仕事が見つからないために住宅ローンが払えない場合の対処法を解説
勤め先の業績不振や倒産により、突如として職を失うことがあります。その後、次の仕事がなかなか見つからずに収入が途絶えてしまうこともあるでしょう。そのような状況では、毎月の住宅ローンの支払いが大きな負担になる可能性があります。
この記事では、仕事が見つからないために住宅ローンの支払いが困難な状況に陥った場合の対処法や、住宅ローンの滞納を続けた場合のリスクなどについて解説します。
1.仕事が見つからず住宅ローンを払えない場合の対処法
失業後、仕事が見つからず住宅ローンの支払いが難しくなった場合、どうすればよいのでしょうか。具体的な対処法を5つ紹介します。
(1)まずは生活の支出を見直す
まずは生活にかかる支出を見直してみましょう。人によっては、見直しにより数万円単位の節約ができることもあります。節約する上で重要なのは、できる限り生活の質を落とさずに無駄な部分を見つけて削減することです。
例えば、スマートフォンやインターネットの契約は、乗り換えることにより毎月かかる費用を抑えて同程度のサービスを受けられることがあります。
また、自動車を持っているけれど原付で事足りる場合は、買い替えることで維持費を大きく削減できます。週末しか乗らない場合はレンタカーで十分かもしれません。
どのように見直すかは人それぞれ異なりますが、無駄な支出がないか徹底的にチェックしてみてください。
(2)失業手当の手続きをする
失業手当の対象になる場合は、忘れずに給付の申請をしてください。退職時に発行された離職票を、最寄りのハローワークの窓口に持参することで手続きができます。
支給される金額と期間は人によって異なりますが、給付の対象であれば最低90日間賃金の50%~80%を受け取ることができます(金額の上限あり)。
給付の対象となる被保険者の条件は以下のとおりです。
- 就業意思があるにも関わらず就職できていない「失業状態」にあること
- 離職日から遡って2年(※)の間に被保険者期間が通算12か月以上あること
※期間の定めのある労働契約が更新されず離職した人は、離職日から遡って1年の間に被保険者期間が通算6か月あれば対象となる。
参考URL:ハローワークインターネットサービス – 基本手当について
(3)住宅ローンのリスケジュールをする
住宅ローンの返済期間を延長するなど、リスケジュール(返済計画の見直し)をすることで、短期的な負担を軽減することができます。リスケジュールには借り入れている金融機関の同意が必要なので、滞納が始まる前に相談に行くことが大切です。
リスケジュールにはいくつか種類が存在します。返済期間を延長して月の支払いを減らす、ボーナス返済を見直す、一定期間支払いを減額するなど方法はさまざまです。金融機関によっても異なるので、まずは借入先に相談してみてください。
(4)ほかに借金がある場合は任意整理・個人再生をする
住宅ローン以外に借金があり、それが原因で生活が苦しい場合は、任意整理や個人再生などの債務整理により負担を軽減することもできます。
任意整理は、債権者と交渉して毎月の支払い額を軽減する方法です。個人再生は、裁判所を介して債務を大幅に圧縮する方法です。いずれも信用情報機関に事故情報が登録されるというデメリットはありますが、借金の負担を大きく軽減できる可能性があります。
債務を軽減する方法としては自己破産もありますが、自己破産を選択すると家を失うことになるため、最終手段として検討することをおすすめします。債務整理を検討する場合は、債務整理に精通した専門家に相談して、慎重に判断することが大切です。
(5)最終的には家の売却も検討
仕事が長期間見つからず、住宅ローンの返済を続けるのが困難だと判断した場合、最終的には自宅の売却も検討してみましょう。
自宅の売却後は賃貸住宅に引っ越すケースが多いですが、持ち家とは異なり、収入額に応じた家賃の物件に引っ越せるというメリットがあります。ローンや修繕積立金、固定資産税の支払いもなくなるため毎月の支出を抑えることができます。
2.住宅ローンを滞納したまま放置した場合のリスク
職を失い、住宅ローンの返済ができない状況が続き、住宅ローンの滞納を放置するとどのようなことが起きるのでしょうか。住宅ローンの滞納を続けた場合のリスクについて説明します。
(1)金融機関から督促される
住宅ローンの返済期限を超過しても返済ができていない場合、まずは金融機関から督促があります。複数回にわたり支払いを促す書面が届き、電話で請求されるケースもあります。
滞納から1~2か月程度なら、滞納分を支払えば大きな問題にならないことがほとんどです。しかし、「催告状」「期限の利益喪失予告書」などと記載された書面が届いたら要注意です。これ以降も無断で滞納を続けると、金融機関側が「支払う意思がない」と判断して、法的措置の準備に入ります。
(2)連帯保証人に請求される
連帯保証人が存在する場合、連帯保証人にも督促が届きます。
親や親戚などに連帯保証を依頼している場合は、迷惑をかけたくないでしょう。迷惑をかけないためにも、返済が困難な状況に陥った時点で金融機関に相談することをおすすめします。
(3)期限の利益を失い保証会社に住宅ローン債権が移行される
長い間にわたり住宅ローンの滞納を続けていると、住宅ローン債務の「期限の利益」を失うことになります。「期限の利益」とは、遅滞なく返済することで守られている分割払いの権利のことです。期限の利益を喪失すると、保証会社が債務者に変わって金融機関に代位返済を行い、債権者が保証会社に変わります。
それ以降は保証会社または保証会社から債権を買い取った債権回収会社から請求が届くようになります。
(4)最終的には家は競売で売却される
期限の利益を喪失後は、分割払いが認められず、一括返済を求められるようになります。一括返済ができない場合、最終的には担保としている自宅を競売で売却されることになります。
競売とは、債権者の保有する抵当権に基づき、担保を現金化して債権を回収するための裁判所の手続きです。一般の方の中から広く参加者を募集し、最も高値をつけた人に売却されます。
競売は債権者の権利の保護を最優先に行われるため、債務者の事情はほとんど考慮してもらえません。現況調査(査定・下見)の日程や売却のスケジュールは一方的に決定され、債務者はそれに従わなければなりません。
売却価格自体も一般市場の相場と比べると大幅に安いことが多いです。そのため、競売での売却は可能な限り回避すべきです。
3.仕事が見つからず住宅ローンを返せない場合は家の売却を考える
仕事が見つからず住宅ローンを返済できない場合、最終手段として家の売却も考える必要があります。無理に持ち家を維持することで、経済的なダメージが深刻化する可能性があるからです。
住宅ローンを返せない場合に考えられる売却方法を紹介します。
(1)まずは通常売却を検討
まずは不動産仲介会社を利用して通常の方法で売却することを検討しましょう。
複数の不動産仲介会社の査定を利用して、自分の家にどの程度の価値があるのかを確認することから始めるとよいでしょう。
(2)オーバーローン状態の場合は任意売却が選択肢に
不動産仲介会社の査定を受けた結果、売却価格がローンの残債より低いオーバーローン状態であることが発覚することもあります。この場合、通常の方法で売却することはできないため、任意売却を検討してみましょう。
任意売却は、住宅ローンを滞納しているオーバーローン状態の家を、債権者の許可を得て一般市場で売却することです。競売より高く売却できる可能性が高く、精神的負担も少ない方法です。
ただし、任意売却を成功させるためには専門的なノウハウが必要となるため、任意売却の実績を豊富に持つ不動産会社に相談する必要があります。
任意売却の相談先の選び方についてはこちらの記事で解説しましたので、詳しく知りたい方は参考にしてください。
(3)売却後も住み続けられる親族間売買とリースバック
家を売却した後も今の家に住み続けたいという方は、親族間売買とリースバックという選択肢を検討してもよいでしょう。
親族間売買は、名称の通り親族に家を売ることです。親が子供に家を売却して引き継いでもらうケースが多いです。売却後に所有者となる親族が同意すれば、引き続き有償または無償で今の家に住み続けることができます。
親族間売買についてはこちらの記事で解説しましたので、詳しく知りたい方は参考にしてください。
リースバックは、個人・法人の投資家に家を売り、その後賃貸契約を結んで住み続ける方法です。売却後は家賃の支払いが必要となりますが、親族間売買とは違い、親族に負担をかけることなく住み続けられます。
リースバックについてはこちらの記事で解説しましたので、詳しく知りたい方は参考にしてください。
4.まとめ
仕事が見つからずに住宅ローンの返済が困難になった場合でも、対処法はいくつか存在します。早めに金融機関に相談すれば、リスケジュール(返済スケジュールの見直し)に応じてもらえることもあるため、まずは早い段階で金融機関に相談することをおすすめします。
リスケジュールをしても返済を続けるのが難しい場合は、売却を検討しましょう。住宅ローンの返済が困難になり、家の売却を検討する際は、住宅ローンの滞納問題に詳しい専門の不動産会社に相談するとよいでしょう。
当社は、住宅ローン滞納問題を専門的に扱う不動産会社です。ご相談者様のご希望や状況を丁寧にお伺いした上で、最適な解決方法をご提案します。「仕事が見つからず、住宅ローンの支払いが困難な状況だけれど、今の家に住み続けたい」「住宅ローンを滞納していて裁判所から通知が届いたけれど、どのように対処すればよいかわからない」など、さまざまなご相談に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
こちらでは当社での相談から解決までの流れを紹介していますので、参考にしていただければと思います。
寺島 達哉
クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉