リストラや失業で住宅ローンが支払えなくなった場合にとるべき手段・解決方法
「突然のリストラや失業で毎月の住宅ローンの支払いが困難になった」「業績悪化によりボーナスが大幅にカットされボーナス払いがきつい」
このような方も多いのではないでしょうか。
この記事は、収入減により住宅ローンの支払が困難になった方が取れる手段・解決方法について解説いたします。
目次
1.失業で住宅ローンが払えない場合にまず確認すること
失業してこのままでは住宅ローンが払えなくなるという場合に、まず確認すべきことについて説明します。
(1)失業手当を受給できるか
失業した場合、一定の条件を満たしていると失業手当を受給の給付を受けられます。
まずは、これによって住宅ローンを払えるようになるか確認してください。
失業手当の正式名称は、雇用保険の「基本手当」といい、失業後の一定期間、所定の手当が支給されます。
基本手当の給付開始日は、退職の区分が「自己都合」「会社都合」のどちらになるかによって次のように異なります。
自己都合の場合 | 7日間の待機期間+2ヶ月後 |
会社都合の場合 | 7日の待機期間後 |
実際には、説明会への参加等に時間を要するため、入金は上記にプラス1ヶ月程かかります。
基本手当受給のための手続きは主にハローワークで行い、基本的には以下の流れとなります。
- 離職票の受領
- ハローワークにて求職票記入
- 7日間の待機期間
- 説明会に参加
- 失業認定
(2)親族からの借入or保険会社から借入
親族に現状をお話しされて、一時的に借入ができないかお願いしてみてください。
また、解約返戻金のある生命保険等に加入されているようであれば、保険料に応じて借入をできる場合もあるので検討されてはいかがでしょうか。
カードローン等で借入も可能ですが、上記に比べ金利が高いため、おすすめはできません。
2.リストラや失業で住宅ローンが支払えないとどうなるのか?
失業手当を受けて就職活動をしているが「再就職先が見つからない」「失業手当だけでは生活費をまかなうのに精一杯で住宅ローンまで補えない」等の場合、どうなるのかについて解説します。
(1)滞納を続けると最終的には「競売」になる
借入先に何の連絡もせず、住宅ローンの滞納を数か月(3ヶ月~6ヶ月)続けると「競売」を申立てられます。
競売とは、裁判所が行う公的なオークションのことで、強制的に自宅が売却されてしまいます。
競売の流れについて、詳しくは「住宅ローンの滞納で競売に!差押を回避する方法は?」で解説しておりますのでご参照ください。
(2)本人・連帯保証人に督促が届く
滞納初期には、ローン契約者本人や連帯保証人に督促が届きます。この時点では郵送による督促状の送付や電話での催促がほとんどです。
離婚した元配偶者や、親など人的保証を頼んでいる場合、そちらにも督促が行われます。
「連帯保証人に迷惑をかけたくない」と考えている場合は特に注意が必要です。
(3)優遇金利を受けられなくなる
優遇金利の適用を受けているケースでは、金利が急に上がる可能性があります。
住宅ローンを提供している金融機関では、一定の条件を満たすことでローンの金利が安くなることがあります。例えば、「インターネットから申し込む」「ローンと同時にクレジットカードの発行を受ける」などという方法です。
優遇金利は滞納が発生すると適用を解除されることが多く、仮にその後の返済を予定通り行っても、金利負担が増加する可能性があります。仮に利率の差が0.1%でも、総合的な返済額は数十万円以上変わることがあります。
(4)ブラックリスト入りする
滞納開始から2ヶ月~3ヶ月ほどで、信用情報機関に金融事故情報が登録されます。これがいわゆる「ブラックリスト入り」と呼ばれるものです。
住宅ローンの滞納では「遅延情報」が登録されます。これにより、完済から5年~7年の間は新たな金融契約ができなくなります。この間、クレジットカードの作成やローンの利用ができません。既存のクレジットカードも、更新のタイミングで使えなくなる可能性が高いです。
(5)家を手放すことになる
収入で返済していくことが難しく、預貯金も不足しているのであれば、家の売却も検討しなければなりません。住宅ローンの滞納を続けてしまうと、いずれ家は競売にかけられて強制的に売られることになります。競売を避けるためには、早めに売却を検討した方がよいでしょう。
①一般売却(オーバーローンではない場合)
まずは、一般売却ができないか確認してみましょう。
というのも、住宅ローンの支払いが困難で、滞納を続けて「競売」になってしまうと、市場より安価(6割~7割程度)で売却されてしまうためです。
競売で安く売却されると残債が出るケースが多いため、まずは一般市場で高く売ることを検討しなくてはいけません。
しかし、住宅ローンを組んでいる人の自宅の大半が、売却可能価格よりもローン残高の方が多く残っている状態(オーバーローン)となっています。
特に顕著なのが、新築の戸建をフルローンで購入された方です。購入者のほとんどが、売却を検討した際にはオーバーローン状態となっています。
一方、マンションの場合は需要が高く、立地が良ければローン残高を上回る価格で売却が可能な場合もあります。
まずは、住宅ローンの残高がどれくらいあるのかを正確に把握し、売却代金でローンを完済できるか確認することが大切です。
②任意売却(オーバーローンの場合)
売却可能額よりもローン残高の方が高い場合、通常は不足分を補填しなければ不動産の売却はできません。金融機関が設定した抵当権が付いており、一括返済できなければ解除に応じてもらえないためです。
例えば、売却可能額2,000万円でローン残高が2,500万円の場合、
不足の500万円を補填しなければ売却ができません。
では、住宅ローンの滞納をしていて不足分を補填できない場合にはどうすればよいのでしょうか?
その場合でも「任意売却」で不動産の売却が可能です。
「任意売却」とは、上記のような状態でもローン残高以下で不動産の売却ができる売却方法です。
ただ、売却代金ではローン残高に満たないため、必ず不足が出ます。残債は大きく減少するものの、残った債務が帳消しになるわけではありません。
任意売却後の残債の処理の仕方については、「任意売却のその後は?残債の処理や売却後の負担を減らす方法を解説」にて詳しく解説しておりますのでご参照ください。
関連記事:住宅ローンを払えない場合の対処法と相談先
3.リストラや失業で収入が低下・不安定になった場合でも自宅に住み続ける方法
住宅ローンの支払いが困難になると自宅の売却を余儀なくされますが、場合によっては自宅に住み続けることができる可能性があります。この章では住み続ける方法について解説していきます。
(1)リスケジューリング
ローンを借りている金融機関にリスケジューリングの申し出をしてみましょう。
リスケジューリングと返済計画の見直しで、例えば当初は35年ローンを組んでいたけれども、40年ローンに返済期間を延長してもらうことによって毎月の支出を抑えることができます。
場合によっては、当分の間は利息の支払いのみで応諾してくれる金融機関もあります。
ただ、支払い期間が延びる分、利息が上乗せされるため、返済総額は増加します。
また、収入の回復の見込みがあり、一時的な収入減であればリスケジューリングは得策といえますが、今後収入回復の見込みがない場合、焼け石に水となる可能性もあります。
(2) 個人再生
個人再生とは、裁判所の許可を受けて借金を大幅に減額してもらう制度です。事前に提出した返済計画どおりに借金を返すことで、借金の8割から9割を削減できます。
個人再生には、住宅ローンを対象から除外し、その他の債務を削減する「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」という制度があります。
住宅ローン特則が認められれば、住宅ローンと自宅はそのままで、他の債務の返済負担を大きく軽減できます。
なお、個人再生は住宅ローン以外の借入が多い方には有効ですが、住宅ローン以外の債務が無い方には効果が期待できません。この場合、他の方法を検討してみましょう。
(3)リースバック
リースバックとは、投資家や不動産会社に自宅を売却し、売却した自宅の賃貸借契約を結ぶことをいいます。
所有権は買い主に移転しますが、賃貸物件として住み続けることが可能です。
一般的にリースバックの買取額は、市場価格の7割から8割ほどと安くなります。そのため、住宅ローンの残高を上回るほどの買取額が見込めないことも多くあります。
詳しくは「リースバックと賃貸の違いは?判断基準と利用時の注意点」にて解説しております。
(4)親族間売買
「親族間売買」とは、その名の通り親族間で不動産を売買することを指します。
特に、親子間で売買することを「親子間売買」といいます。
売却する相手が親族になるため、交渉次第では家賃を安くしてもらえる場合や、無償で住ませてもらえる可能性があります。
ただ、親族間売買・親子間売買の場合、現金で売買するのであれば問題ありませんが、購入者がローンを借りて購入を検討するとなるとハードルが高くなります。
というのも、一般的に金融機関は親族間売買への融資には消極的だからです。「申告どおりの資金使途で利用するのか」「脱税の隠れ蓑の売買ではないか」など、不安要素が多い売買だからです。
親族間売買を利用するのであれば、審査に通過できる可能性のある金融機関に、正当な売買であることを証明したうえで申し込みに臨まなければなりません。
詳しくは、「親族間売買で住宅ローンの利用が難しい理由・審査に通らない際の対処法は?」で解説しています。
4.リストラや失業で収入が低下・不安定になった場合の生活再建
失業手当の受給期間を終え、就職先が長期間見つからない場合や、収入が減少した場合は公的機関や弁護士へ相談することも必要です。
(1)生活保護
ただし、持ち家がある場合は財産だとみなされる場合があります。対応は自治体によっても異なりますが、オーバーローン状態の場合はまずその旨を説明するようにしましょう。
生活保護を受給するためには、このほかにも様々な条件があります。お住まいの自治体の福祉事務所が相談窓口になっていますので、まずはそちらに相談してみてください。
(2)債務整理
法的手続きによって、債務を減少・削減させられることがあります。代表的なのが、任意整理と自己破産です。
①任意整理
任意整理とは、一般的には法律家(弁護士・司法書士)に依頼をして、借金の利息をカットしてもらう方法です。
ただし、基本的に元本は据え置きで、利息を免除することが、任意整理の一般的な進め方です。そのため、任意整理が効果を発揮するのは、利息の高いカードローンや消費者金融からの借り入れです。住宅ローンの借入金に対しては、あまり効果のある解決策とはいえません。
あくまで、住宅ローンのほかにも高利率の借り入れがあり、それが原因で生活が圧迫されている場合などに有効な方法だといえます。
②自己破産
自己破産とは、基本的には抱えている債務をすべて免責される制度です。
収入に対して借金の返済額が多く、生活が成り立たない場合や、高利率の借り入れが原因で借入金が膨らみ、返済しきれない場合に生活の再建を図る方法です。
なお、車やある程度の預貯金など財産がある場合は精算の対象となり、債務と相殺されます。
詳しくは、「住宅ローンの滞納が続くと自己破産しかない?住み続けたい場合の対処法は?」で解説しています。
5.まとめ
「リストラや失業で住宅ローンが支払えなくなった場合にとるべき手段・解決方法」について解説しましたが、収入状況や不動産の価値によって取れる手段は異なります。
弊社の初回相談では、現状と今後のご希望をお伺いし、これから取れる手段を提案させていただき、問題解決の最後までサポートいたします。
ご相談いただいた方に「一人で悩んでいて、どうしたらよいか不安な毎日を過ごしていたけれど、今後の方策が見えてきました。もっと早く相談すれば良かったです。」というお声をよくいただきます。
相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。
寺島 達哉
クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉