終の住処とは?主な選択肢や選び方を解説
50代・60代になると老後について考えるようになり、「自宅は終の住処として相応しいのだろうか」「終の住処はどのように選べばよいのだろうか」などと悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、終の住処の概要や選択肢、住み替えるための方法などを解説します。
1.終の住処とは
終の住処(ついのすみか)とは、これから死ぬまで安住する場所のことをいいます。
人生を終える最後の場所をどこにしたいかという考え方は人それぞれ異なります。「長く住み慣れた自宅で過ごしたい」という人もいれば、「一人暮らしは不安なので周囲に誰かがいる環境が良い」と考える人もいらっしゃるでしょう。また、家族には迷惑をかけたくないので、家族ではなく、プロの介護士から介護を受けて過ごしたいと考える方もいらっしゃるかと思います。
終の住処の悩みはシニア世代に多いものですが、年老いてから家を住み替えることは誰しも不安なものです。
2.終の住処の選択肢
終の住処となる場所には、複数の選択肢があります。主な選択肢について説明します。
(1)戸建てからマンションへ住み替える
戸建てに住んでいる方の場合、マンションへの住み替えを検討するケースが多いです。
戸建ては子供が独立してから一人もしくは夫婦で住むには広すぎ、毎日の掃除や家事なども大変です。階段もあるので昇り降りが辛く、事故が起きるリスクもあります。
一方で、マンションはワンフロアなのでシニアが生活しやすいサイズと間取りになっています。エレベーターもあるので部屋までの移動も楽ですし、セキュリティ面も安心できます。
マンションによってはバリアフリー設計の部屋もあり、シニアが過ごしやすい住環境といえます。
(2)高齢者向け住宅に入居する
老人ホームなどの介護施設や、シニア向けの賃貸住宅・分譲マンションなど、高齢者向けの住宅に入居するという選択肢もあります。高齢者向け住宅なら高齢者が住みやすいように設計されており、高齢者に必要なサービスなども受けられるので快適かつ安心して過ごしやすいといえるでしょう。
ただし、高齢者向けの住宅にはさまざまな種類があり、費用やサービス、介護体制などはそれぞれの施設で違いがあります。入居の基準に介護度数など体の状態も含まれるため、費用やサービス内容と併せて入居の要件も確認するようにしましょう。
(3)賃貸住宅を借りる
住んでいる自宅を処分し、賃貸住宅に住むという選択肢もあります。不動産を所有していると、修繕費や固定資産税など維持するための費用がかかるので老後資金を圧迫してしまいますが、賃貸住宅なら家賃と管理費を支払うだけで済みます。
また、生きている間に自宅を処分することで、死後に空き家の処分の手間を子供たちにかけることを避けたいと考える方もいらっしゃるでしょう。賃貸なら死後は引き払うだけで済むため、子供や家族の負担が少ないといえます。
(4)愛着のある家で過ごす
長年住んでいた自宅は愛着や思い出があるため、終の住処にするなら今の自宅が良いと考える方もいらっしゃるでしょう。
現在住んでいる自宅を終の住処にするのであれば、バリアフリーにすることや自宅で受けられる介護サービスを調べるなど準備が必要です。家族のサポートも必要になるため、家族と話し合っておくべきでしょう。
3.終の住処を選ぶ際のポイント
人生の終わりを迎える場所となる終の住処をどこにすべきか悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。終の住処を考える際には、以下のポイントについて考えると適した場所を決めやすくなります。
(1)老後の住みやすさ
終の住処を考えるには、老後に住みやすい家かどうかという点が重要になります。
今は元気でも、年を重ねれば足腰が弱ってくるので広い家では不便です。段差でつまずきやすくなりますし、階段の昇り降りも辛くなるでしょう。夜中にトイレに行きたくなり、階段で転んでしまったというような事故も珍しくありません。
老後はコンパクトで掃除がしやすく、段差などのないバリアフリーの家が理想的だといえるでしょう。
(2)利便性
終の住処を考える際は、周辺環境の利便性も考慮することが重要です。
年をとってから車や自転車を運転することは危険なので、徒歩圏内にスーパーやコンビニ、ドラッグストアなど日用品を購入できる場所があると便利です。また、体調が悪くなった時にすぐ病院へ行ける環境も老後の生活では必要になります。
(3)介護について
終の住処だからこそ考えるべきこととして介護の問題があります。
老後の介護の選択肢として考えられるものは、介護サービスの利用や介護施設での生活、家族の介護サポートです。どのような介護を受けるのか家族と相談しながら決めて、その介護が実現できるような住まいを選ぶべきでしょう。
(4)予算
自宅で過ごす場合も、住み替えをする場合も、住まいの予算について再度見直す必要があります。
今までどおり自宅で過ごすからといって予算が必要ないというわけではありません。長く住み続けた家は老朽化が進んでいるので修繕が必要になりますし、場合によってはバリアフリー化しなくては住みにくい場合もあります。固定資産税の支払いも考慮しなければなりません。
また、住み替えるのであれば、自宅の売却もしくは賃貸として貸し出すなどして資金を作り、住み替え先の予算と合わせて検討する必要があります。予算が足りない場合には、この後に解説する住み替えの方法などから予算の捻出も検討してみてください。
(5)周辺住人との交流
老後に一人で誰とも交流することなく過ごすのは寂しいものです。
近くに家族が住んでいれば問題ありませんが、家族が近くにいない場合は孤独死などの不安もあるので、周辺住人と交流できるような環境を確保しましょう。
高齢者向け施設なら年齢の近い人が集まるため、交流しやすいでしょう。
4.終の住処について考えるタイミング
終の住処について考え始めるタイミングは人それぞれ異なりますが、60代や70代などシニア世代になってから考える方が多いでしょう。
体力が衰えたと感じるタイミングであり、病気などもしやすくなります。体が不自由になって要介護認定を受けたことや、パートナーとの死別など、環境の変化が終の住処を考えるきっかけになることもあります。
しかし、終の住処について考え始めるタイミングが遅ければ遅いほど準備が困難になるため、できるだけ早い段階から考えて行動することが大切です。
5.終の住処に住み替える資金を調達する方法
自宅から終の住処と考える場所へ住み替える場合、どのように資金を作ればよいのでしょうか。住み替えにかかる資金を調達するための方法を紹介します。
(1)自宅を売却する
住み替えするのに資金が足りない場合や、住み替えによって自宅が空き家になってしまう場合には、自宅を売却することになります。
住宅ローンの支払いが残っていて、自宅の売却額が住宅ローンの残債を下回る場合は、抵当権を外せないため通常の方法では売却できませんが、任意売却という方法なら売却が可能です。
(2)自宅を賃貸にする
すでに住宅ローンの返済が終わり、資金にも余裕がある場合には、自宅を賃貸に出すという選択肢もあります。賃貸にすれば、毎月家賃が収入として入ってきます。自宅を売りに出したいけれどなかなか売れないような場合も、賃貸に切り替えることを検討してもよいでしょう。
ただし、賃貸にするためには家のクリーニングや改修工事なども行わなければなりません。
(3)子供など家族間で取引する
子供や家族が愛着のある実家に住みたいと考える場合、家族間で取引するという方法もあります。
住宅ローンが残っておらず、資金に余裕がある場合は、子供に生前贈与するという形を取れます。ただし、生前贈与すると贈与税が発生するため、税金の支払いに注意しなければなりません。
一方で、住宅ローンが残っている家や、住み替えるための資金を作りたい場合には、家族間売買するという方法があります。ただし、家族間売買だからといって相場よりも安すぎる価格で売買すれば、「みなし贈与」だと疑われてしまうので注意が必要です。
(4)リバースモーゲージを利用する
リバースモーゲージとは、現在住んでいる自宅を担保に資金を借入する方法です。死亡時に自宅を売却して借入金を清算するため、自宅に住んだままで老後資金を工面できます。
自宅に住み続けたいけれど老後資金に不安があるような場合、リバースモーゲージの利用を検討してもよいでしょう。
6.終の住処に住み替えるためのステップ
終の住処への住み替えを検討する場合、一つ一つステップを踏んで準備をすることが大切です。
終の住処に住み替えるためには、次のステップで進めていきましょう。
(1)自宅の住宅ローン残債を確認する
自宅の住宅ローンが残っている場合、まずはどれくらいの残債があるのか把握しておく必要があります。
住宅ローンの残債は、金融機関から送付される残高証明書や返済予定表より確認できます。
また、借入している金融機関のインターネットバンキングを利用している場合は、オンラインで残高を確認できます。
(2)自宅の価格相場を調べる
住み替えにあたり、自宅の価格相場を調べることも大切です。
自宅の価格相場を知ることで、住み替え先の予算も立てやすくなります。自宅の価格相場を知るには、複数の不動産会社に査定を依頼することをおすすめします。
不動産会社ごとに査定額は異なるので、相場価格を把握しつつ売却を依頼する不動産会社選びの指標にするとよいでしょう。
(3)家族と話し合う
自宅をどのようにすべきか家族と話し合っておくことも必要です。子供が家を相続したいと考えている場合、勝手に売却してしまうとトラブルになる可能性があります。
また、老後の介護について子供と話し合っておくことで、終の住処も選択しやすくなります。
まとめ
今回は、終の住処の概要や選択肢、住み替えるための方法などについて解説しました。
終の住処は、老後生活を快適に過ごすためにも慎重に選択することが大切です。現在、戸建てに住んでいて、子供や親族が相続を希望しない場合は、生活しやすいコンパクトな住宅への住み替えを検討してもよいでしょう。
当社は、任意売却の実績を豊富に持つ不動産会社です。老後の住み替えに関する相談にも対応しています。「住み替えをしたいけれど、住宅ローンが残っているので一般的な方法では売却ができない」という場合は、任意売却で対応することが可能なので、お気軽にご相談ください。
寺島 達哉
クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉