競売後の生活はどうなる?売却後の流れ、競売を回避する方法も解説
競売の通知を受け取り、「競売になったら、その後の生活はどうなってしまうのだろう」と心配になる方は多いのではないでしょうか。
この記事では、競売後の生活の変化、売却後の流れ、競売を回避する方法などについて解説します。
1.競売後の生活はどうなる?
競売で家を売却されると、その後の生活はどのように変化するのでしょうか。具体的な変化について説明します。
(1)住み慣れた自宅から引っ越すことになる
まず、競売で売却した自宅に住み続けることはできなくなります。家を売却した後は、新たな所有者が決まった時点で出ていかなければなりません。明け渡しを拒否した場合は、いずれ強制執行によって退去させられてしまいます。
競売後は、賃貸住宅に引っ越しをする方が多いですが、希望に合う賃貸物件がなかなか見つからず、親族の家などに一時的に身を寄せる方もいらっしゃいます。
(2)競売後は残債の処理が必要となる
競売は、一般的に住宅ローンの残債が売却価格を上回るオーバーローンの場合の売却方法です。そのため、競売後は残債が発生します。
残債は家を売却したからといって免除されるわけではなく、債権者と協議した上で、その後も支払いが必要となります。競売で家を売却した場合、残債は一括払いでの返済を求められることが多いです。
(3)一定期間はローンを組めなくなる
家を競売にかけられる前に住宅ローンの返済が3回以上滞っていた場合、信用情報機関に事故情報が登録されます。事故情報が登録される期間は通常5年で、その間はクレジットカードの新規作成やローンの契約を行うことができません。
(4)職場に競売の事実を知られる可能性
競売で家を売られてしまった事実を職場の人に知られたくないという方は多いかと思います。しかし、確率は低いですが、職場の人に知られてしまう可能性はあります。
競売になったからといって、通常は職場にその事実が通知されることはありません。ただし、職場の人が官報やBIT(競売不動産の情報公開サイト)を閲覧した場合は、競売にかけられている事実を知られることがあります。
また、競売後に残債の返済を放置して、債権者が給与の差し押さえに乗り出した場合も、職場に知られることになります。
2.競売で家が売却された後の流れ
競売で家が売却されて買受人が決定した後はどのような流れで手続きが進むのでしょうか。売却後の流れについて順を追って説明します。
(1)裁判所からの売却許可決定が出される
まず、裁判所が審査を行い、買受人に売却許可決定を出します。手続きに不備がある場合や、買受人に欠格事由がある場合は審査に通らない可能性がありますが、よほどのことがない限りは売却許可が出されます。期間は開札から1週間以内です。
(2)買受人が代金を納付
売却許可決定の確定後、買受人が家の代金を納付します。代金が納付された時点で、家の所有権は買受人に移転されます。その後、正式に登記が実行されます。
この時点で元の所有者が家から退去していない場合、不法占拠となります。新たな所有者は、強制執行手続きで不法占拠している占有者を退去させることができます。
(3)引渡命令の取得
占有者に対して明け渡しの強制執行を行うためには、その根拠となる裁判所の命令(引渡命令)が必要です。元の所有者が家から退去していない場合、新たな所有者はまず引渡命令を取得します。
引渡命令は、代金納付から6か月以内に申し立てる必要があります。通常は、退去の要請を数回行った後、手続きに入るケースが多いです。
(4)明け渡しの強制執行の申し立て
引渡命令の確定後、新たな所有者が予納金を納付すると、強制執行の手続きに入ります。確定から強制執行の手続きまではおおむね10日から2週間です。
強制執行の日取りが決定されると、占有者にもその日付が通知されます。
(5)明け渡しの強制執行が行われる
事前に通達された日に、強制執行が行われます。現にその場で生活していても、家からは強制的に退去させられ、家財も運び出されます。鍵も替えられてしまうので、強制執行後は家に入ることはできません。
なお、強制執行にかかった荷物の保管費やその他経費は、所有者が占有者に対して請求することが可能です。
3.重要なのは競売で売却させないこと
競売は、所有者にとって決して有利な売却方法ではありません。また、競売になると多大な精神的ダメージを負うことになります。そのため、競売を回避することが望ましいといえます。
競売にかけられた場合、具体的にどのような問題が発生するのでしょうか。また、競売を回避するためにどのようにすればよいのでしょうか。
(1)競売になった場合の問題点
自宅が競売にかけられると、以下のような問題が発生します。
①安く売却される
競売物件の売却価格は、一般市場の売却価格と比べて安くなります。通常、市場価格の7割程度にとどまることが多いです。数百万円の差になることも多く、所有者にとっては大きな損失といえます。
②一方的なスケジュールの決定
競売のスケジュールは裁判所が一方的に決定し、原則として変更はできません。下見(現況調査)や明け渡しの日も同様です。仮に引っ越し先が決定していない場合や、重要な用事でどうしても現況調査に対応できない場合も、協力できなければ強制的に立ち入られます。
③外部への物件情報の公開
競売の対象となった物件の情報は、BITや新聞広告などで外部に公開されます。BITには、所有者の氏名以外のほぼ全ての家に関する情報が掲載されてしまいます。そのため、家を知る人が見れば、競売にかけられていることや経済状況を容易に伺い知れます。
(2)競売の手続きは取り下げができる
所有者にとってデメリットが多い競売ですが、実は期日までなら取り下げが可能です。ただし、競売は、申立人である債権者の同意によって取り下げなければならず、単純にお願いするだけで取り下げてもらうことはできません。
債権者の同意を得て競売を取り下げるためには、競売より有利に売却することを条件に債権者と交渉する必要があります。
4.競売を回避するための任意売却
競売より有利に売却する方法として用いられているのが任意売却です。
任意売却とは、オーバーローン状態の物件を、債権者の同意を得て一般市場で他の不動産と同じように売却することをいいます。
競売と同時進行するため、売却に期限はありますが、基本的な売却の流れは通常の売却と共通しています。
(1)任意売却は競売と比べてメリットが多い
任意売却は、競売と比べて所有者にとってメリットが多い売却方法です。
①競売より高く売れる
任意売却は、一般市場で売却を行うため、競売と異なり、相場での売却が可能です。競売と比べ、3割程度高く売れることが多いため、売却後の残債を大きく減らすことができます。
②スケジュールの調整が可能
前述した通り、競売のスケジュールは裁判所が一方的に決定し、原則として変更は不可能です。
一方、任意売却の場合は、期日に間に合う範囲内で、内見や引き渡しの日を調整できます。
③売却代金の一部持ち出しが可能な場合がある
競売では、売却代金は全額裁判所が預かり、直接債権者に支払われます。そのため、所有者の手元にお金は残りません。
一方、任意売却では、債権者の許可を得られた場合は、売却経費や引っ越し費用を一部持ち出せることがあります。
(2)任意売却なら住み続けられることも
任意売却の大きなメリットは、住み慣れた家に住み続けられる場合があることです。子供の学区や勤務先の都合で、すぐに引っ越すことは難しく「今の家に住み続けたい」という方は少なくありません。
任意売却では、以下の二つの方法を検討することができます。
いずれもいくつか条件がありますが、家に住み続けたいのであれば検討してみてください。
(3)任意売却の流れ
任意売却の初回相談から売却までは、おおむね以下の流れで進みます。
- 初回相談
- 査定
- 債権者との交渉
- 売却活動開始
- 内見対応
- 売買契約締結
- 配分案の合意の取得
- 抵当権解除と決済(引き渡し)
どの程度期間がかかるかはケースバイケースですが、売却活動の期間によって4か月から半年程度かかることが多いです。
(4)任意売却の依頼先は不動産会社
任意売却は、売買の仲介と売却活動を行うため、宅地建物取引業の登録のある不動産会社しか取り扱うことはできません。弁護士や銀行に相談した場合でも、最終的には不動産会社を紹介されます。
任意売却には専門的なノウハウや経験が求められるため、大手の不動産会社や地域密着型の不動産屋では扱っていないことがほとんどです。そのため、主にインターネットを駆使して専門会社を探すことになります。
5.まとめ
競売後は、住み慣れた自宅からの退去を始め、生活が一変してしまうため、不安に感じる方も少なくありません。競売が始まると、所有者にはさまざまな悪影響が生じるため、まずは競売を避ける方法を検討することが大切です。
競売での売却を回避するためには、より有利かつ負担の少ない任意売却での売却をおすすめします。状況次第では、家を売却した後、住み続けられる可能性もあります。
当社は、数多くの任意売却を手掛けてきた住宅ローン滞納問題を専門的に扱う不動産会社です。ご相談者様のご希望や状況を丁寧にお伺いした上で、任意売却だけではなく、その先の生活再建まで見据え、最適な解決方法をご提案します。「競売だけは回避したい」「住宅ローンを払えないけれど、今の家に住み続けたい」など、さまざまなご相談に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
こちらでは、当社での相談から解決までの流れを紹介していますので、参考にしていただければと思います。
寺島 達哉
クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉