夫が逮捕され住宅ローンが払えない場合の対処法
こちらの記事を読んでらっしゃるということは、夫が逮捕されたという知らせを受けて突然の事でびっくり(動揺?)されている方も多いのではないかと思います。
しかし、こういう時こそ冷静になり、今できることを検討し、ひとつひとつクリアにしていくことが大事ではないかと思います。
この記事では、夫が逮捕されてしまい住宅ローンの支払いが困難になった場合の対処法について具体的に説明しますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
1.夫が逮捕された場合の対処法
これから検討すべき具体的な対処法は次の3つになります。
(1)そのまま支払いを続ける
住宅ローンの支払いの管理を夫に任せていた場合、まずどこの銀行口座から引き落とされていたのかを特定する必要があります。
十分預金があれば当分の間は自動引き落としがかかり、問題はないですが、残金が僅かな場合、預入をしないと住宅ローンを滞納することになります。
住宅ローンを滞納することについてのリスクについては後述します。
(2)金融機関に相談する
借入先の金融機関を特定できることが前提となりますが、住宅ローンの支払いが困難になりそうな場合、借入先の金融機関にリスケジュール(返済計画の見直し)の相談をするのも一つの方法です。
ただ、親族とは言え、借入者本人が相談しないと応じてもらえない場合もあります。
(3)売却を検討する
住宅ローンの支払い等を夫の収入で賄っており、預貯金も底を尽きそうだという場合、売却を検討しなければなりません。思い入れのある自宅を手放すことを決断するのは容易ではないですが、住宅ローンの支払いの滞納をすると、いずれ「競売」という形で家を失ってしまいます。
2.夫が刑務所に収監されていても売却が可能か
自宅を売却しようと思っても所有者の同意がなければ、売却をすることはできません。中々スムーズに連絡をとることは難しいですが、面会や手紙で意思疎通をとることが重要になってきます。
(1)面会は可能か
不動産を売却する際、原則、登記の抹消手続きを司法書士に委任します。
委任の際に、本人確認といって登記名義人と相違がないか、確認する必要があります。
面会には一定の制限が設けられており、受給者の優遇区分に応じて異なりますが、基本的にはどの受刑者でも月2回は面会することが可能です。ただし、受刑者が懲罰中等の場合は原則として面会ができません。
詳細は法務省HP「刑事施設に収容されている収容者との面会や手紙の発受等を希望される方へ」をご参照ください。
(2)契約等の締結
その他、不動産売却を行うのに必要である媒介契約に関しては、「差し入れ」いう形で書面や印鑑等を刑務所へ郵送してやり取りすることが可能です。
通常よりも時間は要しますが、刑務所に収監されていたとしても不動産売却は可能です。
媒介契約については、「任意売却は専任媒介契約が必要?一般媒介契約との違いや注意点を解説」で詳しく解説しておりますのでご参照ください。
(3)住宅ローンの完済は可能か
住宅ローンが残っている場合、残債額を確認する必要があります。自己資金をあまり入れずにご自宅を購入した場合、オーバーローンになっていることがよくあります。
オーバーローンとは、現在の残債よりも自宅の価値の方が低いことを指します。(残債>自宅の価値)
オーバーローンになっているかどうかは、その時の不動産市況の動向によって変わります。ですので、まず自宅がいくらで売却可能なのか、査定をしてもらい、相場を知ることが大切です。
あくまでも査定なので、実際に売却できる金額ではないことに注意は必要です。
残債よりも高く売却できた場合、住宅ローンの完済は可能です。では、自宅を売却しても残債を返却することが見込めない場合、どのようにすればよいでしょうか。
住宅ローンの残債以下では、手出しをしない限り不動産の売却はできませんが、一定の要件のもと「任意売却」という方法で売却が可能となります。
「任意売却」については、次の章で詳しく解説します。
3.住宅ローンの滞納を放置するリスクと対処法
(1)滞納を放置するリスク
住宅ローンの滞納をすると借入先の金融機関から支払いの督促があります。督促の手段としては電話もしくは書面の郵送が大半を占めます。
住宅ローンの滞納を1~2ヵ月しただけでご自宅を取り上げられることはありませんが、滞納を継続するといずれ「競売」の申立てが行われます。
また、住宅ローンの借入の際に保証人をつけている場合、保証人にも請求されるため、保証人を確認しておく必要があります。
(2)競売のデメリット
- 市場価格の6割~8割くらいの安価で売却されてしまう
- プライバシーが侵害される
- 個人の意思が反映されない
- 引越し費用が捻出できない
ざっと競売のデメリットを列挙しましたが、詳細についてはこちらの記事で解説しておりますので、ご参照下さい。
参考記事:競売と任意売却の価格差は?競売の方が安くなる理由を解説
(3)競売を回避するための任意売却
「任意売却」とは、「競売」を回避するために、債権者の同意を得た上で売却する方法です。
「競売」とは違い、裁判所が行う手続きではなく、一般的な売却方法と同じ手段を使って売却活動をするため、競売よりも高い金額での売却が見込めます。
任意売却には、債権者の承諾が必要になり、一般的な売却よりも交渉相手が多岐にわたるため、任意売却を専門的に扱っている不動産会社に相談する必要があります。
4.売却後の残債の支払い方法
任意売却で自宅の売却が完了したとしても、借入額以下で売却をしているため、当然に残債の支払いが無くなるわけではありません。
残った債務についての処理方法について解説していきます。
(1)毎月一定額支払う
自宅を売却すると次の住まいとして賃貸物件を借りることになると思います。賃料を支払いに加えて残債を支払っていくことは、債権者も重々承知しているため、毎月の支払いは5,000~20,000円になることがほとんどです。
この毎月の支払いに関しては、その方の収入状況によって変動しますが、支払いが困難な金額を提示してくることはありません。
(2)債務整理をする
服役中にも遅延損害金が加算されるため、出所後に想定よりも多い債務がある可能性があります。
債務の額が多過ぎて、支払いが困難な場合、ご自身の状況に合った債務整理を検討する必要があります。債務整理にはいくつか方法があり、弁護士や司法書士に相談すれば、客観的に見てどの方法が良いかアドバイスをしてくれるので、アドバイスの内容を参考に検討するとよいでしょう。
①任意整理
任意整理とは、基本的には元本を据え置きのまま、利息のカットをする手続きです。
元本は減らず、利息の低い住宅ローン等は対象外となるため、利息をカットしたとしても焼け石に水になる可能性も否めません。
②個人再生
個人再生とは、裁判所に再生計画の認可許可を受け、大幅に借金を減らす(おおよそ5分の1)方法です。
個人再生には住宅ローン特則といって住宅ローンを残したままで他の債務(カードローン等)を5分の1に圧縮する方法もあります。
そもそも、住宅ローンの支払いが厳しい場合であれば、次の自己破産を検討されたほうが良いかもしれません。
③自己破産
自己破産とは端的に申すと借金を0(チャラ)にする方法です。
パチンコ等のギャンブルで浪費した債務は基本的には免責されないといわれていますが、裁判所の裁量により免責が認められる場合もあります。免責が認められた場合、一定の財産(不動産等)は換価する必要があります。
自己破産をするには、基本的には弁護士に手続きを依頼する必要があります。
まとめ
我々は、不動産の売却をして終わりではなく、その後の相談も弁護士等の紹介をさせていただき、ワンストップで問題解決の相談を受け付けております。
刑務所に出向き、所有者の方と面談し、今後の意向も踏まえ、ご家族にとって今できる最善の方法を一緒に模索できればと思っております。
滞納の督促は来ているけれど、どうしたらよいかわからず、放置しておくと競売を申立てられ取れる手段が限られますので、問題の先送りをせず、まずはご相談いただければ思います。
寺島 達哉
クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉