リースバックの仕組み・基本的な流れと所要期間も解説
リースバックは、「住宅ローンの支払いが難しい状況に陥っているけれど、今の家に住み続けたい」という場合の解決策として多くの人に利用されている方法です。
リースバックに興味があるけれど、仕組みがよくわからなくて不安だという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、リースバックの仕組み、流れと所要期間、利用条件などについて解説します。
目次
リースバックの仕組み
リースバックは、自宅を売却後に、売却先(リーズバック業者等)と賃貸契約を結ぶことにより、元の自宅に住み続けられる方法です。
リースバックの仕組みを簡単に説明すると、以下のようになります。
- 自宅をリースバック業者に売却する
- リースバック業者と賃貸契約を締結する
- 元の自宅にそのまま居住し、リースバック業者に毎月家賃を支払う
つまり、リースバックは、自宅の売却と賃貸契約がセットになっています。自宅を売る(Sell)、賃貸(Lease)という意味から、「セールアンドリースバック」と呼ばれることもあります。
リースバックの基本的な流れと所要期間
リースバックの基本的な流れと所要時間の目安について説明します。
1.依頼先の選定と問い合わせ
まずは、リースバックの依頼先の候補を絞り、電話やメール、公式サイトの問い合わせフォームなどから問い合わせをします。リースバックを成功させるためには、リースバックの相談先は慎重に選ぶことが大切です。公式サイトの実績などをよく確認した上で、選びましょう。
2.簡易査定
リースバックの依頼先を選定したら、簡易査定を受けることになります。リースバックリースバックの内容や手続き、仕組みについても説明があるため、分からないことがあれば質問しましょう。
依頼先によりますが、2~3日程度で簡易査定が実施され、買取金額と家賃の概算が提示されます。
3.現地調査・査定額の提示
簡易査定後、数日~1週間程度で現地調査を実施します。
立地条件や建物の内外装を調査したうえで正式な査定額が決定され、2~3日程度には買取価格と家賃が提示されるでしょう。
4.契約・入金
提示された買取価格と家賃、契約内容に納得した場合は契約に進みます。
契約内容に不明な点がある場合は、契約前にしっかり確認してください。
依頼先によりますが、一般的には申し込み後、2週間から1ヶ月程度で入金されます。
リースバックの利用条件
リースバックを利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 全ての名義人から同意を得ている
- 住宅ローンを完済している
- 家賃の支払いが可能である
それぞれの条件と、注意点を解説します。
1.全名義人から同意を得ている
リースバックでは自宅を売却することになるため、登記されている所有者全員の同意を得ることが条件となります。
自宅に住んでいるのは自分のみであっても、親から自宅を相続し、兄弟姉妹が所有者として登記されている場合もあります。ほかにも所有者がいる場合は、所有者全員から売却の同意を得なければなりません。
2.住宅ローンを完済している
リースバックを利用するためには、原則として住宅ローンを完済している必要があります。
自宅を売却時に受け取る資金で住宅ローンを完済できない場合でも、自己資金で残債を支払うことができればリースバックは可能です。
3.家賃を支払うことが可能
リースバックでは、家賃を支払う能力が求められます。リースバック契約は長年自宅を所有していた高齢者が利用することも多いため、家賃保証会社の審査も一般の賃貸契約ほど厳しく実施されない傾向にあります。
リースバックをするメリット
リースバックの仕組みや概要を踏まえて、リースバックのメリットを紹介します。
1.売却後も物件に住める
リースバックを利用すれば、売却して売却代金を受け取った後も、自宅に住み続けることができます。住み慣れた自宅で今まで通りの生活を送れることは、大きなメリットといえるでしょう。
2.買い戻しができる
リースバックを活用しながら、将来、自宅を買い戻したいという方もいらっしゃるでしょう。「再販売予約権」付きの契約を結ぶことができれば、自宅を買い戻せる可能性があります。
3.迅速な現金化
リースバックは、住宅ローン申し込みや審査など手間と時間がかかる一般的な不動産売買と比較して、現金化までの時間が短いです。すぐに資金を確保したい人にとってはメリットといえます。
4.引越しが不要
一般的な売買の場合、引っ越しが必須ですが、引っ越しは時間もお金もかかります。資金調達を検討している方にとって、引っ越し費用は大きな負担になるでしょう。リースバックの場合は引っ越しの必要がなく、自宅に住み続けられます。
5.売却を周囲に知られない
自宅を売却したことを周囲に知られると、他人に知られたくないプライベートな話を詮索されることもあるかもしれません。しかし、リースバックを利用すれば、自宅を売却しても普段と変わらず住み続けられます。そのため、周囲に知られることなく売却を進め、売却代金を受け取れます。
6.固定資産税の支払いがなくなる
リースバックを行うと、所有権は買主であるリースバック会社に移転します。そのため、毎年1月1日時点の固定資産の所有者に課税される、固定資産税を支払う必要がありません。
リースバックをするデメリット
リースバックのメリットに魅力を感じる方も多いでしょう。しかし、デメリットや注意点もあります。リースバックの主なデメリットも確認しておきましょう。
1.物件の名義が変わる
住宅の所有権がリースバック会社に移るため、住宅の所有者が変わります。
そのため、自宅を子どもに相続させたい、あるいは子どもが自宅を相続したいという希望を持っている場合はデメリットとなるでしょう。
2.家賃を支払う
リースバックの場合、自宅を売却しても住み続けることができますが、賃貸契約を締結するため、毎月家賃が発生します。
なお、契約内容によって家賃の金額や支払期間が異なります。リースバック契約を締結する際には、自分に適した契約内容のプランを選ぶことが大切です。
例えば、家賃が高すぎたり、支払い期間が長すぎたりすると、老後の負担になる可能性があるため注意しましょう。
リースバックに関するトラブル事例
リースバックに関する典型的なトラブル事例を紹介します。
1.家賃の滞納
リースバックの家賃は、周辺相場ではなく家の売却価格によって変動します。多額の資金を得るために売却価格を吊り上げると、周辺相場の家賃よりも高く設定されるので注意しましょう。
収入が不安定な場合、高い家賃を支払えず、退去を求められる可能性もあるでしょう。自身の収入、職業などから、どの程度の家賃が支払えるのかをシミュレーションすることが大切です。
2.無断で売却
将来買い戻す約束をしていたものの、無断で売却されるというトラブルが起きる可能性があります。買主側の経営不振により、別の第三者に売却されるケースなどです。賃貸借契約は新しい買主に引き継がれることになり、同時に家賃の値上げ交渉が行われることもあります。
3.修繕費の請求
通常の賃貸借契約では、修理費用は貸主負担です。しかし、リースバックの場合は借主負担となるケースがあります。貸主が経費削減のために「借主負担」と取り決めをしますが、賃貸借契約書に記載されているため、事前に確認しておきましょう。
4.相続人間のトラブル
リースバックは売却後も元自宅で生活できるため、家族であってもリースバックをしたことに気づかない可能性もありますが、家族や相続人になる可能性のある方には事前に説明して了承を得ることが大切です。
家族や相続人になる可能性のある方に相談せずにリースバックをした場合、相続の際に他人名義の不動産であることが判明して、トラブルに発展する可能性があります。
リースバック以外で自宅売却後に住み続ける方法
リースバック以外にも自宅を売却後に住み続ける方法はあります。
1.リバースモーゲージ
リバースモーゲージは高齢者向けの制度で、現在の住宅に住み続けながら住宅を担保に融資を受けられるという方法です。生きている間は毎月利息のみを支払い、契約した方が亡くなると契約が終了し、担保にした住宅を売却して一括返済します。なかには、毎月の利息の支払いが不要なケースもあります。
しかし、長生きすると資金を限度額まで使う可能性があるほか、不動産価格の下落リスク、変動金利で大幅に金利が上昇するリスクなどのデメリットもあるので、事前に理解しておきましょう。さまざまな注意点はあるものの、老後の資金が必要になりリバースモーゲージを利用する方は増加傾向にあります。
2.親族間売買
親族間売買は、家族や親戚などの親族に家を売却することです。親が高齢になり自宅の住宅ローンの支払いが厳しくなったけれど、働き盛りの子世代が売買という形で家を引き継ぎたいなどという場合などに利用されています。
親族間売買には、さまざまな注意点が存在するので、検討する場合は、親族間売買の実績を豊富に持つ不動産会社を選ぶことが大切です。
まとめ
この記事では、リースバックの仕組み、流れと所要期間、利用条件などについて解説しました。
リースバックは、自宅を売却した後も住み続けたいという人にとって魅力的な方法ですが、デメリットもあるため注意が必要です。リースバック以外の方法が適している場合もあるので、信頼できる専門家に相談してアドバイスを受けながら、ご自身に合う方法を選択してください。
当社は、数多くのリースバックや親族間売買などを手掛けてきた不動産会社です。ご相談者様の状況やご希望を丁寧にお伺いした上で、最適な解決方法をご提案します。
「リースバックを検討しているけれど、他にも良い方法があるなら比較したい」「住宅ローンを払えないけれど、今の家に住み続けたい」など、さまざまなご相談に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
こちらでは当社での相談から解決までの流れを紹介していますので、参考にしていただければと思います。
寺島 達哉
クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉