは当社の相談から解決までの流れを紹介していますので、参考にしていただければと思います。

寺島 達哉
寺島 達哉

クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉

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