競売の後自宅にいつまで住める?住み続ける方法も解説
「自宅が競売にかけられた後は、いつまで住むことができるの?」
「競売にかけられた自宅に住み続けたいけれど、なにかいい方法はない?」
そのような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
自宅が競売にかけられて売却されると、買受人が代金を納付した後、所有権が移転します。元の所有者は新たな所有者に物件を引き渡さなければなりませんが、競売の後、いつまで自宅に住めるのか、その後はどうなるのか知っておきたいという方もいらっしゃるかと思います。
この記事では、自宅が競売にかけられ売却された場合、自宅の引き渡しまでにどの程度の猶予があるのか、引き渡し後はどうなるのかについて解説します。また、住み慣れた我が家に住み続けたいという方に向けて、住み続けるための方法についても説明します。
目次
1.競売になった家の明け渡し期限
競売で家が売却されると、裁判所からその旨が通知され、期限までに明け渡さなければなりません。競売になった家はいつまでに明け渡せばよいのでしょうか。
(1)競売の開始から明け渡しまでの流れ
競売の手続きでは、開始直後に買受人が決定するわけではありません。不動産の競売は「〇日~〇日の間」と期限を定め、その間に購入希望者が一度だけ入札する「期間入札」という方式で行われるためです。そのため、物件の状況確認や参加希望者の募集、物件情報の公開など、ある程度の手順を経た後に売却されます。
競売の開始から明け渡しまでは、基本的に以下の流れで進行します。
- 競売開始決定通知の到着
- 現況調査(訪問による物件の査定・状況確認)
- 競売の期間入札通知
- 期間入札の公告(物件情報の外部への公開)
- 入札の開始
- 開札
- 売却許可決定
- 代金の納付
- 明け渡し
(2)競売開始決定通知の到着から6か月~8か月で退去
前述の流れを月数にすると、競売開始決定通知の到着から明け渡しまでは、おおむね6か月から8か月です。詳しいスケジュールはケースによって異なるので、詳細は裁判所から送られてくる各種通知書を確認しておきましょう。
明け渡しの日から逆算し、間に合うように引越し・新居の手配を進める必要があります。
(3)自宅の明け渡しに応じなければ強制退去も
引越しが間に合わない場合や、家を失う抵抗感から明け渡しに応じない場合、最終的には強制執行によって退去させられる可能性があります。
元の所有者が居住している場合でも、新たな所有者が裁判所に申し立てることで、実力による排除が可能です。具体的には、その場で家財道具一式を運び出され、鍵を換えられ強制的に追い出されます。
運び出された荷物は返してもらえますが、保管や搬出にかかった費用は、請求されれば元所有者が負担することとなります。
2.自宅を競売で売却した後の残債はどうなる?
自宅を競売で売却した後、気になるのが「残債はどうなるのか」という点です。競売後の残債について説明します。
(1)競売で売却=債務ゼロではない
勘違いされる方も多いのですが、家を手放したからといって、自動的に残債が免除されるわけではありません。家を競売で売却した後も残債は残るため、住宅ローンを支払い続けなければなりません。そもそも住宅ローンなどの滞納によって競売にかけられたケースでは、債務の金額が家の売却価格を上回っている「オーバーローン状態」であることがほとんどだからです。
(2)競売後の残債は一括請求されることが多い
住宅ローン債務の場合、競売時に保証会社が保有していた債権は、債権回収会社(サービサー)に譲渡されることが一般的です。以降は債権回収会社が債権者となり、残債の請求を行います。
競売で家を売却した時点で、債務の返済に関する期限の利益(分割払いの権利)は失っているので、残債は一括請求されることが多いです。給与や事業収入、その他の財産がある場合は、強制執行によって回収が図られるケースもあります。
(3)競売後の残債の処理方法
競売後に残債を処理する方法として、以下の二つの方法があります。
- 分割払い:残債を毎月少額ずつ返済する方法
- 自己破産:裁判所の手続きを経て、残りの借金を帳消しにしてもらう方法
分割払いを希望する場合、債権回収会社に認めてもらえるケースは多いです。債権回収会社は、債務者が経済的に困窮していることを承知しているからです。ただし、長期間に渡り残債を返済することになるため、経済的負担が大きいことは否定できません。
一方、自己破産をした場合、一部を除いた債務の支払いを免除してもらえます。残債の額が大きい場合は自己破産を検討してもよいでしょう。ただし、連帯保証人がいる場合は連帯保証人に請求されること、信用情報機関に最長10年間事故情報が掲載されることには注意が必要です。
3.自宅を競売で売却した後はどこに住む?
自宅を競売にかけられた方の中には、「売却後の住居はどう確保すればよいのか」と悩む方もいらっしゃいます。競売後の住居は経済状況回復のための拠点となるので、生活の負担にならない場所を確保したいところです。
自宅を売却した後の住居として選ばれることが多いのは、親族の家と賃貸住宅の二つです。
(1)親戚や親族の家に身を寄せる
家族や親戚など頼れる親族がいる場合、自宅を売却した後、身を寄せる方は多くいらっしゃいます。親や子供の場合、そのまま同居する方もいらっしゃいますし、一時的な仮の住居として住ませてもらい、その間に賃貸住宅を探す方もいらっしゃいます。
(2)賃貸住宅を契約する
親族がいない場合や「迷惑をかけられない」という場合、最初から賃貸住宅を契約する方もいらっしゃいます。賃貸住宅に住む場合、競売の手続きが進行する中で自分の希望に合った物件を速やかに探さなければなりません。
賃貸を探す際に大切なのは、物件の条件にこだわり過ぎず、期限までの入居を優先することです。自宅を売却してから住む家が見つからなければ、ホームレスになってしまいます。これだけは、経済的にも精神衛生的にも悪影響が大きいため、避ける必要があります。
(3)賃貸住宅の契約時の審査には通る?
自宅を競売で売却すると「賃貸住宅入居時の審査は問題ないのだろうか?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
賃貸住宅の入居前審査では、家賃の支払い能力や性格などを確認されます。具体的には、「定職についていてきちんと家賃を払えるか」「他の入居者とトラブルを起こさない人か」などが重視されます。大家さんは金融機関のように信用情報機関に登録しているわけではないので、競売の事実自体が不利になることはありません。
ただし、契約に際して保証会社の家賃保証を受ける場合は別です。信用情報の不安を理由に保証の引き受けを断られる可能性はあります。審査に落ちるようなら、保証会社を変えて審査を依頼するか、保証会社の代わりに連帯保証人を立てて契約できないか交渉してみましょう。
4.競売にかけられた後も住み続ける方法
実は、家の競売手続きが始まった後でも、家に住み続けられることがあります。その理由や具体的な方法について説明します。
(1)競売は債権者の意思で取り下げが可能
競売は、開札期日の前日までは、競売を申し立てた債権者の一存で取り下げることが可能です。そのため、債権者を納得させ、競売を取り下げてもらうことができれば、競売は回避できます。
ただし、債権者を説得するためには、「競売以外の方法で売却し、より有利に債務を返済する」ことを提示する必要があります。この「オーバーローン状態の担保を債権者の同意のもと、競売以外の方法で売却する」ことを任意売却と呼びます。
任意売却では、通常不動産市場で売却するのが一般的ですが、引き続き家に住み続けたい場合は、親族間売買かリースバックのいずれかの売却方法を検討することになります。
(2)住み続ける方法①親族間売買
親族間売買とは、家族や親戚など、親族に対して不動産を売る売却方法のことです。親族の同意を得られれば家に住み続けることができ、家が他人の手に渡らない点が大きなメリットです。
一方、親族間の不動産の譲渡としてはイレギュラーな方法のため、税務署や金融機関からは警戒される傾向にあります。適正価格以下の売買は贈与税の対象とされるほか、購入者が住宅ローンを組みにくいという問題点があります。
(3)住み続ける方法②リースバック
リースバックとは、自宅をリースバック会社や個人の不動産投資家に売却し、売却後に賃貸住宅として住み続ける方法です。家賃を支払えば家に済み続けることが可能で、契約内容次第では将来的に「買戻し」という形で家を取り戻せることもあります。
ただし、任意売却によるリースバックは「債権者」「リースバック会社」の利害が介在するため、売却価格や家賃の面で折り合いがつかないことが多く、成功率は決して高くありません。
また、居住期間の調整や買戻しの価格など、契約書に盛り込むべき要注意の条項が多いことも難しいポイントです。
(4)個人再生の手続きを利用する
多重債務に陥った結果、住宅ローンが返せなくなり競売に至った場合、個人再生の手続きにより、自宅に住み続けられる可能性があります。
個人再生とは、債務を裁判所の手続きによって圧縮できる債務整理方法の一つです。債務額を3割程度に圧縮し、残額を原則3年で完済できるよう、返済計画を立てます。個人再生の手続きでは、保証会社による代位弁済から6か月以内であれば、競売を停止させることができます。
個人再生の住宅ローン特則という特例を使うと、住宅ローンはそのまま残りますが、家を手放さずに債務の大部分を圧縮できます。ただし、利用できるかどうかはケースバイケースですので、まずは専門家に相談することをおすすめします。
(5)売却後の家を取り戻すことはできる?
「競売で売却してしまった家をなんとかして取り返すことはできないか」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
理論上、売却後の家を買い戻すことは可能ですが、さまざまな理由で実質的には不可能なことが多いです。競売で不動産を購入する人は、多くの場合、投資目的で購入している個人・法人の不動産業者、または居住するために購入した一般の方です。
業者が相手であれば、実勢価格で買い取れる可能性はありますが、居住目的の買い手の場合、断られる可能性が高いです。
何より、買い取るための資金をどのように工面するかが問題となります。競売で家を売却した方は、信用情報機関に事故情報が登録されていますので、数年は新たに住宅ローンを組むことはできません。そのため、実際にはかなりハードルが高いといわざるを得ないでしょう。
5.自宅が競売になったら専門の不動産会社に相談する
競売で家を売却することは、所有者の経済的・精神的負担が大きい方法です。価格も市場価格の5割~7割と安いため、売却後の残債自体も多いです。そのため、より高く売却することが可能で、住み続けられる可能性もある任意売却をおすすめします。
しかし、任意売却は通常の不動産売買と比較して、専門知識が必要な場面が多く、現実的には所有者が自分で行うのはほぼ不可能です。そのため、任意売却の実績を豊富に持つ不動産会社に相談することが大切です。
(1)任意売却には宅地建物取引業の登録が必要
前提として、任意売却は不動産取引なので、宅地建物取引業の登録がなければ扱えません。銀行や金融機関、弁護士事務所などに任意売却の相談をしても、最終的には不動産会社を紹介されます。「任意売却の相談窓口」等を名乗る業者の中には宅地建物取引業の登録をしていない業者も存在するため、注意が必要です。相談の二度手間になりかねないため、最初から不動産会社に相談するのが効率的です。
(2)債権者との交渉にはプロの助けが不可欠
任意売却で特に難しいのが債権者との交渉です。債権者の許可がなければ任意売却はできないからです。債権者を納得させられる配分案(売却代金の配当の内訳)を作成できなければ、売却自体が実現できません。
通常の不動産会社でも、宅地建物取引業の登録をしていれば、任意売却を扱うこと自体は可能です。ただし、任意売却に関する専門的な業務は一般的な不動産会社の専門外なので、任意売却の実績を豊富に持つプロを選ぶ必要があります。
(3)相談先は実績を重視して選ぶ
相談先を選ぶ際は、会社が公式ホームページなどに公開している事例や相談実績が参考になります。実績数はどのくらいか、内容は具体的で信ぴょう性があるかなど、慎重にチェックしてみましょう。
注意が必要なのは、「引っ越し代を全額保証します」「売却価格の一部を還元します」など、一見魅力的な謳い文句で相談者を集める会社です。任意売却の業界ではしばしば見かける謳い文句ですが、いずれも悪徳業者の可能性が高いため注意してください。
ほかにも、受け答えの怪しい会社や、依頼者にとって都合の良いことしかいわない会社は避けた方がよいでしょう。
6.まとめ
今回は、競売になった家の明け渡し期限、競売で売却した後の残債、競売にかけられた後も住み続ける方法などについて解説しました。
競売による自宅の売却では、一切スケジュールの調整が効かず、強制的に退去させられることもあります。また、競売後の残債も多く残るため、経済的・精神的ともに負担の大きい売却方法といわざるを得ません。
そのため当社では、競売より高く売却でき、希望に応じて住み続けられる可能性もある任意売却をおすすめしています。任意売却を成功させるためには、専門的なノウハウが不可欠なので、任意売却の実績を豊富に持つプロに相談することが大切です。
当社は過去3,000件以上の相談実績で培った知識・ノウハウをもとに、任意売却のサポートを行っています。「住宅ローンを払うのが困難な状況だけど、今の家に住み続けたい」などという悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談下さい。
クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社・株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一