住宅ローン滞納は1回だけなら大丈夫?リスクや対処法を解説
住宅ローンの引き落とし口座の残高不足などにより、うっかり住宅ローンを滞納してしまったという経験をお持ちの方は少なくないでしょう。住宅ローン滞納は1回だけなら、特に問題はないのでしょうか。
この記事では、住宅ローン滞納を1回した場合に発生する可能性のあるリスクや、滞納した場合の対処法などについて解説します。
1.住宅ローン滞納1回なら大丈夫?
住宅ローンを滞納しても、「1回だけなら問題ないだろう」と思う方も多いかもしれませんが、本当に大丈夫なのでしょうか。
(1)滞納1回でもリスクがある
住宅ローンが引き落とされる銀行口座に入金するのをうっかり忘れていて1回だけ滞納してしまったという場合であれば、すぐに返済すれば大きな問題にはなることは少ないです。
ただし、契約内容によっては短期間の滞納でもリスクを負う可能性があるので、早めに対処することが大切です。
(2)滞納1~2回以降は早急な対処が必要
住宅ローンの滞納が1回・2回続いた状態ですぐに返済していれば、リスクはあるものの大きな問題にならないケースも少なくありません。しかし、それ以上滞納を続けると、やがて内容証明郵便で「催告書」「期限の利益喪失予告書」などと記載された書類が届きます。
このような通知が届いた後は、金融機関が法的手続きにより債権の回収を行うことになるので早急に対処する必要があります。
2.1回の住宅ローン滞納によるリスク
たった1回だけ住宅ローンを滞納した場合でもリスクが生じる可能性があります。具体的には以下のようなことが考えられます。
(1)優遇金利の適用が終わる
金利には「優遇金利」と「店頭金利」の2種類があり、基準となる店頭金利から借入れの際に金利が引き下げられたものが優遇金利です。元々設定されていた金利より優遇されているため、優遇金利になると支払額を抑えられるというメリットがあります。
しかし、優遇金利が適用されるのは、金融機関が定める基準を満たしている場合のみです。住宅ローンを滞納すれば、優遇金利を解除されるリスクがあります。
優遇金利が解除されると店頭金利が適用されるため、総支払額が高くなってしまいます。そうなると、住宅ローン返済の期間が延びる可能性があり、返済負担が大きくなるかもしれません。
(2)遅延損害金が発生する
住宅ローンを滞納すれば、ペナルティとして遅延損害金の支払いが発生します。遅延損害金は延滞料のようなもので、支払い期日までに料金が支払われない場合に発生する金銭です。
遅延損害金は支払い期日の翌日から発生します。遅延損害金の年率は14.6~20%に設定されていることが一般的で、契約書などに年率は記載されています。
契約時に遅延損害金の年率を定めていない場合には、民法で定められている年率3%が適用されます。遅延損害金の支払額は、「借入額×年率×滞納日数÷365日」で計算できます。
遅延損害金は、滞納が長引くほど支払う金額も高額になるため注意が必要です。
(3)信用情報に傷がつく
住宅ローンを滞納すれば、信用情報に傷がつきます。信用情報とは、銀行やクレジットカード会社など金融機関が審査の際に確認する個人の情報です。
信用情報には名前や住所など個人の情報や、クレジットカードやローンなどの契約内容や支払い状況、残高などが記録されています。
一般的に住宅ローンを2カ月以上滞納した場合、信用情報に事故情報として記録され、クレジットカードの新規作成時などの審査に通らなくなります。
3.住宅ローンを滞納した場合の対処法
住宅ローンを滞納した場合、どのように対処すればよいのでしょうか。適切な対処法について説明します。
(1)早急に返済する
住宅ローン滞納は1回だけでもリスクがあるので、早急に返済をすることが大切です。
返済が遅れるほど遅延損害金が高額になりますし、それ以外のリスクが顕在化する可能性が高まります。すぐに返済する旨を金融機関に伝えて、指定の支払い方法で入金しましょう。
速やかに対処すれば、大きな問題にならずに済みます。
(2)一時的に返済が難しい場合の対処法
病気や怪我、退職などの事情により、住宅ローンの返済が一時的に難しくなったけれど、時間が経過すれば支払えるというケースもあるでしょう。このように一時的に返済が難しくなっている場合には、以下の方法で対処しましょう。
①金融機関に相談する
一時的に返済が難しくなっている旨を住宅ローンの借入れをしている金融機関に相談すれば、リスケジュールに応じてもらえる可能性があります。リスケジュールとは、返済計画の見直しです。
返済自体は無くなりませんが、借入期間の延長やボーナス返済の中止など返済方法を見直すことで一時的に住宅ローンの返済が軽減されます。
②保険を利用する
住宅ローンを組む際に特約付きの団信へ加入している場合、怪我や病気の状態によっては補償を受けられる可能性があります。
加入している保険内容を見直し、住宅ローンの負担が軽減されないかどうか確認してみましょう。
4.住宅ローン滞納が長期化した場合の流れ
住宅ローン滞納が1回であったとしても、滞納が長期化すれば最終的に自宅を競売にかけられてしまいます。
住宅ローン滞納が長期化した場合、以下のような流れで競売まで進むことになります。
(1)滞納から1~2カ月:督促状が届く
住宅ローンを滞納して1~2カ月すると、住宅ローンの借入れをしている金融機関から督促状が届きます。督促状は、住宅ローンを滞納している旨が記載された支払い請求書ですが、この時点ですぐに対処すれば大きな問題になることは少ないです。
(2)滞納から2~3カ月:催告書が届く
督促状を無視していると、滞納から2~3カ月で催告状が届きます。催告状は督促状と似ていますがが、「支払いがこれ以上遅れる場合は法的措置を取る」という最後通告のような意味を持っています。
この時点で信用情報に事故情報が登録されている可能性が高く、早急に対処することが大切です。
(3)滞納から3~6カ月:期限の利益喪失の通知が届く
住宅ローンの延滞期間が3カ月を過ぎると、「期限の利益喪失の通知書」が届きます。
期限の利益とは借金を少しずつ返済できる権利のことを意味します。この権利を喪失すると、一括払いを請求されることになります。
(4)代位弁済通知が届く
期限の利益が喪失した後は、一般的に、住宅ローンの契約者に代わって保証会社が金融機関に返済を行います。これにより、債権者が金融機関から保証会社へと変わり、代位弁済されたことを伝える代位弁済通知が届きます。
代位弁済通知が届くと、保証会社は競売に向けて手続きを進めます。
(5)滞納から6~10カ月:自宅が競売にかけられる
代位弁済通知が届いた後は、保証会社に一括返済できなければ、契約者の意思に関係なく自宅を競売にかけられます。
裁判所による自宅の調査などが行われた後に期間入札が開始され、入札者に売却されます。
売却後も家に居座り続ければ、強制退去となり、家の中の荷物は全て運び出されてしまいます。
5.住宅ローンの返済が難しい場合の対処法
住宅ローンの返済が今後も難しい場合は、滞納をする前に今後の対処について検討しなければなりません。住宅ローンの返済が難しい場合にできる対処法について説明します。
(1)自宅を売却する
住宅ローンの返済を続けることが難しい場合、早めに自宅を手放すことを検討することが望ましいでしょう。自宅を売却する方法は、以下の2つに分類されます。
①通常売却
住宅ローンの残額が自宅の売却額よりも少ない「アンダーローン」の場合、売却額を返済に充てることで住宅ローンを完済することが可能です。住宅ローンを完済できれば、抵当権を外すことができるので、一般的な方法で売却できます。
完済後に残った資金で新しい家の購入や賃借契約を検討することもできるでしょう。
②任意売却
自宅の売却額よりも住宅ローンの残額が上回る「オーバーローン」の場合でも売却は可能です。ただし、一般的な不動産売却とは異なり、任意売却という方法になります。任意売却とは、借入れをしている債権者の承諾を得て売却をする方法です。売却額は住宅ローンの返済に充て、住宅ローンの残債については債権者と相談して分割で返済することになります。
任意売却を行う場合は、債権者との交渉など専門的なノウハウが必要なので、任意売却の実績を豊富に持つ不動産会社を選ぶことが大切です。
(2)債務整理をする
住宅ローン以外の借金も抱えていて返済が難しい場合は、債務整理を検討しなければなりません。債務整理とは、裁判所を介して借金の返済を軽減するための手続きです。主な債務整理方法として以下の2種類があります。
①自己破産
住宅ローンを含めた借金が全て免除される手続きです。
借金をゼロにして生活を立て直すことを目的としていますが、少しでも債権者の損害が軽減されるように自己破産者の財産は全て換価されて債権者へ公平に分配されます。
自宅や車などは手放すことになります。
②個人再生
自己破産とは異なり借金は全額免除されないものの、大幅に軽減される手続きです。
個人再生には住宅ローン特則という制度があり、住宅ローンを債務整理の対象から除外することができます。つまり、住宅ローン以外の借金を整理し、住宅ローンは支払い続けるので自宅を手放す必要がありません。
まとめ
この記事では、住宅ローン滞納を1回した場合に発生する可能性のあるリスクや、滞納した場合の対処法などについて解説しました。
住宅ローンは1回でも滞納すれば優遇金利の解除や、遅延損害金の支払いなどのリスクがあります。住宅ローンの支払いが難しくなった場合は、住宅ローンの残額や自宅の価値などを調べて今後の対処について検討しましょう。住宅ローンが残っている家でも売却することはできますが、オーバーローン状態で任意売却を行う場合は専門的なノウハウが必要になるので、任意売却の実績を豊富に持つ不動産会社を慎重に選ぶことが大切です。
当社は、数多くの任意売却を手掛けてきた不動産会社です。ご相談者様の状況やご希望を丁寧にお伺いした上で、最適な方法をご提案します。「住宅ローンの支払いが難しい状況だけど、今の家に住み続けたい」などというご相談にも対応しています。
こちらでは当社の相談から解決までの流れを紹介していますので、参考にしていただければと思います。
寺島 達哉
クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉