親族間売買の仲介手数料の相場・不動産会社への依頼が必要なケースは?

仲介手数料

親族間売買は、身内の間での不動産取引のため、「仲介手数料を払ってまで不動産会社に依頼する意味はあるの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

確かに不動産売買の仲介手数料は決して安い金額ではありませんが、親族間売買では、状況によっては不動産会社のサポートが必要なこともあります。

この記事では、親族間売買を不動産仲介業者に依頼するメリットとデメリット、親族間売買における仲介業者の役割、仲介手数料の相場、具体的にどのようなケースで不動産会社への依頼が必要となるのかなどを解説します。

1.親族間売買を不動産仲介業者に依頼するメリットとデメリット

まずは親族間売買を不動産仲介業者に依頼した場合、どのようなメリットやデメリットがあるのかを説明します。

(1)不動産仲介業者に依頼するメリット

親族間売買を不動産仲介業者に依頼する主なメリットとして、以下の2点が挙げられます。

①贈与税の支払いを回避できる

他人同士の不動産売買であれば、贈与とはみなされず、税務署も問題にしません。しかし、親族間売買の場合、税務署からのチェックが厳しくなり、相場よりも不当に安い価格で売買されていれば、みなし贈与とみなされて、贈与税を課される可能性があります。

不動産仲介業者に依頼すれば、相場を考慮した上で、贈与税が発生しない適正な価格を設定してもらうことが可能です。

②重要事項説明書を作成してもらえる

不動産仲介業者に依頼すれば、重要事項説明書を作成してもらうことも可能です。重要事項説明書とは、売買契約締結にあたり、取引条件に関する重要な情報が記載された書面です。住宅ローンの審査の際に必要な書類で、不動産仲介業者しか作成できません。

(2)不動産仲介業者に依頼するデメリット

不動産仲介業者に依頼するデメリットは、仲介手数料がかかることです。

仲介手数料は、売主と買主の両方にかかるため、同一生計の親族間の場合は、通常の倍額を支払うことになります。ただし、親族間売買は、最初から買主が決まっているため、不動産仲介業者が買主を探す手間は省けます。その分、仲介手数料を安くしてもらえるケースもあるので、不動産仲介業者に相談してみるとよいでしょう。

2.親族間売買における仲介業者の役割

親族間売買の場合、物件の売主・買主が既に確定しているため、一般的な不動産売買で行われる買主の募集や、宣伝活動などの売却活動は不要です。売却活動が不要でも、不動産会社に依頼する必要はあるのでしょうか。

親族間売買における不動産会社の役割がどのようなものなのか具体的に説明します。

(1)対象物件の査定

親族間売買における不動産会社の重要な役割の一つが、対象物件の査定です。どの程度の価値がある物件なのか、実際に現地を訪問して査定します。

一般的な不動産売買の査定は、主に「どのくらいの価格で売れそうか」を判断するために行われますが、親族間売買の場合は、以下のような目的のために行われます。

  • 贈与税の対象とならない適正な売買価格の算出
  • 金融機関からの借り入れ見込み額の推定
  • 買主の経済状況で購入可能な売却価格への調整

(2)住宅ローンの借入先が見つかる

親族間売買の場合、住宅ローンを融資してくれる金融機関を見つけるのが難しいという問題があります。親族間売買への融資は、贈与税逃れや資金使途の悪用などのリスクがあるため、親族間売買に融資してくれる金融機関は少数派であり、買主が自力で探してもなかなか見つからないのです。

親族間売買に詳しい不動産会社に依頼すれば、提携先の金融機関の中から、審査に通過できる可能性が高く、有利な条件で借り入れできる金融機関を紹介してもらえる可能性があります。

(3)各種書類の作成

不動産会社に依頼すると、売買で必要になる各種書類の作成を代行してもらえます。

不動産売買では、売買契約書をはじめ、さまざまな書類が必要となります。これらを個人で用意するためには、かなりの手間と時間がかかります。

個人で売買する場合、契約書の作成を司法書士に依頼する方も多いのですが、別途書類の作成費用が発生します。不動産仲介業者に依頼すると、書類作成の費用も報酬に含まれるためコストを抑えられます

(4)物件調査

売買対象の物件に問題がないか確認することも不動産会社の役割です。例えば、周辺の道路状況、隣地との位置関係、境界画定の有無などの近隣の状況確認が挙げられます。また、土地や建物の権利関係や建物の状態、耐震検査やアスベスト検査の履歴の有無なども確認してもらえます。

当事者だけでは気づかない隠れた問題がないか、不動産のプロの目線でチェックしてもらえるのです。

(5)重要事項説明

物件調査で調べた内容は、宅地建物取引士の資格者から「重要事項説明」で共有されます。「重要事項説明」は、不動産会社が仲介を行う売買では必ずやらなければならない法定手続きです。説明内容に誤りがあった場合、不動産会社が損害賠償を請求されることもあるため、勘違いが起こらないよう慎重に行われます。

買主の立場からすると、万一の場合は不動産会社の責任を追及できるため、当事者間のみで売買を完結させるより安心感があるといえます。

(6)物件引渡しの準備

売買が決まった際は、不動産会社が引渡しの準備を行います。

具体的には、契約日や引渡し日の決定などのスケジュール調整や、決済の場となる銀行との打合せ、登記手続きを依頼する司法書士の日程確保などです。

(7)売主の債権者との交渉(任意売却の場合)

親族間売買が任意売却の場合は、債権者との交渉も不動産会社が行います。

任意売却とは、住宅ローンの残債が家の売却価格を上回っている「オーバーローン状態」の物件を、債権者の許可を得て売却することです。

任意売却では、売却の可否や価格の設定などについて債権者の意向が最優先されるため、いかに債権者の許可を得るかが重要なポイントとなります。債権者の許可を得るために、価格交渉や配分案の作成などを行うことが不動産会社の大切な役割です。

(8)税金に関する相談・サポート

親族間売買では、一般の不動産売買と比べて、税金に関する注意点が多くなります。これらのサポートも不動産会社が行います。

【親族間売買で注意すべき税金の問題】

  • 相場より安い価格で売却すると贈与税が発生する
  • 売却で利益が出ると譲渡所得税の対象となる
  • 買主が住宅ローン控除を利用できないケースがある

節税しながら有利に売却するには、専門的なノウハウを持つ不動産会社のサポートが不可欠といえます。

3.親族間売買の仲介手数料の相場は?

では、親族間売買で不動産会社にサポートを依頼する場合、手数料はどの程度発生するのでしょうか。

(1)仲介手数料は法律で上限が設けられている

不動産会社が受け取れる仲介手数料には、法律で以下のような上限が設けられています。

【仲介手数料の上限(税抜)】

  • 200万円以下の部分:5%
  • 200万円超400万円以下の部分:4%
  • 400万円超の部分:3%

例えば、売却代金2,000万円の物件の場合、以下のように分解して各部分の料率をかけると仲介手数料の上限を算出することができます。

  • 200万円までの部分
  • 400万円までの部分
  • 400万円超2,000万円までの部分

参考:宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額|国土交通省

(2)仲介手数料上限の計算方法

前述した計算方法には以下のような速算式があり、簡単に仲介手数料を算出できます。

【売却代金に対する仲介手数料の計算方法】

  • 200万円以下の物件:売却価格×5%+税
  • 200万円から400万円の物件:売却価格×4%+2万円+税
  • 400万円以上の物件:売却価格×3%+6万円+税

例えば、売却代金2,000万円の物件の場合、

2,000万円×3%+6万円=66万円+税

となります。

(3)仲介手数料を安くしてもらうことはできる?

法律で定められている仲介手数料は、あくまで上限です。上限額で計算する不動産会社が多いですが、料率をいくらにするかは不動産会社との合意によって決定できるため、値引き交渉も可能です。

親族間売買の業務量は案件によって大きく異なるため、業務量が少ない場合は交渉の余地があるかもしれません。経済的に厳しい場合は相談してみるとよいでしょう。

4.親族間売買で仲介業者への依頼が必要なケース

親族間売買では、不購入資金を全額自分で用意できる場合、不動産仲介会社を利用せず、書類作成のみ司法書士に依頼して、身内だけで取引を完了することも可能です。

ただし、以下のようなケースでは、不動産仲介会社への依頼が必要となります。

(1)住宅ローンを組みたいとき

住宅ローンを利用する必要がある場合、不動産仲介会社への依頼が必要です。

金融機関が住宅ローンの審査を行う際に、不動産仲介会社が交付する「重要事項説明書」を判断材料の一つとしているからです。

(2)任意売却で親族間売買を行うとき

任意売却で親族間売買を行う場合も、仲介会社のサポートが不可欠です。

前述した通り、任意売却の親族間売買では、債権者との交渉や配分案の作成など、専門知識を要する作業が多く発生します。また、売却自体に債権者である金融機関の許可が必要となりますが、個人で交渉に臨もうとしても、金融機関が話し合いに応じてくれる可能性は低いです。

(3)低額譲渡による贈与税の発生が心配なとき

親族間売買で相場より大幅に安く売却した場合、差額が贈与とみなされ、贈与税が課税される可能性があります。贈与税の課税を避けるためには、適正な売却価格を設定する必要があります。適正な売却価格を判断するのは難しい場合も多いため、不動産仲介会社に依頼して適正な売却価格を判断してもらうと安心です。

不動産仲介会社の査定では、不動産市場の相場を把握した上で、適正な売却価格を算出してもらえます。「贈与税の対象にならない範囲でなるべく安くしたい」などという希望を伝えて、対応してもらうことも可能です。

(4)対象の物件に懸念点がある場合

売買対象の家の状況などに不安な点がある場合も、不動産仲介会社に依頼した方がよいでしょう。不動産仲介会社は、売買前に物件の状況を丁寧に調査し、重要事項説明で買主に報告する義務があるため、物件の問題点を把握することができます。

例えば、「実際の地積と登記の内容が違う」「家が古くて現行の耐震基準に適合していない可能性がある」などという問題は、古い住宅では珍しくありません。個人での売買では、物件に潜む問題を見落としてしまい、購入後に問題が発覚してトラブルになるリスクがあります。

余計なトラブルを防止するためにも、物件の状況に不安がある場合は、不動産会社に依頼して、プロの視点で丁寧にチェックしてもらうことをおすすめします。

5.親族間売買を自分で行う際の注意点

「身内の間での不動産取引だから自分たちだけで済ませよう」と考える方もいらっしゃるでしょう。不動産仲介会社に依頼することなく、親族間売買を行う場合は以下のような点に注意する必要があります。

(1)適正価格を調べる

前述したとおり、親族間売買には、税務署にみなし贈与とみなされて贈与税が発生するリスクがあります。贈与税の発生を回避するためには、適正な価格で取引をすることが重要です。

適正な価格を調べる際に、目安となるのが路線価です。路線価とは、道路に面する土地の1㎡あたりの価格のことです。市場価格の8割程度の額ではありますが、適正とみなされる範囲内なので、みなし贈与とみなされるリスクを低減できます。
路線価は、国税庁の公式サイトの以下のページで調べることが可能です。

参考URL:路線価図・評価倍率表(国税庁公式サイト)

(2)登記簿を正確に読む

不動産取引を行う際は、最初に必ず登記簿を確認します。親族間売買においても同様で、まずは法務局で登記簿を取得し、所有者、権利関係など登記の内容を正確に把握しなければなりません。

不動産取引では、決済と引き渡し、所有権移転登記は、原則として同日に行う必要があります。「登記手続きだけ後で行う」というわけにはいかないのです。

決済日当日に、予想外のトラブルにより、取引の延期や中止とならないよう、登記簿は必ず正確に読みましょう。不安がある場合は、不動産仲介会社などの専門家に相談することをおすすめします。

(3)対象不動産に漏れがないように

戸建て物件の場合、建物のある土地が取引の対象に含まれる可能性があります。前面の道路が私道である場合は道路も含まれます。

対象に漏れが発生しないようにするためには、不動産の調査をしっかり行うことが大切です。自治体から毎年送られてくる固定資産納税通知書を確認する、市区町村役場で名寄帳を閲覧するなどの方法で事前に確認しておきましょう。

(4)時間がかかる

親族間売買に必要な手続きを全て自分で行う場合、思いのほか時間がかかります。不動産の調査を丁寧に行う必要があり、調査だけで1カ月以上かかる可能性もあります。
また、各種書類の作成や登記手続きなども行う必要があるため、かなりの負担になるでしょう。役所や法務局は平日の昼間しか開庁していないため、平日に仕事をしている場合は仕事を休む必要があります。

5.まとめ

不動産売買で発生する仲介手数料は、決して安いとはいえません。そのため、当事者だけでの売買を検討する人も多いのが実情です。

しかし、親族間売買では、状況によっては不動産会社のサポートが必要なこともあります。特に、住宅ローンを利用したい場合や、任意売却の場合は、不動産会社への依頼が必須となります。「安全に取引するための必要経費」と考えるとよいでしょう。

当社は、数多くの親族間売買を手掛けてきた住宅ローン滞納問題を専門的に扱う不動産会社です。親族間売買に関するさまざまなご相談に応じておりますので、お気軽にご相談ください。

寺島 達哉
寺島 達哉

クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉

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