親子間売買(親族間売買)でフラット35は利用できる?条件と融資を受けるコツを解説
親子間売買(親族間売買)で家を購入する多くの方から「住宅ローンを利用できないか」とのご相談をいただきます。住宅の購入には多額の資金が必要となり、全額を貯金でまかなえるケースは稀だからです。
住宅ローンの中でも、長期間にわたり金利変動によるリスクがないことで人気があるのが、住宅金融支援機構が提供するフラット35です。フラット35を親族間売買(親子間売買)で利用することは可能なのでしょうか。この記事では、親族間売買でフラット35を利用できる可能性や利用条件などについて解説します。
1.親族間売買にフラット35は利用可能?
親子間売買(親族間売買)でも、フラット35を利用できるケースはあります。ただし、一般的なフラット35の利用条件のほかに、親族間売買特有の制限があるという点に注意が必要です。
親族間売買でフラット35を利用するための条件について詳しく説明します。
(1)フラット35の利用条件
最初に、フラット35の一般的な利用条件について説明します。
フラット35には以下のような利用条件が設けられており、これらを全て満たさなければ、貸し付けの対象にはなりません。
【フラット35の利用条件(一部)】
申込人 | ・申し込み時点の年齢が満70歳未満 (親子リレー返済の特例あり) ・日本国籍の人または特別永住者、永住許可を受けている人 |
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総返済負担率の制限 | 年収400万円未満:30%以下 年収400万円以上:35%以下 |
資金使途 | 本人または親族が居住する住宅の購入・建設に必要な資金 |
借入対象の住宅 | 住宅金融支援機構が定める技術基準に適合すること |
床面積が以下の基準に適合すること | 戸建ての場合:70平方メートル以上 マンションなど:30平方メートル以上 |
借入額の制限 | 100万円以上8,000万円以下で建設費・購入費を超えない金額 |
フラット35の一般的な利用条件について詳しく知りたい方は、フラット35公式サイトの以下のページでご確認ください。
参考URL:ご利用条件:長期固定金利住宅ローン|フラット35
(2)親子間売買でフラット35に申し込むには制限がある
親子間売買でフラット35に申し込むためには、上記の一般的な利用条件のほかにも制限があり、以下のようなケースは融資の対象になりません。
- 夫婦間の売買
- 融資の対象となる住宅に既に売主と買主が同居しているとき
- 買主が売主から融資の対象となる住宅を使用貸借しているとき
例えば、親が同居中の子に家を譲りたい場合や、施設に入っている親の家を子が無償で借りて住んでいる場合などは、フラット35を利用することはできません。
参考URL:中古住宅の場合、親子間の売買は融資の対象になりますか?また、夫婦間の売買は融資の対象になりますか?|フラット35
(3)申し込めても審査に通らない可能性はある
親子間売買でフラット35を利用したい場合、申し込みをする方が、前述した貸付条件を満たしているかを確認した上で申し込みましょう。
ただし、申し込み条件を満たしていても、実際に申し込んだ際に審査に通らないケースもあります。理由はさまざまですが、過去にローンやクレジットカードの滞納履歴がある場合などは、審査に落ちる可能性が高いでしょう。
2.親族間売買に融資する金融機関は少ない
フラット35を利用できない場合、他の金融機関で融資を受けようと思われるかと思いますが、親族間売買に対する融資に厳しい金融機関は多いため注意が必要です。その理由について説明します。
(1)資金使途を疑われるため
住宅ローンは、資金使途を住宅の購入や新築に限定することにより、安い金利を実現しています。しかし、親族間売買の場合、資金使途を偽って申し込んでも当事者間で口裏を合わせることができてしまいます。
実際、住宅ローンは金利の安さから投資用物件の購入などに悪用されてしまうことも少なくありません。金融機関としては、リスク軽減の観点から断らざるを得ないという事情があるのです。
(2)親子間では「売買」という形が一般的でない
親子間で不動産を譲渡する方法として、「売買」という形が一般的ではないことも、金融機関から警戒心を抱かれる原因の一つです。親子間では、贈与や相続によって不動産を譲渡することが多いため「あえて売買という形を取るのには特別な理由があるのでは?」と疑われてしまうのです。
当事者間に正当な理由があったとしても、金融機関が事実かどうかを判断することは難しい場合もあります。そのため、リスク回避の観点から、親族間の売買は一律に断るという対応を取っている金融機関もあります。
(3)住宅が古く担保価値が低いことが多い
親族間売買で対象となるのは、親が建てた実家であることが多いです。そのため、売買の時点で既に築年数が十年以上経過していて担保評価が低い物件が少なくありません。
担保の価値が低いことが原因で、希望する借入額を融資できないというケースもあります。
3.親族間売買で金融機関から融資を受ける方法
親族間売買で金融機関から融資を受けるためには、どうすればよいのでしょうか。
(1)申し込み先の金融機関を絞る
住宅ローンの審査は「数打てば当たる」というものではありません。特に親族間売買は、金融機関によって方針やスタンスが異なるため、最初から見込みのある金融機関に絞って申し込む方が効率的です。
ただし、親族間売買に対する方針は外部に公開されていないことがほとんどです。親族間売買に対する方針を知るためには、金融機関に直接問い合わせるという方法もありますが、方針を教えてもらえる可能性は低いでしょう。
(2)親族間売買に詳しい不動産会社に相談する
親族間売買で住宅ローンを申し込む際、親族間売買の実績を豊富に持つ不動産会社に相談すると、審査に通りやすくなる可能性があります。
親族間売買の実績を豊富に持つ不動産会社は、過去の取引実績から、親族間売買に対して融資をしてくれる金融機関と信頼関係を築いています。このような不動産会社が仲介に入ることにより、親族間であっても贈与ではなく、正当な売買であることを客観的に証明してもらえるため、融資が通る可能性が高くなります。
4.住宅ローンの審査に落ちても家に住み続けたい場合は
状況によっては、万全に準備をした上で住宅ローンに申し込んでも融資を受けられないかもしれません。親族間売買の目的が「住宅ローンの支払いが難しい状況に陥っているけれど、今の家に住み続けたい」ということであれば、他の手段で解決できる可能性もあります。住宅ローンの審査に落ちたけれど、今の家に住み続けたいという場合の選択肢を紹介します。
(1)リースバックを検討する
リースバックは、売買と賃貸が一つになった契約のことです。自宅を売却した後、新たな所有者から売却した家を借り、賃貸住宅として住み続けることができます。
売却後、家は新たな所有者のものとなりますが、契約内容によっては将来、買い戻しができることもあります。
リースバックを検討する際は「どのくらいの期間住み続けたいか」「家賃はどの程度まで負担できるのか」などを明確にした上で、慎重に検討することが大切です。売却価格を高くすると、売却後の家賃も高額になるなど、注意点もあるので、リースバックに詳しい不動産会社を探して、サポートを受けることをおすすめします。
(2)多重債務で住宅ローンを滞納しているなら個人再生を検討
住宅ローン以外にも借り入れがあり、多重債務状態に陥って住宅ローンの滞納が続き、返済のために親族間売買を検討していた場合、個人再生の手続きにより解決できる可能性があります。
個人再生は、裁判所を通して行う債務整理手続きの一つです。債務を圧縮する返済計画を経て、3年または5年の期間をかけて計画通り返済できれば、残りの債務は免除されます。
個人再生は、住宅ローンを対象外にし、自宅を手放すことなく債務整理ができる「住宅資金特別条項」という制度があります。自己破産などとは違い、自宅と住宅ローンを残したまま債務を整理できるので、住宅ローン以外の債務を負っている場合は検討してもよいでしょう。
(3)ローン残債がないなら分割払いでの売買を検討する
住宅はローンを組んで購入することが一般的ですが、親族間売買であれば必ずしもローンを組んで一括払いする必要はありません。購入する住宅にローンの残債がないことが前提ですが、当事者間で合意があれば、分割払いでの売買も可能です。
ただし売却益に対してかかる譲渡所得税については、一括払いで支払いを受けたときと同じように納付が必要となります。手元に資金がない場合は支払い不能に陥らないよう注意が必要です。
5.まとめ
親子間売買でもフラット35を利用することは可能ですが、利用には条件があるため、事前に確認したうえで申し込む必要があります。また、フラット35を申し込む以前に、金融機関の方針によっては融資を受けられないこともあります。
より効率的に借入先を探すためには、親子間売買に精通した不動産会社に仲介を依頼することをおすすめします。審査に通過する見込みが高い金融機関の紹介を受けられるため、仲介手数料以上のメリットがあるといえるでしょう。
当社は、数多くの親族間売買を手掛けてきた住宅ローン滞納問題を専門的に扱う不動産会社です。「親族間売買で住宅ローンを利用できる金融機関が見つからない」など、さまざまなご相談に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
こちらでは、当社での相談から解決までの流れを紹介していますので、参考にしていただければと思います。
寺島 達哉
クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉