税金滞納で家を差し押さえられる?滞納時のリスクと適切な対処法
「税金を滞納すると、自宅を差し押さえられる場合もある?」
「長い間、税金を滞納したまま放置していると、ある日突然職員が家に来て、財産を差し押さえられてしまうの?」
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
税金を払えず長期間滞納していると、この先どうなるのか不安を感じる方は少なくありません。税金を滞納してしまうと、いつ、どのように財産を差し押さえられるのでしょうか。また、財産を差し押さえられた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
この記事では、税金を滞納した場合のリスクや、滞納時に取るべき対処法について解説します。
1.税金を滞納すると財産を差し押さえられる?
結論からいうと、税金を滞納すると、財産を差し押さえられる可能性はあります。とはいえ、財産の差押えに関しては法律でルールが定められているため、数日の滞納でいきなり差し押さえが実行されることはありません。いつ、どのような流れで差し押さえられるのか説明します。
(1)滞納が長期化すると家や預貯金などを差し押さえられる
差し押さえが実行されるのは、度重なる督促にも関わらず、長期間に渡り納税がされない場合です。
地方税の納税に関するルールを定めた地方税法には、滞納時の差し押さえについて以下のような規定が設けられています。
(市町村民税に係る滞納処分)
第三百三十一条 市町村民税に係る滞納者が次の各号の一に該当するときは、市町村の徴税吏員は、当該市町村民税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押えなければならない。
一 滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して十日を経過した日までにその督促に係る市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。
引用:地方税法|e-GOV法令検索
すなわち、法律の規定上は、督促状の発送から10日までに納付しなければ財産の差し押さえが可能ということになります。
実際は、10日経過した時点で即差し押さえというケースは少なく、その後も複数回に渡り、電話や訪問で納税を促すことが一般的です。
(2)税金を滞納した際の流れ
地方税の場合、税金を滞納してから差し押さえまではおおむね以下の流れで進行します。
- 納期限の超過
- 税金への延滞金の加算開始
- 督促状の送付
- 電話や訪問などによる請求(複数回)
- 財産調査
- 差し押さえ
財産調査では、勤務先や取引先、各官公庁などに連絡し、どのような財産をいくら持っているのかを調査します。差押えの対象となるのは、給与や他者に対する債権、預貯金、不動産、さらに貴金属や家電製品などの動産まで、さまざまです。
なお、財産の差し押さえを受ける場合でも、生活に必要な用品や事業のための道具などは差し押さえてはいけないことになっています。
(3)差し押さえられた家は競売で売却される
滞納額が大きい場合、家や土地などの不動産が差し押さえの対象となることもあります。車や貴金属などは、会場での競り売りやネットオークションで現金化されるのが一般的ですが、不動産は原則として期間入札の競売で売却されます。
競売で売却すると、市場相場より大幅に価格が安くなる上、裁判所が一方的に決定したスケジュールでの売却・引き渡しを余儀なくされます。また、売却代金は全額納税に充当されるため、手元にお金が残らないという点も問題です。
このような事情があることから、家を競売で売却するのは可能な限り避けることが望ましいでしょう。では、税金を滞納してしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
2.税金を滞納してしまった際の対処法
「税金を滞納してしまったが、競売はなんとか回避したい」という場合、どのように対処すればよいのでしょうか。滞納時の対処法を具体的に考えてみましょう。
(1)まずは分割納付の相談する
自治体は、自発的に納税に関する相談に訪れた住民に対し、強硬に取り立てを行うことは稀です。できれば滞納が発生する前に、滞納分の発生後はなるべく早く、自治体の納税担当窓口に相談しましょう。
規定の月額を支払うことが難しい状況であれば、金額を抑えた分割納付に変更してもらえることもあります。親身に対応してもらえることも多いので、まずは早めの相談を心掛けてください。
(2)事情によっては納税を猶予してもらえることも
税金を払えないやむを得ない理由があるときは、納税を猶予してもらえることもあります。これは地方税法に規定が設けられており、以下の要件に該当するケースが対象です。
- 災害や盗難被害による経済状況の悪化
- 自分や親族の負傷や病気
- 事業の廃止や休止
- 事業による損失や倒産など
- その他上記に類似する状況に陥ったとき
猶予には、滞納時の差し押さえ財産の現金化の猶予(換価の猶予)、納税自体の猶予の二種類があり、いずれも自治体の税務担当窓口で申請できます。
(3)家を差し押さえられた場合は任意売却を検討
家や土地など不動産を差し押さえられた場合、任意売却も選択肢の一つとなります。
任意売却とは、ローンや税金など、何らかの債務の滞納で差し押さえられている物件を、債権者の許可のもと競売以外の方法で売却することです。滞納税の換価処分(競売による売却)と比較すると、より高く売却できるなど、売り主側にとってメリットが多い方法です。
売却すること自体は避けられませんが、競売と比較すると所有者の負担が少なく、やり方次第では家に住み続けられることもあります。
3.家の差し押さえ後に競売を回避する任意売却とは?
前述した通り、税金の滞納で家を差し押さえられると、最終的には競売で売却されることになります。競売は所有者(債務者)の負担が大きいため、可能な限り避けたい方法です。そのため、当社では任意売却によって競売を回避することをおすすめしています。
任意売却のメリットや競売との違いについて具体的に説明します。
(1)任意売却のメリット
任意売却と競売は、家を手放すという点では同じです。それでも任意売却をおすすめするのは任意売却に以下のようなメリットがあるためです。
【任意売却のメリット】
- 売却や引き渡しスケジュールの調整が可能
- 引越し費用を確保できることがある
- 競売情報公開までに売却できればプライバシーを守れる
- 相場で売却できる
(2)任意売却と競売の違い
前述した通り、任意売却には多くのメリットがあります。任意売却と競売の違いを6つの観点から比較してみました。
任意売却 | 競売 | |
スケジュール | ある程度調整可能 | 調整不可 |
売却価格 | 市場相場と同程度 | 相場より5割~3割安い |
経費 | 一部捻出できることがある | 捻出できない |
引越代 | 一部捻出できることがある | 捻出できない |
プライバシー | 通常の売却と同様のため、プライバシーは守られる | インターネットや官報で広く公告される |
売却後 | 親族間売買・リースバックと組み合わせて住み続けられることもある | 期限までの明け渡しが必要 |
競売で売却する場合、任意売却と比べて全体的に売却に関する融通が利かず、売却価格自体も安くなります。また、売却価格が滞納額より安い場合、経費を一切持ち出せないのもデメリットといえます。
(3)任意売却ができないケース
任意売却では、物件を差し押さえている債権者を説得し、差し押さえを解除してもらわなければ売却ができません。税金の滞納で差し押さえられた物件を任意売却する場合、差し押さえ債権者である自治体の同意が得られず、売却できないケースが多いです。
任意売却に対する各自治体の方針はさまざまです。「競売より高く売れるなら」と、差し押さえ解除に対応してくれる自治体や、滞納税額の一部金を支払うことによって差押を解除してくる自治体もあります。一方、滞納分を全額納付できなければ頑なに差し押さえを解除しない自治体も存在します。
4.任意売却を確実に行う方法
税金の滞納で任意売却を検討する場合、より成功の確率を上げるためには、いくつかポイントがあります。
(1)任意売却の実績を多く持つ不動産会社に相談する
任意売却の相談先として適しているのは不動産会社ですが、その中でも任意売却の実績を豊富に持つ会社を選ぶ必要があります。
通常の不動産会社でも、法的には任意売却を扱えます。しかし、任意売却には通常の不動産売買にはない特殊な業務が多く発生するため、知識・ノウハウを持たない通常の不動産会社では難航する可能性があります。
特に、自治体は税の滞納に対して厳しく対応することがあり、差し押さえ解除の交渉が難航することも少なくありません。どのようなアプローチで交渉すべきか熟知している専門会社でなければ、成功させることは難しいでしょう。
相談先を選ぶ際は、まず公式ホームページなどで任意売却の解決実績をチェックしましょう。その上で相談した際の対応を確認して依頼先を選ぶことをおすすめします。
(2)家を差し押さえられたらなるべく早く相談する
税金の滞納で家を差し押さえられた際は、なるべく早期に相談しましょう。
家を差し押さえられた場合、競売による換価処分が終わる前に、任意売却を完了させなければなりません。期日が決まっているため、早めに着手することで、交渉にかけられる時間的な余裕を持つことができます。
なお、滞納初期など、差し押さえが実行されていない場合、前述したように自治体の納税相談窓口に連絡してください。納税の猶予や、分割での納付が可能なこともあります。請求を度々無視すると、自治体も「悪意ある滞納」だと認識し、姿勢も強硬になるため注意しましょう。
5.まとめ
今回は、税金を滞納した場合のリスクや、滞納時に取るべき対処法などについて解説しました。
税金を長期間滞納していると、いずれは給料や不動産など、財産の差押え処分の対象となります。法的には、督促状の発送から10日の時点で差し押さえと換価処分が可能となるため、滞納状態の放置は厳禁です。
税金を滞納しそうであれば、まずは自治体の納税相談窓口に連絡しましょう。早めに相談すれば、猶予や分割納付といった対応が可能なこともあります。
既に滞納が長期化しており、不動産の差し押さえが実行されているのであれば、競売まであまり時間がありません。より有利に売却するために、不動産会社に相談した上で、任意売却を始めることをおすすめします。
当社は、多くの任意売却を手掛けてきた住宅ローン滞納問題を専門的に扱う不動産会社です。3,000件以上の実績に基づく知識と交渉力で、任意売却だけではなく、その先の生活再建まで見据えて最適な解決方法をご提案致します。ぜひお気軽にご相談ください。
クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社・株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一