自宅が競売にかけられる理由とは?競売を回避する方法も解説
住宅ローン等の債務の返済を滞納していると、ある日突然やってくるのが、裁判所からの「競売開始決定通知」です。「ローンを借りているのは金融機関からなのに、なぜ裁判所から競売の通知が届くのか」と不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、この記事では、自宅が競売にかけられる理由と、競売の手続きについて、詳しく解説します。
1.競売とは
そもそも競売とはどのような売却方法なのか、概要について説明します。
(1)差し押さえた財産を裁判所の手続きで売却すること
競売とは、簡単にいうと差し押さえた財産を裁判所の手続きによって現金化することです。
債務の担保となっている財産は、仮に債務の滞納が発生している場合でも、債権者の一存で勝手に売ることはできません。裁判所の許可を得た上で競売の手続きを踏み、はじめて売却できます。
競売の対象となるものは、土地や建物など不動産のほか、貴金属や自動車など、換金性の高いもの全般です。生活必需品や仏壇など、一部差し押えられないものもあります。
(2)競り売りと期間入札
競売の方式は、大きくわけて「競り売り」と「期間入札」の二種類が存在します。
競り売りとは、購入希望者を一つの会場に集めて競りで売却する販売方式です。いわゆるオークションを想像してもらうとわかりやすいかと思います。インターネット上で開催されることも多いです。
一般的に、貴金属や高級腕時計、家電品などの動産は競り売りで売却されます。
一方の期間入札は、入札期間を定めて各購入希望者が一度だけ入札を行う方式です。インターネット上や裁判所に公開された土地や住宅の情報を確認し、裁判所の執行官室に、直接または郵送で入札を行います。入札期間はおおむね2週間程度に設定されていることが多く、債務者には「期間入札通知書」という書面で知らされます。
(3)競売で売られた財産は購入者のものに
競売で買受人が決まった財産は、裁判所の売却許可決定が出た後、買受人が代金を納付します。落札したものが不動産の場合は、所有権が移転すれば購入者のものとなります。
不動産が売却された場合、その時点では元の所有者が居住していることは少なくありません。所有権移転後は他人の家に勝手に住んでいることになるため、法的には不法占拠となります。自主的に退去することが望ましいですが、それができない場合は強制執行による立ち退きを余儀なくされることもあります。
2.自宅が競売になるのは借入金の滞納が理由
自宅を競売にかけられる理由はさまざまですが、借入金の滞納が原因であることが多いです。住宅を担保にしてお金を借りていた場合や、滞納が長期化した結果自宅を差し押さえられた場合などは、あえなく競売となってしまいます。
(1)パターン①住宅ローン滞納で競売にかけられる
住宅ローンは、ほとんどの場合ローンで購入した物件を担保として貸し付けを受けます。そのため、住宅ローンを返済できないと、金融機関は競売で家を現金化しようとします。
当社への相談も、住宅ローンの滞納によって家を競売にかけられた方からが最も多いです。
(2)パターン②事業用ローンを返せなくなる
事業用ローンの借り入れでも、自宅や事務所などを担保とすることは多いです。こちらも、返済を滞納すると担保としている不動産が競売となります。
住宅ローンと異なる点は、事業用ローンを複数借り入れていると、担保に設定されている抵当権が一つではない場合があるという点です。抵当権が複数設定されていると、設定された順に一番、二番、と順位がつき、番号の若い順に優先的に返済を受けられます。このように、債権者が一社だけではない場合、利害関係が複雑化し、債務整理も難航することが多いです。
(3)パターン③消費者金融の借金が原因のことも
消費者金融の借金が原因で、自宅を差し押さえられ競売になってしまうこともあります。近年は、消費者金融からの少額の借り入れのハードルが下がってきており、いつの間にか債務の額が大きく膨らんでいた、という事態に陥ってしまう方もいらっしゃいます。
特に、複数の消費者金融から借入を受けている、いわゆる多重債務の場合、借金を返せなくなることが多く、自宅を手放さなければならなくなることも少なくありません。
3.競売にかけられた自宅が売却されるまでの流れ
競売にかけられた自宅が売却され、買受人に所有権が移転するまでは、次のような流れで進行します。
【競売手続きの流れ(住宅ローン滞納による売却の場合)】
- 競売開始決定通知の到着:競売で売却することを決定した旨が通知される
- 現況調査:執行官による下見・査定
- 競売の期間入札通知の到着:入札期間が通知される
- 期間入札の公告:物件の状況や所有者の情報が外部に公開される
- 競売の実施:入札期間内に買受人を募る
- 開札:最も高い入札価格の希望者が買受人となる
- 売却許可決定・代金の納付:買受人に売却許可が出され代金が納付されると所有権が移転する
- 明け渡し:期日までに新たな所有者に明け渡しが必要
(1)競売手続き開始~明け渡しまでは半年から8か月
競売手続きが開始してから、明け渡しまでは、おおむね半年から8か月程度です。
家を競売で売却したくないという希望があり、後述の任意売却を行う場合は、さらに期限は短く、4か月から6か月程度となります。
(2)明け渡しに応じられないと強制退去も
明け渡し期限を過ぎても退去しない場合、強制執行によって無理やり退去させられることもあります。実は、競売で売却された後も持ち主が占拠を続けることは珍しくなく、裁判所では不法占拠している元持ち主を強制的に退去させられるようルールを作っています。
強制執行が申し立てられると、たとえ引越し先が決まっていない状況でも家から追い出されてしまいます。荷物も運び出されて鍵も換えられてしまうため、元の家に戻ることはできません。なお、強制執行にかかった費用は、申立人から元所有者に請求できます。
4.手続き開始後でも競売での売却は阻止できる
ここまで説明したように、自宅が競売にかかった場合、放置しておくと売却されてしまいます。しかし、競売は手続きが開始してからでも阻止することが可能です。競売を回避するための任意売却という方法について説明します。
(1)競売回避のための任意売却とは
任意売却とは、住宅ローンを滞納しており、ローンの残債が物件の価格を上回っている場合に、債権者の許可を得て担保を売却する方法です。無事に任意売却で売ることができれば、競売は取り下げられるため回避できます。
「結局売却するのであれば競売でも同じではないか」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、任意売却であれば売却後も借家として住み続けられることがあります。また、以下で紹介するメリットも存在するため、当社では競売より任意売却をおすすめしています。
(2)任意売却のメリット
任意売却は、競売と比べ所有者側のメリットが大きい売却方法です。例えば、以下のようなメリットがあります。
①競売と比べて売却価格が高い
一般的に、任意売却は競売と比べて売却価格が高いといわれています。詳細な価格はケースバイケースですが、競売の場合は市場相場の5割から7割が目安です。一方、任意売却は一般市場で不動産を売却するため、相場での売却が期待できます。
②スケジュールが調整できる
先ほど少し触れましたが、競売のスケジュールは原則として変更ができません。現況調査や引き渡しの日は、たとえ準備ができていなくても無理やり屋内に立ち入られます。鍵を開けない場合は破壊して立ち入られることもあります。
一方、任意売却は期日までに代金の決済が完了できればよいので、内見や引き渡しの日については、多少の融通が利きます。
③経済状況を外部に公開されない
競売で憂慮すべき問題の一つが、経済状況を知人に知られる可能性があるということです。競売では、購入希望者を広く募るため、インターネットや新聞広告などに物件情報を掲載します。家を知っている人が見れば、経済的に困窮していることを知られる可能性が高いでしょう。
一方、任意売却であれば家の買い手は通常の物件情報サイトで募集します。外部からは任意売却であるとわからないため、経済状況を知られる心配はありません。
(3)任意売却はどこに相談すればいい?
任意売却を検討する場合、相談先は「任意売却に精通した不動産会社」です。地元の不動産会社や大手の不動産会社は任意売却を取り扱っていないことが多く、知識やノウハウをあまり持っていないことが珍しくありません。そのため、相談しても断られる可能性が高いです。
任意売却の専門業者は、インターネットを駆使して探すことをおすすめします。WEBサイトには過去の解決事例や実績が載っていることも多いため、相談先選びの基準にしてみてください。
(4)悪徳業者を選ばないために
残念なことに、任意売却の業界には悪徳業者と呼ばれる会社も多く存在します。お金をだまし取られた、貴重な時間を浪費され競売になってしまった、などという被害が報告されています。
悪徳業者をひと目で見抜くことは難しいのですが、いくつか共通する特徴があります。
【悪徳業者の特徴】
- 仲介手数料以外の費用を請求する
- 一般媒介での契約を正当な理由なく拒否する
- 引越し費用を「確約」する
- 依頼者の意向を尊重しない
このような言動をする会社は、知識が不足しているか、依頼者につけ込む業者である可能性が高いです。依頼は避けたほうがよいでしょう。
5.まとめ
自宅が競売にかけられるのは、一般的に何らかの債務(主に金銭債務)の返済が滞っていることが理由です。事業用ローンや住宅ローンなどで住宅を担保にしていれば、債権者はまずそちらを現金化して債権の回収を図るためです。
ただし、家が競売にかけられた後でも、任意売却を行い所有者の負担を軽減することや、借家として住み続けられる場合はあります。住宅ローンの滞納でお悩みの方は、まずは任意売却を専門としている不動産会社に相談することをおすすめします。
当社は過去3,000件以上の相談実績で培った知識・ノウハウをもとに、任意売却のサポートを行っています。「住宅ローンを払うのが困難な状況だけど、今の家に住み続けたい」などというお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談下さい。
寺島 達哉
クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉