生活苦で住宅ローンを返済できない場合の対処法

「経済状況が悪化して生活苦に陥り、住宅ローンを支払えなくなってしまった」
「今の状況で住宅ローンを払い続けるのは難しいけど、なんとか今の家に住み続ける方法はないのだろうか」
当社には、このような相談が日々寄せられています。なぜ、住宅ローンを返済できない状態に陥ってしまうのでしょうか。
この記事では、住宅ローンで生活苦に陥る原因と対処法について解説します。
1.住宅ローンで生活苦に陥る原因
住宅ローンの支払いが困難な状況に陥る背景には、どのような事情があるのでしょうか。
典型的な原因について説明します。
(1)離婚による経済的な負担の増加
何らかの事情により配偶者と離婚し、離婚後に経済的な負担が増加したことで、生活苦に陥ってしまうことはよくあることです。離婚で収入の柱が一本になったために経済状況が急激に悪化する、養育費や慰謝料の支払いが必要になるなど、経済状況の悪化の引き金になる要因は少なくありません。
また、再婚して新しい家族ができたことで、新たな家庭の生活費と養育費の支払いが重なり、急激に支出が増加するケースもあります。
(2)転職や業績悪化による収入の減少
転職や勤務先の業績悪化など、仕事の環境が変化したことにより、収入が減少することも多いです。勤務先の業績が悪化して賞与や給与が減少するケースや、給与の低い仕事への転職などを余儀なくされるケースは少なくありません。このようなケースは、新型コロナウィルス感染症の影響で2020年以降急増しています。
(3)怪我や病気による収入の減少
怪我や病気などが原因で、今まで通り働けなくなったために、収入が激減してしまった方も少なくありません。中には、仕事を継続するのが難しい状態なのに、障害の程度が軽いと認定されて障害年金を受給できない方もいらっしゃいます。
また、障害者雇用枠での転職により、以前の仕事より大きく収入が減るという場合もあります。
(4)借入額が収入に対して過大
収入やライフプランに対して、借入額が過大な場合もあります。
収入に対してローンなどの借入額が多いと、毎月の返済が重くのしかかってきます。特に、ペアローンなどを利用して、収入に見合わない物件を購入しているケースによく見られます。住宅購入時に予定していなかった子供が生まれた場合などに、住宅ローンの返済が難しくなるケースもあります。
ローンの審査では、契約者の収入は必ずチェックされますが、審査に通ったからといって、無理なく返済できるとは限りません。契約前に、収入や将来のライフプランを考慮した上で、適正範囲の借入れといえるのかご自身でしっかり確認することが大切です。
2.住宅ローンを払えないとどうなる?
生活苦に陥ってしまい、住宅ローンを払えなくなるとどうなるのでしょうか。住宅ローンの滞納が長期化した場合に起きることを時系列で説明します。
(1)金融機関から督促を受ける
滞納1か月目から2か月目ほどでは、金融機関からの督促を受けることになります。連絡は電話や書面で行われることが多いです。
滞納1回目や2回目であれば、すぐに滞納分を支払うことで事なきを得ることができます。
ただし、内容証明郵便による催告書が届いた時には注意が必要です。これ以降、債権者が法的措置による回収の準備を始めるため、支払いが難しい場合は早めに金融機関に相談しましょう。
(2)分割払いの権利を失う(期限の利益の喪失)
催告書が届いた後も滞納を続けてしまうと、期限の利益を喪失します。
期限の利益とは、毎月の支払いを遅滞なく行うことで守られる「分割払いができる権利」のことです。期限の利益を喪失すると、一括払いでの全額返済を求められることになります。
期限の利益喪失後も返済ができないと、保証会社が債務者に代わって返済を行い、金融機関からローン債権を取得します。
(3)自宅が競売にかけられる
債務者によるローンの返済が難しい場合、債権者は担保を売却し、代金を返済にあてます。裁判所の手続きによって家を売却する方法が「競売」です。
競売による自宅の売却には、以下のようなデメリットがあります。
- 売却価格が相場より大幅に安い
- 家が競売にかけられていることを公開される
- 売却スケジュールが一方的に決められる
(4)最終的には退去しなければならない
自宅が競売にかけられて売却されると、家は購入者のものとなるため、最終的には自宅を退去しなければなりません。引き渡し期日は裁判所が決定するため、引越し先が決まっていなくても退去する必要があるのです。
退去を拒否した場合、強制執行により家財を運び出され、無理やり退去させられます。
3.住宅ローンで生活苦に陥った場合の対処法
では、住宅ローンの支払いで生活苦に陥ったとき、最悪のケースを避けるためにどのように対処すればよいのでしょうか。
(1)家計全体を見直す
まずは、住宅ローン以外の家計全体を見直してみましょう。毎月の支出の無駄をうまく削ることができれば、住宅ローンの支払いが無理なくできるようになるかもしれません。
例えば、毎月のスマホ代です。プランや使用状況によっては、同じ使い方で月額数千円程度安く抑えられることもあります。
保険料も、見直しの対象にできることがあります。夫婦で保障が重複している場合や、リスクに対して保障が過大な場合は、乗り換えや特約の解約などにより保険料を抑えられます。
車を持っている場合は、維持費が高すぎることも考えられます。週に数度の利用であれば、所有するよりレンタカーやカーシェアリングを使った方が支出を抑えられることも多いです。
どの項目をどのように見直すかは家庭によって異なりますが、まずは支出額の大きいものをチェックしてみましょう。
(2)返済を猶予してもらえることもある
住宅ローンを契約している金融機関に相談することで、返済の猶予を受けられることがあります。コロナ禍でローンの返済に困窮する人が増加しており、事態を重く受け止めた金融庁から、金融機関各社に対して柔軟に対応するように通達されているためです。
どのように猶予してもらえるかは金融機関によって異なります。フラット35の場合、ボーナス払いの見直し、返済期間の延長、一時減額という方法が用意されています。
月々の返済でお困りになったときは:長期固定金利住宅ローン 【フラット35】
ただし、こちらは何か月も返済を滞納すると利用できないこともあるため、できれば滞納前、遅くとも滞納1か月~2か月の間に相談するようにしましょう。
(3)家の売却を検討する
家計の見直しや金融機関への相談をしても住宅ローンの返済が難しいという場合、家を売却し、その代金により一括返済することを検討してみてください。思い入れのある家を手放すことに抵抗を感じるかもしれませんが、売却代金で生活を再建し、ローンの月額より安い家賃で家を借りることができれば、経済的な基盤を立て直すことが可能になります。
売却を検討する際は、まずはインターネットで、以下のようなサイトを利用して、過去の取引履歴からどの程度の価値があるのか調べてみましょう。
REINS Market Information|不動産流通機構
その後、不動産会社の査定を利用して売却価格の目安を調べてみましょう。査定の結果は不動産会社によって異なる場合もあるので、複数社に依頼することをおすすめします。
4.住宅ローンが払えないときの任意売却とは
住宅ローンの返済ができず、家の売却価格よりもローン残高が多いために一般的な売却ができないという状況でも、競売は回避できる可能性があります。その方法が任意売却です。
任意売却の主なメリットについて説明します。
(1)売却価格が残債より安くても売却できる
任意売却とは、「住宅ローンの返済が困難で、このままでは競売にかけられてしまう」という状況に陥った際に、債権者と交渉して売却許可を得た上で、一般市場などで売却することです。売却後も残債は残りますが、一般売却と同じ流れで進行するため、所有者の負担が少なく、かつ競売よりも高く売ることができます。
ただし、競売より高く売却できることを条件に債権者と交渉して、売却許可を得ることが前提条件となります。交渉を成功させるためには、任意売却の実績を豊富に持つ不動産会社を選ぶことがポイントとなります。
任意売却の依頼先を選ぶ際のポイントや注意点については、こちらの記事にまとめましたので、参考にしていただければと思います。
(2)今の家に住み続けられる可能性もある
「住宅ローンの返済が難しい状況に陥ってしまったけれど、今の家に住み続けたい」という方もいらっしゃるかと思います。その場合、以下のいずれかの方法により、住み続けられることもあります。
5.まとめ
住宅ローンを借り入れた後、経済状況が悪化して住宅ローンの支払いで生活苦に陥ってしまう方は少なくありません。住宅ローンを滞納してしまうと、いずれは家が競売にかけられることになるため、早めに対処することが大切です。
早期に金融機関に相談すれば、返済の猶予を認められてもらえる可能性もあるので、まずは相談してみましょう。それでも返済が難しい場合は、競売を回避するために、任意売却を検討することをおすすめします。
当社は、数多くの任意売却を手掛けてきた住宅ローン滞納問題を専門的に扱う不動産会社です。ご相談者様のご希望や状況を丁寧にお伺いした上で、最適な解決方法をご提案します。「住宅ローンを滞納してしまったけれど、競売だけは回避したい」「住宅ローンを払うのが難しい状況だけれど、今の家に住み続けたい」など、さまざまなご相談に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
こちらでは、当社での相談から解決までの流れを紹介していますので、参考にしていただければと思います。
参考URL:相談から解決までの流れ

寺島 達哉
クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉