離婚で残った住宅ローンが返済できない・競売回避のための任意売却とは

離婚

夫婦でマイホームを所有している場合、離婚時は自宅と住宅ローンをどのように処理するかが問題となります。家を売却してローンを完済できれば大きな問題に発展する可能性は低いですが、家を売りたくない場合や、売ってもローンを完済できない場合は問題になります。

この記事では、離婚に際する住宅ローンの問題や、対処法の一つとなる任意売却について解説します。

1.離婚でローンの支払いが問題となる3つのパターン

離婚の際、住宅ローンの残債が問題となるのは、主に以下の3つのケースです。

(1)離婚前に家を売りたいがオーバーローン状態の場合

住宅の売却に関しては、住宅ローンの残債が売却代金を上回っている「オーバーローン状態」であることは珍しくありません。この場合は売るに売れないため、経済状況に問題がなければそのまま返済を続けるのが一般的です。しかし、離婚で家を手放したい場合はそうもいきません。

「離婚時に家をどちらかの名義にして、住む方が払い続ける」などの解決策も考えられますが、この場合も離婚後に別の問題が発生します。詳細は後程解説します。

(2)家が離婚した夫婦の共有名義になっている場合

離婚後に、夫婦の共有名義になっている住宅を売却する場合、売却完了までの道のりは困難を極めることが多いです。家の所有者が二人存在するため、売却の手続きのために夫婦が共同歩調を取らなければなりません。

夫婦の離婚は、何らかの理由で関係が崩壊した結果であることが多いです。信用に欠ける相手と協力することは難しいため、売却そのものが難航することも珍しくありません。こういった場合、不動産会社をはじめとした第三者に仲介を頼んだ方が良いケースもあります。

(3)片方がローン契約者で片方が連帯保証人の場合

元夫婦のうち片方をローン契約の主体者に、もう片方を連帯保証人として住宅ローンを契約している場合もあります。このパターンでは、何らかの事情で契約者がローンを返済できなくなり、ある日突然連帯保証人が返済を求められることがあります。

例えば、契約者の夫と連帯保証人の妻が離婚し、元夫が養育費の代わりにローンを全額払っているとします。元夫の経済状況が悪化して支払いが困難になると、支払い義務は妻に降りかかります。

夫婦間で「養育費代わり」「慰謝料代わり」にローンを支払うと決めていても、それは金融機関には関係のないことです。どのような事情があっても、連帯保証人になっている以上、返済義務が発生します。

2.連帯保証人をやめることはできる?

夫婦の家の連帯保証人となっている場合、離婚して住まなくなった後は「住宅ローンの保証人をやめたい」と思うのは自然なことかもしれません。では、離婚に伴い家の住人でなくなった際、連帯保証人をやめることは可能なのでしょうか。

(1)残債がある状態では勝手に連帯保証人をやめられない

結論から言うと、ローンの残債がある状態では、勝手に連帯保証人をやめることはできません。たとえ家に居住していない状態となっても、連帯保証人としての保証債務は継続されます。

例外があるとすると、以下の2つの場合が考えられます。

  • 新たな連帯保証人を立てて金融機関に変更の同意を得る場合
  • 住宅ローンの借り換えを行い、契約時に他の人を連帯保証人にする場合

しかし、いずれも保証債務の肩代わりを他者に頼むことになるため、代わりの保証人が見つらないことが多いのが現状です。

(2)離婚の際に名義を変更しても連帯保証人のまま

離婚時の財産分与で夫婦どちらかに名義を変更・統一し、家の名義人でなくなった場合も、連帯保証人であれば債務は継続します。家に対する権利がなくなったからといって、当然に保証債務が免除されるわけではありませんので注意してください。

3.住宅ローンを財産分与で分割することはできない

住宅ローン支払い中のご自宅を所有していて離婚される方から、「住宅ローンも財産分与できますか」というご質問をいただくことがあります。

結論からいうと、住宅ローンを財産分与で分割することはできません。遺産分割などではマイナスの財産も対象となりますが、離婚の財産分与では取り扱いが異なります。

(1)マイナスの財産は対象外

離婚時の財産分与においては、住宅ローンを含むマイナスの財産は対象外となります。

例えば、住宅ローンの残高が2,000万円というケースでも、夫と妻で1,000万円ずつ負担することはできません。これを認めてしまうと、支払い能力のない人が債務者になった場合、債権者の不利益となる可能性があるからです。

銀行など、住宅ローンを貸し付けた金融機関が同意すれば理論上は可能です。しかし、住宅ローン債務の分割を依頼しても、応じてもらえる可能性はほぼないと考えた方がよいでしょう。

(2)支払い義務者はローンの名義人

では、離婚後の住宅ローンの支払いは誰が行うのかというと、住宅ローンの名義人です。住宅ローン債務の支払い義務は、家の名義や夫婦間での取り決めに関係なく、ローンの名義に付随するからです。

例えば、離婚前に「ローンの名義人である夫が子供を引き取り、養育費代わりに妻がローンを返す」と約束し、妻からの支払いが滞った場合も、返済義務はローン名義人である夫にあります。

4.離婚前に取れる住宅ローンに関する対策

では、住宅ローン支払い中の自宅を所有している状態で、離婚後に問題が発生しないようにするにはどうすればよいのでしょうか。

(1)離婚前にローンを借り換え単独名義にする

前述した通り、住宅ローンを夫婦二人で借りている場合や、夫婦で主債務者と連帯保証人になっている場合、離婚後にトラブルになる可能性があります。この問題を回避するために有効なのが、住宅ローンを借り換えて、どちらかの単独名義にすることです。

既に契約中のローンの名義人や連帯保証人を変更するのは難しいかもしれませんが、借り換えローンを利用して新規で契約するのであれば可能性はあります。

ただし、返済総額が増加する場合があるため、夫婦でよく相談して納得できる形で契約するようにしましょう。

(2)養育費や財産分与と住宅ローンの相殺はしない

住宅ローンが残っている状態で離婚する場合、養育費や財産分与代わりに住宅ローンを負担するという約束をするケースもあります。しかし、基本的にこのような約束はおすすめできません。

住宅ローンに限らず、養育費や慰謝料でもいえることですが、離婚時に分割払いで取り決めた支払いは、途中で払われなくなる可能性があります。実際、離婚後に元配偶者からの養育費の支払いが滞ることは珍しくありません。滞納時に法的手段に移行しやすくするためにも、養育費や財産分与と住宅ローンは別で取り決めることをおすすめします。

参考URL:離婚母子世帯における父親からの養育費の状況|厚生労働省

(3)離婚協議書は公正証書にしておく

離婚に際し、住宅ローンに関する取り決めをした場合、取り決めた内容を確実に守ってもらうためには、その内容を記した離婚協議書は公正証書にしておくことが望ましいです。

公正証書とは、公証役場で公証人を承認として立て、その上で締結する契約書のことです。資格を持つ第三者が証人となるため、証拠能力が高いことが特徴です。必要であれば債務名義(強制執行の根拠となる公的機関の発行した書面)としての効力を持たせることも可能です。

参考URL:公証制度について|法務省

5.離婚時オーバーローンの物件は任意売却がおすすめ

離婚を検討している時点で、既にオーバーローンであることが確定している場合は、離婚後に状況が悪化する前に任意売却した方が良いこともあります。自宅と住宅ローンを離婚後も持ち続けると、どのような問題があるのでしょうか。

(1)離婚で経済状況が悪化し返済が滞る可能性がある

離婚による財産分与や慰謝料の支払いなどを引き金に、ローン契約者の経済状況が悪化し、返済が滞ってしまうことがあります。例えば、元夫がローン契約者で、連帯債務者の元妻が子供と一緒に家で暮らしているケースを考えてみましょう。

この場合、夫のローン返済が滞り、ある日突然「住宅ローンを支払ってください」と金融機関から連絡が来ることがあります。元夫がきちんと住宅ローンを払っていると思っていた元妻にとっては、まさに青天のへきれきです。

滞納が長期化する前にわかればまだ良い方で、ときには元配偶者から「競売にかけられるから出て行って欲しい」と一方的に通告されることもあります。

離婚時に既にオーバーローン状態で、将来的に滞納する可能性が高い場合、離婚する前に任意売却を検討した方が、後の債務処理が大幅に楽なケースも多いのです。

(2)離婚後に元夫婦が足並みを揃えるのは難しい

離婚後に任意売却を検討する場合、元夫婦が共同歩調を取ることができず、売却が難航することがあります。禍根を残して離婚した夫婦は、互いを信用しきれず、協力できないケースも珍しくありません。

「売却代金を相手が持ち逃げするのではないか」
「自分には嘘の情報を伝えているのではないか」
「難しいことを言って、実は家を取り上げようとしているのではないか」

このように疑心暗鬼になってしまうと、スムーズに協力することは難しいです。

離婚前であれば、少なくとも「円滑に財産を処分して夫婦関係を解消する」という点では、夫婦の目指す方向は同じです。そのため、離婚後と比べると、まだ協力姿勢をとりやすいといえます。

(3)競売と比較して任意売却はメリットが大きい

オーバーローン状態の家を現金化し、債務の返済に充てる方法は任意売却だけではありません。ローンの滞納が続いた場合に、債権者が裁判所に申し立てて行なう「競売」というオークション形式の売却方法があります。

ただし、この方法は、以下のように家の所有者にとってデメリットが多いため、競売で売却することを前提にローンを滞納することはおすすめできません。

【競売と任意売却の比較(一例)】

競売 任意売却
売却価格 市場価格より大幅に安い 市場価格で売却が見込める
売却スケジュール 裁判所が決めたスケジュールに従う必要がある 期限さえ守れば都合に合わせて調整できる
プライバシーへの配慮 競売物件としてインターネットに公開される 競売物件とは知られない
税金や引越し代金の捻出 代金は全額返済に充てられる 代金の一部を持ち出せることがある

以上はごく一部ですが、このように競売は任意売却と比べてデメリットの大きい売却方法です。少しでも有利に売却し、残債を減らすためには任意売却を検討することをおすすめします。

なお、家に住み続けたいという希望がある場合、任意売却以外の解決方法を模索できることもあります。

6.離婚時・離婚後の任意売却を成功させるポイント

離婚の際の任意売却を成功させるには、いくつか押さえておくべきポイントが存在します。任意売却を成功させるために大切なポイントについて説明します。

(1)可能な限り(元)夫婦が連携する

これは非常に難しい要素なのですが、可能な限り(元)夫婦間での連携が必要となります。期限までの書類の準備一つ取ってもそうですし、売却価格の合意や内見日をはじめとしたスケジュールの調整など、夫婦で協力が必要な場面は多いからです。

お互いに「顔も見たくない」という状態では、売却期日に間に合わない危険性もあるため、なるべく冷静かつ淡々と進めることが大切です。

夫婦間の溝が深く、二人だけではどうしても冷静になれない場合、不動産会社の担当者に間に入ってもらうことで、状況が改善することもあります。不動産会社は専門の知識を持っており、中立の立場から売却をサポートできるからです。

(2)任意売却に早めに着手する

任意売却で重要なポイントとなるのが、着手の早さです。任意売却は競売と同時に進行するため「開札日の前日までに任意売却を完了しなければならない」というタイムリミットが存在します。着手が早いほど、債権者との交渉や売却活動に使える期間が長くなるので、早めの着手が命運を分けるのです。

着手が遅れた場合でも任意売却に成功した事例もありますが、成約を優先するため売却価格を安くせざるを得ないこともあります。

「金融機関から督促状が届いているが、返済のめどが立たない」など、競売になる可能性が高い状況であれば、状況の悪化を待たず不動産会社に相談することをおすすめします。

(3)任意売却の実績が豊富な不動産会社に相談する

任意売却はどの不動産会社に依頼しても良いわけではありません。任意売却は通常の売却と比較して特殊な業務が多く、知識・経験の少ない不動産会社では対応しきれない可能性が高いのです。

例えば、任意売却の過程で必要な作業として「配分書の作成」があります。配分書とは、売却代金の各債権者への割り振りや、引越し費用の持ち出しなど「誰にいくら分配するのか」をまとめた「配分案」を書面化したものです。

任意売却では、作成した配分案を債権者に提示し、納得してもらえなければ売却はできません。任意売却ならではの、重要な作業です。

このように、任意売却は経験と知識が成否を分けるポイントを多く内包しています。そのため、売却を成功させるためには、実績の豊富な会社に依頼するのが大切です。

7.まとめ

離婚の時点でオーバーローン状態の住宅をいかに処分するかは、別の道を歩こうとしている夫婦にとって非常に頭の痛い問題です。仮に財産分与でどちらかの名義に変更し、離婚するとしても、離婚後にローンが滞ると競売にかけられるリスクもあります。

ローン契約者の経済状況や家の価格などから、将来的に競売となる可能性が高い場合は、早めに任意売却を検討することをおすすめします。まずは、任意売却の実績の豊富な不動産会社に相談してみましょう。

クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一

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