住宅ローンの金利の上昇により返済できない場合の対処法・今後の金利の動向は?

住宅ローンの金利の上昇

住宅を購入する際に、ほとんどの人が利用するのが住宅ローンです。契約者の過半数が変動金利を選んでいることもあり、今後金利が上昇するかは気になるところでしょう。中には、「金利が上昇してローンを返済できなくなるのでは」と心配な方もいらっしゃるかもしれません。

今後の金利上昇の見込みはどうなっているのでしょうか。また、金利上昇時に返済できない事態に陥らないために、今からできることはあるのでしょうか。

この記事では、住宅ローンの金利が上昇する可能性や、返済できなくなった場合の対処法などについて解説します。

1.住宅ローンの金利が上昇する可能性は十分ある

未来のことは誰にも分からないため、あくまで可能性の話ですが、今後住宅ローンの金利が上昇する可能性は十分にあります。その理由について説明します。

(1)世界的に住宅ローンは利上げの流れ

理由の一つは、世界的に住宅ローンの利上げの流れが続いていることです。

アメリカ・イギリスを例に挙げてみましょう。米抵当銀行協会(MBA)の2022年10月26日の発表によると、アメリカの30年固定タイプの住宅ローンの金利は、上昇を続けた結果この時点で7.16%を記録しています。
イギリスの金融データ会社「マネーファクツ」の調査では、2022年10月5日時点での、イギリスの2年固定ローンの金利は6.07%と高水準になっています。

今後の政府の方針によっても情勢は変化しますが、日本が外国に追随し、金利上昇の流れになる可能性は十分考えられるでしょう。

(2)現在が超低金利政策

現在の金利が超低金利であることも、理由の一つです。変動金利の住宅ローンは金利1%未満のものもあるなど、諸外国と比較すると日本の金利の低さは異様ともいえます。
また、日本経済全体で物価の上昇も続いていることから、「超低金利政策からの転換期が来ているのではないか」という見方もあります。

(3)日銀の総裁の任期が切れる

もう一つの理由は、日本銀行(日銀)の総裁の任期が切れ、日本経済のトップが交代することです。2023年4月8日に任期満了を迎える黒田東彦氏に代わり、経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏が総裁に起用されることになりました。

金融政策が変更されるかは新総裁の方針によりますが、金利引き上げの方針をとる可能性もあります。今後の日銀からの情報発信に注目したいところです。
大切なのは、最新の情報を集めつつ金利上昇に対して正しく備えることです。

2.住宅ローンの金利が上がり負担が増してきたら

実際に住宅ローンの金利が上がり始め、負担が増してきた場合はどのように対処すべきでしょうか。考えられる対処法を4つ紹介します。

(1)より有利な住宅ローンに借り換える

住宅ローンの金利は金融機関によって異なるため、より有利な条件の住宅ローンに借り換えることで、総支払額を抑えられます。金利が0.1%違うだけでも、総返済額では100万円以上の差になることもあります。

ただし、住宅ローンの借り換えには、金融機関への手数料や登記にかかる費用が発生します。費用の総額と減額分を比較し、借り換えのメリットが大きい場合に検討するようにしましょう。

(2)返済条件を見直す

住宅ローンの返済条件を見直すことにより、負担を軽減できることもあります。一般的に検討する方が多いのが、返済計画を再編して月の返済額を減らすリスケジュールです。例えば、毎月12万円返済している分を10万円に減額するという形で調整を行います。

ただし、リスケジュールは金融機関に相談しても必ず認められるものではありません。また、長期的には支払いの先送りになるため、将来的に問題なく返済が可能か慎重に判断しましょう。

(3)家計を見直し無駄を排除する

家計に無駄な支出や過剰な支払いがある場合、家計を見直して支出をスリム化することで、負担を調整できることもあります。保険料や車の維持費、通信費などは見直すことで節約しやすい費用です。

ただし、ここで大切なのは、あくまで排除するのは無駄な部分であり、生活に必要なモノやサービスまで削らないことです。
例えば、交通機関の発達した都市部に居住していれば、あえて自家用車を持たなくてもよい場合もあります。一方で、地方在住なら日常の足として必須であり、カーシェアリングなどのサービスも発達していないため、自家用車はそのまま維持した方がよいでしょう。
あくまで、生活の質を落とさない範囲で不要な支出を削減できないか検討することが大切です。

(4)家を売却する

住宅の維持が家計を圧迫しており、将来的なライフプランにも影響を及ぼす場合は、売却も選択肢の一つとなります。

不動産は築年数の経過によって価格が下がる傾向にあります。物件によっては、築年数5年の経過で500万円以上価格が下落することもあるため、高く売れるうちに売却することも選択肢の一つです。

まだ家計に余力がある場合、売却を迷うこともあるでしょう。判断材料の一つとなるのが、今後の価格の下落と、返済によるローン残高の減少です。それぞれシミュレーションしてみましょう。年数が経過するとオーバーローンになる場合は、早期に売却した方が経済的負担は小さくなります。

3.金利の上昇に対して備えておきたいこと

将来的な金利の上昇が心配であれば、早めに備えておくことで、落ち着いて対処できる場合もあります。
金利上昇に対する備えとして、具体的にどのようなことができるのか説明します。

(1)余裕を持った借り入れ金額に抑える

まだ住宅を購入していないのであれば、借入金を身の丈に合った金額に調整しておくことをおすすめします。金利の上昇で負担が増し、家計が破綻することは避けなければなりません。

一般的に、賃料やローンの返済額などの住居費は、手取額の25%以内なら安全圏といわれています。夫婦ともに手取り30万円の家庭であれば、毎月15万円までの返済で済むよう借入額を調整することになります。

(2)住宅ローン用の貯蓄をしておく

現在、住宅ローンの支払い中で、金利変動の影響が心配な場合は、メインの貯蓄とは別に、住宅ローン用の貯蓄を確保しておくことも有効な対策の一つです。

例えば、金利の上昇で毎月1万円返済額が増えると仮定すると、年間12万円を余分に払うことになります。この場合、住宅ローン用の貯蓄を40万円ほど確保しておくと、少なくとも3年4カ月の間は利上げ分の影響を吸収できることになります。

上記はあくまで一例ですが、貯蓄の一部を住宅ローン用として確保しておくことで、家計が本格的に逼迫するまでの猶予を作ることが可能です。

(3)金利が上がったら繰り上げ返済をする

金利の低いうちに家計の余剰分を貯蓄しておき、高くなったタイミングで繰り上げ返済をすれば、金利上昇の影響を抑えることが可能です。

繰り上げ返済後は、返済期間を短縮するか、返済期間を変えずに毎月の支払額を小さくするか選択できます。繰り上げ返済時の年齢や家計の状況を考慮して、適した方を選ぶとよいでしょう。

繰り上げ返済時の試算は金融機関の窓口で依頼することもできますが、銀行などが提供しているWEBのシミュレーションツールも便利に利用できます。

4.金利上昇で返済できなくなった時の対処法

住宅ローンの返済ができなくなると、金融機関はいずれ担保としている住宅を競売にかけ、強制的に売却します。競売の売却価格は市場の相場より大幅に低く、売却に際して所有者の負担も多いため、可能な限り避けることが望ましいでしょう。
では、金利上昇により住宅ローンを返済できなくなり、家計に余裕がない場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

(1)家を売るに売れない場合は任意売却も

住宅ローンの返済が困難になった場合、家を売却してローンを完済しようと考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、家を売却したくても、売却価格よりローン残高の方が高い「オーバーローン状態」の方も少なくありません。この場合、手持ちの資金を補填して住宅ローンを完済しなければ、一般的な方法で売却できません。

オーバーローン状態の家を売却したいけれど、手持ちの資金で住宅ローンを完済できないという場合、任意売却を検討してみてください。任意売却とは、債権者の許可を得て、一般市場で売却する方法です。一般市場で売却するため、競売よりも売却価格が高くなるケースが多いです。

ただし、任意売却には専門的なノウハウが必要なので、任意売却の実績が豊富な不動産会社でなければ対応は難しいのが実情です。相談先を選ぶ際は、任意売却の実績を必ず確認するようにしましょう。

(2)他にも借り入れがある場合は個人再生を検討

住宅ローン以外に複数の借り入れがあり、生活を圧迫されている場合、個人再生を検討してもよいでしょう。個人再生には「住宅資金特別条項」という制度があり、住宅ローンを対象から除外することで、家とローンを残したまま借入金を減額できます

個人再生を行うと大幅に債務を圧縮できますが、削減後の債務を原則5年で完済するように返済計画を再編するため、毎月の返済額が増加することもあります。個人再生を検討したい場合は、弁護士など専門家に相談し、自分に適しているか検討してみてください。

(3)自己破産で再スタートする

自己破産とは、借金をはじめとする債務の支払いを免除してもらえる裁判所の手続きの一つです。免責許可決定が出ると、一部の損害賠償債務や養育費の支払い債務などを除き、全ての債務の免除を受けられます。

ただし、自己破産は申し立てによって債務と財産を精算するため、不動産や一定額以上の預貯金を所有している場合はその財産も失うことになります。
不動産を所有したまま自己破産の手続きをすると、手続きが煩雑になることもあるため、自宅を任意売却して、その残債の支払いが厳しい場合に自己破産を検討するという方もいらっしゃいます。

5.まとめ

2023年2月現在、住宅ローンの金利は超低金利が続いていますが、今後は上昇する可能性があります。適切に備えることで、金利上昇の影響を軽減することは可能なので、早めに準備しておくことが大切です。

金利の上昇により住宅ローンの支払いが難しくなった場合は、早めに金融機関に相談して、リスケジュールしてもらうことをおすすめします。また、リスケジュールをしても毎月の返済が困難な場合は、任意売却を検討しましょう。

当社は、多くの任意売却を手掛けてきた住宅ローン滞納問題を専門的に扱う不動産会社です。ご相談者様の状況やご希望を丁寧にお伺いした上で、最適な解決方法をご提案します。
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寺島 達哉
寺島 達哉

クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉

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