長期入院により住宅ローンが払えない場合のリスクと適切な対処法

長期入院により住宅ローンが払えない場合のリスクと適切な対処法

長期入院により住宅ローンが払えない場合のリスクと適切な対処法
住宅ローンは、30年~35年という長い期間をかけて返済していくことが多いため、住宅ローンの返済中に状況が変わり、返済が難しくなることは少なくありません。怪我や病気で長期入院することになり、収入が減少したり途絶えたりして、住宅ローンを返済できなくなることもあるでしょう。
今回は、怪我や病気で長期入院したために住宅ローンが払えない場合のリスクや対処法について解説します。

1.住宅ローン返済中に長期入院するリスク

長期入院で住宅ローンを滞納すると、どのようなリスクがあるのでしょうか。主なリスクについて説明します。

(1)一括返済の請求・放置

住宅ローンの返済ができずに無断で3ヶ月以上滞納を続けると、分割払いの権利(期限の利益)を失い、一括返済を求められます
そのため、一括返済を求められる前に金融機関にリスケジュール(返済計画の見直し)の相談をすることが大切です。長期入院していると、ご自身で金融機関に相談に行くのは難しい場合が多いですが、金融機関の担当窓口に電話をして事情を説明するなど、早めに対処することが望ましいです。

(2)連帯保証人に催促される

住宅ローン契約時に保証人がいる場合は、保証人にも督促状が届きます。「迷惑をかけない」と約束して連帯保証人になってもらった場合などは、相手からの信用を失う可能性があるため注意が必要です。連帯保証人に催促状が届く前に、入院が長引いているために住宅ローンの支払いが困難になっているという状況を説明しておくことが望ましいでしょう。

(3)自宅を競売にかけられる

住宅ローンの滞納が長期間続くと、債権者は債権回収のために競売を申し立てます。裁判所が行う公開競売のことで、合法的に差し押さえた財産の換金をする方法です。
競売は、物件情報をインターネット上に公開して一般から購入者を募るので、自宅の情報は、所有者の名前など一部の個人情報を除いて公開されます。そのため、自宅を知っている方が見れば、自宅を競売にかけられていることを知られてしまうでしょう。また、裁判所職員が現況調査や下見に訪れるため、近隣の人から「競売にかけられるのではないか」と勘付かれることもあります。

(4)競売後に住み続けると強制退去させられる

競売では、指定された期間内に最も高い金額を入札した方が、自宅を購入します。物件を売却した後は元の所有者が住み続けることはできません。立ち退かずに住み続けると「不法占有者」となり、物件を明け渡さなければ強制退去させられるため注意が必要です。

2.長期入院した際に利用できる保険や制度

長期入院した際に利用できる保険や制度について説明します。

(1)団体信用生命保険

団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローンの名義人が死亡または高度障害状態(病気や怪我により身体機能が著しく低下した状態)になった場合に、ローン残債を引き継ぐ保険です。住宅ローンの借入れの際は、万一の事態に備えて、団信への加入を必須とする金融機関が多いです。

団信における高度障害状態とは、以下の7つの状態を指します。

  1. 両目の視力を永久に失った
  2. 言語や咀嚼機能を永久に失った
  3. 中枢神経性、精神または胸腹部臓器に著しい機能障害が残り終身常に介護が必要
  4. 両上肢とも手関節以上で失うまたは用を永久に失った
  5. 両下肢とも足関節以上で失うまたは用を永久に失った
  6. 1上肢を手関節以上で失い、かつ1下肢を足関節以上で失った、または用を永久に失った
  7. 1上肢の用を永久に失い、かつ手1下肢以上を失った

このように、団信で高度障害状態と認定されるケースは限定されています。

最近は、病気や怪我に備えた疾病保障付きの団信も増えています。がんに限定した保障、3疾病保障、8疾病保障、全疾病保障など、さまざまな種類の団信が存在します。
このような団信に加入している場合、条件に該当すれば、住宅ローンの支払いを全部または一部免除してもらえる可能性があります。例えば、以下のような条件の団信があります。

  • がんと診断されると保険金が支払われて住宅ローンの残高が半分になる
  • 病気や怪我により働けない状態が1年以上継続すると月々の住宅ローン返済が免除される

住宅ローン免除の条件は加入している団信により異なるので、疾病保障付きの団信に加入している場合は、加入先で条件を確認してください。

(2)医療保険

疾病保障付きの団信に加入していなくても、医療保険には加入しているという方もいらっしゃるでしょう。医療保険に加入していれば、入院により入院給付金を受け取れる可能性があります
保険のプランによって、入院給付金を受け取る条件は異なるので、医療保険に加入している場合は、加入先で条件を確認しましょう。入院給付金には、一回の入院につき60日までなどという日数の上限があることが一般的で、上限を超えた分は給付されないので、上限の日数についても確認しておくとよいでしょう。
入院中に住宅ローンの支払いが困難になり、医療保険に加入しようと思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、一般的な生命保険や医療保険に加入する際は、健康に関する告知が必要なので、入院中に生命保険に加入することは難しいでしょう。

(3)労災保険

通勤中や勤務中の怪我や病気が原因で長期入院する場合、労災保険を利用できる可能性があります。労災保険とは、労働者や労働者の家族を守るための保険制度で、勤務中や通勤中の怪我や病気の治療費は労災保険で補償されます。

労働者が1人でもいる事業主は労災保険の加入が義務付けられているため、会社勤めの方は労災保険を利用できます。

労災保険が認められれば、休業補償なども受けられるため、長期入院中でも収入の心配をする必要はありません。ただし、労災保険の給付を受けるには、病気や怪我の原因が通勤や勤務中にあることを労働基準監督署に認めてもらわなければなりません。

勤務中に業務用の機器が誤作動して怪我をしたなど、明らかに勤務に原因がある場合は認められやすいですが、パワハラを受けたことなどによる精神疾患に関しては、因果関係を明確にすることが難しいケースもあるので認定に時間を要する可能性があります。

(4)傷病手当金

会社勤めで協会けんぽや組合保険に加入している場合、傷病手当金を受給できます。

傷病手当金は、怪我や病気で4日以上仕事ができない状態が続いた場合に受けられる手当金です。休業4日から最長1年6カ月まで給与の3分の2を受け取ることができます。

詳しく知りたい方は、加入している健康保険組合に確認してください。

(5)高額療養費制度

疾病保障付きの団信や医療保険には加入していなくても、長期入院により、1カ月の自己負担が高額になった場合、高額療養費制度を利用することが可能です。
高額療養費制度は、1ヵ月間(毎月1日から末日まで)に医療機関や薬局で支払った自己負担額が高額だったときに利用できる公的制度で、公的医療保険(国民健康保険・健康保険組合・協会けんぽなど)に加入しているすべての人が対象になります。
高額療養費制度では、自己負担限度額を超過した金額が払い戻されます。自己負担限度額は、年齢や所得に応じて定められていて、条件を満たすと負担をさらに軽減する仕組みも設けられています。
詳しく知りたい方は、厚生労働省公式サイト内の以下のページを参考にしてください。

参考URL:高額療養費制度を利用される皆さまへ

3.制度や保険を利用する際の確認手順

長期入院した際に保険や制度を利用したい場合は以下の手順で利用の可否を確認するとよいでしょう。

(1)高度障害に該当するか

まずは、現在の状態が高度障害に該当するか確認します。
団体信用生命保険に加入しており、団体信用保険の定める高度障害に該当していれば、住宅ローン補償を受けることが可能です。

団体信用保険の補償を受ければ、住宅ローンは全額弁済されることになります。
高度障害に該当するかどうか判断できない場合には、住宅ローンを組んでいる金融機関に相談しましょう。

(2)団体生命保険の補償内容の確認

住宅ローン契約の際には、団体生命保険の加入が条件になっていることが多いです。

死亡時や高度障害のみが補償の対象になることが通常ですが、オプションとして「5大疾病保障」や「8大疾病保障」などに加入している場合があります。
どのような補償内容のプランに加入しているか確認しましょう。

(3)加入している医療保険の内容の確認

医療保険の保障対象は入院や手術の費用になることが多いですが、就業不能保険などに加入している場合もあるでしょう。

就業不能保険とは、病気やケガなどで長期間働けなくなった場合の保障を受けられる保険です。
住宅ローンの返済を保障してくれるものではありませんが、長期間働けずに収入が減少した場合に保障を受けられます。

4.長期入院で住宅ローンの返済が厳しくなってきた際に考えるべきこと

長期入院すると、収入の減少に反して治療費や入院費の負担が増えることで徐々に生活が圧迫されて住宅ローンを返済できなくなることが多いです。

長期入院で住宅ローンの返済が厳しくなってきた場合は、なるべく早い段階で以下のことについて考えておきましょう。

(1)入院中も住宅ローン返済を払い続けることは可能か

住宅ローンの返済中に長期入院して収入が減少し、返済が難しくなってきたとしても基本的に住宅ローンの返済は待ってもらえません。

入院が長引きそうだとわかった段階で貯蓄や保険などを確認し、住宅ローンを払っていけるのか家族で話し合うことが大切です。

(2)退院や仕事復帰の時期はいつ頃になりそうか

入院が長引く場合には、退院や仕事の復帰の時期の目安について検討することも大切です。

まずは健康を取り戻すことが先決ですが、いつからどれくらいの収入を得られるようになるのかシミュレーションしてみましょう。

退院してもすぐに復帰できない可能性がある場合、傷病手当や医療保険などで生活費を確保しながら住宅ローンの返済を続けられるか考える必要があります。

退院後すぐに復帰をしたいけれど以前と同じように働く自信がないという場合は、上司に相談してみましょう。復帰直後は時短勤務で働く、体への負荷が少ない仕事を担当するなどの配慮をしてもらえるかもしれません。

5.長期入院で住宅ローンを返済できない場合の対処法

長期入院により住宅ローンを返済できない状況に陥った場合、どのように対処すればよいのでしょうか。主な相談先と対処法を紹介します。

(1)金融機関にリスケジュールの相談

長期入院で住宅ローンの返済が難しい場合は、住宅ローンの借入れをしている金融機関にリスケジュールの相談をしてください。リスケジュールとは、住宅ローンの返済方法を変更し、返済計画を立て直すことです。
金融機関に相談して状況を理解してもらうことができれば、返済期間を延長してもらえる場合や、条件が見直される場合もあります。ただし、長期間にわたり住宅ローンの返済が滞っている場合は、相談に応じてもらえない可能性があるので、早めに相談することが大切です。

(2)リバースモーゲージ

リバースモーゲージを利用することが有効な対処法となるケースもあります。リバースモーゲージとは、自宅を担保に、自宅に住みながら老後の生活資金を借りられるシニア向けのサービスです。対象年齢は55歳または60歳から80歳までが一般的です。
対象年齢の方で、住宅ローンの残債がある場合は、リバースモーゲージの利用を検討してもよいでしょう。リバースモーゲージを利用できれば、毎月の支出の負担が大幅に軽くなるでしょう。
ただし、リバースモーゲージは自宅を担保にお金を借りるサービスのため、慎重な検討が必要です。

(3)自宅の売却

長期入院や長期治療が必要な病気にかかり、住宅ローンの支払いが困難な状況がしばらく続きそうだという場合、自宅の売却を視野に入れてもよいでしょう。自宅を売却して、家賃の安い賃貸住宅に引っ越すことにより、経済的な基盤を立て直せる場合もあります。

自宅を売却する場合、住宅ローンの残額が住宅の売却価格を下回っているか(アンダーローン)か、上回っている(オーバーローン)によって売却方法が異なります。

①アンダーローンの場合

アンダーローンとは、住宅ローンの残額が住宅の売却価格を下回っている状態のことです。アンダーローンの場合、通常の不動産売却の方法で自宅を売却することが可能です。
通常の売却の場合、売却開始から買い手が見つかり売買契約が締結されるまでの期間は、平均すると3ヶ月程度です。また、売買契約後、買主は住宅ローンの本審査を受けるため、売買契約から引渡しまで1ヶ月程度の空白期間があることが一般的です。

②オーバーローン

一方、オーバーローンとは、住宅を売却しても住宅ローンが返済できない状態です。この場合、抵当権の抹消ができないため、通常の方法で売却することができません。
オーバーローンの場合に、住宅ローンの滞納が続いて競売にかけられることを避ける方法として、任意売却という方法があります。任意売却とは、債権者の同意を得た上で売却活動を行い、売却益を住宅ローンの返済に充てるという方法です。任意売却は仲介業者を通して行われるため、競売より有利に売却できる可能性があります。
ただし、任意売却を成功させるためには、債権者との交渉など専門的なノウハウが必要となります。そのため、任意売却の実績を豊富に持つ不動産会社を選ぶことが重要なポイントとなります。

(4)親族間売買

親族のサポートを受けられそうな場合には、親族間売買をするという選択肢もあります。
親族間売買とは、名前の通り親族間で行われる不動産売買です。
住み続けることを前提に親族に買い取ってもらえば、売却代金で住宅ローンを返済し、自宅に住み続けられます。

ただし、親族間売買で適正価格より安い金額で売却した場合、みなし贈与として贈与税が発生する可能性があるので注意が必要です。

(5)債務整理

住宅ローン以外の借金もある場合、生活を立て直すために債務整理を検討した方がよいケースもあります。

①自己破産

自己破産は、借金の全てが免除される債務整理手続きです。

借金には住宅ローンも含まれ、住宅ローンの支払いが残っている自宅は競売にかけられます。
家や車などの財産を失うことになりますが、多額の借金を抱えている場合には有効な手続きといえるでしょう。

②個人再生

個人再生は自己破産とは異なって借金を全額は免除されないものの、大幅に減額できる手続きです。残った借金は、再生計画案に基づいて3~5年で返済していきます。

個人再生には住宅ローン特則という制度があり、住宅ローンを債務整理から外すことができます。
住宅ローンはそのまま支払い続けることになるため、自宅を手放すことなく債務整理することが可能です。

まとめ

今回は、怪我や病気で長期入院したために住宅ローンが払えない場合のリスクや対処法について解説しました。

病気や怪我で長期入院し、住宅ローンの返済が困難になった場合は、早めにリスケジュールの相談をしましょう。リスケジュールの相談に応じてもらえず、自宅を競売にかけられそうな場合は、専門家に相談することで競売を回避できる可能性があります。

当社は、住宅ローン滞納問題を専門的に扱う不動産会社です。ご相談者様のご希望や状況を丁寧にお伺いした上で、最適な解決方法をご提案します。「住宅ローンを払えないけれど、今の家に住み続けたい」「競売だけはなんとか回避したい」など、さまざまなご相談に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
こちらでは当社での相談から解決までの流れを紹介していますので、参考にしていただければと思います。

寺島 達哉
寺島 達哉

クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉

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