オーバーローンとは?オーバーローンになる要因や対処法を解説
不動産の売却時に「オーバーローン」という言葉を知り、その意味を調べているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
オーバーローンは、一般的に「貸出超過」という意味で用いられる言葉ですが、不動産売買においては購入時と売却時で異なる意味を持ちます。
この記事では、不動産購入時・不動産売却時のオーバーローンの意味、不動産売却時にオーバーローンになる要因、オーバーローン状態の家を売却する方法などについて解説します。
目次
1.不動産購入時と売却時のオーバーローンの意味
最初に、不動産購入時と売却時のオーバーローンの意味について説明します。
(1)不動産購入時のオーバーローンとは
不動産購入時のオーバーローンとは、物件の購入価格以上の金額で住宅ローンを組むことを指します。例えば、2,000万円の物件を購入する際、2,500万円の住宅ローンを組むなどです。
以前は住宅ローンの借入れの際は、住宅価格の3割程度の頭金が必要となることが一般的でした。しかし、近年は住宅ローンの審査が緩和され、頭金なしで住宅の購入価格の全額を買い入れるフルローンや、オーバーローンが可能な場合もあります。
(2)不動産売却時のオーバーローンとは
次に、住宅売却時のオーバーローンの意味を説明します。住宅を売却しようとするとき、住宅ローンが残っている家は、「オーバーローン」と「アンダーローン」に分けられます。
オーバーローンとは、住宅ローンの残債が家の売却価格を超えている状態のことをいいます。反対に、住宅ローンの残債が家の売却価格を下回っている状態のことをアンダーローンと呼びます。アンダーローンであれば家を売却した金額で残債を完済できるのに対して、オーバーローンでは家を売却した後、残債が残ります。
2.不動産売却時のオーバーローンの問題点
不動産売却時のオーバーローンの問題点として、以下のようなことが挙げられます。
(1)売却したくてもできない
「住宅ローンの返済が難しい」「新しい家に住み替えたい」などと考えて売却をしたくても、オーバーローンの状態では通常の売却はできません。なぜなら、住宅ローンを完済しないと、金融機関が設定している抵当権を外すことができないからです。
通常、住宅ローンを利用して不動産を購入する場合、金融機関はその購入する不動産を担保にして抵当権を設定します。抵当権は、高額な資金を貸し付ける金融機関にとって債権を守る強力な権利です。そのため、住宅ローンが残っている不動産を売却する場合は、残債を完済し、抵当権を抹消してから引き渡さなければなりません。
アンダーローンの場合は、売却価格内で住宅ローンの残債を完済できるので、問題なく抵当権を抹消することが可能なので、通常の方法で売却することができます。しかし、売却時にオーバーローンの状態では、家の売却代金でローン残高を完済できないので、抵当権を抹消できません。そのため、一般的な方法では家を売却することができません。
(2)離婚の財産分与が難しい
通常、離婚時には夫婦で築いてきた財産を公平に分配することになり、購入した自宅も財産分与の対象になります。しかし、自宅の売却益を分割したいと考えても、オーバーローンの場合は通常の方法で売却できないので夫婦のどちらか一方が住み続けることが多いです。
住宅ローンを支払っている名義人が住むなら特に問題はないように思えますが、「一人で住むには広すぎて家の維持が大変だ」「自分だけが住むには不便だ」などの問題が生じるかもしれません。
また、夫婦二人でペアローンを組んでいた場合、オーバーローンなら離婚しても一緒に返済を続けなければならないというデメリットがあります。
3.不動産売却時にオーバーローンになる要因
住宅の売却時にオーバーローンになる主な要因について説明します。
(1)借入れから数年しか経過していない
住宅の売却時にオーバーローンとなる要因として多いのが、住宅ローンの借入れから数年程度で自宅を売却することです。転勤や離婚などの事情により、自宅を購入してからわずかな期間で自宅を売却することがあるでしょう。しかし、購入して数年程度の家を売却する場合、住宅ローンの残高がまだ大幅に残っているケースが少なくありません。
また新築物件を購入した場合、中古物件になったことで購入時より物件の時価が大幅に下がっていることがあります。その場合には、ローン残債が自宅の売却価格を上回り、オーバーローンになる可能性が高いです。
(2)住宅ローンの借入額が多い
住宅ローンの借入れ金額が多いことも、オーバーローンとなる要因の一つです。特に購入時に、オーバーローンまたはフルローンでローンを組んだ場合は、借入れ金額が多いです。その分、毎月の返済額が大きく、住宅ローンの支払いが困難になり、自宅の売却を検討するものの、オーバーローン状態であるために通常の方法では売却ができないというケースも多いです。
(3)不動産価格の下落
不動産価格の下落も、オーバーローンとなる要因の一つです。基本的に家の資産価値は新築後、徐々に下がっていきます。土地の資産価値は自然災害などを除けば下がりにくいですが、住宅の資産価値は時間の経過とともに下がる傾向があります。
資産価値が下がっても住宅ローンの残債は時間の経過とともに減っていきますが、資産価値の下落の方が早いケースも少なくありません。
4.オーバーローンを解消するためにできること
自宅を売却したいというタイミングでオーバーローンにならないようにするためには、以下のことを見直してみましょう。
(1)金利や保険を見直す
まずは金利や保険の見直しを行いましょう。他社と比較して金利が高すぎる場合には、借り換えをすることで返済負担が軽減されることがあります。
また、住宅ローンを組む際に加入する団信などの保険料が、生命保険と二重払いになっているケースも多いです。保険内容を見直し、二重払いを解消しましょう。
(2)余剰資金で繰り上げ返済する
余剰資金で繰り上げ返済をすることができれば、住宅ローンの残債を減らして、オーバーローンを解消できる可能性が高まります。ボーナスや臨時収入が入ったときは、積極的に繰り上げ返済を検討するとよいでしょう。ただし、繰り上げ返済をする際は手数料がかかることが多いので、事前に手数料を確認しておくことが大切です。
5.売却時にオーバーローンかどうか確認する手順
住宅の売却を検討する際は、まず、オーバーローンかアンダーローンかを確認することが大切です。以下の手順で確認しましょう。
(1)住宅ローンの残高を確認
オーバーローンかアンダーローンかを確認するためには、まず住宅ローンの残高を知る必要があります。住宅ローンの残額は、金融機関(銀行等)から送られてくるローン返済計画書や残高証明書で確認できます。
固定金利の住宅ローンであれば、返済予定表や償還予定表などが金融機関から郵送で送られてくることが多いです。変動金利の場合、半年ごとなど定期的に金利が見直されるタイミングでローンの返済予定表が送られてくることがあります。
住宅ローンの残高は、金融機関の窓口やカスタマーコールセンターなどに電話で確認することも可能です。その場合、本人確認で返済用口座の番号を聞かれるため、あらかじめ控えておきましょう。
ただし、ネットバンキングの場合は、返済予定表が郵送で送られてくることはなく、オンラインページにログインして確認する必要があるケースもあります。書類を紛失した際やオンラインページにログインできないときは、金融機関の窓口に問い合わせましょう。
(2)不動産査定で売却価格を確認
オーバーローンかアンダーローンかを確認するためには、住宅の価格も調べる必要があります。近隣の似たような条件の物件がいくらで販売されているか、過去にいくらで売れたか(事例)などを調べることで、おおよその価格を知ることができます。
しかし、正確な価格を自分で判断するのは難しいので、不動産会社に査定を依頼して売却価格を確認するとよいでしょう。自宅を売却するかどうか迷っている場合、不動産会社に自宅を査定してもらうことに抵抗があるという方も多いでしょう。その場合は机上査定を利用するとよいでしょう。机上査定とは、物件の基本情報、立地条件、周辺物件の取引状況などを参考に査定価格を算出する方法です。簡易査定と呼ばれることもあります。机上査定なら、自宅の訪問なしで査定を受けられるので、気軽に利用できるでしょう。
6.オーバーローンの家を売却する方法
オーバーローンかアンダーローンかを確認して、オーバーローンであることが判明した場合でも、売却は可能です。オーバーローンの家を売却する2つの方法を紹介します。
(1)手持ちの資金で残債を完済する
オーバーローンの場合は、自宅を売却しても住宅ローンの残債が残りますが、預貯金などの自己資金を補充して残債を完済できれば、通常の方法で売却できます。住宅ローンを完済できれば、金融機関の抵当権を抹消できるからです。
(2)住み替えローンを利用する
自宅を売却した後に新居を購入する場合は、住み替えローンを検討してもよいでしょう。住み替えローンとは、売却する家のローン残債と併せて新居の購入資金を借り入れるという仕組みのローンです。
住み替えローンを利用すると、前の家のローン残債は完済されるので、抵当権を抹消できます。ただし、この方法は、前の家の残債まで借り入れることになるので、新たに多額の借入れが必要となり、返済の負担は大きくなります。また、金融機関の審査も一般の住宅ローンより厳しい傾向にあります。そのため、利用したくても審査に通らない可能性もあるでしょう。
(3)任意売却をする
住宅ローンの返済が困難になり、住宅ローンの滞納が続いた場合、最終的には自宅が競売にかけられることになります。競売には、以下のようなデメリットがあります。
- 落札価格が通常の売却よりも低くなる可能性が高い
- 不動産の情報が公開されるため、自宅を競売にかけられたことを知人などに知られる可能性がある
「住宅ローンの返済が困難な状況で、自宅の売却を検討したけれど、オーバーローンであることが判明した」という状況で、競売を回避するためには、任意売却という方法が有効です。
任意売却とは、債権者の同意を得た上で売却活動を行い、売却益を住宅ローンの返済に充てるという方法です。任意売却は仲介業者を通して行われるため、競売とは違って、市場価格と同額で売却できる可能性があります。
ただし、任意売却を成功させるためには、債権者との交渉など専門的なノウハウが必要となります。そのため、任意売却の実績を豊富に持つ不動産会社を選ぶことが重要なポイントとなります。
相談先を選ぶ際は、インターネットなどで任意売却を得意とする不動産会社を探して公式サイトに掲載されている実績などを確認した上で、実際に相談をして見極めるとよいでしょう。
任意売却が専門の不動産会社は、金融機関と交渉する前に任意売却に必要な調査や資料を準備しているため、任意売却に応じてくれる可能性が高いでしょう。
(4)親族間売買をする
親や子供、兄弟姉妹など親族のサポートを受けられる場合は、親族間売買をするという手段もあります。親族に自宅を売却すれば、思い出のある家が他人の手に渡ることもなく、売却額で住宅ローンを返済できます。
ただし、親族間売買は住宅ローンの借入が難しいことや、みなし贈与と判断された場合は税金が課税されるなどのリスクもあるので注意が必要です。
まとめ
この記事では、不動産購入時・不動産売却時のオーバーローンの意味、不動産売却時にオーバーローンになる要因、オーバーローン状態の家を売却する方法などについて解説しました。
不動産売買におけるオーバーローンには2種類の意味があります。不動産購入時のオーバーローンは、売却時のオーバーローンにもつながりやすいので、ローンを組む際には慎重な返済計画をたてる必要があります。近い将来に大きな収入増が見込めるような場合などを除いてオーバーローンでの住宅購入はあまりおすすめできません。
またオーバーローン状態の不動産の売却を検討する場合は、信頼できる専門家に相談して慎重に進めることが大切です。
当社は、数多くの任意売却を手掛けてきた住宅ローン滞納問題を専門的に扱う不動産会社です。ご相談者様の状況やご希望を丁寧にお伺いした上で、最適な解決方法をご提案します。
「競売だけはなんとか回避したい」「住宅ローンを払えないけれど、今の家に住み続けたい」など、さまざまなご相談に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
こちらでは当社での相談から解決までの流れを紹介していますので、参考にしていただければと思います。
寺島 達哉
クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉