住宅ローンがオーバーローン状態で自宅の売却は可能?
病気や怪我、リストラ、転職などさまざまな理由で収入が減少してしまい、住宅ローンの返済が難しくなり、家の売却を検討されている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、住宅ローンの残債が自宅の売却価格を上回る「オーバーローン」状態の場合は、通常の方法で売却することができません。この場合、どのように対処すればいいのでしょうか。
この記事では、住宅ローンの返済が難しい状況で自宅の売却を検討したけれどオーバーローンになる場合の対処法について解説します。
目次
1.住宅ローンが残っている家も売却できる?
住宅ローンが残っている家を売却したいと考えている時に問題になるのが、「抵当権」です。
抵当権とはどのようなものか、抵当権が付いたまま家を売却することが可能なのか説明します。
(1)抵当権について
金融機関から住宅ローンの借入れをする際には、土地や不動産に担保として「抵当権」が設定されます。
通常、金融機関は、住宅ローンの返済が終わるまで、借入をした金融機関が家を担保にとります。万一、住宅ローンの返済が滞った場合、担保にしている家を差し押さえて競売にかけることで債権を回収するためです。
(2)オーバーローンとアンダーローン
住宅ローンが残っている家は、「オーバーローン」と「アンダーローン」にわけることができます。
①アンダーローン
アンダーローンとは、住宅ローンの残債が家の売却価格を下回っている状態です。
アンダーローンならば家を売却することで住宅ローンを完済できるため、住宅ローンの返済問題を解決できます。売却額で住宅ローンを完済することで抵当権も抹消されます。
②オーバーローン
オーバーローンはアンダーローンとは逆に、住宅ローンの残債が家の売却価格を上回っている状態です。
つまり、家を売却しても住宅ローンを完済できないということになります。そのため、オーバーローンの状態の場合、一般的な方法で家を売却することはできません。しかし、債権者の同意を得て「任意売却」という方法で売却することは可能です。
2.住宅ローンが残っている家がオーバーローンになってしまう理由
住宅ローンが残っている家の場合、アンダーローンになるのかオーバーローンになるのかによって状況が大きく変わります。なぜオーバーローンになってしまうのでしょうか。
(1)ローンの借入金額が高額
住宅ローンの残債が高額な場合は、家を売却してもローンを完済できないケースが多いです。
近年では、フルローンという頭金を入れずに物件の購入に必要な費用全額をローンで借入れる方法を選ぶ方が増えています。
フルローンの場合、住宅ローンの融資事務手数料や登記費用などの諸経費までを含めます。
そのため、家を購入する時点ですでに購入価格をローンが上回っており、オーバーローンに陥りやすくなっています。
(2)住宅や土地の資産価値の低下
基本的に住宅は、新築時以降、徐々に資産価値が下がります。
土地は災害などがあったなどというケースを除けば資産価値は下がりにくいものの、住宅は経年により資産価値が低下しやすいです。
資産価値が低下しても住宅ローンの残債も経年と同時に減っていきますが、資産価値の下がり方の方が早いケースがあります。そうすると、資産価値よりもローン残債が上回ります。
(3)借入後すぐの売却
引越しや離婚などの事情で自宅を売却することもありますが、住宅ローン借入後すぐの売却はオーバーローンに陥りやすいといえます。
家を購入したばかりの時期に売却をすれば、住宅ローンの残債の多くが残った状態です。
新築物件を購入した場合でも、購入時より資産価値は低下していることが考えられます。そのため、家を売却してもローンの残債が上回ってしまいます。
3.住宅ローンを滞納し続けた場合のリスク
オーバーローン状態で自宅を売却できず、そのまま住宅ローンを滞納し続けた場合は、どうなってしまうのでしょうか。
(1)返済が滞れば競売にかけられる
住宅ローンの返済が困難で自宅を売却しようとしたけれど、オーバーローン状態のために売却ができず、そのまま住宅ローンを滞納してしまうケースもあるでしょう。
住宅ローンの返済が滞れば、借入している金融機関によって自宅を差し押さえられて、競売にかけられてしまいます。競売の売却価格は通常よりも安価になるため、売却額をローン返済に充てても多くの債務が残ります。
この債務は一括請求されるため、多額の債務を一括返済しなければならないことになります。
(2)自己破産の検討が必要なケースも
競売の売却後に残ったローンの返済ができない場合には、自己破産の検討が必要な場合もあります。
自己破産をすれば、債務が免除されることになります。しかし、財産を処分しなければならないことや、新規借入やローンを5年以上利用できなくなることなど、デメリットもあります。
4.オーバーローンで住宅ローンの返済に困った場合の対処法
住宅ローンの支払いが困難な状況に陥っているけれど、オーバーローン状態で自宅を売却できない場合の対処法について説明します。
(1)売却益と預貯金で一括返済する
オーバーローンの状態でも、住宅ローンの残債が少額だという場合、ご自身の貯金などの手持ちの資金で住宅ローンを一括返済できるかもしれません。
そうすれば、オーバーローンでも住宅ローンを完済できるため、抵当権の抹消ができるので、通常の方法で自宅を売却することが可能です。
(2)住み替えローンを利用する
家の売却後に新居の購入を考えているというケースでは、住み替えローンの利用を検討してもよいでしょう。
住み替えローンとは、残っているローンと併せて新居の購入資金を借りるという方法です。
住み替えローンを利用すれば、前の家のローンは完済して抵当権を抹消して売却することが可能です。ただし、前の家のローンの残債まで借入れることになるため、結果的に大きな金額を新たに借り入れることになります。そのため、返済負担が大きくなりやすいという点には注意が必要です。
また、住み替えローンでは審査が必要ですが、借入れる金額が大きくなるほど審査も厳しくなるため、住み替えローンを利用したくても審査に通らない可能性もあります。
(3)無担保ローンを利用する
金融機関にて「無担保ローン」を借入れ、ローンの残債を返済するという方法もあります。
無担保ローンは、住宅ローンのように抵当権といった担保を用意する必要がなく、無担保の状態で融資を受けられます。
そのため、オーバーローンでも住宅ローンを完済して家を売却することができます。ただし、無担保ローンは借入れできる金額が少ないです。
そのため、無担保ローンの借入額では住宅ローンの返済額に到達しないようなケースもあるでしょう。また、無担保ローンの場合は住宅ローンに比べると金利が高めに設定されています。
有担保ローンの金利は1~10%が一般的ですが、無担保ローンの金利は3~18%です。金利が高い分、返済負担が増えやすいという点には注意が必要です。
(4)金融機関にリスケジュールの相談をする
病気やケガ、転職など住宅ローンの返済が一時的に難しいものの、仕事に復帰すれば返済できるようになるというケースもあるでしょう。
こうした場合には、家の売却ではなく金融機関にリスケジュールの相談をするという方法もあります。リスケジュールとは、住宅ローンの返済計画を見直すことです。借入期間の延長や、返済額の一定期間減額などを行うことが一般的なリスケジュールの方法になります。リスケジュールをすれば返済に猶予を持たせることができますが、結果的に返済総額が増える可能性があるという点には注意が必要です。
(5)任意売却をする
オーバーローンでも家を売却できる方法が、「任意売却」です。
任意売却とは、ローンの借入先である金融機関の同意を得た上で売却活動を行い、売却益をローンの返済に充てるという方法です。オーバーローンなので売却益を充ててもローンの残債がでてしまいますが、交渉によって無理のない範囲で月々の返済を行うことができます。
任意売却は競売とは異なり、一般市場で売却活動を行うことが可能です。そのため、競売よりも高額での売却が期待でき、ローン残債も減らしやすいというメリットがあります。
5.住宅ローンの残債を軽減するためのポイント
住宅ローンの残債を軽減するためのポイントについて説明します。
(1)適正価格での売却
家の売却後に住宅ローンの返済負担を少しでも減らすには、可能な限り自宅を高く売ることが重要になります。そのためには、家の適正価格を知る必要があります。
適正価格を知っておけば、相場より安く売却して損するようなことを避けられます。複数の不動産会社による査定を受け、売却の相場価格を調べましょう。
(2)任意売却に強い不動産会社選び
オーバーローンの住宅を任意売却する場合、不動産会社選びも重要なポイントです。
任意売却を成功させるためには、債権者との交渉など専門的なノウハウが必要となるため、任意売却の実績がある不動産会社を選択することが成功の鍵となるからです。
相談先を選ぶ際は、インターネットなどで任意売却を得意とする不動産会社を探して公式サイトに掲載されている実績などを確認した上で、実際に相談をして見極めるとよいでしょう。
まとめ
この記事では、住宅ローンの返済が難しい状況で自宅の売却を検討したけれどオーバーローンになる場合の対処法について解説しました。
自宅の売却後にスムーズに経済的な基盤を立て直すためには、早めに任意売却を検討することが望ましいといえるでしょう。まずは任意売却の実績を豊富に持つ不動産会社を探し、相談することから始めてみてください。
当社は、数多くの任意売却を手掛けてきた住宅ローン滞納問題を専門的に扱う不動産会社です。ご相談者様の状況やご希望を丁寧にお伺いした上で、最適な解決方法をご提案します。
「競売だけはなんとか回避したい」「住宅ローンを払えないけれど、今の家に住み続けたい」など、さまざまなご相談に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
こちらでは、当社での相談から解決までの流れを紹介していますので、参考にしていただければと思います。
寺島 達哉
クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉