脳梗塞になれば住宅ローンは免除される?免除されるケース・されないケースを解説
脳梗塞は、脳の血管が詰まってしまう病気です。脳梗塞になると、体の麻痺、しびれ、言語障害などの深刻な後遺症が残ることがあります。
脳梗塞の後遺症によって今までどおり仕事ができなくなった場合、収入が減少し、住宅ローンの返済が難しくなることもあるでしょう。このような場合、脳梗塞を理由に住宅ローンの支払いを免除してもらうことはできないのでしょうか。
この記事では、脳梗塞による住宅ローンの免除について解説します。
目次
1.住宅ローン免除の対象となる3代疾病とは?
住宅ローンを組む際は一般的に団体信用生命保険(団信)に加入することになります。団信で、住宅ローンが免除される主な対象は3大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)です。それぞれの疾病について説明します。
(1)がん
がんは、細胞の遺伝子が傷ついて起きる病気で、悪性腫瘍とも呼ばれます。
身体の組織や臓器に悪性の腫瘍が発生し、増殖を続けていくことで周囲の組織へ転移していきます。
がんは命に関わることもありますし、治療して完治後に再発することもあります。
(2)急性心筋梗塞
血栓が急に形成されて血液を詰まらせ、心臓に送られる血液が届かなくなってしまう病気です。血液が届けられないことで心筋細胞が壊死し、不整脈を引き起こして心停止するケースもあります。急性心筋梗塞は、突然起きることが多いです。
(3)脳卒中
脳卒中とは、脳血管に障害が起きる病気の総称です。脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などが脳卒中に該当します。脳卒中の主な原因は高血圧とされており、生活習慣も関係していると考えられています。
脳卒中の中でも最も多いのが脳梗塞です。脳梗塞は脳の血管が詰まって血流が途絶え、脳細胞が壊死する病気です。脳梗塞を発症すると、体の麻痺、しびれ、言語障害などの後遺症が残ることが多いとされています。
2.脳梗塞になれば住宅ローンは免除されるのか?
脳梗塞を発症した後、後遺症が残り、今までどおり仕事ができなくなると、収入が減り、住宅ローンの支払いを続けることが難しくなります。脳梗塞は団信の3代疾病に該当するため、「住宅ローンが免除されるのではないか」と考える方も多いでしょう。団信に加入していれば、脳梗塞を理由に住宅ローンを免除してもらうことは可能なのでしょうか。住宅ローンが免除されるケース・されないケースについて説明します。
(1)住宅ローンが免除されるケース
加入者が3代疾病によって死亡した場合、もしくは高度障害状態になった場合、住宅ローンの残債が団信によって弁済されます。
高度障害状態は、以下の1~8までのいずれかを指します。
- 両眼の視力を全く永久に失ったもの
- 言語または咀嚼の機能を全く永久に失ったもの
- 中枢神経または精神に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの
- 胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの
- 両上肢とも、手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
- 両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
- 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
- 1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの
なお、加入している団信の種類によっては、高度障害状態に該当しなくても住宅ローンが免除される場合もあります。例えば、フラット35の新3大疾病付機構団信では、以下のいずれかに該当する場合、支払い免除の対象となります。
- 脳卒中の発症後、60日以上にわたって言語や運動に障害、麻痺など神経学的後遺症が継続したと医師によって診断されたとき
- 脳卒中の発症後、その治療を直接の目的として病院等で手術を受けたき
つまり、脳梗塞を発症した後、「思い通りに身体が動かせない」「呂律が回らずに上手く話せない」などの後遺症が60日以上継続し、医師が後遺症だと診断すれば住宅ローンの残債が免除される可能性が高いです。
長期入院や寝たきりの状態にならずに日常生活へ復帰できたとしても、後遺症が残っていれば保障の対象になる可能性があります。
団信の種類によって、住宅ローンが免除となる対象が異なるので、ご自身が加入している団信の内容を確認しましょう。
参考URL:新3大疾病付機構団信の加入要件・保障内容(フラット35公式サイト)
(2)住宅ローンが免除されないケース
団信に加入していても、指定された要件を満たさない場合、住宅ローンの支払いが免除されることはありません。脳梗塞による後遺症で仕事ができないと本人が自己申告しても、医師が後遺症はないと診断した場合、保障の対象にはなりません。
また、保険の申し込みの際に健康状態などについて事実を告げなかった場合や、事実と異なることを伝えて加入した場合も住宅ローンは免除されません。
3.ペアローンを組んでいて配偶者が脳梗塞になった場合はどうなる?
近年は共働きの夫婦が増え、自宅を購入する際にペアローンを組むケースが増えています。
ペアローンを組んでいる場合に、配偶者が脳梗塞を発症し、後遺症で仕事ができなくなった場合も、住宅ローンが免除される条件は同じですが、ペアローンは夫婦それぞれが保証人になってローンを2本組んでいる状態です。例えば、夫が脳梗塞による高度障害状態になった場合、夫の住宅ローンは免除されます。しかし、妻の住宅ローンの返済はそのまま残るので注意が必要です。
ただし、夫婦連生団信に加入している場合はローンが1本になるため、夫婦の一方に万一のことがあれば全ての住宅ローンの支払いが免除されます。
4.脳梗塞の後遺症により住宅ローンを滞納した場合に起きること
脳梗塞の後遺症によって今までどおり仕事ができなくなり、収入が減少すると、住宅ローンの支払いが困難になります。そんな状況に陥り、住宅ローンの支払いを滞納した場合、どのようなことが起きるのでしょうか。
(1)督促が届く
住宅ローン滞納1ヵ月目には金融機関からの電話や支払い請求が届きますが、2カ月目に入ると「督促状」や「催告状」という通知が届きます。これは、住宅ローンの返済を催促する書面で、遅延損害金の支払いについても記載されています。
期限までに支払いがなければ法的手続きを行うという内容も記載されているため、不安になる方も多いでしょう。
(2)分割返済できなくなる
滞納から3~6カ月経過すると、期限の利益喪失通知が届きます。
期限の利益とは、住宅ローンを月々の分割で返済する権利です。期限の利益が喪失すれば分割返済する権利が失われるため、一括返済しなければなりません。
(3)自宅が差押えに遭う
そのまま住宅ローンの滞納を続けていると、代位弁済通知が届き、保証会社が債務者に代わります。債務者が保証会社に代われば、裁判所へ競売の申立てが行われます。
そうなると、自宅が差押え対象になり、競売の手続きが開始されます。
(4)競売で売却される
競売の手続きが開始されても何も手を打たなければ、競売で自宅が売却されます。落札者が入金をすれば、物件の所有者は落札者へ移ります。
そのまま家を立ち退かなければ強制退去となり、家財などが一式運び出されてしまいます。
5.脳梗塞で住宅ローンが免除されない場合の対処法
脳梗塞で住宅ローンが免除されないからという理由で住宅ローンの返済を滞納し続けていては最終的に自宅が競売にかけられてしまいます。競売を避けるためには、状況に応じた対処を検討してみてください。
(1)金融機関にリスケジュールの相談をする
脳梗塞で住宅ローンの返済が難しくなった場合には、まず金融機関へ返済の相談をしてみましょう。早い段階で相談すれば、リスケジュール(返済計画の見直し)に応じてもらえる可能性があります。リスケジュールの主な内容は、月額の返済額の減少や、返済期限の延長などです。
ただし、住宅ローンの原則として減額はできないため、今後も返済が続けられる状態なのかという点も含めて検討しなければいけません。
(2)アンダーローンなら通常売却できる
自宅の売却額が住宅ローンの残債を上回る「アンダーローン」の場合、一般的な方法で売却が可能です。
売却して得た資金で住宅ローンの残債を返済し、賃貸住宅で生活することで、無理なく生活を立て直せるでしょう。
(3)オーバーローンなら任意売却できる
自宅の売却額が住宅ローンの残債を下回ってしまう「オーバーローン」の場合、手持ちの資金で住宅ローンを完済できなければ抵当権を外すことができないため、通常の売却はできません。しかし、この場合でも任意売却という方法なら売却が可能です。
任意売却は通常売却と同様の市場で売却活動が行われるため、競売よりも高額で売却することができます。そのため、競売を避けるために利用されるケースも多いです。
(4)住み続けたい場合はリースバックを検討する
住宅ローンの返済は難しいものの自宅に住み続けたいという場合、リースバックという選択肢もあります。リースバックとは、不動産会社やリースバック業者へ自宅を売却し、賃貸として自宅に住み続ける方法です。
売却額で住宅ローンの返済負担を軽減できますが、賃貸料を支払わなければなりません。
リースバックは近い将来、自宅を買い戻せる見通しがある場合におすすめの対処法といえるでしょう。
まとめ
脳梗塞を発症したことにより住宅ローンの返済が困難な状況に陥った場合、まずは団信の保障対象になるか確認しましょう。対象になる場合、住宅ローンの支払いは免除されます。
対象にならない場合は、他の方法を検討する必要があります。どのように対処すればよいかわからない場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。
当社は、住宅ローン滞納問題を専門的に扱う不動産会社です。ご相談者様の状況やご希望を丁寧にお伺いした上で、最適な解決方法をご提案します。
「競売だけはなんとか回避したい」「住宅ローンの支払いが難しいけれど、今の家に住み続けたい」など、さまざまなご相談に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
こちらでは、当社での相談から解決までの流れを紹介していますので、参考にしていただければと思います。
寺島 達哉
クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉