任意売却の流れは?売却完了までのステップとタイムリミット

任意売却の流れ

任意売却は、通常の不動産売買とは違いタイムリミットがあります。そのため、売却完了までの流れを理解し、効率的に売却活動を進めることが必要です。

この記事では、任意売却の開始から完了までの流れと、いつまでに完了すれば良いのかを解説します。

任意売却とは

流れを説明する前に、そもそも任意売却とは何か、という点をおさらいしておきましょう。

任意売却とは、①売買金額より残債務額が上回る場合に、②不動産に対して担保権を設定している債権者・抵当権者(保証会社等)及び利害関係人(市役所・財務省など)に不動産売却金の配分を行うことによって承認をえることで、抵当権や差押登記等を解除してもらい、③債務者である売主と第三者の買主との間における売買契約を成立させること。』です。要するに、①オーバーローンでローンを全額返せないが、②金融機関等のお許しを得て、③不動産を売却することです。この3つの要素が非常に重要です。

任意売却の対象になるのは住宅ローンの担保物件が多いですが、税金の滞納などによって差し押さえられた物件も含みます。

任意売却と同じく、担保物件を現金化する方法としては、競売も存在します。競売は、債権者の申し立てにより行うオークションであり、裁判所主導で進行することが特徴です。任意売却で売却する場合と比べ、物件の所有者の事情がほとんど考慮されません。

任意売却のメリットと競売の問題

担保物件を現金化し、債務を返済する方法としては、任意売却のほかに競売も存在します。「公的な方法で売却できるならそちらの方が良いのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、競売は任意売却と比べて所有者のデメリットが大きく、可能な限り避けたい方法です。競売になった場合の問題と、任意売却のメリットについて説明します。

(1)競売までのスケジュールは自分で調整できない

競売で物件を売却する場合、現金化までのスケジュールは裁判所が全て決定します。所有者の事情が介在する余地はありません。

物件が競売の対象となると、スケジュールは決定後に随時書面で通知され、変更することはできません。裁判所職員による物件の査定(現況調査)や入札の開始日、引き渡し日などは全て裁判所の決定に従わなければなりません。協力しない場合、裁判所の執行官は鍵を破壊しての踏み入りや、荷物を運び出して強制退去させることができます。

家を競売にかけられ、事情を一切考慮されないまま強引に売却されるストレスは計り知れません。任意売却であれば、引き渡し日や内見の日をある程度調整できるので、所有者の心理的負担は少ないといえます。

(2)競売では売却価格が安くなることが多い

所有者にとって大きなデメリットとなるのが、競売では売却価格が安くなることです。競売で売却した場合、市場相場の5割~7割程度の価格で売却されるのが一般的です。

これは、競売の物件は「内覧ができない」「検討期間が短い」など、買主にとってデメリットが多いためです。その分、基準価格が安く設定されているため、結果的に落札価格も低くなります。

売却価格が安いと、返済できる住宅ローンの金額も少なくなります。競売の後もローンの返済は続くため、売却価格の低さは致命的な問題と言えるでしょう。任意売却であれば、物件は一般の不動産市場で売却されるため、相場に近い金額での売却が期待できます。

(3)プライバシーの面からも任意売却がおすすめ

競売ではなく任意売却を選ぶのは、プライバシー保護の面からもおすすめです。

競売では、入札者を多く募るため、対象の物件情報をBIT(不動産競売物件情報サイト)と呼ばれるWebサイトに公開します。家や住所を知っている知人が見れば、経済状況を知られかねません。

任意売却であれば、物件は通常の売却物件と同じく、不動産会社のWebサイトに広告が掲載されます。見ただけでは任意売却とはわからないため、所有者のプライバシーは保護されます。

任意売却の流れ

実際に任意売却を始める場合、相談から売却完了まではどのように進むのでしょうか。任意売却全体の流れを見てみましょう。

(1)督促状が届く

住宅ローンを滞納すれば、住宅ローンを組んでいる金融機関から督促状が届きます。
住宅ローン滞納から1~2カ月ほどで督促が行われ、さらに放置していると「期限の利益」を喪失します。期限の利益とは、住宅ローンを分割で支払う権利です。

期限の利益を喪失すれば、保証会社が債務者に代わって住宅ローンを金融機関へ一括返済する「代位弁済」が行われます。代位弁済通知が届けば債権者が保証会社に移ったことを意味し、競売の手続きが間もなく開始されてしまいます。

(2)不動産会社や専門業者への相談

まず、不動産会社や任意売却の専門業者の窓口で、任意売却の相談をします。相談者様のご希望やローンの滞納状況等によっては任意売却以外の解決方法を提案される場合もあります。

(3)住宅ローンの残高を確認する

住宅ローンの残高からアンダーローンとオーバーローンのどちらになるか判断します。
住宅ローンの残債よりも売却額が高い場合をアンダーローン、売却額が低い場合をオーバーローンといいます。住宅ローンの残高は、返済予定表や残高証明書で確認できます。

返済予定表は住宅ローンの契約後に必ず郵送されてくるため、契約書などと一緒に保管していることが多いでしょう。
金融機関によってはオンラインのアカウントを登録することで残高確認できる場合もあります。

(4)物件の価格査定・調査

相談の結果任意売却による解決が最適と判断された場合、物件の価格査定に入ります。査定では、建物の状況や周辺相場、土地の権利関係などを調査し、「どの程度の価格で売却できそうか」という見込み価格を算出します。

(5)債権者(金融機関)との交渉

査定が完了した後、住宅ローンを貸し付けている債権者との交渉に入ります。任意売却を行う上での難関の一つです。

金融機関によっては、任意売却による担保の現金化に難色を示すこともあります。また、売却代金から引っ越し費用や滞納している税金を支払いたい場合、債権者の同意を得なければなりません。

(6)販売活動スタート

債権者との交渉がまとまると、市場に向けての販売活動がスタートします。

不動産の販売活動を代行する「媒介契約」には「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種が存在します。

任意売却では、金融機関との連携しやすさや、窓口を一本化する観点から、一社のみに媒介を依頼する「専属専任媒介」「専任媒介」のいずれかで行う場合が多いです。しかし、我々は特に債権者の指定がない場合には、「一般媒介契約」で販売活動するのが基本です。信頼に重きを置いており、むやみに独占する必要がないと考えるからです。

(7)内見対応・申し込み

不動産会社の売却活動により、購入希望者が現れたら、内見対応が必要になります。希望者が気持ちよく見学できるよう準備しましょう。家の印象が良くなるよう、内見までに簡単な清掃や整理整頓を済ませておいてください。

また、壁や床の傷など、DIYで修繕できそうな損傷は、自分で修繕してきれいにするのも一つの方法です。修繕用の商品はホームセンターなどでも販売されていますので、確認してみるとよいでしょう。

内見の結果、希望者が物件を気に入った場合は、申し込みで仮押さえとなります。

(8)物件の売買契約締結

申し込み後、物件の売買契約を締結します。不動産売買では、契約締結の際に買主から手付金(売却価格の20%まで)を受け取り、引き渡し時に残金を支払います。通常、手付金はその場で現金にて支払うのが一般的です。もっとも、任意売却の場合には、手付金は不動産会社が「手付預かり」として保全する場合がほとんどですし、手付金をもともと設定しない場合もあります。

(9)決済・引っ越し

売買契約締結の後日、物件の引き渡しと、残金の決済が行われます。

物件の引き渡しは、通常買主が住宅ローンを組んだ金融機関で行うのが一般的です。買主と売主のほか、金融機関の担当者や不動産会社の担当者、抵当権解除の手続きを担当する司法書士なども同席します。

鍵の引き渡しと代金の受け取りが完了したら、無事売却は完了です。この際、債権者に事前に定めた持ち出し分を控除した返済分を支払います。

なお、引っ越しは売主と買主の間で特段の定めがないなら、引き渡しの前日までに完了していれば問題ありません。ただし、引っ越し業者の不手際などで引っ越しが遅れる可能性もあるため、ある程度、余裕を持って引っ越しを行うとよいでしょう。

(10)残債の返済

任意売却では、売却額で返済しても住宅ローンの残債が残ります。
残債の返済方法は金融機関によって異なりますが、分割での返済を認められている場合は、毎月返済を行っていきます。

任意売却のタイムリミット

任意売却には、一般の不動産売却とは異なりタイムリミットがあります。これを過ぎると競売により売却されてしまうため、期日を意識した売却活動が必要です。

(1)任意売却のタイムリミットは開札期日の前日

任意売却は、競売と同時進行で行われます。タイムリミットは、競売の開札期日の前日です。この日を過ぎると、競売の買主が決定してしまうため、売却活動を続けることはできなくなります。

開札期日がいつになるかはケースバイケースですが、BIT(不動産競売物件情報サイト)に情報が公開されてから4週間程度が目安となります。この日までに、売却を完了していなければなりません。

なお、ここでいう「売却の完了」は、買主を見つけたり、売買契約を締結しただけでは不完全です。代金の受け取りと物件の引き渡しまで完了している必要があるという点に注意してください。また、債権者に決済の稟議を得る必要があり、稟議に1~2週間かかる場合があります。

(2)任意売却の準備は早ければ早いほど良い

任意売却は、着手が早ければ早いほど有利に進めることができます。

売却活動に使える期間に余裕があれば、債権者との交渉が多少難航しても慌てずに済みます。また、急いで売却する必要がないため、買主からの指値(割引価格の指定)にも強気で対応できるでしょう。また、リースバックや親子間売買などの方策も早めでなければ実行することが非常に厳しいです。

着手の早さは、任意売却の成否を握るといっても過言ではないポイントです。裁判所から通知書が届いた際は放置せず、早めに不動産会社の窓口に相談してください。

(3)不動産会社選びを失敗しないためのポイント

任意売却を依頼する不動産会社選びも、非常に重要です。会社選びを誤ると、売却活動のための貴重な時間を浪費するうえ、ときには任意売却そのものに失敗することもあります。

不動産会社を選ぶ基準は複数存在しますが、売却の成否に大きく影響するのが「任意売却の実績の有無」です。任意売却は、金融機関との交渉や、期限を意識した売却活動など、通常の不動産売却にはない業務が発生するため、専門的な知識と豊富な経験が不可欠です。相談前に、どの程度の実績があるのか、Webサイトなどで確認してみましょう。

また「引っ越し代金100万円を確約」など甘いセールストークで集客している業者は避けた方が無難です。近年では売却代金からの引越し費用の捻出を拒否する債権者も多く、優良な不動産会社は「確約」はしません。また、その旨をきちんと相談者に伝えます。任意売却を請け負う不動産会社の中には、悪徳業者も少なくないため、注意が必要です。

5.任意売却における注意点

任意売却を行う際は、以下の点に注意しましょう。

(1)共有名義者や保証人の合意が必要

夫婦のペアローンを組んでいる場合や相続で継いだ場合などで共有名義者がいる場合、任意売却には共有名義者の合意が必要です。

共有名義者が合意しなければ売却できないため、話し合いで合意を得なければなりません。
連帯保証人がいる場合、連帯保証人にも任意売却をする旨を伝え、合意を得るようにしましょう。連帯保証人には債務者と同様の返済義務があるため、債務者が住宅ローンを滞納が続くと連帯保証人にも督促が届くようになります。

(2)不動産会社選びが重要

任意売却を依頼する不動産会社選びも、非常に重要です。会社選びを誤ると、売却活動のための貴重な時間を浪費するうえ、ときには任意売却そのものに失敗することもあります。

不動産会社を選ぶ基準は複数存在しますが、売却の成否に大きく影響するのが「任意売却の実績の有無」です。任意売却は、金融機関との交渉や、期限を意識した売却活動など、通常の不動産売却にはない業務が発生するため、専門的な知識と豊富な経験が不可欠です。相談前に、どの程度の実績があるのか、Webサイトなどで確認してみましょう。

また「引っ越し代金100万円を確約」など甘いセールストークで集客している業者は避けた方が無難です。近年では売却代金からの引越し費用の捻出を拒否する債権者も多く、優良な不動産会社は「確約」はしません。また、その旨をきちんと相談者に伝えます。任意売却を請け負う不動産会社の中には、悪徳業者も少なくないため、注意が必要です。

まとめ

任意売却は、売却までの流れ自体は通常の不動産売買とほぼ同じです。ただし、債権者との交渉や、競売のタイムリミットまでに売却が必要となる点が異なります。

任意売却を成功させるには、実績の豊富な不動産会社に依頼するのが近道です。金融機関との交渉や物件の売却活動が効率的に進むため、スムーズに売却が成功する可能性が高くなります。依頼先を選ぶ際は、実績がどの程度あるかを、Webサイトなどでしっかり確認しましょう。

当社は、これまでに1,000件以上の任意売却を成功に導いてきた実績豊富な会社です。売却だけでなく、その後の債務整理や自己破産など、皆様の生活再建をトータルサポートします。相談は何度でも無料です。ぜひお気軽にご相談ください。

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一

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