不動産を子供に名義変更する方法と手順を解説

不動産を子供に名義変更する方法と手順を解説

土地や家の名義変更は、所有者である親から子供への資産移転の中でも重要な手続きといえます。所有者が生存中の場合と、亡くなった後の場合では手続きの方法が異なります。

今回は、親が生存中に名義変更する方法と、親が亡くなったときに名義変更する方法について解説します。

1.不動産を子供に名義変更する2つの方法

まずは、親が生存中に行う名義変更と、親が亡くなったときに行う名義変更の概要を説明します。

(1)親が生存中に行う名義変更

土地や家の所有者である親が、自身の生存中に子供に名義変更をする場合、基本的に生前贈与という扱いになります。親子間売買という形で名義変更をすると、みなし贈与とみなされる可能性があるので注意が必要です。

生前贈与の際は、贈与の内容を明確にし、その後の争いを予防するため「贈与契約書」を作成することが望ましいでしょう。

贈与契約書を作成する場合、以下の内容を明記します。

  • 贈与者(親)と受贈者(不動産を贈与する子供)の氏名・住所
  • 贈与不動産の所在地・面積
  • 贈与する日時
  • その他の条件(例:贈与者の生存中、贈与者は不動産を使用できる等)

贈与する親と贈与してもらう子供との間で、贈与契約書を作成し、贈与契約を締結します。

贈与契約書を公正証書(公証人が作成する公文書)にすれば、強い証拠力を有する書類となり、契約書が破棄されたり改ざんされたりするおそれもありません。

贈与契約書を作成後は、契約内容に従って子供への名義変更手続きを進めていきます。

(2)親が亡くなったときに行う名義変更

土地や家の所有者である親が亡くなった後、子供へ名義変更をする場合は、相続となります。

相続手続きの際は、故人の土地や家を引き継ぐ人を決めなければなりません。故人が遺言で指定している場合は、指定された人物が引き継ぐことになります。遺言が残されていない場合は、法定相続人間の話し合いで決定します。

土地や家を引き継ぐ人が決まったら、名義変更手続きを進めていきます。

2.親が生きているうちに名義変更する方法

親が生きているうちに名義変更する手順や、負担する税金、税金を抑える方法について説明します。

(1)土地や家を親が生きているうちに名義変更する手順

生前贈与で子供に名義変更する手順は以下のとおりです。

  1. 不動産の贈与を子供に伝え、同意を得る
  2. 親と子供の間で贈与契約書を取り交わす(公正証書にするとより安全)
  3. 登記申請のための書類を収集する
  4. 法務局で登記申請を行い、不動産所有者を子供に変更する

法務局に登記申請を行う際、以下の書類等を添付します。

  • 登記申請書:最寄りの法務局やホームページで取得可能
  • 登記識別情報または登記済証(原本)
  • 登記原因証明情報:贈与契約書等が該当
  • 代理権限証明情報:登記申請に関する委任状(代理人をたてない場合は不要)
  • 贈与者の印鑑証明書:市区町村役場で取得、3か月以内に作成されたもの
  • 受贈者の住民票の写し:市区町村役場で取得
  • 登録免許税:現金納付または収入印紙で納付

(2)親が生きているうちに名義変更した場合にかかる税金

生前贈与による名義変更の場合、以下のような税金がかかります。

  • 贈与税:贈与額・受贈者の年齢によって税率が異なる
  • 不動産取得税:標準税率本則4%
  • 登録免許税:不動産の価額×2%(1,000分の20)

とくに贈与税は贈与額の他、受贈者の年齢でも負担する税額がかなり違ってきます(暦年課税)。贈与税は「一般贈与財産」「特例贈与財産」に区分されます。

①一般贈与財産

受贈者である子供が、贈与年の1月1日において18歳未満の場合に適用される計算方法です。

一般贈与財産の税率・控除額は下の表を参考にしてください。

基礎控除後の課税価格 一般税率 控除額
~200万円 10% 0円
~300万円 15% 10万円
~400万円 20% 25万円
~600万円 30% 65万円
~1,000万円 40% 125万円
~1,500万円 45% 175万円
~3,000万円 50% 250万円
3,000万円超~ 55% 400万円

国税庁「贈与税の計算と税率(暦年課税)」を基に作表

例えば1月1日~12月31日までの1年間で、17歳の子供が親から910万円の贈与を受け取った場合の贈与税額は以下の計算式により195万円となります。

910万円-110万円=800万円

800万円×40%-125万円=195万円

②特例贈与財産

受贈者である子供が、贈与年の1月1日において18歳以上の場合に適用される計算方法です。

特例贈与財産の税率・控除額は下の表を参考にしてください。

基礎控除後の課税価格 特例税率 控除額
~200万円 10% 0円
~400万円 15% 10万円
~600万円 20% 30万円
~1,000万円 30% 90万円
~1,500万円 40% 190万円
~3,000万円 45% 265万円
~4,500万円 50% 415万円
4,500万円超~ 55% 640万円

国税庁「贈与税の計算と税率(暦年課税)」を基に作表

例えば、1月1日~12月31日までの1年間で、23歳の子供が親から910万円の贈与を受け取った場合の贈与税額は以下の計算式により150万円となります。

910万円-110万円=800万円

800万円×30%-90万円=150万円

(3)贈与税・不動産取得税を抑える方法

受贈者である子供に土地や家の所有権が移った場合、基本的に子供が贈与税・不動産取得税・登録免許税を納税しなければいけません。

しかし、贈与の際にかかる税金を軽減する制度や措置もあります。

①暦年贈与制度

親が自分の所有する土地や家をそのまま子供へ贈与するのではなく、他に売却し、現金だけを毎年少しずつ子供に渡していく方法です。

子供が親の土地や家の名義変更を望んでいない場合、贈与税等の負担があまりに大きいと感じた場合は、暦年贈与を検討してみましょう。

暦年贈与をすれば1年間(1月1日〜12月31日)で、受贈者一人につき110万円まで非課税となります。ただし、以下の点に注意が必要です。

  • 暦年課税に係る贈与は、相続税の課税価格に加算される場合がある
  • 税務署から定期贈与とみなされる可能性がある

なお、相続税の課税価格へ加算される暦年贈与に係る対象期間は下の表のとおりです。

親(被相続人)の相続開始日 加算対象期間
~2026年12月31日まで 相続開始前3年以内
2027年1月1日~2030年12月31日まで 2024年1月1日から死亡の日までの間
2031年1月1日以降 相続開始前7年以内

国税庁「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」を基に作表

定期贈与とは一定期間にわたり、一定の財産を贈与する契約です。

税務署から定期贈与を疑われてしまうと、贈与開始時に不動産の売却金額の全てを贈与する意思があったと判断され、贈与額の合計額に対し、贈与税を課されるので注意しましょう。

この場合は、毎年贈与契約書を作成し、前年とは違った贈与額・贈与日を設定し贈与すれば、定期贈与とはみなされないでしょう。

②相続時精算課税制度

原則として60歳以上の親から18歳以上の子供へ贈与を行う際に、子供の選択で利用できる方法です。贈与税の申告書の提出期間(贈与年の翌年2月1日〜3月15日)に、納税地の税務署へ相続時精算課税選択届出書や子供の戸籍謄本等を提出し、手続きをします。

本制度には2,500万円の特別控除があり、特別控除の限度額に達するまで贈与税は課されません。ただし、2,500万円を超えると超過分に一律20%の贈与税がかかります。また、2,500万円分が税金の免除対象となるのではなく、相続発生まで納税が猶予される仕組みです。相続時に贈与分も課税対象となります。

ただし、2024年4月1日から本制度が改正され、特別控除の2,500万円の他に年110万円までの基礎控除も認められました。改正により、年110万円以下の贈与なら贈与税がかからず、基礎控除分を2,500万円の特別控除に含める必要もありません。

③不動産取得税の軽減措置

不動産取得税を軽減するために設けられた措置で、一定の要件に該当した土地や家の場合、下の表のように税負担を軽減できます。

対象不動産 控除額
住宅 ●   新築住宅:1,200万円控除

●   中古住宅:新築時期で最高1,200万円を控除

土地(住宅用地) 新築・中古ともに

●   150万円

●   床面積の2倍の面積(200㎡限度)に相当する土地の価格

いずれか大きい金額に税率を乗じて得た額が減額される

軽減措置を利用したい場合は、不動産の所在地を管轄する県税事務所に不動産取得税申告(申請)書、不動産取得税納税通知書等を提出し、申請手続きを進めます。

3.親が亡くなった後に名義変更する方法

ここからは、親が亡くなった後に名義変更する場合の手順や、負担する税金、親の意思を反映させる方法について説明します。

(1)親から子へ土地や家を名義変更する相続手順

相続で子供に名義変更する手順は以下の通りです。

  1. 親が必要と感じたら、遺言や家族信託で土地や家を誰に相続させるか指定
  2. 親が亡くなる(相続開始)
  3. 遺言や家族信託に従う、または遺産分割協議等で土地や家を継ぐ人の決定
  4. 法務局で登記申請を行い、新しく土地や家を継ぐ人に変更する

法務局に登記申請を行う際、原則として新しく土地や家を継ぐ人(相続人)が、登記申請書(最寄りの法務局やホームページで取得可能)を法務局に提出します。

その際、被相続人・相続人に関する以下の書類等の添付が必要です。

被相続人・法定相続人 必要書類
被相続人 ●   出生〜死亡までの全ての戸籍・除籍謄本(被相続人の本籍地の市区町村役場で取得)

●   住民票の除票(住所地の市区町村で取得可能)または 戸籍の附票(本籍地の市区町村で取得可能)

●   遺言書(作成されていた場合)

相続人 ●   死亡日以降に発行された戸籍謄本

●   固定資産課税明細書(毎年4月頃に市区町村から送付)

●   登記申請に関する委任状(代理人をたてない場合は不要)

●   住民票の写し:市区町村役場で取得

●   相続関係説明図:戸籍・除籍謄本の原本還付を希望しない場合は不要

●   遺産分割協議書(作成した場合)

●   印鑑証明書(住所地の市区町村で取得可能、遺産分割協議をしなかった場合は不要)

(2)親が亡くなったときに名義変更すると相続税の対象になる

相続による名義変更の場合、以下のような税金がかかります。

  • 相続税:法定相続分に応じた取得金額で税率が異なる
  • 登録免許税:基本的に不動産の価額×0.4%(1,000分の4)

得られた遺産額で大きく相続税額は違ってきます。詳しく知りたい方は国税庁公式サイト内の相続税の税率を参照してください。

ただし、相続で取得した財産価額から被相続人の借金や葬儀費用が差し引ける他、被相続人の遺産を承継するのが法定相続人なら、相続税の基礎控除が適用されます。相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。

例えば、法定相続人が2人なら4,200万円が基礎控除額となり、正味の遺産額(被相続人の借金や葬儀費用等を差し引いた額)が4,200万円以下なら、税務署への申告も納税も不要です。

(3)親の意思を反映させる名義変更方法

自分(親)が土地や家を相続人の誰に継いでもらいたいか決めている場合は、遺言か家族信託で、土地や家を継ぐ人の指定が可能です。

①遺言

被相続人となる親が事前に遺言書を作成しておけば、相続人は原則として遺言内容に従い遺産を引き継ぎます。遺言では、土地や家を引き継いでもらいたい人も指定しておきましょう。

②家族信託

家族信託とは、自分(委託者)が最も信頼できる家族の誰か(受託者)と信託契約を締結し、財産管理やその運用、処分を任せる方法です。当然、自分の子供に任せることも可能です。

財産管理の範囲内でなら、委託者と受託者との合意があれば、自由に契約内容を設定できます。信託契約内容の中で、誰に土地や家を譲るか指定できます。

まとめ

今回は、親が生存中に名義変更する方法と、親が亡くなったときに名義変更する方法について解説しました。

不動産を子供に名義変更する場合は、課税される税額などをしっかり確認しましょう。親族間売買を希望する場合は、みなし贈与とみなされる等のトラブルを避けるためにも親族間売買に関する専門的な知識と経験を持つ不動産会社を慎重に選ぶことをおすすめします。

当社は、数多くの親族間売買を手掛けてきた不動産会社です。「みなし贈与とみなされないための適正価格を知りたい」「親族間売買で住宅ローンを利用できる金融機関が見つからない」など、さまざまなご相談に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

こちらでは、当社での相談から解決までの流れを紹介していますので、参考にしてください。

寺島 達哉
寺島 達哉

クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉

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