固定資産税の差押予告通知書とは?差し押さえまでの流れと対処法も解説

固定資産税

固定資産税は、土地や建物などの不動産を所有しているとかかる税金です。通常、年に数度、納税のタイミングがありますが、期限に間に合わず滞納となることもあるでしょう。

固定資産税を滞納し、督促を長期間無視していると「差押予告通知書」が届くことがあります。この記事では、差押予告通知書の意味、差し押さえまでの流れ、差押予告通知書が届いた時の対処法などについて説明します。

1.固定資産税の差押予告通知書とは

差押予告通知書は、固定資産税をはじめとした、さまざまな税金を滞納した際に送られてくる書類です。名称の通り、差し押さえの事前予告を行い、自発的な納税を促す目的で送付されます。「差押事前通知書」「差押予告書」と記載されていることもあります。

多くの場合、赤や黄色など警告色の封筒で届きます。

(1)差押予告通知書の放置は厳禁

「今は余裕がなくて払えないから、しばらく放っておこう」などと、税金の督促を放置してしまう方もいらっしゃいますが、差押予告通知書を無視するのは危険です。

差押予告通知書が届いたということは、すでに後がない状態だからです。そのまま放置すると、いずれ差し押さえが実行され、財産を自由に処分できなくなります

差押予告通知書には窓口の連絡先が記載されているので、支払いが難しい場合は、すぐに連絡するようにしましょう。

(2)滞納から財産売却までの期間

一般的に、ローンの債務を滞納して差し押さえられる場合は、裁判所の手続きを経る必要があります。そのため、完了までにかなりの時間がかかります。これは、個人が他者の財産を勝手に取り上げることはできず、裁判所の許可を得る必要があるためです。

しかし、税金の支払債権では、債権者は国や自治体となっています。そのため、裁判所の許可が不要であるため、差し押さえから換価処分まで、比較的短期間で行われます。早い場合は滞納から3か月~4か月程度で財産が売却されることもあるため、期間の余裕はあまりありません。

2.固定資産税の滞納から差し押さえまでの流れ

固定資産税をはじめとした地方税は、法律上は督促状を発送してから10日経過すると差し押さえが可能となります。しかし、実際は10日経過で即、差し押さえられることはほとんどなく、以下のような段階を踏んで、回収の準備が行われることになります。

(1)督促状の送付

期限までに固定資産税を納付しないと、まずは書面によって督促が行われます。税金の納付期限が到来している旨を通知し、納税を促すのが目的です。

書面による督促は複数回行われることが多いです。

(2)電話や自宅訪問による督促

書面による督促に応じないと、役所から電話がかかってきたり、固定資産税の徴収担当者が自宅を訪問したりすることもあります。支払いが難しい状況に陥っていると、電話や訪問を無視したくなるかもしれませんが、この段階でしっかりと対応することが大切です。

電話や訪問に応じて、支払いが難しい状況であることを説明すれば、返済期限を延長してもらえる可能性もあります。差し押さえを避けるためにも、誠実な対応を心がけましょう。

(3)財産調査の実施

再三の督促を無視していると、役所は差し押さえの準備を始めます。差し押さえの前段階として行われるのが財産調査です。

財産調査とは、簡単にいうと、滞納者がどのような財産をどれだけ保有しているか調べることです。預金している銀行や、給与を支払っている職場などに、問い合わせのための連絡が入ることもあります。また、固定資産税は不動産に課される税金なので、不動産を保有していることはすでに知られています。

財産調査の結果、換金できそうな財産がみつかると、いよいよ本格的に差し押さえの準備が進みます。

(4)差押予告通知書の送付

差し押さえを行う前に、自発的な納付を促すために差押予告通知書が送付されます。この時点で、すでに財産調査は完了しているため、財産の隠匿によって差し押さえを逃れるのは難しいでしょう。

差押予告通知書には期限が記載されていて、この期限までに連絡するか、税金を完納しなければなりません。なお、書面による予告を行わずに差し押さえを実行するケースもあります。

(5)差し押さえの実行

差押予告通知書に記載されている期限が超過すると、差し押さえが実行されます。差し押さえの実行後は、所有者であっても財産を自由に処分することはできません。

例えば、銀行の預金口座を差押さえられた場合は、銀行からお金を引き出すことはできなくなります。不動産であれば、差し押さえを解除されるまで売却や贈与をすることは不可能です。

不動産などの形のある財産の場合、放置すると公売によって売却されることになります。

3.固定資産税の滞納で差し押さえの対象となる財産

固定資産税などの地方税を滞納すると、さまざまなものが差し押さえの対象となります。どのようなものが差し押さえの対象となるのか具体的に説明します。

(1)銀行口座(預貯金)

差し押さえの優先度が比較的高いのが銀行口座です。有形の財産のように換価処分をする必要がないためです。

銀行口座が差し押さえられると、預けているお金の引き出しや送金はできなくなります。

(2)給与債権

給与債権も、直接お金で回収できるため、優先的に差し押さえられやすいです。

給与債権が差し押さえられた場合、最大で手取額の25%が給与から控除されます。手取りが30万円の場合、毎月7万5千円が差し引かれることになります。

(3)不動産

固定資産税が請求されているということは、不動産を保有していることになるため、こちらも差し押さえの対象となります。

不動産を差し押さえられると、不動産の売却や、他者への譲渡ができなくなります。ただし、住宅ローンなど金融機関の抵当権が設定されており、残債が多いケースでは、他の財産から優先的に差し押さえられる可能性が高いです。

(4)貴金属などの動産

動産も差し押さえの対象となります。差し押さえを実行する際は、自宅に職員が訪問し、換価できそうな財産がないか捜索を行います。

対象となるのは、貴金属・ブランドバッグ・骨董品・自動車・現金などです。差し押さえられた動産は、税金が完納されないと公売にかけられます。

(5)保険の解約返戻金

解約返戻金が設定されている保険に加入していると、その保険も差し押さえの対象となります。生命保険や学資保険などが代表的です。

保険を差し押さえられると、保険は強制的に解約されてしまいます。保険の「介入制度」を利用することで保険の存続は可能ですが、保険金の受取人が解約返戻金相当額を負担しなければならないため、実質的には難しいことも多いです。

(6)差し押さえできない財産もある

固定資産税の差し押さえではさまざまな財産が対象となりますが、一部差し押さえが禁止されているものもあります。

税の徴収に関するルールが定められている国税徴収法では、以下のものは差押禁止財産とされています。

  • 衣服や寝具など生活用品
  • 燃料や食料
  • 事業に不可欠な機械や器具
  • 実印
  • 仏像など祭祀具
  • 学習用の書籍
  • 規定の割合を超える給与

参考:国税徴収法七十五条・七十六条

4.通知書が届いても固定資産税を払えない場合

差押予告通知書が届いても、経済的な事情から固定資産税の納付が難しいこともあるでしょう。「払いたくても払えない」という場合、どのように対処すべきか説明します。

(1)市役所に分納を相談する

固定資産税は、一括払いのほか、年4回の分割払いが可能です。しかし、この分割払いでも厳しい場合は、さらに分割できることもあります。例えば、年に4回10万円の支払いは難しいけれど半額の5万円なら支払えるということもあるでしょう。

ただし、分納中も延滞税が発生する点には注意してください。また、分納後に納付期限を無断で破ると短期間で差し押さえに至ることもあります。

(2)減免の申し出をする

固定資産税の減免の申し出ができることもあります。詳細は各自治体によって異なりますが、著しく経済的に困窮している場合や、土地を公共用に提供している場合などは、減免の申請ができることがあります。

例えば、大阪市では以下の条件に該当する場合、減免の申し出が可能です。

  • 所有者が生活扶助を受給している
  • 所有者が65歳以上
  • 所有者が特別障がい者
  • 所有者が寡婦またはひとり親
  • 災害によって対象の固定資産が損害を受けている
  • 地域の集会所や倉庫や公園として提供しているもの

参考:固定資産税および都市計画税の減免について|大阪市

(3)借金がある場合は法的手続きで整理する

借金が原因で固定資産税を支払えない場合、分納や免除の手続きと並行して債務整理を検討した方がよいケースもあります。

債務整理には、大きく分けて以下の3種類があります。

任意整理 債権者と交渉して利息や遅延損害金をカットしてもらうことにより、毎月の支払いを抑え経済的回復を図る方法
個人再生 裁判所に申し立てをして借金を大幅に減額してもらう手続きで、住宅ローンを対象から外して自宅を残せる制度もある
自己破産 裁判所に申し立てをして免責許可決定を受けて債務を免除してもらう手続き(固定資産税など税金は免責の対象外)

それぞれ異なるメリットとデメリットがあるため、債務整理を検討する場合は専門家に相談のうえ、ご自身の状況に適した方法を慎重に選ぶようにしてください。

5.まとめ

固定資産税の差押予告通知書が届くと、その時点で差し押さえと公売への準備は着々と進行しています。放っておくと財産を失うことになりかねないため、早めの相談が必要です。固定資産税は市役所に窓口があることが多いため、まずはそちらに連絡してみましょう。

固定資産税には、減免の対象となるケースがあるほか、分納の対応が可能なこともあります。事前に相談をして、支払える分だけでも支払っている滞納者に対しては、有無を言わさず差し押さえを実行することは稀です。まずは、書類を放置せず、現在の経済状況を踏まえて、納税相談をしてみてください。

固定資産税の滞納により自宅を差し押さえられた場合、任意売却を行うことにより公売を回避できることもあります。ただし、任意売却を実現するためには、専門的なノウハウが必要となるため、任意売却に精通した不動産会社に相談することが大切です。

当社は、任意売却を専門的に扱う不動産会社です。経験豊富な担当者が、ご相談者様のご希望や状況を丁寧にお伺いした上で、最適な解決方法をご提案しております。

任意売却により固定資産税の滞納による不動産の差押を解除できた事例もございますので、公売予告通知書を受け取った後でも、お気軽にご相談ください。

寺島 達哉
寺島 達哉

クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉

「払えない」「住み続けたい」今すぐご連絡ください! 任意売却・リースバックの無料相談はこちら

0120-279-281
24時間受付 メールでのご相談はこちら