債権回収会社、サービサーから「期限の利益の喪失」「代位弁済」通知が来てからの対応方法
住宅ローンの滞納をしていて、後ろめたさはあるものの収入が上がるわけでもなく、何をしていいのかわからないまま過ごしていると「期限の利益の喪失」「代位弁済」通知が郵送で送られてきます 。通知を受け取り、いよいよ自宅を手放さないといけないのかと慌てる方も多いのではないかと思います。
結論からいうと、「期限の利益の喪失」「代位弁済」通知が届いて、そのまま何もせず放置しておくと自宅が競売にかけられます。
競売を避けるためにはどのように対処すればよいのでしょうか。
この記事では、債権回収会社、サービサーから送られる「期限の利益の喪失」「代位弁済」通知の概要、通知を放置するリスク、競売を回避する対処法などについて解説いたします。
1.債権回収会社・サービサーとは何者なのか
住宅ローンを借りたのは銀行なのに、なぜ債権回収会社・サービサーから通知がきたのかと疑問に思われるかと思います。そこで、債権回収会社・サービサーとは何者かについて説明します。
(1) 債権回収会社・サービサーの概要
債権回収会社とは、金融機関から委託を受けて、または譲り受けて債権(借金)の回収や管理を専門業としている会社の事を指し、サービサーと呼ばれることもあります。
住宅ローン等を滞納して代位弁済が行われた後、債権回収会社(サービサー)から書面や電話等で連絡が入ることが多いのですが、滞納した段階で債権回収会社(サービサー)から連絡が入ることもあります。
債権回収を業として行うためには、法務省の許可を受けないと営業できません。法務省が営業を許可した株式会社の一覧となります。
参考URL:債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧(法務省公式サイト)
(2) 主な債権回収会社・サービサーについて
主な債権回収会社・サービサーは下記になりますが、借入先によって債権回収会社・サービサーは異なります。
① 住宅債権管理回収機構
住宅債権管理回収機構は、主に住宅支援機構(旧住宅金融公庫)から委託を受けた会社になりますので、フラット35等で住宅ローンを借入された方が該当します。
住宅金融支援機構は、債権(借金)の回収を下記4社に委託 します。
- エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社
- オリックス債権回収株式会社
- 三菱HCキャピタル債権回収株式会社
- 住宅債権管理回収機構
したがって、フラット35等で住宅ローンを組まれた方は上記4社のいずれからか連絡があります。
② エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社
エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社は、三菱UFJ銀行の関連会社となっておりますので、主に三菱UFJ銀行から住宅ローンを借入した方や、住宅支援機構(旧住宅金融公庫)からも委託を受けておりますので、フラット35等で住宅ローンの借入をされた方が該当します。
③ 三菱HCキャピタル債権回収株式会社
三菱HCキャピタル債権回収会社は、三菱HCキャピタルの関連会社となっており、住宅支援機構(旧住宅金融公庫)からも委託を受けておりますので、フラット35等で住宅ローンの借入をされた方が該当します。
④ オリックス債権回収株式会社
オリックス債権回収会社は、オリックス株式会社の関連会社となっておりますので、オリックスで借入された方や、住宅支援機構(旧住宅金融公庫)からも委託を受けておりますので、フラット35等で住宅ローンの借入をされた方が該当します。
⑤ りそな保証株式会社
りそな保証は、りそな銀行の関連会社となりますので、りそな銀行から住宅ローンの借入をされた方が該当します。
⑥ SMBC債権回収株式会社
SMBC債権回収会社は、三井住友銀行の関連会社となっておりますので、三井住友銀行から借入をされた方が該当します。
2.期限の利益の喪失・代位弁済の解説
届いた書面に「期限の利益の喪失」「代位弁済」という聞きなれない言葉が記載されていますので、その言葉の意味を解説いたします。
(1)期限の利益の喪失とは
「期限の利益」とは、住宅ローンを組むと支払期間が定められています 。その期間(例えば35年)のうちに分割して支払えばよく、期限が定められていることによって債務者(借入者)が受ける利益になります。
例えば、住宅ローンを35年で借入している場合、住宅ローンを返済している期間中は、滞納等をしない限り、残債を一括で返済しなくてよいという権利になります。
ですので、期限の利益の喪失とは、この権利が喪失するため、残っている住宅ローンを一括で返済してくださいということを意味します。
(2)代位弁済とは
代位弁済とは、第三者等が債務を弁済することをいいます。
住宅ローンの契約をする際には、保証会社による保証契約を締結することが一般的ですが、滞納等により保証会社が借入元(金融機関等)に債務を代わりに返済することを意味します。
保証会社が、債務を返済したからといって債務が無くなるわけではなく、新たに保証会社が債権者となり、債務の回収を図ります。
例えば、三井住友銀行で住宅ローンを組むと、SMBC信用保証が保証会社となります。保証契約に基づき、SMBC信用保証が三井住友銀行に代わって支払いを行い、その後SMBC信用保証が新たな債権者となります。
フラット35で住宅ローンを借入されている方は保証契約がないため、この代位弁済はありません。
3.このまま通知を放置しておくとどうなるのか
仕事等で忙しく、書面に記載されている電話番号に連絡したけれど営業時間外で電話が繋がらない等あると思います。その場合も含め、債権回収会社・サービサーと連絡を取らないままの状態でいると「競売」にかけられてしまいます。競売の申立てをされた場合の流れについて説明します。
(1)競売の流れ
管轄の裁判所によって開札されるまでの期間は異なりますが、目安としては滞納をしてから1年になります。
下記に競売の流れを記載しておりますが、詳細については「競売とは滞納から売却までの流れ、競売の回避策を解決」をご参考ください。
- 競売の申立てが行われる
- 競売開始決定通知の到着
- 現況調査が行われる
- 競売の期間入札通知の到着
- 期間入札の公告
- 入札開始
- 開札
- 明け渡し
(2)デメリット
ローンを滞納し、そのまま放置しておくと競売を申立てられます。競売には以下のようなデメリットがあります。
- 相場より安価で落札される可能性が高い
- プライバシーが侵害される(インターネット上で室内の状況が公開される等)
- 安価で売却されるため、多くの残債が残る
- 引越代が出ない
4.競売を避けるための対処法
ここからは、通知が来てからの具体的な競売を避けるための対処法 について解説いたします。
(1)不動産会社に相談
相談先として適切 なのは、不動産会社になります。
ですが、一般的な不動産会社ではなく、任意売却の実績が豊富な不動産会社へ相談が必要になります。任意売却の実績が豊富な不動産会社に相談することによって、任意売却、親族間売買、リースバックなど、競売を回避する方法を提案してもらえる可能性があるからです。
任意売却とは、オーバーローン(残債>市場価格)状態でローンを全額返済できないが、債権者に承諾を得て、不動産を売却する方法です。
「親族間売買」とは、その名のとおり親族間で不動産の売買をすることです。親族に不動産を購入してもらうことによって売却後も低額の賃料で住ませてもらえる可能性が高く、今まで負担していた住宅ローンを支払う必要がなくなる可能性もあるので経済的余裕も生まれます。
「リースバック」とは、不動産の売却と同時に、購入者との間で賃貸借契約を締結します。売却後も売却前と変わらず、賃貸物件として住み続けるという方法です。通常はリースバック会社や投資家等が購入者となります。
購入をした際の不動産会社や建築会社、街の不動産会社等は、任意売却の経験はほとんどありません。ですので、最初から相談を断られるか、依頼は受けてくれたものの経験がないために、債権者等の交渉がうまくいかず、頓挫する可能性があります。
「競売」を申し立てられたからといってまだ任意売却や親族間売買・リースバックは諦めるのはまだ早いです。「開札」までは上記可能性が残っています。
(2)金融機関に相談
前述で説明させていただいた「期限の利益の喪失」「代位弁済」が行われる前であれば、金融機関に相談することによってリスケジュール(返済計画の見直し)をし、返済期間を延ばし、毎月の返済額を抑える申請をすることもできます。但し、これが「期限の利益の喪失」「代位弁済」が行われた後であればできません。
(3)弁護士や司法書士に相談
多重債務に陥っている場合や給料を差し押さえられている場合には、法律の専門家に相談した方が良い場合もあります。
親族間売買やリースバックをして「住み続けたい」場合や不動産売却に関していえば、法律家にできることはあまりないですが、不動産会社への相談を紹介してくれることはあるかもしれません。
5.住み続けられる方法
任意売却後も今の家に住み続けられる方法は、「親族間売買」「リースバック」の2つの方法があります。
どちらの方法も住み続ける方法には変わりはないですが、特性が異なります。
「親族間売買」は、現金で親族が購入してくれるのであれば問題ないですが、ローンを組んで購入するとなるとハードルが高くなります。なぜかというと、親族間の売買は相続税対策と見なされ、大手の金融機関では住宅ローンの貸出しをしてくれません。弊社は、いくつかの提携銀行があり、通常は難しい親族間売買のローンであっても借入をすることが可能です。
「リースバック」は、購入者となるリースバック会社や投資家によって買取り額や毎月の賃料がことなります。地域やマンション、戸建かによっても得意不得意があります。弊社は数十社との提携があるので、一番良い条件のリースバック会社の選択が可能です。
詳細については、こちらの記事で解説しております。
6.まとめ
今回は、「債権回収会社・サービサー」「代位弁済」「期限の利益の喪失」といった普段あまり聞きなれない言葉や内容を説明させていただきました。こちらに記載していることが全てではなく、ご相談者の状況によって取れる手段は異なりますので、まずはご希望をお伝えください。ご相談が早ければ早いほど取れる手段や選択肢が多くなりますので、お早めにご相談いただければと思います。
当社の初回相談では、まず相談時点での状況とご希望について確認させていただきます。その上で、3,000件以上の実績から得た経験をもとに、相談者様にとって最善の結果となるような解決策を提案させていただきます。事前に用意していただく書類もなく、相談料やコンサルタントフィー等もかかりませんのでお気軽にご相談ください。
クラッチ不動産株式会社代表取締役。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室代表理事。立命館大学法科大学院修了。司法試験を断念し、不動産業界に就職。住友不動産販売株式会社・株式会社中央プランナーを経て独立、現在に致る。幻冬舎より「あなたを住宅ローン危機から救う方法」を出版。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の理事も務める。住宅ローンに困った方へのアドバイスをライフワークとする。
監修者: 井上 悠一