任意売却の仲介業者は変更できる?手続きと後悔しない業者選びを解説
任意売却を仲介業者に依頼したけれど、なかなか買い手が見つからない場合、仲介業者を変更したいと思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
仲介業者を途中で変更することは可能ですが、任意売却は競売と同時進行することが多く、その場合、着手した時点で既にタイムリミットが決まっています。そのため、一社目で大きく時間をロスすると、タイムリミットまでに売却できないかもしれません。そのため、仲介業者を変更する場合は、早めに決断することが大切です。
この記事では、任意売却における仲介業者の役割や、仲介業者を変更する際の手続き、途中で変更せずに済む仲介業者の選び方などについて解説します。
1.任意売却における仲介業者の役割とは?
そもそも、なぜ任意売却に不動産仲介業者が必要なのでしょうか。任意売却において、仲介業者がどのような役割を担うのか説明します。
(1)物件の査定や調査
売却を希望する物件の調査や査定は、仲介業者の重要な仕事です。どの程度で売れそうか、見込み価格を調べることで、住宅ローン残高との差額を把握し、債権者との交渉の材料とします。
物件の調査では、訪問して家の状態を確認するほか、登記事項を確認して物件に設定されている権利関係などもチェックします。
(2)債権者との交渉
任意売却では、債権者の許可がなければ物件を売却することができないため、債権者と交渉し、売却や売出価格について同意を得ることも仲介業者の重要な仕事です。
任意売却に対する債権者の対応はさまざまです。中には、任意売却に対して否定的な債権者も存在します。任意売却は債権者の同意を得ることが条件となるため、債権者との交渉は最初の難関といえます。
(3)売却活動
買い手を探す売却活動も、任意売却において重要な仕事の一つです。不動産会社の専用データベースに情報を登録したり、WEBサイトに情報を掲載したりと、さまざまな方法で買い手を募ります。
任意売却は、競売の開札日の前日までに売買を完了させなければなりません。つまり、競売の開札日の前日が任意売却のタイムリミットとなります。そのため、売却活動は常にタイムリミットを意識しながら計画的に進める必要があります。
(4)売買契約書など書類の作成
売買契約書や重要事項説明書などの必要書類の作成も、仲介業者の重要な仕事の一つです。
売買契約書や重要事項説明書は、不動産取引におけるトラブルを防止するために大切な役割を果たします。任意売却は、通常の不動産売却とは異なる性質もあるため、トラブルを防止するための特約を盛り込むことも大切なポイントとなります。
2.任意売却でも仲介業者の変更は可能
仲介業者の事業を規制するルールは、任意売却でも、通常の不動産売買と変わりません。そのため、仲介業者が誠実に業務を行わない場合などは、業者の変更が可能です。
(1)仲介業者の変更に関係する媒介契約の種類
売主は、仲介業者と媒介契約を締結することにより、売却活動や各種業務を依頼することができます。媒介契約には3つの種類があり、以下のような違いがあります。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
自己発見取引 | 可 | 可 | 不可 |
REINSへの登録 | 義務なし | 必須 | 必須 |
複数社との契約 | 可 | 不可 | 不可 |
契約期間 | 定めなし
※標準約款では3か月 |
3か月以内 | 3か月以内 |
一般媒介契約の場合、複数社と媒介契約を結べるため、既に依頼した仲介業者との契約解除は必須ではありません。しかし、専任媒介契約・専属専任媒介契約の場合は独占契約となるため、他の業者に依頼したい場合は既に依頼した仲介業者との契約を解除しなければなりません。
(2)契約期間の切れ目で変更を申し入れる
専任媒介契約・専属専任媒介契約の場合、最大3か月で契約期間が終了します。また、一般媒介契約でも、通常は3か月間とされます。これらのタイミングで契約解除を申し入れれば問題なく契約を終了させることができます。
また、契約期間に定めのない場合はいつでも解約を申し入れることができます。
(3)契約期間中でも正当な理由があれば解約できる
余計なトラブルを避けるため、基本的には契約満了時の解除が望ましいですが、正当な理由がある場合は期間中の解除が可能です。例えば、以下のようなケースが該当します。
- 仲介業者が業務を誠実に遂行しない
- 囲い込み行為などの悪質な行為により不利益を受けた
- 宅地建物取引業法に違反する不正を行った
その他の理由でも、仲介業者が解約に合意すれば契約期間中でも解約できます。
任意売却では、仲介業者が迅速に業務を遂行するかという点は、成功を左右する重要なポイントです。任意売却にはタイムリミットがあるため、パートナーとして相応しくないと判断した場合は、早めに解約を検討した方がよいでしょう。
3.仲介業者を変更する際の手続き
では、仲介業者を変更したい場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。
仲介業者を変更する場合の具体的な手続きについて説明します。
(1)訪問や電話で解除の旨を伝える
契約中の仲介業者に契約解除の旨を連絡する際は、口頭や電話などで意思を伝えれば問題ないことがほとんどです。不安な場合は、店舗や事務所を訪問して解約したい旨を伝え、担当者の名前と訪問日時などを記録しておくとよいでしょう。
(2)心配な場合は内容証明郵便を利用
契約中の仲介業者が悪徳業者である可能性が高い場合などは、郵送による通知をおすすめします。内容証明郵便を利用すると、送付した書面の内容と、配達日時が記録され、「受け取っていない」という主張を封じることができるので、不安な場合は利用してみてください。
(3)媒介契約は自動更新されない
仲介業者と結ぶ媒介契約は、自動更新されることはありません。そのため、契約期間が定められている場合は、満了時に継続意思の確認をされます。解約を希望しているのであれば、契約期間の切れ目に無条件で解除できます。
宅地建物取引業法(宅建業法)には、以下のように定められています。
第三十四条の二の4
前項の有効期間は、依頼者の申出により、更新することができる。ただし、更新の時から三月を超えることができない。
つまり、専任媒介契約や専属専任媒介契約を結んでいるにも関わらず、契約を勝手に更新されたり延長されたりした場合、宅建業法違反となるのです。
4.途中で変更せずに済む仲介業者の選び方
任意売却はタイムリミットがあり、仲介業者の選び直しをすることで時間をロスするとタイムリミットに間に合わなくなる可能性があります。そのため、最初に良いパートナーを選ぶことが非常に大切です。
任意売却のパートナーを選ぶ際のポイントを説明します。
(1)任意売却の実績のある会社を選ぶ
任意売却を成功させるためには、大手不動産会社や地元密着の会社ではなく、任意売却の実績を豊富に持つ不動産会社を選ぶことが重要です。
法律上は、宅地建物取引業の許可を取得していれば、任意売却を扱うことが可能です。しかし、任意売却には、通常の売却では発生しない特殊な業務が多いため、任意売却に関する専門知識や実績を持たない不動産会社では十分な対応ができない可能性が高いです。
任意売却の実績を豊富に持つ会社は、債権者である金融機関や債権回収会社と信頼関係を構築できているため、交渉がスムーズに進みやすいです。また、ケース別の対処法などについても熟知しているため、実績のない会社と比べ、任意売却の成功率が格段に上がります。
(2)初回相談時の対応をチェックする
専門会社をいくつかピックアップし、その中から絞る場合、初回相談時の対応をしっかりチェックするとよいでしょう。
相談時に「何かおかしいな」という違和感や不信感などを感じた場合、その場で契約しないようにしてください。契約してしまうと、任意売却のタイムリミットまでの貴重な時間をロスするだけではなく、お金を騙し取られるなどの重大な被害に遭う可能性もあるため、慎重に判断することが大切です。
悪徳業者を完璧に見分けるのは難しいかもしれませんが、以下のような特徴がある場合、悪徳業者の可能性が高いため、注意が必要です。
- 初回相談時に金銭を要求する
- 引っ越し代で釣ろうとする
- デメリットを一切説明しようとしない
- 初回の相談時に即契約させようとする
初回相談の対応に違和感がある場合、いったん依頼は保留とし、他の候補を探してみましょう。
5.まとめ
任意売却では、仲介業者を途中で変更することが可能です。基本的には契約更新のタイミングで解約するのが無難ですが、仲介業者が誠実に業務を行わない場合は、契約期間中でも解約できます。また、契約期間を定めない一般媒介契約の場合は、いつ解約を申し出ても問題ありません。
任意売却はタイムリミットが決まっているため、業者を選び直すだけでも大きな時間のロスになります。業者を変更する場合は早めに決断し、任意売却の実績が豊富な会社を選ぶことが大切です。
当社は、住宅ローン滞納問題を専門的に扱う不動産会社です。ご相談者様のご希望や状況を丁寧にお伺いした上で、任意売却はもちろん、その後の生活の再建まで見据えたサポートを提供いたします。「仲介業者を変更するべきか迷っている」などというご相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
こちらでは、当社での相談から解決までの流れを紹介していますので、参考にしていただければと思います。
寺島 達哉
クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉