債権回収会社とは・取り立ての手段や無視した場合のリスクを解説
債権回収会社から「催告書」や「債権譲渡譲受通知書」などと記載された通知が届き、どのように対処すればよいのだろうかとお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、債権回収会社の概要、債権回収会社の取り立ての手段、債権回収会社から通知が届いたときの適切な対処法、債権回収会社の督促から強制執行までの流れなどについて解説します。
目次
1.債権回収会社とは
債権回収会社とはどのような会社なのでしょうか。まずは債権回収会社の概要を説明します。
(1)債権の回収業務を専門とする会社
債権回収会社(サービサー)とは、債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)という法律により、特定金銭債権の管理や回収を行うことを認められた民間の会社のことをいいます。特定金銭債権とは、サービサー法により債権回収会社が扱うことが認められている債権のことで、クレジットカードや消費者金融からの借入れ、住宅ローンなども含まれます。
日本で債権回収会社が誕生した背景には、1990年代のバブル崩壊後に発生した深刻な不良債権問題があります。不良債権の回収が急務となったため、弁護士法の特例としてサービサー法が制定されて、従来は弁護士が専門的に行ってきた債権回収業務が、民間企業に解禁されたのです。
(2)委託と譲渡の違い
債権回収会社は、金融機関などから委託または債券譲渡を受けて、債権の回収業務を行います。委託の場合と債権譲渡の場合では、以下のような違いがあります。
①委託の場合
金融機関が債権の管理回収業務を債権回収会社に委託した場合、金融機関に代わって債権回収会社が債権回収業務を行いますが、債権者は変わらず、金融機関のままです。
②債権譲渡の場合
金融機関が債権回収会社に債権を譲渡した場合、債権の所有権が債権会社に移るため、債権者は債権回収会社となります。
2.債権回収会社の取り立ての手段
債権回収会社は借金回収を専門とするプロフェッショナルですが、どのような手段で取り立てを行うのでしょうか。債権会社の取り立ての手段について説明します。
(1)違法な取り立ては行わない
債権回収会社は、法務大臣の許可を得た民間の企業です。法務大臣の許可を得るためには、以下のような厳しい条件を満たす必要があります。
- 資本金が5億円以上あること
- 常務に従事する取締役に弁護士が1名以上いること
- 暴力団員等の関与がないこと
特に暴力団等との関与の有無については、法務大臣が警察庁長官に意見聴取するなど、厳しくチェックされています。そのため、脅迫や迷惑行為などによる違法な取り立てが行われることはありません。
参考URL:債権管理回収業に関する特別措置法の仕組み(法務省公式サイト)
また、債権回収会社の自主規制団体である一般社団法人全国サービサー協会は、債権管理回収業の業務運営に関する自主規制規則という規則を制定し、以下のような行為を禁止しています。
- 暴力的な態度や言動
- 多人数で債務者等の自宅等に押し掛けること
- 債務者等を債権回収会社等に呼び出して大勢で取り囲んで面談すること
参考URL:債権管理回収業の業務運営に関する自主規制規則(一般社団法人全国サービサー協会公式サイト)
(2)合法的な手段で債権回収を行う
債権回収会社は違法な手段で債権回収を行うことはありませんが、合法的な手段により、訴訟提起、強制執行を進めます。
厳しい取り立てがないからといって放置していると強制執行されることになるので、無視せずに適切な対処をすることが大切です。
3.債権回収会社からの通知を無視するリスク
金融機関からの督促を無視し続けていれば、債権回収会社からの通知が届きます。債権回収会社からの通知を無視すれば、どのようなことが起きるのでしょうか。
債権回収会社からの通知を無視するリスクについて説明します。
(1)給料が差し押さえられる
債権回収会社の指定する期限までに返済できなければ、債権回収会社は裁判所に対して貸金の返還を求める訴えを起こします。この訴えにより、債務者の給料が差し押さえられてしまいます。
裁判所より債権者の給料を支払っている会社に対して差押命令が送付されるため、会社は債務者がお金を借りていることや、滞納している事実を知ることになるでしょう。
給料が差し押えられれば、会社は債務者への給料の支払いが一部禁止されます。
給料の全額を差し押えられるわけではありませんが、返済するまでは一定額が債権者へ支払われ、その残額が債務者に支給されることになります。
(2)自宅が差し押さえられる
債権回収会社からの通知を無視していれば、自宅を差し押えられる場合もあります。この場合、裁判所から「競売開始決定通知書」というものが届き、裁判所から執行官が自宅を訪問して現地調査が行われます。現地調査では、競売を進めるために必要な家の評価や測量、写真撮影などを行ないます。
そして、競売で入札者が決まって支払いが行われれば、家を立ち退かなければなりません。
いつまでも家を立ち退かずにいれば、強制退去が行われ、家財道具などは倉庫へと運ばれてしまいます。
(3)周囲の人に滞納していることを知られる
金融機関からの督促がきている時点では周囲の人に滞納していることを知られることはありませんが、債権回収会社からの通知を無視していれば周囲の人に滞納していることを知られるリスクが高まります。
まず、給料が差し押えられれば、会社の人に滞納していることを知られてしまいます。
また、自宅の差し押えによって執行官による現地調査が行われれば、近隣住民に滞納している事実を知られる可能性があります。なぜなら、場合によっては執行官が近隣住民に話を聞いて調査するようなこともあるからです。
家が競売に出される際には、BITという競売専門の情報サイトに掲載されるので、家の外観や住所などを知っている知人や友人がそのサイトを見れば、競売にかけられていることを知られてしまうでしょう。
4.債権回収会社から通知が届いたときの適切な対処法
債権回収会社から「催告書」や「債権譲渡譲受通知書」などと記載された通知が届いたら、迅速に適切な対処をすることが大切です。以下の手順で対処しましょう。
(1)架空請求の可能性がないか確認
まず、債権回収会社から届いた通知の内容を確認しましょう。身に覚えのない請求が記載されている場合は、債権回収会社の名前を利用した詐欺の可能性があるので注意が必要です。
架空の債権回収会社の名称が使われている場合もあるので、法務大臣の許可を受けた債権回収会社かどうか確認しましょう。
債権回収会社の一覧は、法務省公式サイト内の以下のページから確認できます。
参考URL:債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧(法務省公式サイト)
過去には、「東京法務管理局」「法務省管轄支局管理部」「法務局認定法人 民事訴訟管理機構」などという名称で架空の債権を請求する事例も報告されています。架空請求であることに気づかずに支払いをしてしまうと、詐欺グループのターゲットにされる可能性があるので注意しましょう。東京法務局が過去の事例を公開しているので、架空請求の疑いがある場合は確認してください。
参考URL:法務局を冠記した債権回収会社名による「偽った業者による架空の債権の請求に御注意」ください。(東京法務局公式サイト)
架空請求であることが確実な場合は無視しても問題ありませんが、架空請求かどうか判断できない場合は、国民生活センターなど信頼できる専門機関に相談しましょう。
(2)時効が完成していないか確認
架空請求の可能性がなく、通知の内容が正しい場合は、時効が完成していないか確認しましょう。借金には時効があり、クレジットカード会社や消費者金融などの貸金業者から個人がお金を借りた場合は 5年で時効が成立します。
時効が完成している場合は、「時効の援用」の手続きをすれば、借金の返済を免れることが可能です。「時効の援用」とは、債務者が債権者に対して、時効を迎えたので返済しないという意思表示をすることです。一般的には、時効援用通知書を内容証明郵便で送ります。法律上、時効の利益を受けるかどうかは当事者の自由意思に委ねられているため、「時効の援用」により債務者が意思表示をしなければ、借金を免れることはできません。
なお、時効期間が経過していても、時効が更新されている場合があるので注意しましょう。時効の更新とは、債権者からの請求などの事由が発生した場合に、進行していた時効期間がリセットされてゼロに戻ることをいいます。例えば、債権者である金融機関や債権回収会社から訴訟を起こされていた場合、時効は更新されるので、時効が完成していない可能性が高いです。
(3)支払いが可能か確認
通知の内容に問題がなく、時効が完成していない場合は、手持ちの資金で支払いが可能かどうかを確認してください。支払いが可能な場合は、速やかに通知に記載されている連絡先に連絡して、支払い方法を確認して支払いましょう。
支払いが難しい状況の場合は、弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。住宅ローンを滞納して債権回収会社から通知が届いた場合、放置すると最終的には自宅を競売にかけられてしまいます。競売を回避するためには任意売却という方法が有効です。任意売却とは、住宅ローンが残っている自宅を債権者の同意を得て売却する方法です。
ただし、任意売却は通常売却とは異なり、債権者との交渉をスムーズに進めるための専門的なノウハウが必要です。そのため、任意売却の実績を持つ不動産会社を慎重に選ぶことが大切です。
5.債権回収会社の督促から強制執行までの流れ
債権回収会社から届いた書類を無視していると、強制執行に進むことになるので注意が必要です。債権回収会社の督促から強制執行までの流れについて説明します。
(1)郵便などによる督促
まず、債権回収会社から郵便による督促が行われます。電話やショートメールによる督促が行われることもあります。この督促を無視すると、内容証明郵便で督促状が送付されることが一般的です。この段階は、債権回収会社が法的措置に踏み切る直前と考えられます。
(2)裁判所から書類が届く
督促が届いても放置していると、債権回収会社から訴状または支払い督促の書類が届きます。支払い督促は、通常の裁判よりも簡易な裁判手続きです。
訴状が届いた場合、答弁書を提出する必要があります。答弁書を提出することなく、期日に出席しないと、利息や遅延損害金を含めて一括での支払いを命じる判決が下されます。
支払い督促が届いた場合、2週間以内に異議申し立てをしないと、書面の内容に同意したとみなされます。書面には、遅延損害金を含めた金額を一括で返済するよう求める旨が記載されていることが一般的です。2週間経過後も放置していると、仮執行宣言付支払督促という書類が届き、最終的には強制執行に進みます。
2週間以内に異議申し立てをすれば、訴訟に移行します。訴訟に移行した場合は、分割払いなどの方法で和解できる可能性もあるので、支払い督促が届いたら2週間以内に異議申し立てを行うことが大切です。
(3)強制執行
訴状や支払い督促を放置した場合、債権回収会社が勝訴判決を得て、強制執行により債権を回収することが可能になります。
債権回収会社が強制執行の申立てを行うと、不動産、銀行口座の預金、給料の一部などの財産が強制的に差し押さえられます。
不動産を差し押さえられると、自宅を競売にかけられることになります。また、銀行口座の預金を差し押さえられると、自由に引き出せなくなります。給料が差し押さえられると、裁判所から勤務先に債権差し押さえ命令が送られるので、勤務先に知られてしまいます。いずれにしても、日常生活に重大な支障を来すことになるので、強制執行を避けるためにも早めに適切な対処をすることが重要です。
6.債権回収会社に返済できない場合の対処法
債権回収会社から返済するように通知がきても、一括での返済は現実的に難しいでしょう。
しかし、放置していれば自宅の競売や給料の差し押えなどが行われてしまいます。債権回収会社に返済できない場合の対処法としては3つの方法が挙げられます。
(1)任意売却する
自宅の住宅ローンが残っていて、売却額が住宅ローンの残債を下回る場合、手持ちの資金で住宅ローンを完済できないと家を売却することはできません。
しかし、任意売却という方法により売却することは可能です。任意売却は通常の不動産売却の市場で売却活動が行われるため、競売よりも高値で売却できる点が魅力です。
任意売却は通常の売却とは異なるため、任意売却の実績を豊富に持つ不動産会社に相談することが大切です。
(2)親子間売買をする
親や子供など家族からのサポートを受けることができる場合は、自宅を親子間売買するという選択肢があります。親子間で自宅を売却するため、自宅が知らない人の手に渡ることを防げます。
ただし、親子間売買だからといってあまりにも安い価格で売却すれば、「みなし贈与」として贈与税が課されるので注意が必要です。親族間売買を検討する場合は、親族間売買の実績を豊富に持つ不動産会社に相談しましょう。
(3)リースバックをする
今の家にどうしても住み続けたいという場合は、リースバックをするという方法もあります。リースバックとは、投資家や不動産会社に自宅を売却し、売却相手に賃料を払って自宅に住み続ける方法です。
賃料と住宅ローンの残債の返済が2重で発生しますが、自宅に住み続けることができます。
一時的に収入が減少しているなどという場合であれば、収入が再び安定するようになってから自宅を買い戻すこともできます。
まとめ
この記事では、債権回収会社の概要、債権回収会社の取り立ての手段、債権回収会社から通知が届いたときの適切な対処法、債権回収会社の督促から強制執行までの流れなどについて解説しました。
債権回収会社から通知が届いたときは既に強制執行に向けた手続きが進む直前の状態なので、放置するのは危険です。ご自身の財産を守るためにも、速やかに適切な対処をしてください。
当社は、競売を回避するために有効な任意売却の実績を豊富に持つ不動産会社です。「住宅ローンの滞納が続き、債権回収会社から通知が届いたけれど、どのように対処すればよいかわからない」という場合は、お気軽にご相談ください。
寺島 達哉
クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉