住宅ローンの支払いを猶予してもらうことは可能?払えない時の注意点は?

住宅ローンに関する疑問

マイホームを購入するために住宅ローンを借り入れたけれど、経済状況の悪化によって払えなくなってきた。このような方は、実は少なくありません。

住宅ローンを滞納してしまった、滞納しそうだという場合、早めに金融機関に相談すれば返済の相談に乗ってもらえることがあります。今回は、住宅ローンの返済に困った際の猶予について解説します。

1.住宅ローンは支払いを猶予してもらえることがある

住宅ローンを取り扱っている金融機関は、相談に訪れた人に対して、いきなり強硬な取り立てを行うことはありません。状況に合わせて支払額を調整するなど、柔軟に対応してくれることが多いです。

(1)コロナ禍で住宅ローンを払えない人が急増中

住宅ローンの滞納問題で、最近特に増加しているのが、2020年春から感染拡大した新型コロナウィルスによる影響で、ローンを払えなくなっている人達です。コロナ禍で、勤め先の倒産や業績悪化により収入が減少する、解雇されてしまうなど、家計に重大なダメージを受けている方が増えてきました。

当社にも「コロナの影響でローンを返せなくなってしまった」と相談に訪れる方は増加しており、日本全体で社会現象となっていることがうかがえます。

(2)早期相談で支払い猶予やリスケジュールが可能

家計の収支悪化やコロナ禍の経済へのダメージを受け、政府は、ローン商品を取り扱う金融機関に対し、返済に関して柔軟に対応するよう金融庁を通じて指導を出しています。そのため、早期に金融機関に相談することで、支払い猶予やリスケジューリング(返済計画の見直し)を受けられることも多いです。

一時的にでも返済額が減少すれば、生活を立て直すための時間を稼ぐことができます。既に滞納が始まっていると相談しづらいかもしれませんが、思い切って相談してみることをおすすめします。

(3)支払い猶予の申請方法

支払い猶予の申請は、金融機関の窓口で行います。詳細な手続きの流れは、借入先やローン商品によって異なります。ここでは、全国の金融機関で扱われている住宅ローン「フラット35」を例に、手続きの流れを紹介します。

【支払い猶予の申請の流れ(フラット35の場合)】

  1. 返済方法の変更タイプを選ぶ(詳細は後述)
  2. ローンを申し込んだ金融機関に猶予を申し出る
  3. 現在の状況や変更後の返済額などを協議
  4. 金融機関に返済方法の変更申請を行う
  5. 返済方法変更の審査
  6. 審査通過後に返済方法変更契約を締結

審査においては、収入証明書や印鑑証明書など、書類の提出が必要となります。金融機関によって提出を依頼される書類は異なりますので、窓口で確認の上、早めに用意しておきましょう。

2.住宅ローンの支払い猶予のパターン

ひと口に返済猶予といっても、人によってどのような猶予が必要かは異なります。では、金融機関では具体的にどのような猶予方法を認めているのでしょうか。代表例として、フラット35で申請できる3つの猶予方法について説明します。

(1)返済期間の延長(リスケジューリング)

リスケジューリングは、返済期間を現在の設定期間より長くすることで、支払いを細分化し月額を抑える方法です。月の支出が減る分、生活を建て直しやすくなるというメリットがあります。

ただし、返済が長期化する分、利息が発生する期間も長くなるため、総合的な返済額が増える点には注意が必要です。完済時の年齢なども加味して利用の可否を検討しましょう。

(2)一定期間の返済額の減額

金融機関と協議の上、合意した期間だけ返済額を減らすという方法もあります。一時的な経済状況の悪化が原因で支払いが苦しい場合や、回復の見通しが立っている場合に有効です。

例えば、「あと少しで子どもが独立して家計が楽になる」「出向していたが、あと1年で、元の職場に戻れるため待遇が回復する」などという場合に適しています。

この方法でも、支払いの総額が増加する点には注意してください。また、減額期間が終了した後の月額を支払っていけるかという点も入念にシミュレーションしましょう。

(3)ボーナス返済額の変更

借り入れの際にボーナス払いを設定している場合、返済額の変更が可能です。具体的には以下のようなパターンがあります。

  • ボーナス返済月を別の月にする
  • ボーナス月とそれ以外の月の配分を変更する
  • ボーナス払い自体をやめる

業績悪化によりボーナスが減少した場合などに適した方法といえるでしょう。

ただし、返済の調整による月額の増加や、総合的な返済期間の延長、返済総額の増加などが懸念されます。変更後の返済計画が現実的な内容であるか、しっかりと確認することが大切です。

(4)一定期間の元金の据え置き

金融機関によっては、コロナ禍での住宅ローンの返済に困窮している人に対し、一定期間元金の返済を据え置く対応を取っているところもあります。据え置き中は利息分のみの返済でよくなるため、住宅ローン返済の負担が大幅に小さくなります。

元金の据え置きを受けられる期間は、それぞれの事情や金融機関によって異なりますが、申請後1年間~2年間程度を目安としているところが多いようです。暫定的に申請から6か月間猶予し、その後は状況に合わせて対応しているところもあります。

参考:新型コロナウイルス感染症を踏まえた金融機関の対応事例

(5)住宅支援機構の「シルバー返済特例」

住宅支援機構のローンを利用している70歳以上の高齢者の方は「シルバー返済特例」で毎月の返済負担を軽減できることがあります。これは、返済の継続が困難な場合に返済を利息のみとする制度です。元金の返済は、死後に物件を売却した代金で一括返済します。残債が発生した場合も、相続人に請求されることはありません。

制度を利用するための条件は以下のとおりです。

  • 申請の時点で満70歳以上である
  • ローンの対象物件に居住しており今後も住み続けること
  • 返済開始から20年以上が経過していること
  • 住宅支援機構が土地と建物に抵当権を設定していること
  • 過去に支払いの遅れがないこと
  • 所定の収入基準を満たしていること

ただし、滞納時は一括返済を求められるなどのデメリットも存在します。

利用を検討する際は、住宅支援機構の窓口に相談して、デメリットも理解した上で慎重に判断することが大切です。

(6)返済を猶予してもらえる期間は?

返済の延長や猶予の期間がどの程度かは、金融機関の個別の対応によって異なります。フラット35の猶予制度では、ローン契約者の今後の返済見込みなども考慮し、1年・3年など年単位で期間を設定することが多いです。

民間の金融機関がローンの元金を据え置く場合、前述したとおり、1年から2年程度が目安となります。

3.国からお金を借りられる生活福祉資金貸付制度

厚生労働省は、生活困窮者のために低利・無利息で借り入れが可能な「生活資金貸付制度」を用意しています。経済状況が悪化し、収入が激減した場合などに利用できます。

【生活福祉資金の貸付対象】

  • 住民税非課税程度の低所得世帯
  • 身体障害者手帳や精神障害者保険福祉手帳・療育手帳の交付を受けている人(または同程度の障害を負っていると認められる人)の属する世帯
  • 療養または介護の必要な65歳以上の高齢者の属する世帯

貸し付けを受けられる資金には以下のような種類があり、基本的に、無利子(連帯保証人がいない場合は年1.5%)で借り入れが可能となっています。

【生活福祉資金の一例】

  • 総合支援資金(生活費や生活再建に必要な資金)
  • 福祉費(さまざまな用途に利用可能)
  • 教育支援費

利用にはそれぞれ異なる条件が設定されているため、詳細を知りたい方は市区町村の社会福祉協議会に問い合わせてください。

参考:生活福祉資金(通常貸付)について|全国社会福祉協議会

4.住宅ローンが払えないときのNG行為

住宅ローンを滞納してしまった場合や、今後滞納する可能性が高い場合、どのように対処してよいかわからない方も多いでしょう。この場合に、やってはいけないNG行為について説明します。

(1)無断で滞納する

住宅ローンを返済できないからといって、無断で滞納するのは非常にリスクの高い行為です。無断滞納が長期化すると、金融機関が債権の強制的な回収に乗り出すからです。その結果、次のような弊害が発生します。

【住宅ローンを無断滞納した場合の悪影響(一例)】

  • 遅延情報が信用情報に載る(俗に言う「ブラックリスト入り」する)
  • 連帯保証人に請求が届く
  • 分割払いができなくなる
  • 最終的には自宅が競売で売られる

金融機関からの連絡や督促を無視し続けて、無断滞納が長期化すると、金融機関から「返済の意思なし」とみなされます。そうなると、強制的な回収が始まってしまうため、できる限り早い段階で返済に関する相談をすることが大切です。

(2)他の借り入れで賄おうとする

絶対にやってはいけないのが、住宅ローンを返すために追加で他の借り入れに申し込むことです。この方法は多くの場合、その場しのぎにしかならず、経済状況をさらに悪化させることになります。

特に、クレジットカードや消費者金融のローンは住宅ローンより金利が高いため、一気に借金が膨らんでしまう可能性があり、大変危険です。借入金で一時的に返済できても、増えた借金が返せず、多重債務状態に陥ってしまうケースも少なくありません。

例外があるとすれば、より有利な条件で借り入れができる別の住宅ローンへの借り換えです。ただし、既存のローンの返済が厳しい状況では借り入れは難しいことがほとんどです。

5.支払い猶予後も返せないときはどうする?

金融機関に支払いを猶予してもらった後でも返済できない場合や、猶予の審査に通らず返済できる見込みが立たない場合、どのように対処すればよいでしょうか。

(1)滞納が続くと自宅は競売で売却される

まず前提として、滞納が長期化すると、最終的には自宅は競売で売却されます。債務者(契約者)が借入金を返済できる状況になく、担保を売却するよりほかに金融機関が債権を回収する方法がないためです。

競売とは?滞納から売却までの流れ、競売の回避策を解説競売での売却には、次のようにさまざまな弊害があります。

【競売で売却した場合のデメリット(一例)】

  • 競売物件の情報サイトに自宅が掲載される
  • 現況調査や引渡しのスケジュールを調整できない
  • 強制退去させられるリスクがある
  • 売却代金が手元に残らない

上記のようなデメリットがあることから、仮にローンを返済できなくても、競売はできるかぎり避けたい売却方法といえます。

(2)通常売却を検討する

ローン残高より高く売れるのであれば、通常売却で売ることができます。売却代金でローンを完済できるため、残債も発生しません。

一般的に、家を売却するには3か月~4か月程度はかかるといわれています。通常売却を検討するのであれば、早めに不動産会社に相談し、査定を受けるようにしましょう。

(3)多重債務状態であれば個人再生ができることも

住宅ローン以外の債務で生活が圧迫されている場合、個人再生の住宅ローン特則を利用して、状況を改善させられることがあります。

個人再生は、裁判所による債務整理の手続きの一つで、債権者と協議の上、債務を圧縮することができます。どの程度圧縮できるかはケースごとに異なりますが、おおむね7割程度減額できることが多いです。

住宅ローン特則は、住宅ローンだけはそのまま残し、他の債務を大幅カットできる手続きです。住宅ローンの残高は減少しませんが、家を失わずに済むというメリットがあります。

なお、圧縮後の債務は原則として3年以内に完済できるよう返済計画を再編するため、月の返済額自体は増加することが多いです。この点には注意してください。

(4)リバースモーゲージを検討する

高齢者の場合、リバースモーゲージによる借り換えを利用することで、毎月の負担を軽減できることがあります。

リバースモーゲージとは、死後に家を売却して元金を一括返済することにより、毎月の返済を利息だけに抑えるローン商品の一つです。老後の生活費の確保などを目的に、主に65歳以上の高齢者を対象に提供されています。

リバースモーゲージを利用する場合、死後に禍根を残さないよう、事前に推定相続人に相談しておくことをおすすめします。担保とした自宅は死後売却し、代金は返済に充てられるためです。同意がなければ契約できない場合もありますので、注意してください。

(5)競売を回避できる任意売却も視野に

住宅ローンの返済が難しいけれど、オーバーローン(ローン残高が家の売却価格より高い)状態で売るに売れないという場合、任意売却という方法を取ることにより、競売を回避できる場合があります。

任意売却は、ローンを滞納している際に、債権者の許可を得た上で、オーバーローン状態の物件を一般市場などで売却することです。競売より高く売れることが多く、競売サイトに情報が載ることもないためプライバシーも確保されるなど、所有者にとってメリットが大きい方法です。

任意売却を実現させるためには、専門知識と経験を豊富に持つ不動産会社のサポートが不可欠です。検討する場合は、まずは信頼できるパートナー探しから始めましょう。

5.まとめ

住宅ローンの支払いが厳しい方は決して少なくありません。早期に金融機関に相談することで、猶予申請の手続きが可能です。返済期間の変更やボーナス払いの変更、一時的な返済額の変更などさまざまな猶予方法がありますので、まずは金融機関の窓口に相談してみてください。

猶予を受けても返済が難しい場合は、売却も視野に入れなければなりません。この場合も競売はデメリットが多いため、任意売却など他の方法を早めに検討することが望ましいでしょう。

当社は、多くの任意売却を手掛けてきた住宅ローン滞納問題を専門的に扱う不動産会社です。ご相談者様の状況や希望を丁寧にお伺いした上で、さまざまな選択肢の中から最適な解決策を提案させていただきます。

「競売だけは回避したい」「住宅ローンを払えないけれど、今の家に住み続けたい」など、さまざまなご相談に対応しておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。

寺島 達哉
寺島 達哉

クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉

「払えない」「住み続けたい」今すぐご連絡ください! 任意売却・リースバックの無料相談はこちら

0120-279-281
24時間受付 メールでのご相談はこちら