元旦那が住宅ローンを滞納した場合の対処法
「旦那と離婚した後、元旦那が住宅ローンの支払いを滞納している」「ある日突然、自宅に裁判所から競売開始決定通知が届いた」など、離婚後の住宅ローン滞納に関する問題でお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
夫婦が離婚した後、旦那名義の自宅に妻と子ども達だけが住み続けるというケースはよくあることですが、離婚後しばらく経つと、元旦那が住宅ローンを滞納してしまうことも少なくありません。元旦那が住宅ローンを滞納した場合、その家の住人はどうすればよいのでしょうか。
この記事では、元旦那が住宅ローンを滞納した場合の対処法について解説します。
1.元旦那が離婚後に住宅ローンを滞納する理由
離婚後に元旦那が住宅ローンを滞納することが多いのは、どのような理由によるものなのでしょうか。典型的な理由について説明します。
(1)住宅ローンを払いたくなくなった
離婚後に住宅ローンを滞納する典型的な理由の一つは、自分が住んでいない家のローンを元妻や子どものために支払うのが嫌になることです。
離婚する際、慰謝料の代わりとして住宅ローンの返済を約束していても、しばらく経つと、「自分が住んでいるわけでもない家のローンを、なぜ自分が払わなければならないのだろうか」「元妻が住んでいるのだから元妻が払えばいいのではないか」などという疑問を感じてしまう方は少なくありません。
(2)再婚して新たな家庭を持った
元旦那が再婚して新しい家庭を持ったことにより、経済的な負担が増加し、元妻が住む家の住宅ローンを支払う経済的な余裕がなくなるというケースもあります。
元旦那が再婚した場合、新しい家族に前の家の住宅ローンのことを話していないことも多いです。そのため、新しい家族に内緒で、元妻が住んでいる家の住宅ローンを支払い続けることに対して精神的な負担を感じるようになる方もいらっしゃいます。
(3)経済状況が悪化して支払いが難しくなった
離婚した後、経済状況が悪化したために、支払いたくても支払えないという状況に陥っている場合もあります。例えば、勤務先の会社の経営状況が悪化したために給与が減額された結果、元妻が住む家の住宅ローンの支払いを継続するのが困難になったという方もいらっしゃいます。
2020年以降、新型コロナウィルス感染症の影響により、リストラや減給などにより経済状況が急激に悪化し、住宅ローンの滞納に至るケースは増加しています。
2.元旦那が住宅ローンを滞納した場合の対処法
元旦那が住宅ローンを滞納した場合、どのように対処すればよいでしょうか。
適切な対処法について説明します。
(1)元旦那の状況を確認する
まずは、元旦那がなぜ住宅ローンを滞納しているのか、その理由を把握するために、元旦那の状況を確認してみましょう。
返済能力が十分あるにも関わらず元旦那が住宅ローンの支払いを拒否している場合、元妻の側から支払いを促すことにより支払ってもらえる可能性もあります。
(2)支払いが困難な場合は家の売却を検討する
元旦那の経済状況が悪化して住宅ローンの支払いが困難な状況に陥っている場合や、元旦那と連絡が取れない場合などは、支払ってもらうことは難しいでしょう。
ご自身が住宅ローンの連帯保証人や連帯債務者となっている場合、元旦那が住宅ローンの滞納を続けていると、住宅ローンの請求を受けることになります。
ご自身が元旦那の代わりに住宅ローンを支払うことができれば問題ありません。しかし、ご自身で住宅ローンを支払うことも難しい場合、住宅ローンを滞納したまま放置すると、いずれ家は競売にかけられてしまいます。
競売は、売却価格が安い、家の引渡しまでのスケジュールが決められてしまうなど、所有者にとって経済的・精神的負担が大きい売却方法なので、可能な限り回避したいところです。競売を回避するためには、住宅ローンの支払いが困難な状況に陥った時点で、早めに自宅の売却を検討する必要があります。
(3)アンダーローンかオーバーローンか確認する
自宅の売却を検討する場合、まずはアンダーローンかオーバーローンかを確認しましょう。
- アンダーローン:家の売却価格より住宅ローンの残債が少ない状態
- オーバーローン:家の売却価格より住宅ローンの残債が多い状態
アンダーローン状態の場合は、問題なく家を売却することが可能です。家の売却価格が住宅ローンの残債を上回っているので、家を売却することにより、住宅ローンを完済できます。
(4)オーバーローンの場合は不動産会社に相談する
オーバーローンの場合は、任意売却という方法で家を売却することになります。
任意売却とは、住宅ローンが払えず滞納に至ったときに、担保となっている家を債権者の許可を得て売却することをいいます。競売とは違って一般市場で売却するため、競売より高い価格で売却できる可能性が高く、競売のデメリットの多くを避けることができます。
ただし、住宅ローンを滞納している場合、任意売却は時間との勝負になるため、できる限り早く、任意売却に精通した不動産会社に相談することが大切です。特に、裁判所から、競売の手続きが開始されたことを知らせる「競売開始決定通知」が既に届いている場合、時間の猶予がほとんどありません。
任意売却を成功させるためには、債権者との交渉や競売期限を意識した売却活動など、通常の不動産売却にはない専門的なノウハウが必要となるため、大手や地元密着型の不動産会社に依頼しても断られる可能性もあります。そのため、相談先として、任意売却の実績が豊富な不動産会社を選ぶことが成否を分ける重要なポイントとなります。
相談先を選ぶ際は、インターネットなどで任意売却を得意とする不動産会社を探して公式サイトに掲載されている実績などを確認した上で、実際に相談をして、見極めるとよいでしょう。
3.今の家に住み続ける方法
元旦那が住宅ローンを支払えない状況に陥っても、ご自身の仕事や子どもの学校に関する事情などから、できれば引っ越さずに今の家に住み続けたいという方もいらっしゃるかと思います。
今の家に住み続ける方法としては、リースバックと親族間売買という2つの方法があります。それぞれの方法について説明します。
(1)リースバック
リースバックは、家を売却した後、新たな所有者と賃貸借契約を結び、今の家に住み続ける方法です。
居住を続ける限り家賃は発生しますが、引っ越しの必要がなく将来的な買い戻しも可能です。ただし、一般的な賃貸借契約とは異なるため、いくつか注意点があります。
また、子どもの受験シーズンが終わるまでは今の家に住み続けたいというご希望を持ちのお母様からご依頼を受けて、当社がリースバックにより解決した事例を紹介しています。
(2)親族間売買
親族間売買とは、親、子、親戚など親族に家を売却し、売却後の所有者と賃貸借契約または使用貸借契約を締結した上で今の家に住み続ける方法です。
「今の家に住み続けたい」という思いを応援してくれる親族がいる場合、検討するとよいでしょう。
ただし、親族間売買では、家を購入する側の住宅ローン契約が問題となることも多いため、注意が必要です。
また、競売の現況調査に関する書面が郵送で届いたけれど、今の家になんとか住み続ける方法はないかというご相談を受けて、当社が親族間売買により解決した事例をご紹介しています。
4.連帯保証人や共有をやめることはできる?
夫婦で住宅を購入する際、夫が主債務者、妻が連帯保証人になることも多いです。また、夫婦が住宅を共有しているケースも少なくありません。しかし、離婚することになった場合、連帯保証人や共有をやめることを希望される方もいらっしゃいます。離婚が決まったら、連帯保証人や共有をやめることはできるのでしょうか。
(1)持分を譲渡すれば共有はやめられるが返済中は難しい
自宅の共有持分(割合に応じて分割した所有権)を持っている場合、法律上は譲渡や贈与などで他者に持ち分を譲渡すれば、共有をやめることは可能です。
ただし、共有持分を設定している住宅のほとんどは、夫婦どちらも住宅ローンの債務を負っています。その場合、住宅ローンを完済するまでの間は、金融機関が共有持分の売却に同意しないため、持ち分を手放すことはほぼ不可能です。
(2)連帯保証人の変更は難しいのが実情
ご自身が元夫の連帯保証人になっている場合、新たに十分な返済能力のある第三者を連帯保証人にすることができれば、ご自身が連帯保証人をやめることは可能です。
ただし、実際に連帯保証人を引き受けてくれる人を見つけるのは非常に難しいといえるでしょう。
5.まとめ
元旦那が住宅ローンを滞納していることが判明した場合、まずは旦那の状況を確認し、支払いが困難な状況である場合は専門家のサポートを受けながら適切な対処法を検討しましょう。
当社は、住宅ローン滞納問題を専門的に扱い、数多くの任意売却の実績を持つ不動産会社です。離婚後の住宅ローン滞納に関する問題でお悩みの方からの相談も数多く寄せられており、ご相談者様の状況やご希望に合う解決方法をご提案しております。
「子どもが小学校を卒業するまでは今の家に住み続けたい」「仕事の都合上、できれば今の家から引っ越したくない」など、さまざまなご相談に対応しておりますので、お気軽にご連絡いただければと思います。
こちらでは当社での相談から解決までの流れを紹介していますので、参考にしていただければと思います。
寺島 達哉
クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉