夫が難病で住宅ローンが払えない場合の対処法を解説

悩む女性

住宅ローンで借入れた多額のお金を返済していく中で、夫が難病にかかり、仕事を続けられなくなるという事態が起きることもあります。今まで通りの収入を得ることができなくなり、住宅ローンの支払いが困難になることもあるでしょう。そのような場合はどうすればよいのでしょうか。

この記事では、夫の難病で住宅ローンが払えなくなった場合の対処法や、自宅に住み続けるための方法などを紹介します。

1.夫が難病で住宅ローンが支払えなくなった場合のリスク

夫が難病で住宅ローンが支払えなくなってしまった場合、住宅ローンや自宅はどのようになるのでしょうか。住宅ローンが支払えなくなった場合のリスクについて説明します。

(1)放置すれば遅延損害金が発生する

住宅ローンの支払いが滞ると、遅延損害金が発生します。遅延損害金とは、支払い期限に遅れてしまった場合に発生する損害賠償として支払う金銭です。

1日でも返済を滞納してしまうと遅延損害金が発生し、住宅ローン以外に支払わなければならないお金が増えてしまいます。

遅延損害金は、「元金(滞納している金額)×遅延損害金の利率×延滞日数÷365日」で算出できます。遅延損害金の相場は、金融機関の場合は年率14%、消費者金融の場合は20%程度です。遅延損害金の利率は金融機関ごとに異なるため、契約書などで確認しましょう。

(2)滞納を続ければ自宅を競売にかけられる

住宅ローンの滞納が長期化すれば、最終的には自宅を競売にかけられてしまいます

競売にかかる前には金融機関より督促状などが何度となく送付されてきますが、督促状を無視していると、最終的には裁判手続きによって自宅が差し押さえられることになります。

自宅を競売にかけられた場合、相場価格よりも安い価格で売却されて、残債は一括で返済しなければなりません。

2.夫の難病で住宅ローンが支払えない場合に確認すべきこと

夫の難病で住宅ローンが払えないような状況に陥った場合、確認すべきことがいくつかあります。以下のことを順に確認し、住宅ローンの支払いについて検討しましょう。

(1)高度障害に該当するか確認する

病気や怪我にはさまざまな種類がありますが、まずは夫の難病が「高度障害」に該当するか確認することから始めましょう。

高度障害とは、病気やケガによって体の機能が重度に低下し、日常生活を送ることが著しく困難な状態を指します。高度障害に該当するかどうかによって住宅ローンの支払いへの対処法が変わってきます。

公益財団法人生命保険文化センターによる、高度障害は以下のような状態を指すとしています。

  • 両眼の視力を全く永久に失ったもの
  • 言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの
  • 中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの
  • 両上肢とも手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
  • 両下肢とも足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
  • 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったか、またはその用を全く永久に失ったもの
  • 1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの

参照:公益財団法人生命保険文化センター「生命保険に関するQ&A」

加入する保険会社によって高度障害の基準が異なることもあるため、基準を詳しく知りたい場合は加入する保険会社に問い合わせてください。

(2)団体信用生命保険の補償内容を確認する

団信(団体信用生命保険)は、住宅ローンを組む時に加入する生命保険の一種です。

住宅ローンは高額で借入期間が長いため、その期間中に契約者が死亡または病気により返済できなくなれば金融機関は大きな損害を受けることになります。そのため、住宅ローンの契約時には団信に加入することが一般的になっています。団信に加入していれば、難病によって支払えなくなった住宅ローンをカバーしてもらえる可能性があります

団信には「三大疾病保障」「5大疾病保障」「8代疾病保障」などの特約があるため、加入している団信の補償内容を確認しましょう。

(3)住宅ローン関係の任意保険を確認する

夫の病気が高度障害や加入する団信の特約に該当しない場合には、住宅ローン関係の任意保険を確認します。

主な住宅ローン関係の保険として、「住宅ローン疾病保障保険」と「住宅ローン返済支援保険」が挙げられます。

①住宅ローン疾病保障保険

団信では所定の高度障害状態や死亡時にのみが補償対象になりますが、住宅ローン疾病保障保険では日本人が発症する可能性の高い3大疾病(ガン・脳卒中・急性心筋梗塞)や高血圧や糖尿病、慢性疾患などでも補償を受けられます。

ただし、補償対象は加入しているプランによって異なるため、確認が必要です。

②住宅ローン返済支援保険

病気やケガで30日以上の療養が必要になった場合、住宅ローン返済の一部をサポートしてくれる保険です。補償内容は加入している保険プランによって異なります。

これらの保険は任意なので加入していないケースもあるでしょう。

加入している場合は団信ではカバーできない病気の場合でも補償を受けられる可能性があるので確認しましょう。

(4)加入している医療保険を確認する

医療保険は、病気やケガで入院・通院をした際に給付金を受けられる保険です。

就業不能保険へ加入していれば、病気で働けなくなった場合に補償を受けられます。

こうした医療保険は住宅ローンの返済を直接的に行うものではありませんが、一時金を受け取ることで住宅ローンの返済に充てることができます。

(5)労災保険が適用されるか確認する

病気やケガの原因が仕事に関連する場合、労災保険が適用されます。

休業しなくてはならなくなった場合には休業補償給付を受けることができ、平均賃金の8割相当が支給されます。治療費も労災保険が負担してくれるため、住宅ローンの返済を続けられる可能性があります。

(6)健康保険の給付制度を確認する

夫が会社勤めの場合、健康保険の給付制度も確認しましょう。

病気やケガの原因が労災ではない場合、健康保険の「傷病手当金」を受け取ることができます。

傷病手当金は、健康保険の加入者が働けなくなった時に受け取れる給付金です。給付金は月額給料の3分の2ほどの金額で、最長1年6カ月支給されます。

この給付金が支給されれば家計を見直し、住宅ローンを支払い続けられる可能性があります。

3.夫の難病で住宅ローンが支払えなくなった場合の対処法

前項で紹介した保険制度などを利用しても住宅ローンの支払いが困難な場合には、どのように対処すべきなのでしょうか。夫の難病で住宅ローンが支払えなくなった場合の対処法をご紹介します。

(1)金融機関へ相談する

住宅ローンの支払いが困難になっても、住宅ローンの借入れをしている金融機関でリスケジュールの相談をすることで解決できる場合があります。リスケジュールとは住宅ローンの返済計画を見直すことです。

例えば、一定期間返済額を減らして返済期間の延長をするなどの方法があります。

住宅ローンの滞納を続けているとリスケジュールの相談に乗ってもらえない可能性が高くなるので、滞納前か滞納後できる限り早めに相談することをおすすめします。

(2)自宅の売却を検討する

リスケジュールをしても住宅ローンの支払いが難しい場合、自宅の売却を検討しましょう。

自宅の売却価格を不動産会社に査定してもらった結果、住宅ローンの残債よりも売却価格が上回る「アンダーローン」となる場合は一般的な方法で自宅を売却できます。

この場合、自宅の売却により得た資金で住宅ローンを完済し、残りの資金で新居に引っ越して生活を立て直すことが可能です。

(3)オーバーローンの場合は任意売却を検討する

自宅の売却価格が住宅ローンの残債よりも下回る「オーバーローン」の状態でも、任意売却という方法で自宅を売却することが可能です。

任意売却は、借入をしている金融機関に同意を得て自宅を売却する方法です。任意売却は一般市場で売却活動を行うため、競売よりも高い金額での売却が期待できます。

また、競売では残債を一括返済しなければなりませんが、任意売却の場合は分割で返済できるように相談することもできます。

(5)債務整理する

住宅ローン以外にも借入があり、家計の収支が悪化している場合、債務整理の検討が必要なこともあります。

債務整理とは、裁判手続きによって借金を大幅もしくは全額免除してもらう方法です。

個人再生や自己破産という方法があるため、自分に合った債務整理方法が知りたい場合は弁護士に相談しましょう。

4.夫の難病で住宅ローンの支払いができなくても自宅に住み続ける方法

夫の難病で住宅ローンが払えずに売却するとなれば、引っ越しが必要になります。

難病の夫と引越しをすることは簡単なことではないため、できれば自宅に住み続けたいと考える方もいらっしゃるでしょう。

住宅ローンの支払いができなくても自宅に住み続けられる方法について紹介します。

(1)個人再生の住宅ローン特則を利用する

債務整理の一種である個人再生には、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)という制度があります。住宅ローン特則を利用すれば、住宅ローンを債務整理の対象から外して残りの債務を整理することが可能です。

つまり、住宅ローン以外の借金は大幅に免除されながら、住宅ローンは今まで通り払い続けることにより自宅に住み続けることができます。ただし、住宅ローン特則を利用するには複数の要件を満たす必要があります。

(2)リースバックを利用する

自宅を売却しても、リースバックという制度を利用すれば自宅に住み続けることができます。リースバックとは、売却後の自宅を賃貸住宅として家賃を支払って住み続ける方法です。リースバックの買主は、リースバック業者や不動産会社になります。

5.夫の難病で住宅ローンの支払いが困難になった場合の注意点

夫の難病が原因で住宅ローンの支払いが困難になった場合、以下のことを心がけましょう。

(1)できる限り早めに金融機関に相談

住宅ローンの滞納を長期間放置すると、自宅が競売にかけられてしまいます。競売にかけられてしまえば、金融機関にリスケジュールの相談をすることはできず、自宅を手放すことになります。

そのため、夫が難病を発症して仕事を続けられなくなり、住宅ローンの支払いが困難になることがわかった時点で、金融機関にリスケジュールの相談をすることをおすすめします。

(2)任意売却が必要な場合は実績が豊富な不動産会社に相談

リスケジュールをしても住宅ローンの支払いが困難であり、自宅を売却しようとしたところオーバーローンであることが判明した場合、競売を避ける方法として任意売却を検討することになります。

任意売却をする場合、不動産会社選びが重要です。任意売却を成功させるためには、専門的なスキルや経験が必要なので、任意売却の実績が豊富な不動産会社を選択するべきです。公式サイトなどで実績を確認し、任意売却に精通した不動産会社に相談しましょう。

まとめ

夫が難病で住宅ローンの支払いが困難になった場合でも、保険制度を利用したり金融機関にリスケジュールの相談をしたりしながら家計を見直せば住宅ローンを支払い続けられる可能性があります。

しかし、それでも住宅ローンを払い続けることが難しい場合、早めに売却を検討した方が良いケースもあります。

当社は、多くの任意売却を手掛けてきた住宅ローン滞納問題を専門的に扱う不動産会社です。ご相談者様の状況やご希望を丁寧にお伺いした上で、最適な解決方法をご提案します。

「競売だけはなんとか回避したい」「住宅ローンを払えないけれど、今の家に住み続けたい」など、さまざまなご相談に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

こちらでは、当社での相談から解決までの流れを紹介していますので、参考にしていただければと思います。

寺島 達哉
寺島 達哉

クラッチ不動産株式会社主任。一般社団法人住宅ローン滞納問題相談室相談員。帝塚山大学を卒業後、不動産賃貸仲介会社を経て現在に至る。何らかの事情で住宅ローンの返済が困難になった方にとっての最善の解決(任意売却・親族間売買・リースバック等)に向けて日々奮闘中。
所有資格:任意売却取扱主任者/宅地建物取引士/相続診断士/賃貸不動産経営管理士
監修者: 寺島 達哉

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