不動産投資で赤字続きの原因は?改善策や対処法も解説
不動産投資は、毎月安定した家賃収入を得られる堅実な投資として注目されています。最近は、会社員として本業に取り組みながら、不動産投資を始める方も増えているようです。
しかし、実際は、期待通りに安定した収益を得ることができずに、赤字状態が続き、苦労されている方も少なくありません。
今回は、不動産投資で赤字が発生する原因、赤字状態の改善策や対処法などについて解説します。
1.不動産投資で赤字が発生する要因
そもそも、なぜ不動産投資で赤字が発生するのでしょうか。
典型的な要因について説明します。
(1)収入に対してローンの返済額が大きい
不動産投資で赤字が発生する典型的な要因の一つとして、賃料に対するローン返済額の割合が高いことが挙げられます。例えば、「ローンを完済した後に年金代わりの収入になればそれで良い」と、利益がほとんど残らない収支に設定しているケースなどです。
不動産投資では、予期せぬ支出が発生して収支がマイナスに傾くことは少なくありません。そのため、余裕を持って利益が出るように計画を立てることが大切なポイントとなります。このポイントをおろそかにすると、赤字発生の要因となる可能性があります。
(2)購入時の見込みが甘い
購入時に、現実に即した収支のシミュレーションをしていないことも、赤字の要因となります。
投資用物件を購入する際、営業担当者から期待利回りに関する説明を受けます。しかし、その際に提示される期待利回りのパーセンテージは、多くの場合、単純に返済額と賃料を単純に並べた「表面利回り」という数値です。
「表面利回り」には、空室リスク、物件自体の価格の下落、修繕費用などは加味されていないため、鵜呑みにするのは危険です。
予期せぬリスクが顕在化した場合も慌てずに済むよう、あらかじめさまざまなリスクを考慮した上で現実的な収支の計画を立てなければなりません。
(3)空室割合が高い
空室が発生すると賃料収入を得ることができなくなるため、当然、赤字になる可能性が高くなります。
特に分譲マンションやワンルームマンションを一室だけ所有している場合は、その一室が空室となると賃料収入がゼロになるため、収支が一気に赤字に転落します。
(4)ローンの金利上昇による負担の増加
不動産投資ローンを変動金利で借り入れていると、金利の上昇によって返済額が増加します。借り入れている金額にもよりますが、0.5%程度の金利上昇で、毎月の返済額が1万円~2万円ほど増加することは珍しくありません。
余裕を持った賃料に設定していれば、金利上昇だけでは大事に至らないことも多いです。しかし、予期せぬ支出が続いた場合などは、収支にじわじわとダメージを与えることになります。
(5)修繕費がかさむ
投資用不動産は、居住用の不動産よりも修繕回数が多くなります。物件の外観やデザインが集客に直結するためです。また、入居者が物件を汚したり損耗を発生させたりしていると、退去の際にリフォームが必要になります。
アパートやマンションを一棟所有していると、外壁の塗り替えや修繕、エレベータの定期点検などのメンテナンスも必要です。特に、外壁の塗り替えや修繕などは、内装の修繕と比べて大きな支出となるため、収支の悪化している状態で行うと大打撃になりやすいです。
(6)「帳簿上の赤字」なら問題ない場合も
赤字は赤字でも、帳簿上の赤字であれば問題ない場合もあります。
不動産は、建築から一定期間、「減価償却」と呼ばれる経費の計上が可能です。これは、数値上の資産価値の下落を会計に計上できるもので、購入価格のうち一定の割合を経費にできます。
減価償却の金額は大きいため、実際には支出を上回る収入を得ている場合でも、利益から控除することによって帳簿上の赤字になる場合があるのです。この場合、帳簿上は赤字でも、不動産投資自体は順調なことも多いです。
2.不動産投資で赤字が続く場合の改善法
不動産投資で赤字が続く場合、何らかの方法で収支を改善しなければなりません。
具体的にどのように改善すればよいのか説明します。
(1)入居者の募集条件を見直す
入居者の募集条件を緩和することで、集客を強化できることがあります。
例えば、以下のような方法で間口を広くできることがあります。
- ペットの飼育を可能にする
- 楽器演奏を可能とする
- 一人暮らしの高齢者の入居を受け入れる
また、特定のターゲットに絞って募集条件を設定するのも選択肢の一つです。
あえてリフォームせずにDIY可の賃貸住宅にする等の対策も考えられます。
(2)エリアの需要を再確認する
エリアによって需要は異なるため、ニーズに即した物件になっているかどうかも確認してみましょう。
例えば、学生街であれば、アパートを一棟まるごと女性専用にして親に安心感をアピールする、ルームシェア可能の物件にするなどが考えられます。
エリア特有の需要に合う物件にすることで、建物や内装を変えることなく集客を強化できる場合もあるため、この点も検討してみてください。
(3)賃料や初期費用を見直す
賃料や初期費用が相場から逸脱していると、近隣の競合に入居者を奪われてしまう可能性が高いです。また、建物の築年数に応じて賃料相場は下がるため、定期的に賃料の見直しを行うことも重要です。
ただし、賃料の値下げは収入の減少に直結するため、最終手段と考えましょう。他の対策をいくつか実施し、それでも効果が出ない場合に検討するとよいでしょう。
(4)リノベーションや外壁の工事を行う
資金に余裕がある場合、リノベーションや外壁の修繕で外観をアップグレードすることも大切です。外観が古びていると、賃貸物件を選ぶ際に敬遠されることも多いからです。
内装については大規模な工事は不要なことも多いです。DIYによるクリーニングで対応可能な場合もあるため、費用対効果を意識しながら対策を練ってみましょう。
(5)物件を売却する
「物件の運営自体が大きなストレスになっている」「賃料相場の下落に長くは耐えられない」という場合、物件を売却して換金することを検討してもよいでしょう。特に、ローンを完済している物件や残高がわずかな物件の場合、価値が下がりきる前に売ることで、損失を抑えて、まとまったお金を得られる可能性が高いです。
ただし、通常は、ローンを完済することにより抵当権を抹消しないと、不動産を売却することはできません。そのため、ローン残高が不動産の売却価格を上回るオーバーローン状態の場合、手持ちの資金で補填してローンを完済することができないと、通常の売却方法では売却できません。
3.売れない・ローンも返せない場合は任意売却を検討
収支の赤字によりローンの返済が困難な状況で、オーバーローン状態のために通常の売却方法で売却できない場合でも、任意売却による売却は可能です。
(1)任意売却とは
任意売却とは、ローン残高が不動産の売却価格を上回るオーバーローン状態の場合に、債権者の同意を得て物件を売却することです。
オーバーローン状態の物件でも、債権者と交渉して、同意を得ることができれば売却が可能です。ローンの返済が困難で、競売にかけるしかない場合、「競売より高く売る」ことを条件として債権者と交渉することにより、任意売却に同意してもらえる可能性があるのです。
任意売却は、競売と比較して所有者側のメリットも大きい売却方法です。
任意売却の主なメリットは以下のとおりです。
- 売却後の残債が競売より少ない(高く売れる)
- 競売と違い内見や売却のスケジュール調整が可能
- 残債の支払いを調整できる
競売で売却した場合と比べ、精神的・経済的ダメージも小さく済みます。
(2)任意売却の基本的な流れ
任意売却の基本的な流れは以下のとおりです。
- 不動産会社に初回相談
- 不動産会社と媒介契約を結ぶ
- 売却活動開始
- 内見対応
- 購入の申し込み
- 債権者から抵当権抹消の同意を得る
- 売買契約の締結
- 決済と引き渡し
ケースによって詳細は異なりますが、通常は相談から売却まで4か月から6か月程度で完了します。
(3)ローンを滞納するといずれ物件は競売にかけられる
「収支が好転する可能性もあるから、もうしばらく頑張ってみたい」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、既にローンを滞納している状態では、長期化するといずれ物件は競売にかけられます。
任意売却には相応に時間が必要なため、競売の手続きが進んでからでは間に合わないケースもあります。既にローンを滞納していて、返済が困難な状況に陥っている場合は、放置せず早めの準備を検討してみてください。
4.不動産投資物件を任意売却した事例
当社にも、不動産投資物件の任意売却の相談にいらっしゃる方は少なくありません。過去に当社が手がけた事例を二つ紹介します。
(1)毎月赤字続きで任意売却を決断した例
最初にご紹介するのは、老後の資産形成のために投資用物件を購入された東大阪市にお住まいの40代の会社員の方の事例です。
この方がご購入された物件は、築年数の経過によって賃料相場が下落し、徐々に収入が減少しました。度重なるリフォームの出費などもあり、当初の計画通りの運営が難しい状況に陥っていました。
売却を検討して査定を依頼したところ、残債が売却価格を500万円も超過しており、売るに売れない状況であることが判明したそうです。そこで「なんとかならないか」と当社にご相談いただきました。
状況をヒアリングさせていただいた結果、任意売却が最適と思われましたので、売却プランをご提案し、無事に売却できました。売却後の残債処理についても、当社が提携している弁護士事務所を紹介させていただきました。
(2)オーバーローン状態の投資用物件を任意売却した例
次にご紹介するのは資産形成のため収益用マンションを二件購入された池田市にお住まいの60代の会社員の方の事例です。
購入当初は賃料でローンの返済をまかなうことができており、完済後は収入源となる予定でした。しかし、契約しているサブリース会社から賃料を減額するとの連絡があり、徐々に返済額の負担が大きくなったそうです。夫婦で話し合った結果、物件を手放すことを決め、不動産会社に相談したところ、オーバーローン状態であることが判明し、当社にご相談いただきました。
状況をお伺いし、2物件とも任意売却で売却することをご提案いたしました。抱えられていた債務を大きく圧縮することができ、現在は無理のない範囲で残債を分割払いしながら生活されていらっしゃいます。
5.まとめ
不動産投資は、サラリーマンの副業としても始められるなど、投資としてのハードルが下がってきています。しかし、賃料相場の下落やリフォーム費用の発生などで赤字が続き、廃業に追い込まれるケースも少なくありません。
当社では、不動産投資に関する相談を数多く受けており、ご相談者様の状況を丁寧にお伺いした上で、状況に合わせた改善策や対処法をご提案させていただいております。
「不動産投資をやめたいけれど売るに売れない状況で困っている」「赤字続きの投資用物件を手放すべきなのか迷っている」など、投資用物件に関するお悩みを抱えている方は、お気軽にご相談ください。
こちらでは、当社での相談から解決までの流れを紹介していますので、参考にしていただければと思います。
寺島 達哉
クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉