リースバックの特約とは?確認すべき点・注意点を解説
リースバックの契約を締結する際は、特約を含めた契約内容を十分に理解しておかなければなりません。しかし、実際は、リースバックに関する契約内容や必要書類に記載される条項をすべて理解している方は少ないのではないでしょうか。
今回は、リースバックの際に締結する契約書のチェックポイント、特約に関する確認事項や注意点などについて詳しく解説します。
1.リースバックの2種類の契約書のチェックポイント
リースバックを利用する際には、不動産売買契約と建物賃貸借契約を結びます。いずれも重要な契約書であり、内容を十分に理解しておかなければなりません。
まずは、不動産売買契約と建物賃貸借契約の内容とチェックポイントについて解説します。
(1)不動産売買契約書の内容とチェックポイント
不動産売買契約の内容とチェックポイントは以下のとおりです。
①売買金額と引渡しのタイミング
住宅の売買価格が購入時の査定額と同じか、諸費用が差し引かれていないか、物件の引き渡しのタイミングをチェックします。
不動産を譲渡する際には多くの書類が必要です。特に、自宅を担保にしているローンを解除するために必要な抵当権解除証書は、ローンを組んだ金融機関が発行します、請求してから実際に発行されるまで、時間がかかるケースが多いです。
発行依頼から発行まで2~3週間程度かかるため、余裕を持ったスケジュール管理をしましょう。
②リフォームや修繕工事などの手配
物件を売却すると、建物や土地はリースバック会社のものになります。そのため、建物のメンテナンスや修繕を行う場合は、リースバック会社が発行する書面による許可が必要です。この許可が必要であることは、不動産売買契約書に記載されています。
どのような維持・修繕工事であれば許可が必要なのか、不要なのかを不動産売買契約書に明記しておく必要があります。建物が傷んでいる場合は、維持修繕工事についてリースバック会社と協議します。
③建物内の既存設備について
不動産を譲渡すると、リースバック会社の所有物となるのは土地・建物だけではなく、物件内の設備も含まれます。建物内の設備が故障した場合の取り決めをして不動産売買契約書に明記しておきましょう。
(2)建物賃貸借契約書
建物賃貸借契約書の内容とチェックポイントは以下のとおりです。
①家賃・敷金・礼金
建物賃貸借契約書には賃料・敷金・礼金が記載されています。リースバック査定時に報告された金額と異なっていないか確認しましょう。
②賃料の支払い方法
賃料等の支払方法が月払いか一括払いか、支払時期はいつかを確認します。家賃・賃料・敷金・礼金それぞれ支払いのタイミングが異なる場合があるため、支払い方法・期間を必ず確認しましょう。
③中途解約について
通常の建物賃貸借契約の場合、中途解約には解約予告期間が必要です。解約予告期間とは、賃貸借契約が終了する一定期間前までに、解約の意思を相手方に通知することを指します。
解約予告期間は一般的に1~2ヶ月に設定されています。
④退去時の原状回復の責任
賃貸借契約が終了したり、解約して退去したりといった際には、原状回復をする必要があります。原状回復とは、借りた時と同じ状態に戻して貸主に返すことです。
通常の使用で汚れた場合や、経年劣化した場合は修繕する必要はありません。ただし、タバコで壁紙が汚れたりした場合などは、借主の責任で修繕するか、修繕費を支払うことになります。原状回復について賃貸借契約書にどのように記載されているか、必ず確認しましょう。
2.リースバックの契約書で確認すべき特約
リースバック契約には特約が盛り込まれているケースも多く、注意すべき点もあります。特約の内容を十分理解しないまま契約すると、後々トラブルになる可能性があるため注意が必要です。契約書に明記されている特約内容をよく確認し、疑問点があれば必ず質問しましょう。
(1)買い戻し特約
住宅ローンの支払いが困難になって競売を回避することや、一時的にまとまった資金を得ることを目的としてリースバックを利用するのであれば、後から買い戻しができる特約は適した方法です。買い戻し特約で特に注意して見るべき契約内容と、似ている名称の「買い戻し(売買予約)」との違いについて説明します。
①買い戻し特約の注意点
買い戻し特約に関しては、約款を必ず確認します。特に、「買い戻しができる期間」については約款を十分確認することが重要です。
ただし、買い戻しに関して問題になるケースが多いのは、リースバック物件の転売により所有者が変わった場合です。新所有者が買い取りに応じず、トラブルになるケースもあります。対策としては、契約書に買い戻し特約の内容を明記することが有効です。特約を明記することで、転売後の新所有者に対しても買戻特約を主張できます。
②買い戻し・売買予約との違い
買い戻し(売買予約)と買戻特約は、名称も内容も似ており、見分けがつきにくいかもしれません。しかし、主に以下の点に違いがあります。
- 契約を決めるタイミング
- 買い戻しまでの期限
- 買い戻しに必要な金額
- 買い戻しの対象となる資産
買い戻し(売買予約)に関する契約は、必ず売買契約と同時に締結するものではありません。一方、買戻特約は売買契約と同時に決定する必要があります。
また、買い戻し(売買予約)には買い戻し期限はありません。ただし、買戻特約には期限があります。期間は最長10年であり、契約書に10年以上の期間が明記されていても、期間は10年です。
なお、特に買い戻しの契約をしていない場合は、期限は10年ではなく5年となります。
さらに、買い戻し(売買予約)では、買い戻す金額を自由に決めることが可能です。
買い戻しの金額を設定できる買い戻し(売買予約)では、一般的に売値よりも買値の方が高くなります。一方、買い戻し特約では、買付価格を上回る金額での買付はできません。
ほかにも、買い戻し(売買予約)では、不動産だけではなく動産も買戻すことができます。
ただし、「買戻特約」には、買い戻しの対象となる資産は「不動産でなければならない」という制約があることを理解しておきましょう。
(2)定期借家契約の中途解約特約
リースバックの際に結ぶ賃貸借契約の内容が「定期建物賃貸借契約」の場合は、原則として契約期間に中途解約はできません。中途解約の場合、違約金が発生します。
ただし、賃貸借契約に中途解約に関する特約がある場合は、中途解約が可能な場合があります。
そのため、定期借家契約の場合は、中途解約特約の有無を確認しましょう。
①普通借家契約との違い
普通借家契約(通常の賃貸借契約)は、契約期間が1年以上で更新が可能な契約です。貸主から正当な理由による解約の申し出がない限り、借主が希望すると契約が更新できます。
また、契約期間満了時に借主が貸主に契約更新を申し出なくても、法律上、契約は更新されるため、借主は該当の物件に住み続けることが可能です。
つまり、普通借家契約は借主の権利が強く、大きな問題がなければいつまででも借りることが可能です。借主の意向が貸主の意向よりも尊重される傾向が強く、貸主が契約を解除したり、更新を拒絶したりする場合には、正当な理由が必要です。
②長く住み続けたい場合は普通借家契約
長く住み続けたい方には、普通借家契約をおすすめします。
リースバック契約を結ぶ場合、多くのリースバック会社が2年や3年の定期借家契約を用意しています。しかし、定期借家契約では2年または3年で退去しなければなりません。引っ越し先を探す手間や、引っ越しにかかる費用が負担になる方も多いのではないでしょうか。
そのため、転居の負担をなくしたい場合、自宅を売却した後も長く住み続けたい場合は、借主が希望すれば契約を更新できる「普通賃貸借契約」を結ぶようにしましょう。
(3)禁止事項の内容を確認
賃貸契約では、契約書の特約欄に物件の使用に関する禁止事項が明記されていることがあります。例えば「ペットの飼育」、「リフォーム」、「第三者への転貸」などです。
オーナーとして住んでいたときには問題なかったことが、リースバックによって禁止事項になることもあるため、注意しましょう。
(4)契約違反による違約金
賃貸借契約中に借主が契約に違反した場合、違約金が規定されている場合があります。契約解除などの重い罰則が課されることもあるため、禁止事項として理解しておくことが大切です。
3.リースバックを成功させるコツ
リースバックは、ローン返済に追われて急遽決める方が多いです。しかし、不動産会社に物件の査定を依頼し、慎重に検討しなければ失敗や後悔をするリスクがあります。最後に、リースバックを成功させるコツを2つ紹介します。
(1)自宅の価格相場を把握する
リースバックを利用する前に、不動産会社の売却査定などを利用して、自宅の価格相場を把握しておきましょう。
リースバックで価格が下がるのはやむを得ませんが、売却査定価格と大きな差がある場合は交渉できる可能性があります。
(2)信頼できる相談先を探す
不動産会社の対応に問題があったり、実績が乏しかったりするために問題が起きることもあります。そのため、信頼できる相談先を見つけることは、リースバックを成功させるためには不可欠です。また、交渉締結までのストレスを軽減するためにも重要です。
リースバックの可否を判断する際には、専門家による客観的なアドバイスを参考にしましょう。リースバックの経験が豊富な会社であれば、過去に同じような問題を抱えた方の事例を数多く経験しているため、的確なアドバイスをしてくれるはずです。
まとめ
今回は、リースバックの際に締結する契約書のチェックポイント、特約に関する確認事項や注意点などについて解説しました。
リースバック契約を検討する際には、普通借家契約か定期借家契約か、契約期間、禁止事項などを確認しなければなりません。契約書の種類だけではなく、特約の詳細を確認し、不明点や不安な点を残さずに締結することが大切です。特約を含め契約書の内容すべてを自身で調べて理解するのは難しいので、専門家に相談しながら契約を結ぶことが望ましいでしょう。
当社は、数多くのリースバックや親族間売買などを手掛けてきた不動産会社です。ご相談者様の状況やご希望を丁寧にお伺いした上で、最適な解決方法をご提案します。
「リースバックを検討しているけれど、他にも良い方法があるなら比較したい」「住宅ローンを払えないけれど、今の家に住み続けたい」など、さまざまなご相談に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
こちらでは当社での相談から解決までの流れを紹介していますので、参考にしていただければと思います。
寺島 達哉
クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉